機動戦士ガンダム 紺碧の空へ   作:黄昏仮面

36 / 126
第35話 裁かれし者達(後編)

「戦況はどうなっている!」

 

 ゴップ将軍の旗艦であるビッグ・トレーの第一艦橋に大声が響き渡る、声の主は総大将であるゴップ将軍本人だ。

 

「現在多数の敵MSとの交戦を確認中!恐らくこの会談を阻止しようと目論むジオン公国軍と思われます!」

 

「当たり前の事を報告するな!この日に備えて防衛陣を敷いているのに何故こんな混乱が起きているのだ!」

 

「そ、それが……連邦製のMSの強襲に対し前線で多くの味方が混乱したのもあり同士討ちの発生も多数ありまして……!」

 

 あの機体はまさしく連邦製のMSである、IFFが書き換えられていなかったり視覚だけの情報に頼っていたりすれば敵と認識するのは難しい。ネオ・ジオンからは連邦MSだと思われ、連邦軍からは味方だと思われれば攻撃を仕掛けるだけで戦線を崩すのは容易である。そうで無くてもあのMSは連邦軍の中でも高性能機なのだから……。

 

「叔父様、今は怒鳴っていても仕方ありません。通信兵、ミノフスキー粒子は散布されているのですか?」

 

「い……いえ!敵は殆どMSで母艦と思われる物も見当たりませんのでミノフスキー散布濃度はそこまで高くはありません!」

 

 それならまだ手はある、まずは戦況把握と動かせる人員の把握が必要だ。

 

「連絡の取れる部隊に敵の機種と総数、それに対しての自軍の状況を報告させてください!ネオ・ジオンのダブデにも同様の連絡を!……それからガルマ大佐に通信を。」

 

 現在ガルマ大佐とラル大尉は母艦であるダブデ級に戻っている、状況が状況なだけに同じ艦艇に居ない方が敵の思惑に対して有効であるからだ。

 

「私だ、エルデヴァッサー中佐。用件はなんだ?」

 

「ガルマ大佐、敵は恐らく我が軍のMSを奪取し、それを用いて攻撃開始する事で両軍を混乱させてそれに乗じて攻撃を仕掛けて来ていると思われます。公国軍と思われますが敵の戦力予想はできるでしょうか?」

 

 この北米戦線のネオ・ジオンに賛同しなかったジオン公国軍の兵力は恐らくガルマ大佐もある程度の把握は出来ている筈だ。事前に報告は受けているが念には念を入れて再度確認しておく必要がある。

 

「キャリフォルニアベースやその他我々の指揮下にあった基地からの離反者はおよそ400名弱、内半数以上の300余人は既にキャリフォルニアベースからのHLV打ち上げにより地球より離れている。残りは100名にも満たないし離反者が持ち逃げしたMSも精々三個小隊レベルで大半がザクだ、……だが報告されている敵のMSにはグフや北米には配備されていない筈のドムまで確認されている。先日情報を送った我が軍を離反した新型3機は確認されていない、それとはまた別の機体だと言う事だ。」

 

 北米ネオ・ジオン軍がその全ての基地を管理出来ているかは正確では無いが、それでも彼らが認識していない筈のMSまで実戦に投入されている……それが意味する事は……。

 

「エルデヴァッサー中佐、これはネオ・ジオンから離反した者だけの散発的な攻撃行動では無い。恐らくは……。」

 

「えぇ、ギレン・ザビ。或いはキシリア・ザビの特殊部隊を擁した計画的な軍事行動だと思われます。」

 

「地上方面軍は実質キシリア姉さ……いや、キシリア・ザビの直轄の部隊が多いから恐らくはあの人の部隊だと思われる。それにあの人が擁する特殊部隊はザビ家の者すら完全には把握出来ていない。この攻撃部隊の使っているMSも北米の基地を介さずに直接配備された物だろう。」

 

 鹵獲した我が軍のMSによる奇襲でまず此方を混乱させ、その後新型MSでこちらの兵力を削っている間に陸戦型ガンダムによる本営への強襲……。これがジムやメガセリオンを使用したのであれば此処まで上手くは行かなかった筈だ。

