機動戦士ガンダム 紺碧の空へ   作:黄昏仮面

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第19話 キャスバル暗殺③

 

「ジュネット艦長代理!宇宙軌道艦隊がサイド8、1バンチコロニーアルカディアへの攻撃を開始しています!」

 

「何だと!?」

 

 ゼノン・ザビと名乗る男が真の宇宙世紀憲章だと晒した石碑、そしてネオ・ジオンのキャスバル代表と瓜二つの顔を持った男が、自分こそがキャスバルであり、シャア・アズナブルが名を騙った男が今のキャスバル代表だという。

 事実として受け止めるには衝撃的過ぎる内容の演説の終了から、ほぼ間髪なくバスク・オム大佐の率いる宇宙軌道艦隊がサイド8に攻撃を仕掛けている。

 

「バスク大佐のアレキサンドリアに直接通信を試みろ!この様な行動が許されるわけがない!」

 

 正当な理由も無く、この様な行為が許される訳がない。

 いや、仮に正当な理由があったとしても非戦闘員が大半を占めるスペースコロニーに攻撃など言語道断だ。

 

「バスク艦隊のいる地点から戦闘レベルのミノフスキー粒子の散布を確認!通信途絶!コロニー内にも通信が出来ません!」

 

「くっ……!これは造反だ!アルビオンにレーザー通信を!ガンダム部隊は虐殺行為を止めさせるのだ!」

 

「りょ、了解です!」

 

 何故だ……!何故この様な行動を起こした、バスク・オム……!

 先の電波ジャックで、ゼノン・ザビは月も独立宣言を行うと言っていたが、それが理由か?

 月の勢力と共謀し、この様な行為に及んでいるのだとしたら……許せる訳がない……!

 

 

 

ーーー

 

 

『MS隊は急ぎ発進準備を!繰り返しますMS隊は急ぎ発進の準備を!』

 

「どうしたオペレーター!詳しい状況を説明しろ!」

 

 慌てた状況で不明瞭な指示を出すオペレーターを叱責しているとジュネットに通信が代わる。

 

「グリム!緊急事態だ!バスク艦隊がサイド8に対して説明も無しに攻撃を仕掛けている!」

 

「何だって……!?」

 

「バスク艦隊はミノフスキー粒子も散布している!こちらからの通信は届かん!正確な状況は掴めないがサイド住民に対しての虐殺は許されるものではない!急ぎ発進しMS隊を無力化するのだ、何故この行為を始めたのか知らねばならない、必ず撃破せずに撃墜だけしろ!」

 

「無茶を言う……!」

 

「だが、やらねばならない!良いか!」

 

 普段冷静沈着なジュネットが声を荒げながらも最大限の配慮をしている、期待には応えなければ……。

 

「分かった!いずれにせよ何故こんな暴挙に及んだのかを聞かなければならないものな。」

 

「頼んだぞ、グリム!」

 

「了解!こちらグリム、そしてララサーバル。ガンダムニグレド発進する!」

 

 カタパルトから発進し、急ぎサイド8のアルカディアへ向う。

 少し遅れてベアトリスのアルベド、セレナのルベドが合流する。

 

「グリム隊長……、これは一体……。」

 

「今は考えるより動くのが先だベアトリス。おかしいと思ってるのは僕らだけじゃない。」

 

 ジュネットも、恐らくはアルビオンの方も、現在の状況が掴めていないだろう。

 下手をすれば一艦隊の謀叛も同然の状況だ。戦争になる可能性もある。

 

「気を緩めてる暇はないよグリム!目の前にメガセリオン!各機、IFFはウチとアルビオン隊以外のは切りな!」

 

「……っ!各機、カルラの指示に従い敵味方識別を変更!僕ら以外の連邦機は信用するな!」

 

「了解です!」

 

 目前に迫るメガセリオンにシールドを構え接近する。

 

「こちらリング・ア・ベル隊、ヨハン・グリム中尉!目前のメガセリオン、通信に応えよ!」

 

 期待はしていない、だが何らかの反応は欲しい。

 そう思っているとメガセリオンからの通信が入る、こちらの通信を受け入れたということだ。

 

「リング・ア・ベル隊……!こちらは宇宙軌道艦隊所属のデイン・ハーカー伍長です!どうか……どうか彼らの暴走を止めてください!」

 

「どういう事だ伍長!現在の状況を説明せよ!」

 

 慌てた様子の伍長に、現在の正確な情報を求める。

 

