機動戦士ガンダム 紺碧の空へ   作:黄昏仮面

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第03話 初陣

 ジャブローの一件から一週間近くが経ち、俺達は『連邦軍 第774独立機械化混成部隊』という名称が与えられアーニャの判断で現在中央アメリカに位置するメキシコのとある山間部にいた。

 

「しっかし俺達の部隊の数字だけどありゃニホン語から来てるのか?あそこで774って数字は名無しって意味になるんだが。」

 

「あら、中々博識なんですねジェシーは。叔父様は『ナナシノゴンベエ』がどうだと言っていましたが……恐らくは名前の無い、遠回しに言えば存在の無いと言ったニュアンスを込めたんじゃないでしょうか?私達の活動的にそう言う皮肉を込めるのも叔父様らしいですけど。」

 

 通信傍受を避けるためにMSから伸ばされた有線のケーブルで会話をする。

 そう俺達は今MSに乗っているのだ、まぁMS運用部隊なのだからMSに乗っているのは当たり前の話なのだが……ここに至るまでの経緯をふと思い返す。

 

 

ーーー ーーー

 

 

 遡ること数日前、ジャブローから離れた中継基地その整備前ハンガーに俺とアーニャは足を運んでいた。

 

「なぁアーニャ、もしかしてあれが俺達の乗るMSか?」

 

「はい、何とか二機揃えてもらいました。」

 

 目の前に鎮座しているMS、初めて生で見るMSにかなりの感動を覚える。夢にまで見たガンダム世界が本当に目の前に存在しているのだからここで感動せずして何にするのだとガノタ魂が燃えていた。ただちょっと気になる所がある。

 

「これって片方は殆どザクだよな?」

 

カラーリングは連邦特有の白を基準にした物で頭がジム系、恐らくはザニーの物なんだろうけど頭以外はザクそのままの形状の機体が一機あった。

 

「えぇ、もう片方は型式番号RRf-06 通称ザニーと呼ばれるザクを模して作った試作機で、貴方の前にあるのはそのザニーの頭部を乗せただけのザクですね。通常のザクだと味方部隊に誤認される可能性があるのでザニーの頭部を乗せてあるみたいです。」

 

「ジム頭……いやこの場合はザニー頭か、ちゃんと動くのか?」

 

「試運転では問題無いと言っていましたが……元々ザニー自体も不具合が多い機体ですから安全は保証出来かねますね。こればかりは仕方ありませんが。」

 

「まぁちゃんと動くか、戦えるかってのが俺達の任務だからそれは実戦で確かめるしかないか。」

 

 そう話し込んでいると、近くの整備兵が俺達に渡される輸送機や資材などの説明にやってきた。

 

「えーっと貴方達が774部隊の人ですか?」

 

ニット帽で顔が隠れていたので分からなかったがどうやら俺とそこまで変わらない若い女性の整備士のようだ、ルウムで主力艦隊が壊滅して人材が足りなくなってるとは聞いていたけど。

 

「えぇ、第774独立機械化混成部隊。隊長のアンナ・フォン・エルデヴァッサー少佐です。 」

 

「上層部より貴方達に渡される物資の一覧です、ご確認ください。」

 

 そう言うと整備兵は電子端末を渡し、アーニャはそれの確認を始める。

 

「ミデア級一隻、ザニー試作機一機、ザニーヘッド一機、ホバートラック一輌……その他資材と食料。」

 

「随分豪勢な品揃えだな。だけどミデアやホバートラックあっても乗れる人がいないんじゃないか?」

 

「あのー、その件なんですけど。」

 

 話を遮るように整備兵の女性が口を開いた。

 

「本日付けより774部隊のMSの整備、そしてミデアの操縦を仰せつかりました。クロエ・ファミール技術曹長であります!ゴップ将軍よりお二人のサポートをしろと言い渡されております!」

 

 ビシッと敬礼を返したクロエと名乗る女性に俺達も敬礼を返す、兵を貸すのを渋っていた割に部隊が決まったとなるとサポートは惜しまないのは好感が持てるな。やっぱ結構いい人だぞあの将軍。

 

「よろしくお願いします、クロエ曹長。そうなるとこのホバートラックは……?」

 

「こちらも確か担当の方がいると聞いていますが……?」

 

 と話しているとこちらに猛スピードで走ってくる男性が現れた、展開的に恐らく彼がそれっぽいな。

 

「ハァ……!ハァ……!す、すまない!着任が遅れた!」

 