 実際に連邦のMSを利用した攻撃を想定していなかった訳ではないが流石に東南アジア方面に多数配備されている陸戦型ガンダムを利用してくるとは思っていなかった。しかもあの機体は前にジェシーがテストし暴走した機体だ。未だに実戦配備されていたなんて……。

 

「フロイライン……いやエルデヴァッサー中佐よ、どう対処するべきだ?MSでの実戦経験の多い君ならどう動く。」

 

 叔父様の声でハッとする、今はこの場面をどう打開するかが重要だ。本来であればMSを呼び戻しキャスバル総帥や叔父様の護衛に就かせるべきだ。しかし敵もそれは把握しているだろうし、特殊部隊と言うのであれば敵の練度は高い。私達連邦軍もMSを量産開始したとは言えジオンのOSと比べればまだまだパイロット自身の腕前に頼る部分が多いのが現状である。

 ここでもしも兵力を分散した場合、敵はその点を突いて戦線を突破してくる可能性は高い。今やるべき事は……。

 

「戦線はこのまま維持します。敵のMSに対しては1対3を心掛けろとの指示を、兵力は此方が勝っています。多数で掛かれば此方が優勢です。」

 

「此方の護衛はどうする!?キャスバル総帥が万が一撃破されたらこの会談は破綻するのだぞ!?」

 

「あのMSは確かに脅威です!しかし今兵力を分散したら敵の思う壺です!敵は此方の練度を正確に把握し攻撃を仕掛けて来ています。もしも此方の虚を突かれてしまえば今は1機で済んでいる本営への敵が幾つにも増えてしまいます!今は耐える時です……将軍!」

 

 そう……耐えなければならない。1機と言えどあのMSはララサーバル軍曹やグリム伍長のメガセリオンを一瞬で行動不能に追い込んだ機体だ、如何に赤い彗星とジェシーと言えど勝てるかどうか……でも信じるしか無い……今はただ……。

 

 

 

ーーー

 

 俺の世界で、実力差があり過ぎて何が起きているか追いきれない場合によく使われたいた言葉に「ヤムチャ視点」と言うものがある。なんでこんな時にそんな言葉が出てくるのはかと言えば……今の俺はまさにヤムチャ視点で物を見ているからである……。

 

「くっ……!同じEXAMだと言うのに奴を追いきれない……!」

 

「ええぃ!不快なプレッシャーめ!墜ちろ!」

 

 ニュータイプ抹殺の機体として本領を発揮しているニムバスの2号機にユウやシャアは劣勢ながらも反応しきれていると言うのに俺はその2人の動きすら追えていない。エースパイロット同士の戦いがここまでレベルが高いとは思ってなかったし、この戦いの中で2人の動きはどんどん進化してすらいるのだ。流石はアムロのライバルと、シミュレーションではアムロのガンダムに勝てた男だ。

 

「とは言え流石に棒立ちのままじゃいけないだろ……!」

 

 パチンと両頬を叩くようにノーマルスーツを叩き意識を集中させる。幾ら手も足も出ないからって本当に手も足も出さないのでは無能極まれりだ。この状態でも援護はできる!

 

「せめて頭部……EXAMさえ潰せれば何とかなる筈だ。」

 

 ビームガンを構え2号機を捉えようとするが……やはり狙いが定められない。動きが異次元過ぎるのだ、下手に撃てばユウやキャスバルに誤射しかねないのが怖い。

 

「なら……せめて2人が何とか動きを止めてくれるのを待つしか無いか……!」

 

 自分の弱さが歯痒いが今はそれくらいしか役に立てそうにない。彼らが一瞬でもブルーを止めてさえくれれば其処に一点集中して機体を狙い撃つ、俺に出来るのはそれくらいだ。

 

 

ーーー

 

『ユウ……』

 

 今はもう聴き慣れた少女の声、この機体に縛られているニュータイプの少女マリオンの声だ。

 

「マリオン……か?」

 

『ユウ……あの人を止めて……』

 

 それはEXAMの殺人衝動を呼び起こす声では無く、同じくEXAMに縛られた男を哀れむ悲壮な声。

 

『もうあの人はニムバスじゃない。私を、EXAMすら飲み込んだ博士の妄執(パラノイア)そのもの。解放してあげて……っ!』

 

 クルスト・モーゼス……カムラ大尉が言っていた博士がニュータイプという存在そのものを恐れていたと言う可能性。彼が亡くなった今ではその答えは分からないが彼の狂気がこのEXAMを通して俺にも伝わっていた。

 

「止めてやる……、力を貸してくれマリオン!」

 

 MSの出力を最大にし、ニムバスのブルーへと攻撃を開始する。リミッターの差異はあれど基本性能は同じなのだ、負ける訳にはいかない!