「それが……!バスク・オム大佐は数日前の作戦計画時に突然地球連邦軍からの独立を表明したのです……!『地球独立軍』を名乗り、地球に仇なす者を討つと……!私は彼らの暴挙に加わりたくはなく、出撃のタイミングでなんとか逃げ出し……!」

 

「地球独立軍……!?」

 

「お願いします!どうか助け──」

 

 言葉の最中、メガセリオンが撃ち抜かれる。

 目の前には複数のジム・カスタムとメガセリオン改がいた。

 

「クソ……!」

 

 通信要請するも返答は無く、こちらにも射撃を始めている。

 先程の伍長とは違い、どうやらこちらは完全に賊軍と化したようだ。

 

「グリム……!コロニーが!」

 

「クッ……!」

 

 僕らとは別の方向に進んでいる部隊の一部が、コロニーへ向けミサイルを放つ。

 

「やらせるかぁ!」

 

 ニグレドのビームキャノンでミサイルを薙ぎ払う。

 長射程かつ広範囲のビーム砲を持つニグレドで無ければコロニーにミサイルが直撃していただろう……だが……。

 

「ニグレドの火力は高過ぎる……!」

 

 下手をすればコロニーにも被害を与えかねない、かと言ってコロニーを背にして戦うのも危険だ。

 

「グリム隊長!ここは私が!」

 

 ベアトリスのアルベドが先行しMS部隊を引きつける。

 

「ルベドの性能なら……!」

 

 アルベドが引き付けた敵機をセレナのルベドが正確に射抜き無力化する、ガンダムの性能を活かした戦い方だ。

 

「だがこんな戦い方、いつまでも出来るわけじゃない……!」

 

 リスクの高い戦い方だ。アルベドにしたっていつまでも単騎で敵を引きつけられはしないしルベドも正確に敵を無力化するだけの集中力が続くわけでもない。

 

 今やるべきは……。

 

「僕はバスク艦隊の旗艦に向かう!コロニーへの攻撃を警戒しつつ援護を!」

 

「了解です!」

 

 機体を加速させバスク艦隊の旗艦であり新造艦であるアレキサンドリア級へ向かう、その最中気になる戦闘の光が見えた、あれは……。

 

「グリム、あれはアルビオン隊のいる筈の位置だよ……?」

 

「あぁ。向こうも戦いが始まったと言うことか……?」

 

 だが、バスク艦隊はこの離反の動きがあるまでは所定の位置から艦艇が動いた形跡はない。となると……。

 

「まさか……テロリストのガンダムか……!?」

 

「けどアタイらじゃ今から救援は無理だよ、向こうは信じるしか無いよグリム。」

 

「……分かってる。」

 

 今は地球独立軍などと馬鹿げた事を言い始めたバスク艦隊を止める方が先だ。

 アルビオンの事は気になるが、向こうに任せるしかない。

 

 

---

 

 

「MS隊は発進急げ!バスク艦隊の暴走をリング・ア・ベル隊と共に阻止せよ!」

 

 緊急発進していくガンダム達をバスク艦隊に向け急行させようとしたその直後、艦が大きく揺れる。

 

「何事だ!」

 

「艦長……これは……!左舷に被弾!第一エンジンの出力低下中!」

 

「敵襲か!?対空監視班は何をしていた!」

 

「こちらに急速接近するMSを複数確認!これは……!ガンダムです!」

 

 先日遭遇したテロリストの使用しているガンダムがモニターに表示される。

 

「ガンダム部隊を呼び戻せ!回頭60、後退しながら敵を迎撃する!」

 

「了解!総員第一種戦闘配置!」

 

「この状況でテロリストが動くとは……!まさかバスクは……!」

 

 懸念していたことが現実となりつつある。奴のネオ・ジオン共和国に対する示威行為、テロリスト捜索の強行にも関わらず成果の無かった現実。

 これらが全てこの時の為の行動であったのなら……!

 

「ルナツーへ向けての広域通信はどうか!」

 

「現在も続けていますがミノフスキー粒子により通信が遮断されています!ルナツーからの返答もありません!」

 

「予備のコア・ファイターを用いてでも通信可能な宙域まで届かせろ!」

 

 バスク艦隊の動向、そしてこのテロリスト達の動き、それに限らずともニュータイプ教団と名乗った謎の集団の電波ジャックもある、どの勢力がどう動くか分からない状況で味方と連絡が取れないのは致命的となる。

 

「ウラキ中尉達に敵の殲滅を急がせろ!例え相手がガンダムであってもだ!」

 

「りょ……了解です!」

 

