機動戦士ガンダム 紺碧の空へ   作:黄昏仮面

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投稿が遅くなって申し訳ありません。
今回も殆ど会話回となります、ソロモン攻略戦まではもうちょっとかかりそうですごめんなさい……。時間が欲しい……。




第50話 いつか運命と呼んだ出会いに(中編)

 

 見知らぬ奇妙なガキをエレカに乗せ、郊外から離れた場所に移動する。走らせながら再度顔を確認するがやはり見知った顔では無い。

 

「ふっ、まぁ悪名高い毒ガスのシーマって名前なんざジオンなら誰でも知ってる話さね。」

 

 ブリティッシュ作戦から今まで、汚れ仕事なら何でもしてきた私だ。風聞は何処かしこに流れていてもおかしくはない。それだけの事はしてきたのだから。

 

「知らなかった……シーマ様は何にも知らなかったじゃないかぁ……!」

 

 ガキの声に思わず急ブレーキを踏む、幸い既に街からは離れていたので対向車も無かった。

 

「お前、本当に何者なんだい!」

 

 コイツの言う通り、私は自分が注入したガスが毒ガスだなんて聞いていなかった。だからこそ何でコイツはそこまで知っているんだ……!まさかアサクラの子飼いの人間じゃないのか!?

 

「少し手荒になるが身分証でも探させてもらうよ!」

 

 エレカを適当な場所に止めてガキのポケットから身分に繋がるものが無いか探る。

 

「あぁ……っ!そんな乱暴に!」

 

「テメェはさっきから酔っ払い過ぎなんだよ!」

 

 思わず頬を叩いてしまう、悪いかとも思ったが逆に目を覚まさせるのに良いかもしれない。コイツには聞きたい事が山程あるのだ。

 

「うぅ……。」

 

「チッ……財布にはカネしか入ってないじゃないか。お前、本当に何者なんだい。」

 

「俺は……シーマ様が好きなただのオタクです……。」

 

「はぁ……?」

 

 こっちの頭の方がどうにかなりそうだ、ここまで意味不明な事を呟かれていると精神に異常をきたした奴なんかじゃないと……。いや、まさか?

 

「コイツ、もしかしたらフラナガン機関で実験でも受けたヤク中とかじゃあるまいね……?」

 

 あり得なくはない話だ、初期の頃は真っ当な研究をしていた様だがジオンが劣勢になり始めると即戦力の用意の為に身体のあちこちを薬物投与で強化したりマインドコントロールで洗脳紛いの事をしたりと非人道的な面も見せ始めているらしいからね。

 

 可能性としてはコイツはフラナガン機関で薬物投与などの強化を受けていたが精神に異常をきたして廃棄された失敗作……、これならある程度合点が行く。アタシのことを知っているのも元ジオン兵ならあり得るし、さっきの毒ガスについても私の心を読心したとなれば自然とピースは嵌まっていく。

 

「ふっ、なら少し遊んで捨ててやるとするか。」

 

 先程から酔っ払ってはいるが的を射るような事を言っている、読心的な能力以外にも予言なども出来れば少し遊ぶのには都合が良いかもしれない。もしかしたら今の任務でも使える道具になるかもしれないしね。

 

「すまなかったねえ、ニュータイプさん。アンタまさか私の未来が読めたりするんじゃないかい?」

 

「うぅん……シーマ様の未来……?」

 

「そうさね、私が毒ガスを知らなかったのもアンタは知っていた。だからこれから私に起きる未来もニュータイプのアンタなら予知出来るんじゃないのかい?」

 

「シーマ様……は……ジオンがア・バオア・クーの戦いで負けた後で……アクシズに逃走する艦隊について行こうとしてて……でも……。」

 

 ア・バオア・クーの戦い?しかもアクシズに逃走だって……!?聞いた奴が奴ならこの場で射殺されていてもおかしくはない妄言だ。……しかし可能性は無いことも無い、実際に敗戦は濃厚なのだから。

 