 

 

ーーー

 

「連邦のパイロット……更に動きが上がっているのか?」

 

 こちらが何とか対処している中で先程よりも動きが増している、見たところ同型機であるからあの機体と同等の動きが出来てもおかしくはない……だが。

 

「流石に本物の化け物と言わざるを得ないな、まさかMSで此処までの動きが出来るとは……。」

 

 MS開発ではジオンの方に一日の長があると思っていたが、連邦もノウハウさえ一度獲得してしまえば財力に物を言わせて此処までの高性能機を生み出せると言うことか。しかし……それよりもあの機体から放たれる不快な感覚の方が気になっていた。

 

「まるで剥き出しの刃を首に突き立てられているような感覚だ……、殺意がヒシヒシと伝わってくるのが分かる。」

 

 そう思っている最中にも敵は異常な動きで此方へ攻撃を仕掛けてくる、射撃で牽制したかと思えば他の機体であれば近接攻撃への挙動を取っているであろう場面で既に加速して此方へサーベルを振りかざしてくる。これがアンダーセン中尉の言っていたニュータイプの動きを再現しているという事なのだろうか。

 

「しかし……!父が掲げたニュータイプという存在がこんなキリングマシーンだと認める訳にはいかんな!」

 

 如何にニュータイプと言えど予測もつかない行動を取られれば僅かながらの隙が生じる筈だ、敵の攻撃を紙一重で躱すと同時にグフで敵に蹴りを入れ姿勢を崩す。

 

「今だ!連邦軍のパイロット!」

 

 声を掛けるまでもなく、既に攻撃行動に移っていたガンダムと呼ばれる機体が敵機にミサイルを撃ち込む。

 

「やったか……!?」

 

 

ーーー

 

「決まった……のか!?」

 

 狙撃のタイミングを狙っていた最中、シャアとユウの連携で2号機にミサイルが直撃した。煙幕で確認出来ないがあれは幾ら何でも避けようがない、あれで問題が無かったら本物の化物だ。

 徐々に煙幕が晴れていきブルーの様相を映し出す……そこには流石に無傷とは行かず右腕は全損、機体自体も破損が目立ち剥き出しになっている箇所から火花が散っている所もある。

 

「私は……ニュータイプを抹殺する……EXAMの騎士……ニュータイプヲ……抹殺スル……ニュータイプを……グァァァァっ!」

 

 半壊している筈の機体だと言うのにとてつもないプレッシャーを放っているのが分かる、これがEXAMシステムに込められたクルスト・モーゼスの狂気だと言うなら俺が思っていた以上にニュータイプと言う存在に恐怖していたのか……。しかしこの状況、渾身の一撃だっただけにキャスバルやユウの疲弊が大きい……マズいぞ!

 

「ニュータイプに……裁キを……!グッううう……私は……マリオンを救い……殺ス……マリォォォン!」

 

『ニムバス!もう……やめて……!』

 

 残された左腕にビームサーベルを構え、ユウのブルー3号機へと猛進して行く。このままではユウが危ない!

 

「くそっ!やらせはしない!」

 

 メガセリオンの最大戦速で一気にニムバスのブルーへと近づこうとするがこのままではギリギリ間に合わない!だがビームガンの射程範囲にはギリギリ入っている、せめてこれで頭部を直撃させれば!

 

「ビームの減衰率予測……よし、エネルギー出力をギリギリまで高めれば……!当たれえぇ!」

 

 神経を研ぎ澄まし正確に狙い撃つ、アーニャ程の射撃の腕前はないがそれでも今まで培ってきた経験がある。外しはしない!

