機動戦士ガンダム 紺碧の空へ   作:黄昏仮面

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第47話 交わる刃

 

《敵MS部隊接近中!MS部隊はは直ちに出撃しアンゼリカを防衛せよ!》

 

 ジュネット中尉の通信を受け俺とアーニャ、そしてララサーバル軍曹とカイが出撃準備に移る。

 

「クソ……!僕も出撃できれば……!」

 

「そう逸るんじゃないよグリム、アタイがアンタの分まで頑張ってきてやるよ!」

 

 ララサーバル軍曹にフォローされているのは今回機体が出撃できる状態ではないグリムだ、この事態に出撃できないのは確かに歯痒いだろうな。

 

「カイ!ホワイトベース隊とは違って連携のタイミングが合わないかもしれないが上手く動いてくれよ!」

 

「あいよ!アムロじゃなくて残念だったとか言われても嫌なんでね。カイ・シデン、ガンダム行くぜ!」

 

 カイのガンダムが先行し後に俺とララサーバル軍曹、そしてアーニャが続く。

 

「ジュネット中尉、敵の数は!?」

 

『現在輸送艦らしき船から3機の機影を確認している、援軍が無ければ今の所は3機の筈だ。』

 

「こちらは牽制であくまで本命はホワイトベースに向かっている可能性が高いですね……。」

 

 アーニャの懸念もあり得る話だ、先行しているホワイトベースを先に叩いてこちらは後で叩くなら先ずは牽制を送り足止めし此方が救援に向かうのを阻止するだろう。

 

「なら敵を速攻で叩いて逆に此方から挟撃するくらいの気概で動かないとな!ヴァイリッター、敵と交戦する!」

 

 機動を上げて敵機の方向へと向かう、センサーに反応し機体を照合するが……。

 

「データに無い機体……、だがあの色と形状は北米で戦ったイフリートか!?」

 

 灰色のイフリート、北米での戦いで一戦を交えた機体だ。確かキャスバルが言っていた……!

 

「アーニャ!コイツらキャスバル総帥が言っていたフラナガン機関の連中だ!」

 

「此方も確認しました!……ニュータイプという事なのでしょうか。」

 

「実力は北米で分かってる……油断出来ないぞ!」

 

「ニュータイプか何か知らないが墜としちまえば一緒だってね!」

 

 カイのガンダムがビームライフルで攻撃を仕掛ける、確かに幾らニュータイプと言えど数では此方が有利だ。それに原作でも外伝でもフラナガン機関でイフリートに乗ったパイロットなどニムバスくらいしかいなかったし原作名有りのエースで無いのなら勝機はある筈だ……!

 

『敵MSの攻撃を確認!二人とも、俺から離れるな!』

 

『わかってるよグレイ!』

 

 敵の3機は見惚れるような動きで器用に攻撃を回避する、だが感心している場合ではない。やはり北米で戦った時と変わらず個人の戦闘機動も並外れた物があるがそれ以上に連携が非常に上手く取れている。舐めてかかったら此方がやられる……!

 

「カイ!アーニャ!俺とララサーバル軍曹で隊長機と思われる機体に攻撃を仕掛ける!その間にドムの一機に集中して攻撃を仕掛けられるか!?」

 

「そりゃ構わないけどよジェシーさん!アイツらハンパじゃない強さだぜ、やれるのかよ!?」

 

「だが動いて突破口を開かなきゃアンゼリカが狙われる!頼んだぞ!ついて来いララサーバル軍曹!」

 

「あいよぉ!」

 

 ララサーバル軍曹と共にイフリートへ攻撃を仕掛ける、俺が正面から襲い掛かりその背後からララサーバル軍曹が隙を突く算段だ。

 ヴァイリッターのビームサーベルでイフリートへ斬り掛かると敵もまたヒートサーベルで対応してきた、この隙をララサーバル軍曹が突く形で背後から迫る。

 

『舐めるな!』

 

「な……くっ!」

 

 予測されていたのかララサーバル軍曹が襲い掛かる前にヴァイリッターに蹴りを入れられ、体勢が崩れた俺を無視しララサーバル軍曹の機体へ向かって行く。

 

「シショー!?っ……!なんだいコイツは!反応速度がダンチじゃないか!」

 

 何とか対応しようと格闘戦に移るララサーバル軍曹だったがイフリートの動きに翻弄され始めている、俺は何とか体勢を立て直し援護射撃を行う。

 

「当たれぇ!」

 

『ちっ、ビームライフルか!』

 

 並の機体なら直撃か、直撃とは言わずとも何処かに当たっていておかしくない状態からの回避……これはアムロと模擬戦で戦った時と同じだ、やはり本物のニュータイプなのか!?

 

「だが……やらせはしない!」

 

 再びビームサーベルを構え、バーニアを吹かせ急速接近し攻撃を仕掛ける。

 

『貴様がそこまで戦ってくれるんならこっちも本望だ!隊長達の仇は討たせて貰うぞ!白い機体のパイロット!』

 

「なんだ……!?接触回線……!?」

 

 サーベル同士の鍔迫り合いの中でイフリートのパイロットと思わしき声が響く、隊長の仇?俺はコイツと北米以前でも戦った事があるのか?

