「どうだミライ、アンゼリカは付いて来れるか?」
「駄目ねブライト、第一戦速ではとてもじゃないけど追従しきれないわ。やっぱりエンジンが一基壊れているのは致命的ね。」
現在サイド6に進路を向けて進んでいる我々第13独立部隊であるが、先日の戦闘で敵の狙撃用MSの攻撃によるエンジンへの直撃を受けたアンゼリカは、進行には支障はないものの、速度は全速には足りずホワイトベースにやや遅れを取り始めていた。
「どうするべきか、我々だけ先にサイド6に寄港する訳にもいかんしな。」
「けれど物資もそろそろ足りなくなる頃合いよ、私達が先に寄港して補給を整えた後に再度合流して体勢を整えるのも良いんじゃないかしら?」
「うむ……一度アンダーセン提督と相談してみるか。」
どのように動こうと完全に敵への対策は打てない、しかし最善の手を尽くしていれば致命的な事態にはならない筈だ。歴戦の艦長であるアンダーセン提督ならば自分達とはまた違う視点が見えるのではと期待する。
ーーー
「ふむ、ホワイトベース隊が先にサイド6へ寄港する……か。一つの手としては有りではあるな。」
「アンゼリカが遅れを取らなければ今頃サイド6へ到着していてもおかしくはないですからね。私達のせいでホワイトベース隊の補給を遅らせるべきでは無いのは確かですが……。」
アンゼリカの艦橋では親父とアーニャが今後の打ち合わせをしている、エンジンの被弾により進軍速度がやや遅れているアンゼリカをどうするのかと言う問題点が焦点だ。
「ジェシー、貴方はどう思いますか?」
「ん、俺に聞くのか?パイロットが艦隊運用についてまともに意見出来るとは思えないが。」
はっきり言ってこの手の話題はパイロットの俺には全然分からん領域だ、どのくらい物資が持つのか、とか推進剤はいつまで……とかそこら辺の話を聞いてても何がなんだか分からんし。
「そこまでのレベルの意見は求めていないですから安心してください、ジェシーは偶に博識な面を見せてくれますからね、もしかしたら何か私達では出せない意見が出るかもしれないので。」
「偶にってなぁ……俺はいつだって真面目に。」
「ふむ、エルデヴァッサー中佐がこう言っておられるのだ、お前なりに考えて言ってみると良い。」
コイツにこう言われると腹立つがここで何も言えないのも癪に触るし自分なりに考えてみるか……。
「そうだな、まずホワイトベース隊が先行してサイド6で補給受けた後に再度合流してアンゼリカも寄港する。ブライト艦長の意見は良い案だと思う、ホワイトベース隊が万全の補給を受けた状態で合流出来ればこれほど頼もしい事はないからな。」
ガンダム2機に赤い彗星までいるのだ、鬼に金棒レベルじゃないからな……例えるならV2ガンダムにアサルトバスターなレベルだ。……いや、これだと過負荷が凄いか……ってそんな事を考えてる場合じゃないな。
「ただこの場合の問題点はホワイトベースが寄港している間にアンゼリカが攻撃されたら元も子もないって所だな。幸いグリムは軽傷で済んで戦闘も行えるレベルではあるが肝心の機体が出撃できる状態じゃないからな。3機のMSと足の遅いアンゼリカじゃ敵の攻撃があったらひとたまりもないだろう。」
それこそ先日の狙撃部隊みたいな金のかかってそうな部隊だったら一巻の終わりだろう、とは言っても……。
「まぁこんな事を言ったが実際に敵がアンゼリカに攻撃してくる確率はそこまで高くは無いと思う、ジオン側もキャスバル総帥が乗っていて尚且つガンダムも存在するホワイトベースの方を優先して狙うだろうし、その随伴艦であるアンゼリカの戦力はそこまで重要視してないだろうからな。叩くにしても手負いの今ならホワイトベースを叩いた勢いのついでにって敵は考えるんじゃ無いか?」
「ほう……、ここまでのレベルで意見をしてくるとは思ってなかったぞ。成長しているのだなジェシー。」
「っ、なんだよ。褒めても何も出ないぞ。」
「ふふっ、ジェシーも冴える時は冴えるんですよアンダーセン提督。」
「お前がドヤ顔で誇るのか……。」
それにしても原作であればこの時点で戦うことになるのはコンスコン艦隊か、アニメではあんまりな扱いであったキャラではあるがその戦術は間違っておらず、ドズル麾下の将校である事から実際は武勇に優れていると言った評価をされている。それにアニメではシャアを意識し過ぎていた所もあったが今はシャアは連邦側である、これも何かの要因にならないか不安だが戦力的には原作通りの展開になればアムロの覚醒で何とかなりそうだ。
