機動戦士ガンダム 紺碧の空へ   作:黄昏仮面

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投稿が遅れて申し訳ありませんでした。私情が立て込んでいて投稿ペースが遅れ気味になってしまってます。
そして合計UAが2万を突破しました、お気に入り登録も300人以上して頂き感激の極みです。これからもマイペースではありますが投稿を続けて行きますのでよろしくお願いします。

本編はやっと序盤の区切りとなります。





第27話 北米戦線の激闘(後編)

 

「何とか……引いたか……!」

 

 ハァ、ハァと身体で呼吸するように大きく息を吸って吐く。アドレナリンなどが駆け巡ったのか正直自分でも良く分からずに動いていたがアーニャが助かって良かった。

 

「ジェシー!大丈夫ですか!?」

 

「俺は大丈夫だ……!それよりアーニャは?」

 

「こちらも所々小破していますが戦闘行動に問題はありません。それより凄まじい動きでしたが、もしかして貴方はヴァイスリッターのリミッターを外したんですか!?」

 

 言われてハッとした、計器を確認すると抑えられていた出力がフル稼働の状態になっている。どうやら無我夢中になりいつの間にかリミッターを外していたみたいだ。

 

「……みたいだな。けど何か普通に動かせてるから大丈夫だ。」

 

 OSが常にアップデートされているのと俺がブルーディスティニーに乗って、その性能を知った後にヴァイスリッターの動きに物足りなさを感じていた為、姿勢制御もしっかりしていて最初の時みたいに転倒するという事はなかった。

 

「それよりビッグ・トレーの援護に戻ろう、敵は奇襲みたいだからすぐさま増援が来るって事は無いだろうけど危険なのは違いない。」

 

「そうですね、戦況の把握もしなければなりませんし。一度戻りましょう。」

 

 俺達は急ぎビッグ・トレーまで戻る、道中あちこちで散発的に爆発音が聞こえる、どうやらあのエース部隊以外にもあちこちで奇襲が仕掛けられているみたいだ。

 

「こちら第774独立機械化混成部隊、アンナ・フォン・エルデヴァッサー少佐です。ビッグ・トレー、応答願います。」

 

「その機体はエルデヴァッサー少佐か!?それにヴァイスリッター……アンダーセン少尉もか!」

 

「コーウェン少将!?」

 

 どうやらこのビッグ・トレーに乗っているのはコーウェン少将のようだ、となると敵はこの戦線の総大将を真っ先に狙い撃墜寸前まで追いやっていたのか……自分達のことながら援軍が間に合って本当に良かった。

 

「閣下、戦況はどのようになっているんですか?」

 

「現在八箇所からなる駐屯地に対してジオンは一斉に攻撃を仕掛けている、被害の多い所に援軍を派兵してはいるが戦線が維持できない所も出来てしまっている。総軍では我らが有利だがこの状況だ、兵は混乱して本来の実力を発揮出来ずにいる。」

 

「一度数カ所の駐屯地を放棄して本陣の軍備を固めたら如何でしょう?守る場所が多いとそれだけ手が薄くなってしまいますし、士気の高い敵兵に押されてしまう可能性が高いです。」

 

 コーウェン少将は「うむ……。」と応え、数秒間を置くと口を開いた。

 

「その通りだな、現在ジオン兵の士気はかなり高い。先程の本陣奇襲も敵に知れ渡っているだろうし先程の赤い彗星の活躍もある、勢いはジオンの方にあると言っても過言では無い。だがこちらも敵の攻勢になす術も無しでいる訳にはいかん。」

 

 そう言うとこちらの機体に直接データを送信してきた、現在の連邦軍の配置図だろう。

 

「八つの駐屯地の内、本陣に近い四箇所だけ保持したまま方円の陣を敷くような形で防衛体制を整える。数の上ならこちらが有利だ、士気が高いと言っても攻撃が通らなければ意味がない。」

 

 成る程、確かにこれなら本陣の防衛もそうだが敵の奇襲にも素早く対応できる。物量がある連邦向きの防御陣形だ。

 

「それじゃ俺達は陣形を整える為に押されている味方の援護に向かうか。」

 

「えぇ、よろしいですねコーウェン少将?」

 

「あぁ、よろしく頼む。今は君達が頼りだ。」

 

 期待に応える為、俺達は装備を補給してから再び戦線へと舞い戻る。陣形を完成させる為には主軸となる四つの駐屯地が機能していなければならないが、その内第三駐屯地は現在も敵の猛攻を受けているのでそこの援護に向かった方が良さそうだ。アーニャにそう伝えると彼女も同意見だったので俺達は第三駐屯地に向けて移動を開始する。

 

「見えた!あそこだ!」

 

「ザクが4機にグフが3機!更に敵戦車多数です!」

 

「ザクと戦車は任せろ、アーニャはグフの狙撃を!」

 

 ヴァイスリッターの今の性能ならザク相手なら数機でも何とかなる、近接向けのグフはアーニャのフィルマメントに任せれば二機だけでも何とかやれる筈だ!