 

「ジェシー!くうっ……!」

 

「中佐さんよぉ!余所見してる暇はないぜ!このドムも半端じゃねぇ!」

 

 アーニャ達もかなり苦戦している、カイやアーニャの実力が分かっているからこそコイツらの実力の高さがより分かる。どう戦えば……!

 

『どうした!北米で戦った時のあの動きは何処に行った!本気の貴様を見せろぉぉぉ!』

 

「クソっ……!なんなんだコイツは!」

 

 北米の時……あの時はアーニャを守るのに必死で無我夢中で戦った火事場の馬鹿力みたいな反応が出来たが、あんな真似二度も三度も出来はしない。

 

「けど……今はそんな事言ってられないか……っ!」

 

 集中、集中するんだ。少しでもコイツの反応速度に対応出来る様に!でなければ此処でみんな墜とされてしまう!

 

「うおおおおお!」

 

 地上で良く使っていた敵の攻撃に合わせて左右にステップし近づく戦法、それを宇宙仕様にして小刻みにイフリートのマシンガンを避け接近する。

 

『その動き……!イラつくんだよ!貴様はぁぁぁぁ!』

 

 斬りかかろうとするも奴もまたサーベルを構え斬り合いになる。

 

「ちっ!この動きすら対応するなんて!」

 

『それはお前の動きじゃねえ!俺の……!俺の隊長だった人の猿真似なんだよ!』

 

「……っ!?隊長……まさかあの時退却したマゼラのパイロット……!?」

 

『隊長達の仇……取らせてもらうぞ!』

 

 ヴァイスリッターと交えている方のサーベルはそのままに奴はもう片方のヒートサーベルを取り出し斬りかかる、シールドで防ぐも徐々に此方が押され始める。機体性能は向こうの方が高いのか……!

 

「シショー!くうっ!こっからじゃ射撃してもシショーに当たっちまう!」

 

 援護射撃されないような位置取りをされている状況でララサーバル軍曹も手が出せないでいる、何とか共闘に持ち込みたいが一対多数に慣れているのか容易にはさせてくれない。

 

「だからってぇぇぇ!」

 

 前部のスラスターの出力を上げてサーベルを受け流す形で横に飛ぶ、一瞬の隙の間にサブアームに積んでいるマシンガンを取り出し狙いをかける。

 

『ちっ……!クソォ!』

 

 直撃する前に回避されるがそれでも片腕を持っていった、これなら!

 

『グレイ!』

 

『お兄さん!』

 

 しかし、カイ達と交戦していたドム2機が合流してまた膠着状態になった。これでは一進一退のまま事態が解決しない。

 

「……どうするアーニャ。」

 

「この戦局だけを見れば私達は不利のままですが……ホワイトベース隊が上手く敵を倒せていれば彼らも撤退する可能性はあります。それを祈るのは得策ではありませんけれど。」

 

 こっちが必死だったから忘れていたがホワイトベースも今コンスコン艦隊と思わしき部隊と交戦中だ。確かに原作みたいに速攻で決着がついていればこのニュータイプ部隊も形勢不利となって撤退するかもしれない……だがそれを願って戦うというのは情け無い話だ。

 

「アーニャ、もう一度攻勢を仕掛けよう。俺があの隊長機を引き付ける、カイとララサーバル軍曹でドム2機を引きつけてくれ。そしてアーニャが隙の出来た機体を狙い撃つ、これでどうだ?」

 

「普通の相手であれば通用するでしょうが……彼らに通用するかは不安ですね。」

 

「けどやらなきゃやられちゃうんでしょう?だったら全力でぶっ叩いて目に物見せてやるだけだぜジェシーさん、中佐さん!」

 

「アタイも賛成だね、こういう相手は下手に考えて戦うより本能に任せて動くのが良いと思うよ!」

 

「……分かりました。3人とも、全力で敵を引き付けてください。私が仕留めてみせます。」

 

「了解!」

 

 カイとララサーバル軍曹が全速でドムに突っ込む、カイはともかくララサーバル軍曹は予想以上に敵を捌いている、まさに本能に身を任せているのだろう。

 

『マルグリット!ヘルミーナ!』

 

「お前の相手は俺だ!」

 

『クソ!鬱陶しいんだよ白い奴!』

 

 イフリートと格闘戦に入る、腕部を破壊しているので先程よりは遥かに有利な筈だが……!

 

「クソッ!反応速度が……!」

 

『舐めるんじゃねぇ!ニュータイプでもない貴様なんかに遅れを取るわけが!』

 

 此方の攻撃よりワンテンポ早く動いているのか徐々に攻撃のタイミングがズレ始めてきている、もっと……もっと集中しろ!

 

「幾ら反応速度が高くても!」

 

 そうだ、幾ら動きが速くてもMSの動きには限界がある。俺はニュータイプではないが真似事くらいはやってやる!