「っと、俺がここまで意見したんだからそっちの意見も聞かせてくれよ。」
「私は貴方とそう変わらない考えですよ、ただ敵に余勢がある場合は此方を叩く戦力を用意する可能性も高いですから予め防衛策を練らねばならないと考えていますけど。」
「ふむ……確かにエルデヴァッサー中佐の考えは間違ってはおりませんが二人とも自己評価が甘いと言う点は頂けませんな。中佐達は既に歴戦のエース、敵から警戒をされていてもおかしくはありませぬぞ。」
「私達が……エース?」
「連邦軍のMS黎明期におけるテスト運用、それらが終わった後でも各所を転戦し戦い続け尚且つ専用機も持っている。敵がこれらの情報を知っていれば決して軽視はしませんぞ。」
言われてみれば経歴だけ見れば俺達もそれなりの部隊ではあるのか……、少し甘く考えていたがもしも敵が俺達を過大評価して敵部隊を送り込んできたら……それに原作とは違う展開を迎えている訳でコンスコン艦隊だけならともかく、このままサイド6を経由してグラナダへ侵攻してくると思われたらキシリア直属の部隊も出てくる可能性も考慮しないといけない。
「そう言われると確かに不安になってくるな、敵がこちらにそれなりの評価をしていたら想像しているよりも部隊を派兵する可能性があるって事だしな。だが親父、それならどう対処するべきなんだ?」
「うむ、グリム伍長が出撃できない状況を逆に利用させてもらう。MSハンガーには空きが出来ているからな、ホワイトベース隊より一機寄越してもらい合流までの間の戦力を安定させる。」
成る程、確かにホワイトベース隊から少しの間誰かを借りれれば戦力を分散しても安定はするな。
「でしたらガンダムの内1機を回して頂けないか聞いてみましょう。戦力的にはそれでバランスは取れるでしょうし。」
確かにアムロでもカイでもガンダムさえいれば仮に敵の攻撃があっても何とかなりそうな気はする、コンスコン艦隊にしてもキャスバルがいれば安定するだろうし。
「ではその様にブライト艦長には伝えておきましょう。パイロットもいつでも出撃可能な様に機体の調整をしておくのだぞジェシー。」
「分かっていますよ艦長殿、さて……報告がてら機体調整しにハンガーに顔を出してくる。」
これ以上いると無駄に親父と話をしかねない、そう思いながら機体ハンガーへと足を運ぶのだった。
ーーー
「以上がキシリア閣下からの報告です、お兄さん。」
マルグリットの報告を聞き、それらを纏めた報告書を見ながら頭の中で状況を纏める。木馬とジオン内で呼ばれていた艦が現在キャメル・パトロール艦隊と群狼隊を撃破しサイド6へ向けて進行しているとの事だった。連中の事は詳しくは知らないがキャメル・パトロール艦隊にしても群狼隊にしてもそれなりの実力を備えた部隊だったのは間違いない。それがたった2隻の艦とMS部隊に殆ど損害を与えられず撃破されたと言うのは驚くべき事だ。
「流石は赤い彗星を退け、黒い三連星を撃破した部隊と言うことか。……それに例の白い機体も随伴艦に乗っているとはな。」
木馬には白いマゼラン級が一隻随伴しているとの報告も交戦した部隊から報告が入っていた。その中には少し形は変わっているが俺の忌むべき仇の機体も確認されていた。
「群狼隊はそのマゼラン級のMS部隊に撃破されたみたいです、やっぱり侮れないですね。」
スパイからの情報によれば連中は連邦軍でも最初期からMSを運用していた部隊だったらしい、確かに最初の戦いの時にあの時期で紛い物とは言え頭部の違うザクとザクを模したMSがいた点から連邦の中でも古参のMSパイロットということになる。
「どうするグレイ、私達が出撃してあの艦を沈める?」
ヘルミーナが提案をしてくる、確かにサイド6に寄港するならその目前で出撃すれば戦えないこともない。
「いや、俺達が出撃するかどうかは上が決める事だ。確かドズル閣下の宇宙攻撃軍からコンスコン少将がサイド6へ向かっていると報告があった筈だ。」