 そしてビームは間一髪のところでニムバスのブルーの頭部に直撃し機体は沈黙した……何とかやれたようだ、ホッと一息をついた俺だったが……。

 

 

ーーー

 

『ニムバス……!』

 

 それはかつて聞き慣れていた少女の声、暖かく包み込むかのように私に伝わってきた。もう幾許も持たないであろう機体の中で、私はある意味で平穏に満ちていた。

 

「マリオンか……。今更の話だが私は実は君に嫉妬していた。」

 

『嫉妬?』

 

「あぁ、MSに乗ったばかりの少女が時も経たずにベテランだと自負してした私に追い付いて行くのが訓練の度に分かっていく。最初は素晴らしいと思っていたが日に日にその才能に嫉妬を覚えることもあった。」

 

 騎士として彼女をエスコートして行こうなどと烏滸がましい事を最初は思っていたものだ。だが彼女はそれを笑わずによろしく頼みますと微笑んだのだ、これが時が経ちすぎていれば憐れみを向けられたのだと彼女の事を恨んでいたかもしれない……博士のように。

 

『でも貴方は私を守ってくれた。そうでしょう?』

 

「守れてなどいないさ、こうして生身を通さず思念で会話をしなければならない状況がどうして守れていると言える……。」

 

 そうだ、彼女はまだEXAMという檻に囚われている。彼女を解放せずして何の為の騎士と言うのだ……。

 

「すまないなマリオン、私が君の役に立てるのはこれで最後のようだ。」

 

 残された力で機体の操縦桿を強く握る、機体も私もこれが最後の一撃となるだろう。

 

『やめてニムバス!……お願い!』

 

「嘆く事はないマリオン、EXAMを……いや君を通して私は【刻】を見た。この命もまた何処かに巡る……その巡りの先でまた逢おう。」

 

 メインカメラはもう見えないが私の中に感じるマリオンの意思が討つべき(EXAM)を明確に映し出した。これが私からの最後の餞別だ、幸せになれ……マリオン。

 そして放たれた一撃が彼女を解放したと確信した時、私の意識もまた永遠へと旅立った。

 

 

ーーー

 

「第一守備隊!敵の撃破を確認!」

 

 通信兵からの報告を聞くと同時にテーブルに配置された戦況図を書き換える。

 

「これで南からの敵の侵攻は止まりました!第一守備隊は西へ向かい第三守備隊と敵の挟撃を!叔父さ……いえ将軍、そちらの戦況は!?」

 

「むぅ……少し待て、全く戦場の指揮など久々だと言うのに……。北部を守っている第二守備隊は損害軽微ではあるが現在も敵と交戦中だ、恐らく層は此処が一番厚そうだな。コーウェン少将そちらはどうだ?」

 

「東部は混乱からの立て直しがスムーズに行ったこともあり戦線は優勢となっています、しかし此方も敵の新型が少数含まれている事もあり多少の苦戦はしているようですな。」

 

 戦闘のレベルに対して将軍二人の指揮とネオ・ジオンの援護もあり壊滅的な危機は何とか去りそうだ、後はジェシー達が戦っているMSさえ何とかなれば……そう思った時だ。

 

「アンダーセン中尉より通信!連邦製敵MSの撃破に成功!キャスバル総帥も健在とのこと!」

 

 通信兵の報告で司令室が歓声に包まれる、これで本当に死地は脱した。後は油断せず各個撃破していけばいい、次に打つべき手は……。

 

「敵も本陣の奇襲が失敗したと気付けばこのまま一矢報いるつもりで突撃をするか、或いは撤退を開始する筈です。各部隊は現状を維持し敵の撃破を、敵が撤退する場合は深追いはしないように通信を。」

 

「敵を追撃しない……?そうか、敵を追跡するつもりなのだなエルデヴァッサー中佐。」

 

「そうですコーウェン少将、これだけの部隊とMSです何処かに母艦か或いはネオ・ジオンも知らない拠点がある可能性は非常に高いです、それを追えれば不穏分子の掃討も捗るはずです。」

 

「その通りだな。よし、偵察機の発艦準備をさせろ!敵が撤退を開始したらミノフスキー粒子を散布し敵を撹乱させながら追跡を行う!」

 

 コーウェン少将の指揮でテキパキと段取りが進んで行く、私の出る幕はこれ以上無さそうだ。

 戦線も落ち着いて来たので使われていない通信装置を借りてジェシーへと通信を入れる。

 