「ちょっと待ちな、ア・バオア・クーが陥落してもまだソロモンやグラナダ、それにサイド3本国はまだ残ってるんだ。なんでアクシズなんて辺境に行かなきゃならないんだい。」

 

「ソロモンはもうすぐ落ちるし……グラナダはキシリアが死んで……ってその前にサイド3の……バッファロー?みたいな首相が連邦軍と休戦条約結んでぇ……抗戦派や戦争犯罪人になりそうな人はアクシズに逃げるしかなくてぇ……だったっけ……?」

 

 バッファローみたいな名前の首相?ダルシア・バハロの事か?それにキシリア様が死ぬ?……聞いているとただの願望にも聞こえるが符号は合う所もある、コイツはもしかしたら本当に予知能力があるんじゃないか?

 

「それで、アタシはアクシズに逃げたのかい?」

 

「それがぁ!違うんだよなぁ……!アサクラとか言うクズがシーマ様に今までの罪諸々擦りつけて戦犯扱いして合流させずに自分だけアクシズに逃走とか畜生みたいな事やりやがって……!マジでそこらへんジオンやっぱ駄目だと思うんだよな俺は……!うぅ……。」

 

「アサクラ大佐がアタシ達に罪を……?まぁ無くはない話だね。」

 

「それで行く宛の無かったシーマ様はせめてマハルに帰ろってなったのに……マハルはソーラ・レイになってて……帰る場所が無くなって宇宙海賊みたいな事を……ひぐっ……!あんまりだぁ……!」

 

 今度は泣き上戸になってやがる……コイツに酒を飲ませるのはやめさせた方が本人の為じゃないか?それにしてもソーラ・レイとは何なんだ?

 

「おい泣いてないでソーラ・レイって言うのはなんなんだい?説明しな。」

 

「コロニー丸々改造したジオンのビックリドッキリメカ……じゃないビーム砲みたいなやつですよぉ……。」

 

 ドクンと心臓の音が鳴ると同時に身体に冷や汗が流れる、まさかアタシらの故郷であるマハルが何かの兵器になっていると言っているのかコイツは……。

 

「だからぁ……!シーマ様は早めに連邦に内通とかした方が良いですって!あと数年したら空気読めない連中のせいで寝返ったはいいけど惨い殺され方されちゃうし……シーマ様は幸せになるべきなんだよぉぉぉ!」

 

 アホみたいに泣き始めたコイツの言葉に脳味噌がこんがらがる、コイツの言葉を纏めるとア・バオア・クーが陥落してサイド3も連邦軍と休戦か降伏かして、アタシらみたいな極悪人はアクシズに逃げるしか無いのが多かった……だがアサクラはアタシらがやった任務の責任をアタシに擦りつけて自分だけアクシズへ逃亡……そしてマハルに帰ろうにもマハルは兵器にされていて帰れず宇宙海賊に身を落として数年後に死ぬ……?

 

「馬鹿馬鹿しい、そんな事があり得るか!」

 

「うぅ……。」

 

 だがコイツの言葉に不思議と説得力がある、妄言にするにはリアル過ぎる内容だからだ。世迷い事として放っておくには惜しい。

 

「うっ……!吐きそう……。」

 

「冗談じゃないよ!吐くなら車から降りな!」

 

「うぅ……。」

 

 ヨロヨロと木陰へ向かうガキを横目に、先程の話を何処まで真に受けるべきか悩もうとした時だった。遠くからパトカーのサイレンが聴こえてきた。

 

「マズイねえ、ここで止まってたら警察に余計な勘繰りを入れられるかもしれない。おい!まだ終わらないのかい!?」

 

「オエエエエ……。」

 

「ちぃっ!後で戻ってくる!逃げるんじゃ無いよ!」

 

 一旦この場所から離れ、パトカーがいなくなったらまた連れ戻そう。その時はそう思いこの場を離れるのだった。だがこの事を私はすぐ後悔することになる。

 

 

ーーー

 

「リボーに行けるのはこれが最後になるわヘルミーナ、貴方はどうするの?」

 