 汗をビッシリとかきながら肩をゼーゼーと息をする男性、俺達より少し年上っぽいがそれでも恐らく30はまだ行ってない感じだ。

 

「わ、私は……ハァハァ……。アルヴィン・ジュネット、階級は技術中尉……!第774独立機械化混成部隊に編入を……!」

 

「一旦落ち着いてください、俺達急いでるって訳じゃないですから。」

 

「キ……キミは、キミがもしかしてアンダーセン少尉か?」

 

「……?そうですけど。」

 

 ん?もしかしてこの人俺のこと知っているのか?憑依する以前の知り合いならちょっと言動に気をつけないと……と焦っているとジュネット中尉は深呼吸し落ち着きながら言葉を続けた。

 

「私は以前ヒマラヤ級空母でアンダーセン提督の元でAWACSを担当していた。ミノフスキー粒子のせいでお役御免になっていた所をゴップ将軍からアンダーセン提督の御子息が人を求めていると聞き、この部隊に志願させてもらった。」

 

「父さんの知り合いか……。」

 

 なら俺とは直接の面識が無いってことか、少し安心した。

 

「エルデヴァッサー少佐も今後とも宜しくお願いします、ホバートラックの操縦は慣熟訓練は受けましたがまだソナーの癖は掴めていないので不便を掛けると思いますが……。」

 

「大丈夫ですジュネット中尉、元々私とアンダーセン少尉しかいない筈の部隊でしたから。歴戦の通信士がいるだけで頼もしいですわ。」

 

 二人所帯から一気に四人に増えればそれだけ安心感も増える、戦いは数だよとドズルも言っていたがいるといないでは全く違うもんな。

 

「さて、部隊も四人に増えた事ですし今後の隊の方針を纏めましょうか。」

 

「何処か行く宛はあるのか?ミデア級も使えるとなると行動範囲はかなり広がるけど。」

 

「そうですね、以前から考えていましたがこの南米から少し離れて中央アメリカ、旧メキシコ合衆国を中心に活動しようと思います。」

 

 メキシコと言えばちょうど連邦とジオンで小競り合いが続いている場所だ、連邦からはキャリフォルニアベース奪還への進路となるしジオンからはジャブロー攻略を見据える為に取っておきたい地域だろう。

 

「ここなら実戦データも取れるでしょうし補給の面も拠点から離れすぎないですから問題ないでしょう。可能であれば敵の機体を鹵獲してパーツ取りやデータ解析に使いたいですが其処は戦況次第ですね。」

 

「そこまで決まってるなら後は行くだけだな。クロエ曹長、ジュネット中尉、これからよろしく。」

 

「こちらこそ!」「了解した。」

 

 二人と握手を交わし、その後メキシコへと俺達第774独立機械化混成部隊は向かったのだった。

 

 

ーーー ーーー

 

 

 その後メキシコに着いた俺達は現地の部隊から敵の情勢を聞き、小競り合いが続いてはいるが大きな戦闘はないこと、そしてジワジワとだが戦力が削られ始めてきている事を確認した。

 ジャブローに近く物量はあるとは言えMS相手ではやはり分が悪いという事らしい、敵の補給部隊も散見されているが中々手が出せないと言う情報を聞くと、アーニャは敵が確認された砂漠地帯に近い森にミデアを隠しザニーとザニーヘッド、ホバートラックを伴い見晴らしの良い山間部に陣を構えて今に至るのだった。

 

「それにしても暑いな……メキシコは実はそこまで暑くないと聞いていたけど砂漠地帯が近いとなると話は別だな。」

 

「愚痴はどんどん吐いてくださいねジェシー、これはストレステストも兼ねていますから。座席が硬いとかコクピット内での飲食は辛いとかそう言ったレベルの物でも現場の意見として重要ですから。」

 

 涼しい顔をしてアーニャはそういうが自分も相当辛いんじゃなかろうか、何せこの数日ホバートラックで索敵をしているクロエ曹長やジュネット中尉とは違い、俺とアーニャはストレステストという名目で一日の中を殆どコクピット内で過ごしているのだから。

 ちなみに通常のザニーはアーニャが、俺はザニー頭のザクに搭乗している。

 

「エコノミー症候群にならんか不安って感じだな、自前のクッションあっても一日中はやっぱり辛いな。」

 

「クロエ曹長が気を利かせてくれなかったらそのままでは辛かったですね。」

 

