例えばの話だ、ギレンの野望で敵の特別拠点がフラグなど無しで何処からでも攻め込めるとなったらどこから攻めたいと思うか。今回俺が直面したのは正にそんな感じの悩みだった。
まず結果から話そう、色々と歴史改変の為に動き新型量産機の開発という本編の流れをぶった斬るという偉業(悪行か?)を成し遂げた所までは良かった。
その後独立遊撃隊として新たに編成し直され、ヨハン・グリム伍長を新たに隊員に加え。予備機にジムとメガセリオンが二機ずつ、それの輸送用のミデアと人員が補充され、ゴップ将軍より与えられた権限により俺達は上層部に縛られず自由な戦線で行動できるようになったのだが、結果的にこれがあまり良い結果を生まなかった。
さて何処で戦おうかとなった時に当然だが意見はかなり出てきた。
欧州奪還を目指し、然る後にジオン軍最大拠点の一つであるオデッサ攻略を狙う欧州戦線への参加。同じく東アジア経由でオデッサを目指す東アジア戦線への参加。オーストラリア大陸のジオン軍の一掃を狙っているオーストラリア戦線への参加。太平洋奪還に向けたハワイ攻略部隊への参加。それとキャリフォリニアベース奪還に向けた北米戦線への参加。
うん、ギレンの野望でもそうだったけど敵拠点の多さにはちょっと辟易した。
だけどシミュレーションゲームならともかくこちらは現実だ、毎ターン部隊や資源資材が回復だとか負傷中になっても数ターンで復帰とかそんな便利なシステムは無いから敵を叩ければ徐々に有利になっていく筈なのだ。
そして原作をある程度知っているなら優先的に叩くべき拠点は限られている。
まず思いつくのはオデッサ、マさんも言っていたが半年くらいで後10年は戦えるとか言えちゃうくらい資源を送っていたという事実からして早めに叩いておけば10年が5年、3年と短縮してくれるかもしれない。残党とかも戦うのに苦労して行く筈だ。
次がキャリフォルニアベース、早めに北米か奪還できれば原作通りアムロ達がジャブローに降下出来ずに北米に降下したとしてもすぐ救援に行けるだろう。そうなると原作通りにガルマやランバ・ラル、黒い三連星を撃破出来なくなるしアムロの成長が無くなる可能性もあるがエースの撃破は戦線を圧倒して行けばいつかは何処かの部隊が倒してくれるだろうし、アムロはアムロで天才だし別の機会で成長していける筈だ。
そう思い俺はみんなにキャリフォリニアベース奪還を熱く語り、アーニャの納得もあり今まで通り中米から徐々に北米へ進軍を目指して行く事となった。
だが、事はそんな簡単には行かなかった。と言うか今までがスムーズ過ぎて感覚が麻痺していたが個々の局面では上手く行っても大局的な勝利と言うのは中々難しい。何処かの拠点を奪っても、隙を突かれ別の拠点が落とされたり大規模な攻勢を掛けられたりと一進一退の攻防が延々と続いたのだ。
正直MS量産が早まった事で拠点の制圧速度が原作より早まるんじゃないかと思っていたので結構ショックだった。
そんなこんなで月日は経って現在8月、そして現在地はなんと南米ジャブローだ。ここ最近は自分達の事で頭がいっぱいだったが戦線も一定の落ち着きを見せたので経過報告も兼ねての休暇という形で俺達はジャブローに赴いていた。
「あぁぁぁぁ!」
突如雄叫びを上げる俺、側から見たらヤバイ奴なのだろうが実際にヤバイ事になってるので今はどう見られても構わない。俺は散歩がてら宇宙船ドックに来ているのだがそこで目にした物が余りにも衝撃的なものだったのだ。
「ホ……ホワイトベース……本物じゃん……。」
目の前に鎮座しているのはあのホワイトベース、同型のペガサス級ではなくホワイトベースだ。今にして思えばホワイトベースもプロトタイプガンダムもこの時期にはもう完成してるしホワイトベースが此処にいてもおかしくないんだ。
そう思いながらホワイトベースを眺めていると色々と何か積み込んでいる、気になったので近くにいる士官に声をかけた。
「すみません、あの船は何を積み込んでるんですか?」
「ん?ホワイトベースのことか、あれならサイド7にこれから向かう予定でな。物資の搬入作業中だ。」
「えぇ!?」
そんな馬鹿な!?ホワイトベースが出航するのは9月の半ばくらいじゃなかったか!?本来後一ヶ月以上は後だぞ……!?