「……グレイと一緒にいる。マリオンには姉さんから謝っておいて。」

 

「分かったわ、お兄さんが目を覚ますまで隣にいてあげて。」

 

「うん。」

 

 先日の戦いで新手の新型機の攻撃を受けたお兄さんは目立った外傷はないものの大きな衝撃を受けて一時的な昏睡状態に陥っていた。

 彼の愛機であったイフリート・ゲシュペンストも殆ど大破しており修理して再使用する事も現時点では不可能となり、またサイド6の情勢もありキシリア少将からフラナガン機関の人員ごとグラナダへの招集がかけられた。その為マリオンのいるリボーコロニーへ行けるのも戦時下ではこれが最後になるだろう。

 必要な人員や物資の積み込みで少なくても一日か二日は時間が取れる、最後の機会にマリオンに会いに行くのを提案したが妹は彼に寄り添う事を選択した。それは決して責めるような事ではない。

 

 それから数時間、夜になってしまったが漸くリボーコロニーへ到着する。先日の戦闘で入港にも時間が取られるが怪しい物は所持していないので問題なくコロニーに入る事ができた。エレカをレンタルして市街地まで走らせる、その最中であった。

 

「……人?」

 

 街から外れた人がいない筈の道路脇に項垂れている人がいた。見間違いかとも思ったがそうでは無いみたいだ。厄介ごとに巻き込まれたくはないが無視も出来ないのでエレカを止めて駆け寄る。どうやら男性のようだ。

 

「あの……大丈夫ですか……?」

 

 見たところお兄さんと同じくらいの年齢の青年だ、かなり顔色が悪いが大丈夫だろうか?

 

「すまない……どうやら間違って酒を飲んだみたいでかなり気分が悪いんだ……。」

 

「お酒を……?すみませんが貴方はこの近所に住んでいる方なんですか?」

 

「いや……なんでこんな所にいるのかも、ちょっと分からないな。誰かと話していた記憶はあるんだけど。」

 

 お酒は飲んだ事がないので分からないがどうやら飲酒をして記憶が曖昧になっているようだ。近くに民家もないので本当に誰かに連れ出されたようだがそのまま見捨てられたのだろうか?

 

「取り敢えず乗ってください、こんな所にいたら危険ですよ。」

 

「すまない、ありがとう……。」

 

 具合を悪そうにしながら青年は私のエレカに乗る。このまま市街地まで送れば見覚えのある風景を見つけて自分で帰ってくれるだろう、私はエレカを運転して市街地まで進む。

 

「すみませんが、何処で降ろせば良いですか?」

 

 問いかけるが返答が無い。横目で見るとどうやら眠っているように見える。

 

「あの、お兄さん?起きてください。」

 

 軽く揺らすも反応が無い。どうやら完全に眠ってしまっているようだ。

 

「はぁ……。どうすれば……。」

 

 幾つかのホテルを見つけ泊まらせようと思ったが既に満席だったり、身元の分からない人間を泊まらせるのを渋られたりと立て続けに断れてしまう。先の戦闘で警戒されているのもあるのだろう。

 

「かと言ってこのまま何処に降ろしてしまうのも気が引けますし……仕方がありませんね……。」

 

 マリオンの住んでいるアパートにエレカを走らせる、連れて行くのは不安だが起きたらすぐに出て行ってもらうしかない。

 十数分程走り、アパートに到着する。

 

「マリオン、私です。」

 

「マルグリットさん?こんな夜中にどうしたんですか?」

 

「色々あって此処に立ち寄れるのは今回が最後になりそうなんです。詳しい事は後で話します。……それと少し厄介事もありまして。」

 

 後ろに振り向きエレカを覗く、其処には未だグッスリと眠っている男性がいた。呑気なものだと少し呆れてしまう。

 

「男の人……ですか?」

 

「えぇ、郊外で一人で酔っ払っていたので街中まで連れて行ったのですが。全く目を覚ましてくれないんです。」

 

「……この人どこかで……。」

 

「……!まさかジオンの人間なんですか……!?」

 