地上での劣勢を受けて、当初はジオン寄りだったサイド6も連邦軍へと媚を売り始めた。それに対してコンスコン少将らが示威活動を行うらしい、なら序列的に俺達が勝手な行動を移すよりも先ずは向こうの出方を伺うべきである。
「変わりましたねお兄さん。今までなら我先にと打って出たでしょうに。」
「ニムバス大尉から託された命だからな、無駄遣いするつもりはない。お前達の事だって頼まれてるんだ。」
「ふふっ、ありがとうございます。」
クスクスと笑うマルグリットに調子を崩されながらも、報告書を読み進めて不備がないか再チェックする。
「……ん?キシリア閣下の海兵隊も此方に向かっているのか?」
「えぇ、確かサイド6内で連邦軍が新型機を開発している可能性があるらしく、それの調査にガラハウ中佐の部隊が内情を探りに来るらしいです。」
シーマ・ガラハウ中佐か、汚れ仕事を任されている彼女らしい内容ではあるが……まさかこのサイド6で連邦が新型を開発しているとは俺も知らなかった話だ、それほど迄にサイド6は連邦寄りになってきていると言うことか。
「交戦するにしてもまだ時間がかかる、一度マリオンの所へ誰か行ってきても良いぞ。何かあったら此方で連絡する。」
「それでは私が、お兄さんとヘルミーナは2人でゆっくりしていてください。」
「ね、姉さん……!」
何故か顔を赤くするヘルミーナ、ゆっくりしていろと言われてもな……。
「いや、イフリートの宇宙戦用の換装もまだ完了していないし最終調整もあるからな。出撃も近いだろうしこっちはあまりゆっくりはしていられないぞ。」
2人のドムはある程度のパーツ変更で宇宙用に出来るが俺の機体はそうはいかない。現在ブラウ・ブロなどのニュータイプ用のサイコミュを搭載したMAの調整なども行われているがテスト段階の物も多く信頼性に難があり、それなら既存のMSの換装を優先した方が良いと判断されイフリート・ゲシュペンストはまだ最終調整の段階なのだ。
「はぁ……お兄さんは戦闘以外にも女心とか学んだ方が良いと思いますよ。そんな唐変木ではこの先が心配です。」
「……?」
やれやれと手振りをしながら去って行くマルグリットを横目に、残された俺とヘルミーナは顔を合わせる。
「……取り敢えず機体調整でもしに行くか?」
「……馬鹿。」
……女心はよく分からんな。そう感じながら整備ハンガーへと俺達は足を運ぶのであった。
ーーー
「はぁ、ヘルミーナも先が思いやられますね。」
リボーコロニーへ向かうシャトルで、誰も聞きとれない声量でそう呟く。
あの子は親しい人が見れば一目瞭然と言うくらいには彼に好意を抱いているが、当の本人は全く恋愛事にはさっぱりなのか、それとも単純に妹分としてしか見ていないのかいつまでも子供扱いである。
「あの子もあの子で、もっとアプローチをするべきですけれどね。」
とは言っても難しい話だ、私達2人はこの数ヶ月でようやく人間になれたようなものだから。それまでの暮らしでまともな人間性というものは培えられずお兄さんとの交流でやっとまともな人として歩めるようになったのだ。例えそれが人殺しの兵隊としてでも。
腕にまだうっすらと残っている傷痕を眺めながらそう感傷に浸る、あの頃の記憶など思い出したくもないが、そのおかげでお兄さんと巡り会えてヘルミーナがあれほど救われたのなら少しは価値のあるものだったのだろうか。
『お待たせ致しました。間も無く当シャトルはリボーコロニーに接舷致します。』
考え込んでいると艦内放送が流れ始める、どうやらもう到着したようだ。
「全ては運命の巡り合わせ……か。」
結局の所全ては成るようにしか成らない。今までの人生も、お兄さんとの出会いも全ては成るように成った運命だったと言うことだ。
「マルグリットさん!」
「マリオン……?あれほど迂闊に外に出ないように言っていたのに。」
乗降口を出た先で待っていたのはマリオンだった。本来であれば現在住んでいるアパートに此方から伺う予定であったのだが。
「すみません、待ち遠しくて。」
「変装もしているしバレる事はないと思いますが気をつけてください。貴方に何かあったらニムバス大尉に申し訳ないんですから。」
帽子とサングラスで見た目を誤魔化してはいるが勘の良い諜報員がいて、マリオンの事を探っていたら感づかれてもおかしくはない。ただでさえマリオンは脱走兵扱いになっているのだ、今のジオンに意識不明の状態から連れ出された少女を探している暇は無いとはいえ、もしもという可能性もある。