「ジェシー。私です、聞こえていますか?」

 

 

ーーー

 

「あぁ、アーニャ。聞こえてるよ。」

 

 聞き慣れた少女の声に、安堵を覚える。緊張感の無い声からして恐らく大勢はほぼ決したのだろう。

 

「良かった、怪我はありませんか?」

 

「俺の方は特に……キャスバル総帥も多分大丈夫だと思う。」

 

「多分では安心しきれませんよジェシー?そちらはどうなっているんです?」

 

「あー、そうだな。まず俺のメガセリオンは損傷しているが殆ど問題ない。キャスバル総帥のグフも小破している箇所もあるが致命傷は負っていない。ただ援護に駆けつけてくれたユウ中尉のブルーディスティニー3号機は頭部が破壊された。」

 

「……?待ってくださいジェシー、ユウ中尉とブルーディスティニー3号機についてはこちらは報告を受けていません。……援軍が来ていたのですか!?」

 

 言われてふと気付いた、状況が状況だったし此方からは連絡入れてなかったんだ。ユウも恐らく単騎で追跡してきただろうから彼の部隊だってこっちに駆けつけているのかどうかも知らないんだ。

 

「あー、そう言えば連絡する暇も無かったな。ユウ中尉も同じだろうし報告するの忘れてたよ。まぁ彼が来てくれなかったら俺たちはどうなっていたか分からなかった。……詳しい戦況報告は後でするよ、今は回収班を呼んで貰えると助かる。みんなマトモに動けそうにないからな。」

 

「了解しました、今から回収に向かわせます。」

 

 あの異常な強さだったニムバスのブルーに対して大破も無く倒せたと思っていたが、ユウが乗っていたブルーが最後の一瞬で頭部が破壊されてしまった。まさか最後の最後であんな攻撃をしてくるとは……そう思いながら爆散しバラバラになった2号機に目を向ける。

 最後の一瞬、ニムバスのブルーは大破していたにも関わらず、寸分の狂いもなくユウのブルーの頭部だけをサーベルで破壊した。キャスバルのグフが援護に駆けつけ撃破した事で難は去ったが心がモヤモヤしている。

 

「なぁ、ユウ中尉。何で奴は最後に頭部だけを正確に狙えたんだろう?」

 

 中破したユウの機体に寄り添い、接触回線で問いかける。

 

「……分からない。だがあの一瞬、俺は避けられる余裕があったにも関わらず機体が動かなかった。」

 

「マリオンの意志……だったのかな。」

 

「君もマリオンの声を聞いていたのか……?……確かにそうかもしれない、あの時ニムバスの攻撃からは敵意は感じられなかった。」

 

 敵意を感知して動くEXAMだからこそ敵意の無い攻撃に対処しきれなかった……簡単に理由をつけるならそんな感じなのだろう、ただ俺にはそんな風に解釈は出来なかった。

 

「ユウ中尉はこれでマリオンは解放されたんだと思うか?」

 

 全EXAM搭載機の消失、これで事実上クルスト・モーゼスが生み出したEXAMは全て消え去った事になる。変わった歴史の中で新たに生み出されていない限りは。

 

「あの時……空に還って行く少女の幻影を見た。彼女は大丈夫だろう。」

 

 会った事もない少女だが彼女の優しさは一度機体を通して感じていた、せめてまた戦いに巻き込まれないことを祈るが……。

 そして俺は彼女を助けたニムバス・シュターゼンと言う男にも敵ながら少し思う所を感じた、俺の知ってるゲームでの彼はEXAMやマリオンに執着した狂人みたいなイメージではあったが、あの一撃に感じた意志はそれとは別の……護りたい者を護る為の攻撃に感じたからだ。思い違いといえばそれまでかもしれないが、騎士を自称した彼の生き様にヴァイスリッターを託された俺もまた護るべき者のために命をかける時が来たら彼のように出来るのかと……。

 

 上を見上げ、晴れ渡る空を見つめる。天使のように羽ばたいていった彼女の意志は、空を越えて宇宙(そら)へと戻れたのだろうか?EXAMという一つのシステムに関わった者として、そう思いながら感傷に浸るのであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。