「いいえ、フラナガン機関とかでは見た事はありません。けど、……ッ!頭が……。」

 

「大丈夫ですかマリオン!?」

 

「あ……はい……!少し頭痛がしただけです……マルグリットさん、この人は多分大丈夫だと思います。悪い人では無さそうだし。」

 

 とは言っても今の状況でこの人を信用できるかと言われたら相当怪しいのだけど……、けれど仕方がない何かあれば隠し持っている銃もあるし手荒な事になるだけだ。

 私達は眠っている彼を部屋まで運び、そのままソファーに眠らせた。その後でマリオンに今の私達の状況を伝え、私達もそのまま彼から離れた部屋で二人で眠るのであった。

 

 

ーーー

 

「……っ。」

 

 頭が痛い、気分もかなり悪いし頭が上手く回らない。昨日の事を思い出そうとするが誤って酒を飲んでしまったという事以外は思い出せない。

 

「ここは……?」

 

 辺りを見回すと、どうやら誰かの部屋のようだ。リビングのソファーで俺は眠っていたようだ。

 

「ようやく目が覚めたようですね。」

 

 女性の声だ、声のする方に目を向けると其処には白い肌、そして白い髪の少女が立っていた。

 

「君は……?」

 

「昨日酔っ払っていた貴方を此処まで連れて来た者です。……覚えていませんか?」

 

 記憶を辿る……そう言えば誰かの車に乗せてもらったような……?

 

「どうやらかなり迷惑をかけたようだ、本当にすまない。」

 

「お節介かもしれませんが今後はお酒を控えた方が宜しいと思いますよ?私が通り掛からなかったら野垂れ死んでいたかもしれないんですから。」

 

「あぁ、本当にその通りだ。酒なんか頼んだ覚えは無いんだけど……ってこれは言い訳にしかならないな。本当にすまなかった、ありがとう。」

 

「マルグリットさん、あの人が目を覚ましたんですか?」

 

「なっ……!まだ出て来てはいけません!」

 

 ドアの先から聴こえてきた別の少女の声に慌てる少女、ドアを確認して唖然とした……そこにいた彼女は……。

 

「マ……マリオン?」

 

「っ!」

 

 少女の名前を発した途端、いきなり身体が崩れ落ちる。慌てて受け身を取るが、また別の衝撃が身体を打ちつける。これは……護身術か!?

 

「やっぱり……!ジオン軍人だったようですね!」

 

「なっ……!?俺は違う……!」

 

「なら何故マリオンを知っているんですか!」

 

 頭に冷たい金属物が当たっている、恐らくは銃だろう。突然のことで何が起こっているのかは分からないが、かなりのピンチだ。

 

「待って、マルグリットさん!この人は違うわ!」

 

「黙っていてくださいマリオン!今この人が何者か……、ッ!?」

 

 彼女の様子が一瞬おかしくなったのを見て、隙を見逃さず銃を取り上げて分解する。北米での会談があった時に護身術などを習っていたのが幸いした。

 

「マルグリットさん!」

 

 マリオンが彼女に駆け寄り安否を確認する。俺自身も手荒な事はされたが彼女が恩人である事には変わりはない、大丈夫なのかを確認する。

 

「大丈夫……か?」

 

「あ、貴方は一体……!心を読もうとしたら、何かがおかしい……!」

 

 心を読む……?すぐには何を言っているか分からなかった、だが考えてもみろ……なんで此処にマリオンがいるかは別として、そのマリオンに対して守ろうと動く彼女はきっとマリオンの関係者だ。となると……。

 

「君は……ニュータイプなのか……?」

 

 サイコメトリーやそれに準じる能力を持ったニュータイプ……そして下手をしたら恐らくジオン軍人だ、だがさっきの反応は同じジオン兵だと思われているにしてはおかしな言動だ。一体マリオンの周りで何が起きているんだ?