 機体の性能が分からないとは言え、彼らとて伊達にガンダムに乗り続けている訳ではない。

 その実力を以て、この状況を打破しなければならないのだ。

 

 

---

 

 

「ウラキ!左から攻撃が来るぞ!」

 

「分かった!」

 

 レイの持つ感応性の高さで敵意を察知したのか、こちらが視認する前に声をかけてくれたおかげでビームライフルによる攻撃を難なく回避する。

 

「あれは……テロリストのガンダムだぜコウ!」

 

「例のヤツか!」

 

 目前に見えたのは先日遭遇した謎のガンダムタイプだ、俺達やリング・ア・ベル隊のグリム中尉ですら撃破には至らず逃してしまった機体達が目の前にいる。

 

「敵はこっちを討つチャンスだと思ってるんだろうが僕達を舐めるなよ!」

 

「あぁ!レイ、キース!コンビネーションアタックだ!」

 

「了解!」

 

 レイの2号機が肩部に増設されたミサイルポッドと拡散弾のバズーカを1機のガンダムに向け放つ。

 敵のガンダムは急速で回避行動に移る、だが単調な回避行動なら……!

 

「そこだぁー!」

 

 ビームライフルとバズーカでの攻撃、敵は回避が間に合わず脚部に被弾し行動が更に遅れる。

 

「消えろぉー!」

 

 キースの1号機が高速で接近しビームサーベルで斬りつける。

 敵のガンダムは爆散した。決して勝てない相手では無い、機体性能だって向こうも完全に上回っているようではないみたいだ。

 

「よし!まずは一機だ!」

 

「喜ぶのは早いぞウラキ!回避だ!」

 

「……!くっ……!」

 

 レイの声に急いで回避行動を取ると同時にビームが横を掠める、かなり正確な射撃だ、レイが言ってくれなければ直撃をしていた。

 

「この射撃精度……!並のパイロットじゃない!」

 

 距離からしても当てずっぽうで撃っている訳でも、コンピュータに任せて射撃している訳でもない、手動操作で的確にこちらの動きを把握して放っている。

 

『成程……あの頃よりも腕は上がっているようだな……!』

 

「殺気……!?うおおお!」

 

 敵機から感じるプレッシャーを感じ、急ぎサーベルを構え鍔迫り合いを起こす。

 

『私と1人で互角に戦えるレベルにまで達したか!それでこそだ!』

 

「なっ……!」

 

 接触回線で聞こえてくる敵のガンダムのパイロットの声、その声を……俺は知っている……!

 

「貴様は……まさか!?」

 

『腕を上げたようだな、コウ・ウラキ!』

 

「ガトー!貴様なのか!」

 

 鍔迫り合いの最中、空いている左腕部でライフルを構え放つ。

 だがそれを見越していたのか奴の機体も空いている腕部でこちらの左腕部を少し持ち上げるように動かして直撃を避けた。

 この技量、間違いなくエース級……!ガトーで間違いない!

 

『この日をどれだけ待ち侘びたか……!デラーズ閣下の弔いの為……、そして()()()の脅威を排除する為、貴様は此処で足止めさせてもらう!』

 

「何を……!」

 

「コウ!」

 

「ダメだキース!別のガンダムがこちらを狙っているぞ!」

 

 俺とガトーの戦いに救援に向かおうとしたレイとキースだったが残っているガンダム達は2人に狙いをかけている、先程の動きを見てこちらのコンビネーションを封じようとしているようだ。

 

「ガトー!お前達の狙いは何だ!?何故こんなテロ行為に加担する!」

 

『テロ行為だと……?違うな、これは新しい時代の到来の為の前哨戦に過ぎん、我らスペースノイドが真の独立を果たす為のな!』

 

「まだジオン公国の復活を夢見ているのか!こんなテロリストにまで落ちぶれて!」

 

『大局を見ろ!私は公国の復活など最早望んではいない!スペースノイドの真の独立という大義の為に私は戦っているのだ!』

 

「サイド8を攻撃していながら何を!」

 

『貴様の目はどこについている!サイド8を攻撃しているのはどの軍だ!』

 

「……っ!」

 

 バスク艦隊……そしてそれは連邦軍だ……。

 

『貴様達アースノイドは結局己の利の為にしか動けん、だが私は違う!』

 

 動揺した一瞬を突かれ、奴のガンダムの突進により俺の機体は大きくバランスを崩した。

 

『来たるべき、若人達の新時代の為、その義の為に私は動いている!ウラキ、お前も戦士なら何の為に戦うかもう一度振り返るべきだ!』

 

「何を……!」

 