「いきなり叫んでどうしたんだ?頭でも打ったのか?」
そう言って悩んでいる俺の顔を士官が覗き込む、その顔を見て俺は再度叫ぶ。
「うわぁぁぁぁ!?」
「おおぉ!?なんだ!?どうした!?」
「貴方はウ……ウゥ……!ウッディ大尉!?」
俺が話しかけた士官の顔をよく見たらこの人ウッディ大尉じゃないか!さっきから驚いてばかりで脳の処理が追いつかない。
「あぁ、私はウッディ・マルデン大尉だが……何処かで会った事があったか?」
「ああ……いえ……その初対面ですけどその……。」
ヤバイ、どう言い訳しよう。と言うか適当に出まかせで会ったことありますとか言っておけば良かったか。
「んん?もしかしてマチルダの知り合いだったか?」
あっ、渡りに船だ。適当に話を合わせよう。
「あぁそうですそうです。以前ミデアで補給を受けた時にお会いして。素敵なフィアンセがいると写真を見せてもらいまして!」
「ほお……マチルダがそんな事を言っていたのか!アイツめ、俺の前ではそんな風は全く見せないと言うのに!」
凄く上機嫌になるウッディ大尉、すいませんそれ嘘なんですとも言えないし話を合わせておこう。
「やっぱり本人を前にすると恥ずかしいんでしょうね!」
「そうかな?ハハハ!」
よし、後はこのまま話題を逸らそう。
「それで、このホワイトベースはサイド7へ何を?」
V作戦のMS回収なのは分かり切ってるのだが何で知っていると言われても嫌なので誘導して答えさせよう。
「あぁ、V作戦は知っているな?あれで完成したMSを受領しに行くのだ。ジムやメガセリオンと言ったMSよりも遥かに高性能の試作MSが数機いると言う話だが。」
ガンダムも既に完成してるかぁ、今にして思えば現在普通にMS運用出来るほどのOSは完成してるから起動実験とか諸々の行程も本来の歴史よりスムーズに色々と進行しているんだろうか。こっち方面じゃ見かけなかったけど陸ガンや陸ジムも確か完成してるとか風の噂で聞いたしな。
「ジムやメガセリオンが量産され始めた今高性能MSの優位性などあまりないかも知れんがな。だが戦う兵士達にとっては一騎当千の力を持った存在が有ると知るだけでも有り難いというのも分かる、まぁ長たらしく言ったが結局我々はその時出来ることを精一杯するだけだな。」
「そうですね、自分達に出来ることを常に精一杯で。」
ホワイトベース隊とのジャブローの会話でもそうだったけど現実的な物の見方が出来る人だなぁと思った、結局俺達軍人はややこしく物を考えるよりもやれる事を全力でやるしかない。
「お会い出来て光栄でしたウッディ大尉、マチルダ中尉にもよろしくお伝え下さい。」
「あぁ、そう言えば君の名前を聞いていなかったな。」
「ジェシーです、ジェシー・アンダーセン。階級は少尉です。」
「そうか、マチルダにも君に会った事を伝えておこう。それでは準備があるのですまないがここで失礼するよ。」
はぁ、原作キャラとこんな所で会えるとはなぁ。と感慨深く思っていたがふと気づいた。普通にマチルダ中尉にもよろしく伝えておいてねと言ったが会ったことないの忘れてた……まぁ良いか何とかなるだろ。(ならない)
そして考えるべき事が少し増えた、ホワイトベースがこれからサイド7へ赴くと言うことは恐らく宇宙に出たホワイトベースはシャアの偵察部隊に追跡されるだろう。V作戦の調査自体は結構前からしてる筈だしホワイトベースに狙いをつけた点から出航の月日が変わっていても察知さえすれば追跡する筈だ。
そうなると展開に少し変更があるかもしれないけど大きな流れ的には原作通りアムロがガンダムに乗ってくれるだろうか。うーん……運が大きく絡みそうだよなぁこればっかりは。まぁさっき言われた通り自分に出来ることを精一杯やっておくしかないな、他人の心配したところでこればっかりはなるようにしかならないんだし。
結局の所、最早変わってしまった時代の流れに今更俺が介入した所で思った通りの結果が生まれる訳ないんだから。
そう自問自答にケリをつけた所でそろそろみんなの所に戻ることにした、ジャブローは広いんだけど広過ぎて道に迷いそうなんだよな。なので迷子になる前に散策は打ち切りだ、流石にこれ以上原作キャラとかに会える気しないし。
「おっ、シショーお帰り!」
「少尉、お疲れ様です。」
俺達に割り当てられた待機所に戻るとララサーバル軍曹とグリム伍長が既に戻っていた。
「お疲れ様、流石にジャブローは広いな。道に迷う前に戻ってきたよ。」
「迷う前なら良いけどさ、アタイは完全に道に迷っちまったよ。グリムがいなかったらこの歳にもなって迷子の案内放送される所だったよ。」
それはそれで面白そうだな、と笑っていたらグリムが溜息を吐く。
「当事者の僕は物凄い疲れたんですよ?道端でばったり出会した時のあのカルラさんのオーバーリアクション、最初はヘッドロックされたかと思いましたからね。」
「なんだい?アタイのハグがヘッドロックなんて大袈裟だよグリム!」
そう言ってまたハグという名のヘッドロックをかますララサーバル軍曹、グリムも我が部隊にすっかり馴染んでくれてウルっときた。
「感動してる……場合じゃ……ないです少尉……!た……助けて……!」
「役得だと思うんだなグリム、女性からハグなんて滅多にされることじゃないぞ?……っと、冗談はさておきアーニャやクロエ曹長達は?」
「エルデヴァッサー少佐達なら上層部の人に呼び出されてましたよ?何でもジオンから亡命してきた博士がいるらしくて丁度都合よく連邦のMS運用と整備に詳しい二人と話しが聞きたいとかで。ジュネット中尉の方は戦術データの受け渡しで技術開発部に出頭してます。」
「ふーん?んん!?ジオンの亡命者!?」
ジオンの亡命者なんて俺の知ってる限りそんなに多くない、というか博士と呼ばれる亡命者なんて一人しかいない訳で……。
「まさか……。」
蒼い死神……EXAMと呼ばれるシステムを開発したクルスト・モーゼス、彼がもうジオンから亡命してきたのか……?
俺は変わっていく新たな歴史の流れに戸惑いながらも、ウッディ大尉と話した時の言葉を思い出した。
「その時出来ることを……精一杯で……。」