 

「よし!こっちだ!」

 

 ザクへ向けてマシンガンを放ち牽制をする、その直後にフィルマメントのビームライフルがグフへ向けて放たれるも当たったのは一機の片腕だけに留まった。散開して行くグフと呼応してザクの弾幕がこちらに放たれる。だがこちらの機動性もあり難なく回避してザクの懐に潜り込みヒートサーベルで斬りつける。

 

「まずは一機!」

 

 敵もこちらの機体性能が高いと分かると一気に固まり連携を取りながらの攻撃に移った、こうなると簡単には突破出来そうにない……と思っているのか?

 

「アーニャ!」

 

「分かっています!」

 

 出力を上げたフィルマメントのビームライフルがザクを二機貫通させた、固まっているのなら逆にフィルマメントの格好の餌食だ。

 

「よし!一気にこのまま……。」

 

「……!ジェシー!敵の増援です!」

 

 レーダーに反応が現れる、これは……更に十機近いMSが増援に現れたようだ。敵も敵でここで大局を決めたいのか……!

 

「くっ……!流石にこの数はヤバイぞ!」

 

「味方が体制を整えるまで何とか持ち堪えたいのに……!」

 

 焦る俺達に突如通信が入り込む。

 

《こちらコア・イージー、味方部隊へ今から我々は敵の群れに対して爆撃を仕掛ける。味方部隊は散開を……あれは……ヴァイスリッター!?》

 

 上空に目を向けると08小隊のアニメで見たことのあるジェット・コア・ブースター、名称がまちまちでコア・イージーとも呼ばれている戦闘機がいた、それに……この声は!?

 

「ジュネット中尉か!?」

 

《やはりアンダーセン少尉、目が覚めていたのか!……すまないが状況が状況だ!爆撃に注意して散開せよ!》

 

「一旦引きますよジェシー!」

 

「あぁ!」

 

 後退すると同時に数機のコア・イージーにより爆撃が開始される、あちこちから爆撃とは別の爆発が発生している。どうやら結構な数の敵機を仕留められたようだ。

 

「これで何とかなったか……!?」

 

「油断してはダメですジェシー!」

 

 その声と同時にロックオンアラートが鳴り響く、爆撃を回避した敵機が此方に狙いを定めていた。

 

「ヤバイ……!直撃コースだ!」

 

 今から回避……いや反撃を……!駄目だ、間に合わない!そう思った次の瞬間。俺を狙い撃とうとしていた敵機が爆散した。

 

「な、なんだ!?」

 

 アーニャのフィルマメントかと思ったが別方向からの攻撃だ、味方の援軍が来てくれたのか!?

 

「すまないねシショー!駆けつけるのが遅れたよ!」

 

 この声は……!

 

「カルラ・ララサーバル軍曹!ヨハン・グリム伍長!只今を以て原隊復帰させて頂くよ!」

 

「ララサーバル軍曹!?それにグリムか!」

 

「ヴァイスリッター、やっぱり少尉だったんですね!」

 

 2機のメガセリオンには何とララサーバル軍曹とグリムが搭乗していた、この戦線にいるとは思っていたがまさかこんな所で合流できるなんて。

 

「ララサーバル軍曹、再会したばかりですが現在の戦況はどうなっていますか!?」

 

「この新型は隊長かい!?そうさね……私達もはっきり言って戦場が混乱し過ぎてよく分からないってのが現状だね。敵の奇襲で指揮系統はバラバラになっちまったしミノフスキー粒子濃度も高くて碌に通信も出来やしなかったからグリムと二人で味方を探しながら敵を倒してた所だったんだよ。」

 

 となるとこの駐屯地の戦況は思った以上に悪いみたいだ、敵もこの地点が薄いと分かったら重点的に攻撃を仕掛けてくるだろう。

 

「先程のジュネット中尉達による航空隊の爆撃で敵は及び腰になっている筈です、この時間を活かして何とか戦況を回復させましょう。」

 

「了解!」

 

 俺達は陣形を組みながら敵を警戒し進軍する、纏まった部隊と合流出来れば良いが……。

 

「少佐!あそこに味方部隊が!」

 

 グリムが示す方角を確認するとコーウェン少将とはまた別のビッグ・トレーとMS部隊がいた。どうやら何とかこの駐屯地の司令官はまだ生きているようだ。

 

「こちら第774独立機械化混成部隊、応答願います。」

 

 アーニャがビッグ・トレーに向けて通信をすると司令官らしき人物の声が聞こえてきた。

 

「君達はあの時の……援軍に駆けつけてきてくれたのか。」

 

 この声……以前中米の市街地で戦っていた時の司令官の声だ。どうやら彼もまたこの戦線に招集されていたようだ。

 