 潜伏初日にコクピット内で寝るとアーニャが伝えた時にクロエ曹長は年頃の女の子にそれは流石にキツいですよと毛布の他にクッションを渡してくれたのだがそれのおかげでなんとか保ててる感じだ。

 

「しかしこの数日、そこそこの敵を発見したけど何で叩かないんだ?」

 

 この数日間でジオンを発見したのは数回に渡る、その殆どが歩兵を伴ったパトロール的なものばかりだったのだがアーニャはそこで攻撃命令を一回も出さず今に至っている。

 

「敵を知り、己を知れば百戦危うからず。という古来の言葉があるのを知っていますか?」

 

「孫子の兵法か?」

 

「やっぱり、結構博識な所がありますねジェシーには。」

 

 いやまぁギレンの野望とかハマったから同じ系統の三国志とかのゲームにハマってそれが原因だからそう言われるとちょっと恥ずかしいな。

 

「この数日は敵がどの間隔で現れるか、その内容は如何な物か、つまり敵を知る為の準備期間でした。」

 

「成る程な、これで己を知っていれば百戦危うからずってことか。」

 

「ふふ、残念ながらまだ私達は自分の機体がどれだけの物か知りませんから。敵を知り、己を知らなければ一勝一敗。つまり五分ですね。」

 

「はぁ、この前言っていた最初の数回は博打ってこういうことか。」

 

「はい。機体の性能を知り、私達がどのように戦えるか知れれば後は怖い物なし……とは中々行かないと思いますが楽にはなると思います。」

 

《二人とも、話し込んでいる最中で悪いがソナーに感有りだ。》

 

 ジュネット中尉からの通信だ、俺とアーニャは頭のスイッチを切り替えて中尉の報告に耳を傾ける。

 

《10時の方向、山が邪魔で見えんが山道でこちらに向かっている。音紋認識からザクが1……いや2だ、キャタピラと思われる音紋も一輌。恐らくマゼラ戦車かと思われる。そして……これはトレーラーか何かか?もう一輌車両と思わしき音紋有り。》

 

「どう思うアーニャ ?」

 

「補給部隊……或いはなにかの輸送でしょうか?今までのパトロールとか内容が違いますね……いや、もしかしたらこの数日のパトロールは周囲の安全確認の為のもの……?」

 

アーニャはそう言うとブツブツと数秒考えんで決断をする。

 

「ここが勝負をかける時みたいですね、敵はこの数日このエリアの安全を確認していましたからその結果からの輸送と思われます。幸いトレーラーを連れているので進軍速度は早くはない筈です。ここで叩きます。」

 

「了解!」

 

《了解した!》

 

「ジュネット中尉はクロエ曹長と共にこの場で待機、幸いミノフスキー粒子もそこまで濃くはありませんから敵の情報を逐一私達に報告を。ジェシー!貴方はマシンガンとランチャーを装備、ランチャーでの初撃で出来ればザクか戦車を仕留めます。その後は残った敵を格闘戦で仕留めます、良いですね!」

 

「了解だ!」

 

《反応が近い、そろそろ来るぞ!》

 山道からマゼラアタック、続いてザクが一機にトレーラーを挟んで後方にらもう一機のザクが現れる。

 

「出来ればトレーラーの中身は確認したいですね……、ジェシー!前方の戦車とザクを狙います!行きますよ!」

 

「分かった!クソ……当たってくれよ……!?」

 

 敵の進軍速度に合わせ僅差で当たるようにスコープを位置取る、これが学習型コンピュータとかが発展すればコンピュータ側で勝手にやってくれるんだろうが今はそんな物はない、頼れるのは自分の訓練成果だけだ。

 

「当たれえぇぇ!」

 

 前方の二機に向けロケットランチャーを放つ、警戒してない今なら防御なんて出来ないから当たれば確実に仕留められる!当たってくれ!

 ズドーンと着弾音が鳴り響く、アーニャ放った弾はギリギリ当たらなかったみたいだが俺の放った弾はザクに直撃し爆散していた。

 

《着弾確認!ザク一機沈黙!》

 

 ジュネット中尉の通信を確認後、敵機に接近する為に陣取っていた高地から発進する、だが発進前にこれだけは言っておきたい言葉があった。

 

「ジェシー・アンダーセン!ザニーヘッド出るぞ!」

 

 そんな状況ではないのは分かっているが言ってみたいじゃん?ガンダム好きなら一度はさ。

 

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