 役目は果たしたと言わんばかりに、最早こちらに目を向ける事なく何処かに移動して行くガトーとそれに追従する他のガンダム。

 

「大丈夫かコウ!?奴ら……何処かに行ってみたいだ。」

 

「キース……アイツは……アイツはガトーだ。」

 

「ガトーだって……!?まさか……デラーズ・フリートの残党かよ!?」

 

 相手がガトーだと分かると、キースの声に更に怒気が含まれるのがわかった、デラーズ・フリートはバニング大尉の仇だからだ。

 

「僕達も消耗し過ぎだ、一旦アルビオンに戻って整備と補給を受けよう二人とも。……時を稼がれたように感じる、急がないと。」

 

「あぁ……そうだな。」

 

 時を稼がれた……か、確かにこの数十分にも満たない攻防と乱れの無い撤退行動、何かの行動の為の布石と見てもおかしくは無い。

 

「この宇宙(そら)で何を起こすつもりなんだガトー……。」

 

 かつてのデラーズ紛争とはまた違う、新たな陰謀が渦巻いているのを感じる……。

 スペースノイドの真の独立とガトーは言っていた、そしてあの気迫は決して洗脳された意志では無く、本人の覚悟を感じた。

 ガトー……お前は今何を起こそうとしている……?

 

 

 

ーーー

 

 

 

「こちらリング・ア・ベル隊、ヨハン・グリム中尉!アレキサンドリア級アレキサンドリアに要請する!ただちにコロニーに対する攻撃を止め、何故このような行動を起こしたか説明せ────っ!」

 

 アレキサンドリアに直接レーザー通信を試みるが、こちらが言い終わる前にアレキサンドリアは艦砲をこちらに向けて放った。

 

「くっ……!バスク・オム大佐!これは連邦軍に対する造反行為だぞ!分かっているのか!」

 

 通信を聞く気すら無いのか、攻撃の手は緩まる気配は無い……なら!

 

「警告はした……!聞く気が無いのなら!」

 

 ニグレドのビームキャノンをアレキサンドリアに向け威嚇で放つ。当てるつもりはない……だが向こうが聞く耳を持たないのであれば動きを止める程度には……そう思っていると直掩のMSがこちらを止める為に接近してきた。

 

『ガンダムニグレド、貴方でしたかグリム中尉。』

 

「この声……!」

 

 聞き覚えがある、一年前に……!

 

『だが愚かだぜ、ジオンの味方をしようってのはな。』

 

「貴方は……ベイト中尉!それにアデル少尉も!」

 

『ヘッ、俺らは昇進して今は大尉二人と中尉だぜ即成上がりの中尉様よぉ。』

 

「……モンシア……!」

 

 ジムカスタムに乗っているのは、かつてのアルビオンのMS隊の三人だ。デラーズ紛争後は原隊に戻ったかと思っていたが違ったようだ。

 

「何故貴方達がアレキサンドリアに!?それに何故こんな蛮行を許している!」

 

『蛮行だぁ?テロリストと組みそうな宇宙人野郎どもを殲滅して何が悪いってんだ?あぁ?』

 

「世迷いごとを!」

 

 言葉と同時に発砲してきたジムに此方も反撃を仕掛ける。

 

『今のを見切るとは流石だと褒めてやらぁ!』

 

「くっ……!何故だ!軍の命令でもなく何で地球独立軍などと馬鹿げた反乱軍に!」

 

『おっと、反乱軍と言われるのは敵わんぜ。俺らはあくまで地球連邦軍から袂を別れただけで正規軍なのは間違いねぇんだからな!』

 

 旧アルビオン隊によるジムのライフル攻撃が多方向からこちらに迫る。

 手を抜ける相手でも無ければ向こうもかなりのベテランだ、操縦系を任せているカルラも回避行動が厳しくなっている……!

 

「グリム!歯を食いしばりなぁ!」

 

「くっ──!」

 

 カルラはニグレドのファングを射出すると付近にある大きめのアステロイドに差し込むと同時にバーニアを噴射させ円を描くように回避する、向こうもこの動きを想像していなかったのか隙が生まれる。

 

「くっ……!そこだ!」

 

 ビームライフルを放つがアデル機の脚部を貫くだけに至る。

 

『相変わらずやるじゃねえか、どうだお前も俺達に着いて来ないか。殺すには惜しい。』

 

「何を!」

 

 ベイト中尉、いや今は大尉だと言っていたか。

 彼の提案など跳ね除ける、何を持って反乱軍に同調しろと言うのだ。

 

