機動戦士ガンダム 紺碧の空へ   作:黄昏仮面

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第53話 激闘の宇宙

「ほ、本当にこの数でやれるのかい!?」

 

 第三艦隊のMSの規模を見てララサーバル軍曹が焦る、確かにこのまま要塞を攻略しろと言われたら無理な話なんだけど。

 

「さっきも報告があっただろララサーバル軍曹!今は主力のティアンム艦隊を信じるしかない!俺達は俺達のやれることをやるだけだ!」

 

 そう言いながら放たれた衛星ミサイルを撃墜する、ああは言ったが流石に攻撃の規模は今までとは比べ物にならない。焦る気持ちも分かるぜ全く……!

 

「中尉の言う通りですよカルラさん!ここで怖気ついてたらホワイトベース隊のみんなに笑われますよ、見てください!」

 

 グリムの言葉にホワイトベースのいた位置を確認する、そこにはまさに言い表すなら縦横無尽か……言葉の通りに宇宙を駆け巡る3機のガンダムとそれを援護するガンキャノンとコアブースターがいた。

 

「……グリム、あれは笑っても仕方がない連中だ。あれを見習おうなんて思うなよ?」

 

「何弱気になってるんですか中尉!」

 

 仕方ないだろ、化け物だよあれは……そうは言いながらもコツコツと衛星砲や浮き砲台を撃破していく、あんな活躍は出来なくても無難に仕事はこなしてみせるさ!

 

「お喋りはそこまでです皆!敵要塞ゲートからのMS部隊が発進されました!」

 

「……来たか!」

 

 ザクを中心にリック・ドムが混じっている。ザクもザクでF型以外もいるんだろうが流石にここからでは機種は特定できない。

 

「ここで食い止めるぞ!アンゼリカやホワイトベースに近寄せられては堪ら無いからな!」

 

「全機!密集形態、確実に一機ずつ仕留めて行きますよ!」

 

『了解!』

 

 フォーメーションを組み、敵の攻撃に備える。此処からが正念場だ……!

 

 

ーーー

 

「敵は強力なビーム撹乱幕を張ったぞ、攻撃手段をミサイル攻撃に切り替えザクやリック・ドムを出撃させて侵攻に備えよ!主力のティアンム艦隊の動きはどうか!」

 

 突撃艇とMSによるビーム撹乱幕で要塞のビーム兵器を悉く無力化してきたか、であれば実弾装備のザクやリック・ドムで攻撃をすれば良い。しかし気になるのは主力である筈のティアンム艦隊だ、大規模な索敵をしているにも関わらず未だ足取りが掴めずにいる。

 

「は……!ミノフスキー粒子の非常に濃い所を索敵中ではありますがダミーが多く……。」

 

「それが戦争というものだ!リックドム数十機とビグ・ザム、それに新型のゲルググを寄越してもらっておきながらむざむざソロモンを落とされてみろ!我々は国中の笑い者になるぞ!」

 

 ギレンやキシリアの二人は政争を気にしてソロモンに物資を送るのを渋るかと思っていたがア・バオア・クーからはリック・ドム数十機と試作中のMAであるビグ・ザム、グラナダからは未だビーム兵器は実用化されてはいないがそれでも高性能機であるゲルググを寄越してもらっている。

 あの二人も流石にソロモンを落とされては敵わんと言う事か。

 

「念には念を……第七師団に援軍を求めては如何でしょうか?」

 

「キシリアにか?それこそ笑い者ではないか、それにだ、このソロモンに今攻めて来ている軍勢が連邦の全戦力とは言えん。無理に援軍を要請してグラナダを攻め込まれてみろ、目も当てられん事になるぞ。」

 

 連邦はティアンム率いる第一艦隊の他にも第二、第三、第四艦隊で編成されていると報告があった。この陽動と思われる艦隊がそのどちらかは分からんが全軍で侵攻しているとは限らず、状況次第ではどう動くか検討も付かん。兵力を割くのは危険だ。かと言ってソロモンがこの戦力でも持ち堪えられるかは戦況次第だが……やはりティアンム艦隊の行動が肝になりそうだ。

 

「失礼しますドズル閣下。」

 

「おぉコンスコンか、何用だ?」

 

「今攻めて来ている艦隊に木馬が確認されました。恐らくはシャア……いえキャスバルもいるでしょう。」

 

「先日の汚名を返上したいと言うわけか。」

 

「その通りであります。リック・ドム、それとゲルググをお貸し頂ければ……。」

 

「貴様も欲張りな男だなコンスコン、本来であればそこまでの戦力をお前に与えるべきではないが貴様の手腕とそれだけの戦力があればキャスバルの奴を撃ち落とす事も可能であろう。奴を失えばネオ・ジオンの求心力は低下する、それは公国の利にもなるからな。」

 

「ご期待に添えられるよう尽力致します!……それでは!」

 

 コンスコンは慌ただしく司令室を後にする、サイド6では辛酸を舐めたようだが奴の実力であれば次こそは木馬ごとキャスバルを葬る事が可能な筈だ。

 

 

ーーー

 

「中尉!後ろにドムです!」

 

「分かった!……そこだ!」

 

 マシンガンを当てドムを撃破する、やはりテスト段階の未完成品とは言え全天周囲モニターのおかげでグリム機の視野はかなり広いようだ。おかげでかなり助かっている。

 

「皆さん、一旦デブリを盾に一時疲労を回復しましょう。」

 

「そうだねえ……流石に一息つきたい所だよ。」

 

 かれこれ三十分くらいは戦っているのか?アニメでは半分くらいの時間でソーラー・システムを使用していたような気がするが未だに使用される気配がない。

 まさかソーラー・システム以外の攻撃手段か……?それとも此方がある程度優勢に戦えているからミラーの展開を万全にしているとかか?気にしていても仕方ないんだろうが……。