「司令、お久しぶりです。現在私達はこの第三駐屯地の維持のため援軍に駆けつけました。コーウェン少将のビッグ・トレーを中心に第一から第四駐屯地で囲うように方円の陣を敷き、敵の攻撃を防ぎます。」

 

「成る程、君達がここに駆け付けたという事は我々の駐屯地が一番被害が高いようだな。現在散らばってしまった味方部隊を集めてはいるのだが結果は芳しくない、君達も味方部隊を探してもらうより此方の援護に回って時間を稼いで欲しいのだが構わないかな?」

 

「……そうですね、下手に動いて敵の攻撃に耐えられなくなる可能性も考慮するとその方が良さそうです。皆さん、私達はこのビッグ・トレーを防衛しながら敵の進軍を防ぎます。良いですね?」

 

「了解!」

 

 敵がどのように動くかは分からないが一番防備の薄いこの地点を狙って来る確率は高い、油断せずに慎重に守らなければ……。

 

 

ーーー

 

「戻ったかグレイ少尉。」

 

 非常用の合流地点に帰還したイフリートとグフを迎え状態を確認する、目立った損傷も無く弾薬の補充が必要なくらいだ。あの敵が相手でも殆ど損傷せずに帰還するとは……やはりニュータイプと言う力なのだろうか。

 

「申し訳ありませんでしたアズナブル少佐……。」

 

 先程の撤退命令を聞かなかった事への謝罪か、それとも。

 

「どうやら仇は討てなかったようだなグレイ少尉。」

 

「……はい。」

 

 こちらの方が正解のようだ、復讐したい相手が目の前にいてそれが討てなかったというのは復讐する側からしたら非常に歯痒いだろう。それは私もよく分かっている。

 

「そう気を落とすなグレイ少尉、弾薬の補充とガルマ大佐との連絡がつき次第また攻撃を仕掛ける事になる。その時に再度探せば良いさ。」

 

 とは言ったものの、此処に移動してからというものガルマに連絡が全くついていない。撃墜されたのかとも思ったが補給部隊とは連絡が通じたのでどうやら違うみたいだ。

 

「補給部隊が来るまで身体を休めておけ、グレイ少尉はともかくドムの2人はそろそろ体力的に限界だろう。夜も更けてきた、夜襲を仕掛けるのも一考だが一先ずは小休止だ。」

 

 何れにせよガルマと連絡がつかない事には独断で事は進められない、奴は何をやっているのだ?

 

 

ーーー

 

 一夜が空け、朝日が昇る。敵の夜襲が無いか心配していたが驚くほど何もなかった、そのおかげで無駄に体力を消耗せずに済んでよかったのだが。

 

「アーニャ、この戦場どうなると思う?」

 

「消耗戦になれば敵はいずれ物量の面から後退して行く筈です、そこまで持ち込めれば我々の勝利ですが……問題はジオンの奇襲が無いかですね。」

 

「ジオンと言えば三度の飯より奇襲とか夜襲とかが好きな連中ばっかりですからねえシショー。昨晩夜襲が無かった事が驚愕だよアタイには。」

 

 それは確かにそうだ、数で劣るジオンなら何かしらのアクションはあってもおかしくはないが……いや、逆に既に何か手を打っている可能性が?

 そう思っていると遠くから信号弾が放たれていた、これは……。

 

「これは……連邦の信号弾ではありません!」

 

 アーニャの声で全員が警戒態勢に入る、放たれた信号弾は三色。何を意味するのかはこちらでは分からないが敵に何らかの行動が起きるのは確かだ!

 と思っていたのだが、それから一時間が経過したが何も起きていない……これはまさか。

 

「撤退信号だったのか!?」

 

「分かりません、しかし敵がこちらに攻撃を仕掛けてこない所を見ると一時的な撤退か或いは軍を移動させたかのどちらかですが……。」

 

 そう話していると駐屯地の司令官から通信が入った。

 

「アンナ・フォン・エルデヴァッサー少佐!コーウェン少将から急ぎ本陣に来るようにとの緊急命令が下った、指揮官クラスは全員だ!」

 

「なんですって……!?」

 

 何か起こったのか!?理由は分からないが取り敢えずはビッグ・トレーに向かうしかない、急ぎ俺達は本陣は向けて移動を開始した。

 先程のジオンの信号弾といい何かが起こっているのは間違いない、それが何なのかまでは少将に聞かないと分からない。ビッグ・トレーに着いた俺とアーニャはビッグ・トレー内の会議室に連れて行かれた。其処には既にこの戦線の将官クラスが集まっていた。

 

「この戦線の主たる人間は集まったようだな……、全員落ち着いて聞いて欲しい。」

 

 場が一斉に鎮まり、静寂だけが空間に満ちていた。そしてコーウェン少将が口を開く。

 

 

 

「オデッサ攻略中の我が軍に対して……ジオンが核攻撃を行い、その爆発に巻き込まれて…………レビル将軍が戦死なされた。」

 

 それは……、それは連邦軍にとって取り返しのつかない最悪の出来事だった。


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