 

 

「聞いてくれ、俺はマリオンに危害を加えに来たんじゃない。これは本当に偶然の出会いで……。」

 

「それを信用しろとでも?そもそも何故マリオンを知っているのか、それについてはどう説明するんですか!」

 

 銃は使えなくなったがマリオンを守ろうとする意志は未だに強く、身体差があるにもかかわらず彼女は俺に対して戦う姿勢を見せていた。

 此処までマリオンを心配する彼女はきっと悪い人間では無いはずだ、俺だって見捨てる事が可能だったにも関わらず助けてくれた。

 なら俺だってそれに応えてやらないといけない、そんな風に俺は思い正直に話を始める。

 

「そうだな……、まず俺に敵対の意志はない。どちらかと言うとマリオンには何事もなく生きていて欲しい、そう思ってる人間なんだ。」

 

「あの……貴方と私は何処かで会った事があるんですか?懐かしい感じはするのに会った記憶がなくて。」

 

 マリオンの言葉に頷く、彼女と出逢ったのはEXAMという機械を通してでしかない。EXAMに囚われていた頃の記憶も鮮明では無いだろうし俺の事を知らないのも当然だろう。

 

「これを言うと彼女……マルグリットさんと言ったか、かなり警戒するとは思うが俺は連邦軍人だ。」

 

 その言葉に二人が動揺したのを確認する。当たり前の反応だろう、ジオン軍人だと思われていたのが真逆の連邦軍人なんだから。

 

「そして俺はマリオン、君が囚われていたEXAMシステムの搭載されていた機体に乗った事がある。君を知ったのはその時なんだ。」

 

「EXAM搭載機に……?貴方はまさかニムバス大尉を殺した……!」

 

 マルグリットと呼ばれた少女から再び警戒されるも嘘を言っても仕方ないと思い続ける。

 

「……俺はEXAMを使い熟す事は出来なかった、一回乗って1ヶ月くらい昏睡して……っとこれは君達には関係ないな。けど君の言うニムバス……、ニムバス・シュターゼンの乗ったEXAM搭載機の撃墜には俺も関わっている。そういう意味ではもしかしたら俺は君達の仇になるんだと思う。」

 

 マリオンとニムバスの関係性なんかはあやふやだが彼女達の反応からして小説みたいに歪な事にはなっていなさそうだ。

 

「おかしな人ですね、今の話からマリオンに危害を加えないという確証は全く出てきませんよ。」

 

「それもそうだな、ただEXAMを通して俺はマリオンに助けられた所もあるんだ。ユウ……いや連邦のEXAMパイロットやニムバスとは違って深くはマリオンの事は知らないけど、彼女に戦争で人殺しなんてして欲しくはないってくらいには思っている人間が連邦にもいるって信じてくれれば良いなと思ってる。」

 

 ジオン嫌いではあるがマリオンだったりバーニィだったりジオン側でも好きなキャラはいる、だからこそ悲劇には巻き込まれて欲しくない。こっちに憑依して敵としてジオンと戦うことはあってもその気持ちは変わらない。

 

「マルグリットさん……、私はこの人の言ってることは嘘じゃないと思います。確かに不思議な雰囲気な人ですけど。」

 

「……分かりました。まだ完全に信用はしませんが確かに悪意は感じませんし、まずは敵対心は無いと信じましょう。」

 

「ありがとう。ただ差し支えがなければで良いが聞かせてくれ、マリオンは除隊しているのか?」

 

 中立のコロニーで普通にこの部屋に住んでいる事を考えても兵士として戦っているにしては不自然だ。もしかしたら昏睡中にここに移動したのだろうか?そう言えば媒体によってはニムバスがサイド6の病院で保護していたって話もあったか?