『まぁ聞け、何も俺達だって何の考えもアテもなく地球独立軍なんて掲げて立ち上がった訳じゃないんだ。お前もあのカルトの演説は聞いただろ。』

 

「あんな妄言を信じるとでも……!?」

 

『妄言とは言えない部分もあるだろ、宇宙世紀憲章もはっきりと検査すりゃ本物だって分かる。月の連中も流石にそこまで馬鹿じゃねえ、あのカルトにある程度の信憑性があったから渡したって事さ。』

 

「そもそもだ……!月の人間が渡したという証拠はないはずだ!」

 

『ハッ、お前んとこにはビスト財団の御曹司がまだいるんだろ?ソイツに聞いてみりゃ真偽が分かるはずだぜ。それにな、これには連邦軍の高官も関わってる、お前さんも良く知ってる人間がな。』

 

「なんだと……?」

 

 どう言うことだ……?これはバスクによる艦隊の造反というレベルではない、もっと大きな反乱だとでも言うのか……!?

 

『ガンダム強奪事件の時に俺達の上官だった男、ジョン・コーウェン中将こそが俺らのトップだ。お前らも中将には世話になった事があるんだろう?』

 

「な──、に……?」

 

 絶句する、あのコーウェン中将が反乱軍を率いていると、本当にそう言っているのか……?

 

『今頃はカルトに続いて世界に対して演説してるだろうぜ、ジオン残党にやりたい放題されてる柔な連邦政府に喝を入れる為のなぁ!』

 

 油断を誘った直後に攻撃を仕掛けられる。幾らニグレドの装甲がガンダリウム合金製とは言え直撃を喰らえばダメージは大きい、何とか防御するも各所の状況は相当酷くなった。

 

『テメェもバニング大尉がどう殺されたか覚えてるだろう!あの人は投降のフリをしたジオンに騙し討ちを喰らって死んだ!』

 

「だからってネオ・ジオンは関係ないだろう!」

 

 攻撃の応酬、だがお互い決め手に欠けている。

 

『宇宙人野郎どもはそのご身分も騙してやがったんだろうが!ダイクンの遺児だと周りを騙してなぁ!』

 

「根拠もなく!」

 

 モンシアがこちらに接近戦を仕掛ける、今はマズイ……下手に対応すると他の二人から挟撃を喰らう……!

 

「グリム隊長ー!」

 

「……ベアトリス!」

 

 高速機動で援護に駆けつけたアルベドがビームライフルを乱射し三人を遠ざける。

 

「隊長!一度退避を!」

 

「ダメだ!奴らを放っておけばコロニーがやられる!」

 

「グリム!ベアトリスの言う通りだよ!ニグレドのダメージは大きい、これ以上は危険だ!」

 

「カルラ……、くっ!」

 

 ベアトリスの援護を受けながら一度曙光へ後退する。

 

『逃がすかよ!』

 

『やめとけモンシア、目的は達成した。俺達の役割は真っ当したんだ。』

 

『ちっ、了解だ!』

 

 モンシア達もまた、アレキサンドリアへ帰投している。

 恐らくはコロニー内へ侵入しようとしているのだろう。

 

「曙光へ!整備クルーを大急ぎで準備させておいておくれよ!ニグレドの状況が酷い!」

 

 カルラはレーザー通信で曙光へ整備の要請をする。

 酷いものだ、ガンダムだと言うのに十数分にも満たない戦いでこれだけボロボロにされてしまった。

 

「僕も……甘えが過ぎる……!」

 

 自分の不甲斐なさに思わず機体内を殴りつける。

 決して勝てない相手では無かった、機体性能はこちらが上だし直撃させようと思えばやれた筈だ。

 だが、かつて敵対視されていたとは言え同じ戦場を駆けた仲間には変わりない、その彼らを討つという決意が僕には足りなかった。

 

「良いんだよグリム……アンタは間違っちゃいないさ。」

 

「だけど……今の状況じゃ……!」

 

「まだ諦めるんじゃないよグリム……!みんながいる、まだやれる事はある!」

 

「……あぁ。」

 

 そうだ、まだ僕らは負けたわけじゃない。

 コロニーの住民が犠牲になる前に何とか出来ればいいのだ。

 

「ジュネット!整備クルーがニグレドの修理に時間がかかるようならグノーシスで出る!準備を!」

 

《了解した、急がせる!》

 

 諦めない。

 そうだ、決して諦めたりはしない。

 ソーラ・レイで戦った時のように諦めなければきっと何とかなる。

 

 今はただ、それを信じるしかない。

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