「ごめんなさい……。」
「……いえ、良いんです。今度ウィッグでも買いにいきましょうか、それなら髪が伸びるまで少しは目立たずに済むでしょうし。」
雑談を経てからある程度の日用品の買い物を済ませ、彼女の住んでいるアパートに到着する。一人で住むには十分なスペースだが殺風景でもある。
「相変わらず殺風景ですね、何か飾ったりとかはしないんですか?」
「はい、元々私のお金じゃありませんし。ニムバスにも申し訳ないと思って。」
「大尉ならきっとそんな事は思わないと思いますよ。マリオンには普通に暮らして欲しいと言ってましたから。」
彼の残したお金を無駄遣いしたくないという事だろう、数年は余裕のある生活を送れるほどの額だが無限では無いのだ。彼女からしたら勿体ない使い方はしたくないという事なんだろう。
「それでもまだ戦争は終わらないですから、あまり贅沢するつもりもありませんし。」
「それなら良いんですが、あまり思い詰めないでくださいね。」
「ありがとうございます、ふふっマルグリットさんってまるでお母さんみたいです。」
「……そうですか?」
「はい。優しくて気を遣ってくれるし、こうやって偶に来てくれた時にはお料理も作ってくれるし。」
「簡単な物しか作れないですけどね。」
大半は地球に降りてから教わった物ばかりでそれも男性の人が作るような大味な物ばかりなのだけど。
「きっと将来はいいお母さんになるんじゃないですか?」
「お母さん……私が……?」
そう言った事は考えた事がなかった、そもそも気になる異性もいないしお兄さんはあくまでお兄さんで家族としか見ていないし。それにまともに育てられた事のない私が母親になるなんて出来るのだろうか。
「マルグリットさん。」
「なんですかマリオン。」
真剣な眼差しでこちらを見つめるマリオン。
「死なないでくださいね。」
「どうしたんですか急に?」
「最近テレビでもニュースになってます、連邦軍が宇宙での攻勢を強めていて、もしかしたらこのサイド6でも戦闘が起きてしまうのではないかって。」
間違いではない、幾ら中立を謳っていても以前のような状況ではなく露骨にジオンから連邦へと擦り寄る対象を変えてきている。私だって偽造された身分証で無ければ何の用で此処に来ているのかと、くだらない尋問に時間を取られていただろう。
こういった状況もあり既に一部の兵の間では敗戦ムードに成りつつある、まだソロモンやグラナダそれにア・バオア・クーやサイド3本国と言った生命線となる拠点は健在ではあるのだが、やはりジオン・ズム・ダイクンの遺児を相手に戦うという精神的な所に嫌悪感を抱く兵士が多い。
スペースノイドの解放、今は亡きジオン・ズム・ダイクンの理想の成就、それがジオン公国が掲げた御旗であるのにそれを正当に受け継ぐ者が現れジオン公国を批判する。自身の利権がある将校は良いが、末端の兵士にとっては何が正義で何が悪なのか、判別するのが難しくなっているのが現実だ。
そういう厭戦ムードを嗅ぎつけた今のサイド6が連邦軍寄りへ移行し、それに痺れを切らしたジオン本国の示威行動に移るのだろう。これ以上悪循環を発生させたくないという思惑が見て取れる。最悪の場合マリオンが言った通りサイド6でも戦闘が起きるかもしれない。
「大丈夫ですよ、私だってまだ死にたくはありませんから。」
マリオンの手を握り締め、そう応える。根拠はない……けれど最初から死ぬつもりで戦ってはいない。
「マルグリットさん……。」
「心配し過ぎですよマリオン。お兄さんもいますし、そんな簡単には死んだりしません。」
少し安心したのか、マリオンは微笑みを返してくれた。
「ごめんなさい、ニムバスの事があってから少し心配性になっているみたいで。」
「良いんですよ、心配してくれるのは嬉しいです。マリオンは私のもう1人の妹みたいなものですから。」
「妹……。」
「嫌でしたか?」
「あっ、違うんです!嬉しくて……!私一人っ子だったから……。」
私もそうだがフラナガン機関にいる人間は何かしらの理由で天涯孤独の身の人が多い。お兄さんも既に両親は他界していて親代わりだった人も地上で亡くしている。だからこそ他人との触れ合いに飢えているのかもしれない。