 

「先を読むんだ……っ!奴の動きの先を……!」

 

 ワンテンポ遅れて来ているならワンテンポ早く動けば良い。敵の場所、攻撃手段、スピードを考慮して次にどんな動きをしてくるか計算しろ……!

 

『なんだ……!さっきよりも動きが!』

 

「くらえぇぇぇ!」

 

 ビームサーベルを隙の出来た頭部へ向け斬りつける、攻撃は上手く行きイフリートの頭部を破壊した。

 

「よし……!」

 

『舐めるな……!たかがメインカメラを破壊した程度でぇ!』

 

 頭部を破壊して出来た一瞬の油断を突かれ、イフリートがヒートサーベルで此方の腕部と脚部を切断する。

 

「なっ……!」

 

『これで終わりだ!死ねぇぇぇ!』

 

 直撃を覚悟したその時、ビーム光が横を掠める。

 

『ぐぁぁぁ!』

 

『グレイ!』

 

 間一髪の所でイフリートに攻撃が当たり敵は大ダメージを負った、トドメをさそうとするもカイとララサーバルを相手していたドムが危険を察知したのかイフリートを救援し後退していく。追撃するか悩んだが戦闘中殆ど最大稼働で動いていたせいで推進剤が心許ないのと中破した状態で追いかけた最中に追撃の部隊が来ないとも限らないので仕方ないが深追いは避けることにした。カイ達も同じなのか警戒しながら待機している。

 それにしても今の攻撃はアーニャの援護射撃か?おかげでギリギリの所で命を拾えた。

 

「助かった……ありがとうアーニャ!」

 

「ち……違います、今の射撃は私ではありません……!」

 

「なんだって……?」

 

 じゃあ今の攻撃は……?射線的にカイやララサーバル軍曹ではないので、もしかしたらホワイトベース隊が救援に駆けつけてくれたのか?そう考えながらビームが放たれたと思う方向へ目を向ける、其処には……。

 

「ガンダム……?」

 

 しかしその姿は見慣れたRX78-2やG3ガンダムではない、青を基調としたガンダム……それは俺が憑依する以前に見た事がある機体に酷似している。

 

「ガンダム4号機……?いや、あれは……アレックスか!?」

 

 ガンダムNT-1 アレックス、ニュータイプ専用……いやアムロ専用に開発されていたガンダムとかなり似てはいるが少し外観に違和感を覚えた、細部が何処となく違うようだ。

 

「マゼラン級アンゼリカ、及びそのMSパイロットへ通信が聞こえますか?」

 

 レーザー通信だ、この声は聞いた覚えがある。原作通りアレックスのテストパイロットをしていた女性だ。

 

「私はクリスチーナ・マッケンジー少尉です、テム・レイ博士の指示により貴方達の救援に駆けつけました。」

 

「テム・レイ博士が……?」

 

 アムロの話ではサイド7で負傷してルナツーで治療していたと聞いていたがホワイトベースがルナツーを離れてから数ヶ月が経過しているしその間に完治してサイド6に移ったのか?

 

「此方はアンゼリカMS部隊隊長のアンナ・フォン・エルデヴァッサー中佐です、マッケンジー少尉の救援に感謝します。すみませんが戦況は今どうなっているのでしょうかホワイトベース隊は?」

 

「順を追って説明させて頂きます。私はサイド6近辺で戦闘が開始されたとの報告を受け、サイド6に寄港していた連邦軍艦艇と共に機体の実戦テストも兼ねて出撃をしました。まず位置的に1番近いホワイトベースへ救援に向かったのですが既にホワイトベース隊は敵MS部隊を撃破した後で、敵の艦隊も撤退を開始していたので続いてそちらのアンゼリカへと向かったのです。機動力に優れたこのガンダムで先行し先程戦闘に加わった……、これが現在の戦況です。」

 

 ……流石はホワイトベース隊だな、後で何分でリックドムを撃破したのか聞いておくか。それにしてもクリスが普通にアレックスを使い熟していることに驚く、既に完成している事についてもそうだけど。

 恐らくテム・レイが普通に現役なおかげでこのアレックスにも何らかの調整がされたのだろう、それを確認するのも興味があるが今はまず無事にサイド6へ到着するのが先だな。

 

「まもなくグレイ・ファントムが到着するはずです、そうなったら後は安全ですよ。」

 

 グレイ・ファントムか……スカーレット隊もいるんだろうか?原作では残念な戦績だったけど今は普通にありがたい。

 

「私達の機体もかなり損耗しています、一度アンゼリカに戻り救援を待ちましょう。」

 

「了解!」

 

 俺達はアンゼリカに戻り、グレイ・ファントムが到着するとそのままサイド6へと進路を向ける。

 完成しているアレックスと、それを巡る物語がどうなるのかは今はまだ分からないが俺もまた初陣で戦ったのかもしれないイフリートのパイロットとの因縁に何かが起こるのだろうかと不安を抱えるのであった。


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