 

「……マリオンは既にジオン軍とは離れています、貴方に深く説明する理由もありませんから詳しくは話しませんが。」

 

「あぁ、それで構わないよ。俺にとっては嬉しい事なんだ、戦いは似合わないからな彼女には。」

 

「本当におかしな人ですね、まるで昔からマリオンを知っているかの様な口振りで。」

 

「ん、まぁ色々とね。……それで俺はこれからどうなるんだ?いや、どうするつもりなんだって聞いた方がいいかな。」

 

 マリオンはともかくこのマルグリットという少女の方は恐らくジオン軍人だろう。銃を持っていたし、先程までの動きは除隊しているにしては機敏過ぎるものだったし。

 

「私としては貴方をこのまま放っておくのはリスクが高過ぎます。敵意は無さそうと言ってもそれは個人の感想でしかありませんからね。それにこの場所をジオン、連邦のどちらにも知られたくはないんです。」

 

「ならどうする?俺を殺すか?」

 

「……馬鹿を言わないでください、全力で抵抗されれば私達2人では本気を出しても貴方に勝てる筈もありません。はっきり言いますけど今の状況では此方が不利で逆に貴方に私達をどうするつもりなのか聞く状況なんですよ。」

 

 確かに体格差もあるし武器も無い状況だ、これなら実力行使になっても彼女達に勝ち目はない。まぁ此方としては本当に争うつもりはないので何とか穏便に事は済ませたいのだが……どうするか。

 

「うーん、俺としては本当に君達に危害を加えるつもりは無いからな。このまま見逃してくれるなら有難いけど。」

 

「その言葉を信じるなら、取り敢えず目を隠してもらってからエレカで街中まで連れて行きます。それならここの場所も秘匿出来ますし貴方もそのまま連邦軍の拠点に帰ればいいでしょう。」

 

「あぁ、その案ならOKだ。中立のコロニーだしいざこざを起こしたくないしな。」

 

 戦争はしているがあくまで此処は中立コロニーだ、そんな場所でまで争うつもりはない。彼女にしても敵ではあるが悪い人物ではないし穏便に解決出来るならその方がいいだろう。

 

「あの……最後に一つだけ……、ニムバスは最後どんな死に方をしたのか……それだけ教えてくれませんか?」

 

 マリオンが真剣な眼差しで問い掛けてくる、彼との関係は本当に問題無かったようだ。

 

「彼は……そうだな、単騎でネオ・ジオンや連邦軍のトップを抹殺しようとして、実際にその寸前まで追い詰められるくらい鬼気迫る戦いをして散って行った。ただ俺が感じたのはそれよりも……最後の最後でまともに動く筈の無い機体でキャスバル総帥を討てたにも関わらず連邦側のEXAM機の頭部のみを破壊したんだ。あの姿には敵ながら君を解放しようって想いを感じた気がした。」

 

「そう……ですか。ありがとうございます、それだけでも分かっただけで嬉しいです。」

 

「それではそろそろ動きましょうか、余り人目に付くような事は避けたいですし。」

 

「あぁ、頼むよ。」

 

 マルグリットと呼ばれる少女が俺に目隠しをする、何というか見る人が見れば怪しい光景だ。そのままゆっくりとエレカまで誘導され運転が開始される。

 

「そろそろ良いでしょう。マリオン、彼の目隠しを取ってください。」

 

 目隠しを外されると、そこは既にサイド6の郊外だ。これでこのアクシデントも終わりみんなの所へ帰り……ん?

 

「あぁっ!?」

 

「な……、どうしたんですか急に大声を上げて。」

 

「しまった……!忘れてた……!」

 

 そうだ……アーニャへのプレゼントをまだ購入していなかった!時計を確認する、まだ時間はあるが未だに何を買うかも検討がついていない状況だ……どうしよう。

 

「あっ……そうだ。」

 

 後から考えると混乱し過ぎて頭のネジが外れていたんだろうと思うくらい支離滅裂な発言なのだが、今の俺はそれくらい焦っていたのだろう。恐らく同年代であろう二人の少女に向かい、こう発言したのだ。

 

「すまない二人とも。とても迷惑だろうけど、ちょっと買い物に付き合ってくれないか?」

 

「……?」

 

「……はい?」

 

 

 

 この時真顔で「この人は何を言ってるんだろう。」と思ってそうなマリオンと「突然何を言い出したんだこの人は。」と呆れた顔をしたマルグリットの反応を見て、俺は自分がアホみたいな事を言ってると言うことを実感したのだった。

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