「戦闘が終わったら、また此処に戻って来ます。その時はお兄さんとヘルミーナを連れて来ますね。」
「はい、待っています。」
そしてマリオンに別れを告げ、宇宙港へ向かうバスを待つ。数時間とはいえ話が出来たのは良かった。マリオンにはああは言ったけれど私だって戦場に出れば生きるか死ぬかは分からない、ニュータイプだからって未来までは見通せない、自分の事だったら尚更だ。
ふと空を見ると鳥が数羽、羽根を羽ばたかせ優雅に空を舞っている。前までは気にも留めなかった事だが、地球とは違う環境だと言うのに地球で見たそれと同じ様に飛んでいる。彼らは既に宇宙という暮らしに適応したという事なのだろうか。
「……植物や動物はコロニーの暮らしに満足しても、人間はそうはいかないなんて、情け無い話ですね。」
仮に生まれ変わる事があるとすれば、今度は青空を翔る鳥になってみたい。そう考えながら到着したバスに乗り、シャトルへ向かうのだった。
ーーー
「ただいま戻りましたお兄さん。」
「マリオンはどうだった?」
「いつも通りでした、監視の目も無さそうなのでまだ安全ですね。」
マルグリットからの報告を聞いて少し安堵する、とりあえずは悩みの種は一つ消えた。
「こっちは間も無くコンスコン提督と通信が繋がる。お前も一緒に聞いておくんだ。」
「分かりました。」
モニターの前で待機し、予定された時刻となった途端、モニターにコンスコン提督が映る。敬礼をすると彼もまた返礼で応えた。
「ジオン公国宇宙攻撃軍コンスコン機動部隊司令官コンスコン少将である。」
「ジオン公国突撃機動軍フラナガン機関所属ジェイソン・グレイ少尉であります。」
「うむ。さて管轄は違うが今回の作戦、貴君らも加わって欲しく通信した次第だ。現在我々が向かっているサイド6に連邦の木馬も向かっている事は存じているだろう?」
「ハッ、キャメル・パトロール艦隊を撃破し損害も少ないと報告を受けております。」
「その通りだ、随伴艦のマゼラン級のエンジンを一つ潰してあるとの報告だが肝心の木馬は無傷である。このままサイド6へ寄港し補給を済まされると厄介だ。その前に我々の艦隊で一度攻撃仕掛ける。」
「サイド6の領空となると向こうも黙ってはいないでしょうが如何なさるおつもりですか?。」
「ふん、構わん。連邦に尻尾を振り始めた連中を震えさせるには丁度いい。貴君らには損傷しているマゼラン級の撃破を頼みたい、我々が木馬に戦力を投じている最中での挟撃となる、連中がマゼラン級の援護に向かえば戦力も分散されるし向かわなければ此方は総力を持って木馬を潰せる。」
「了解しました、提督のご期待に応えられるよう奮戦致します。」
「うむ、攻撃のタイミングはそちらに任せるがくれぐれも用心するようにな。では武運を祈る。」
そこで通信が終了する、ドズル中将の麾下らしく戦闘においては曲者の多いキシリア少将の麾下の人間よりは接しやすい武人だ。
「マルグリット、ヘルミーナ。出撃の準備だ。」
「わかった。」「分かりました。」
ジオンの艦艇では出航時に怪しまれるので機体は貨物船に扮した輸送艦に積み出航する。サイド6の領空外にさえ出てしまえば後は何をしようが問題はない。
「よし、これより俺達3機で敵のマゼラン級に攻撃を仕掛ける。敵艦はエンジンを被弾し航行速度は通常より遅いだろう。だが護衛のMSは確実に出てくる、それに対処し確実に敵を沈めるぞ。」
「分かった。」
「コンスコン提督が木馬を沈めさせれば此方の救援にも来るはずだ、俺たちはただ堅実に敵に対処すれば良い。ニムバス大尉から託された命だ。無駄にはするなよ。」
「お兄さんこそ、例の白い機体に惑わされないようにしてくださいね。」
中々痛いところを突いてくる、確かに未だに俺の中で奴に対する恨みはある。だが今はそれよりも大尉から託された命を無駄にしたくないという気持ちもあるのだ。
「分かっている……。よし、そろそろコンスコン艦隊の攻撃が始まる。此方も仕掛けるぞ!」
輸送艦のハッチが開く、機体が正常に稼働している事を確認し発進する。
「ジェイソン・グレイ。イフリート・ゲシュペンスト発進する!」
「マルグリット、リック・ドム グリージアも続きます。」
「グレイは私が守る……!」
各々の想いを胸に、戦いの火蓋が幕を上げようとしていた。