 一旦漂っているデブリを盾に休憩と弾薬の交換を済ませる、少しは落ち着けるかと思っているとガトル爆撃機が視界を横切る。

 どうやら休憩する余裕なんてないようだ。

 

「敵爆撃機確認!行動を再開します!」

 

 アーニャの声と共に再びフォーメーションを組み直し攻撃行動に移る、その時だ。

 

「っ!敵のMS部隊確認!中佐……データに無い新型です!」

 

 グリム機からの通信にポイントを確認するとそこにはまだソロモンでは実戦配備されていなかった筈のゲルググが映っていた。

 

「な……ゲルググだと……!?」

 

 腕に持っている装備を見るにビームライフルではなくザクやドムと同様のMMP-80タイプのマシンガンだとは思うがそれでも機体性能は高いのでかなり危険なMSだ。

 

「用心するんだ!敵は新型だけじゃないぞ!連携される前に何とかしないと!」

 

 この時点でゲルググに乗ってるような連中だ。まず機体性能に頼るだけのパイロットじゃない。幸いカラーリングは通常の機体ばかりだから、原作のエースパイロットでは無さそうだがそれでも油断は禁物なんだ。

 

「分かっています!各機敵を牽制し動きを止めてください、私が狙い撃ちます!」

 

 そうと決まればヴァイスリッターのバーニアを吹かせマシンガンで狙いをつける、しかしザクやドム相手にはある程度無難に付けられていた狙いも中々決まらない。

 

「クソ……!速い!」

 

 やはり機体性能がその二種より上なせいで速攻撃破には至らない、このままでは……そう思っているとゲルググにバズーカが命中し一機が爆散する。

 

「ジェシーさん!大丈夫ですか!?」

 

「アムロか!」

 

 アムロのアレックスが援護に駆けつけてくれた。どうやらホワイトベースの方もかなりの混戦となっているようだ、いつの間にか持ち場がほぼ同じになっている。これでゲルググ相手でも何とかなりそうだ。

 

「ソロモンの守りは硬い、対要塞兵器と言うのは本当に使われるのだろうな?」

 

 キャスバルのガンダムも合流する、それはこっちが聞きたい所だ。

 

「ティアンム艦隊の動きが分からない以上我々は任務を遂行するしかありません。今は敵を引きつける事に専念するべきでしょうキャスバル総帥。」

 

「エルデヴァッサー中佐の意見には賛成するが……敵はどうやら我々に狙いを定めたようだ。」

 

 要塞の裏手からチベ級一隻とムサイが二隻MSを引き連れ砲撃を開始してくる、どうやら先程のゲルググはこの艦隊から発進されたようだ……お供にゲルググを引き連れている。

 

「チベは火力と対空迎撃に優れている、迂闊には近寄るな!」

 

 キャスバルの警告から間髪なく艦船からの砲撃が始まる、狙いはアンゼリカやホワイトベースでは無く俺達MS隊だ!

 

『あの赤い機体を狙うのだ!アレにシャアが乗っているに違いない!それにガンダムというヤツさえ落としてしまえば此方が有利になる!』

 

 艦砲が絶え間なく発射されるも狙いは俺達アンゼリカのMS部隊ではなくホワイトベース隊、それもガンダムが集中的に狙われている。敵もそれだけガンダムが脅威と認識しているのだろう。それに艦砲だけでなくMSによる攻撃も始まった、此方はそこまで攻撃されていないにしても全く狙われていない訳ではない、攻撃は熾烈さを増していく。

 

「クソッたれ!奴らの狙いはガンダムじゃないか!?向こうに火力が集中し過ぎてるぞアーニャ!」

 

「やはりキャスバル総帥の機体狙いでしょう、赤い機体では彼等も疑う余地はありませんから!」

 

「何とかMS部隊を突破して艦船を狙えれば……!」

 

 こちらも敵も頭さえ潰してしまえば……そう考えるも敵の数がそれを許してはくれない。

 流石にアレックスやキャスバルのガンダムと言えどまだ二人ともニュータイプとの戦闘が無く、完全にニュータイプとして覚醒してはいないからか、それともゲルググのパイロットの技量が高いからか簡単には押し通る事が出来ていないのだ。

 

「しかし敵がホワイトベース隊を集中的に狙うのなら此方が動くしかありません!一点突破を掛けます!」

 

「……っ了解!アムロ、キャスバル総帥!俺達が艦船を相手している間にMS部隊は頼んだぞ!」

 

「了解です、そちらはジェシーさん達に任せます!ここは僕達が!」

 

「MS部隊は引き受ける、敵を侮るなよアンダーセン中尉。」

 

 アムロとシャアに任されちゃ、やってやるしかないだろ……!俺達アンゼリカ部隊は縦一列になり戦場を駆ける、ララサーバル軍曹を順に俺、グリム、そしてアーニャを最後尾にし前方をララサーバル軍曹が、上下左右を俺とグリムが、そして後方への対応をアーニャがすることで余程の火力が集中しない限りは突破出来るであろう隊形だ。

 

『ちっ、マゼランのMS部隊か。ザクとリック・ドムを艦隊の護衛に回せ!』

 

 此方の動きを察知した敵もまた的確に動きを変えて攻撃をしてくる。やはり宇宙戦ではジオンの方が一枚も二枚も上手か……!

 

「こんにゃろおぉー!」

 

 ララサーバル軍曹のマシンガンが前方のザクを撃破する、それに乗じて此方も隙の出来た敵に狙いをつける。

 

「幾ら動きが上手くても、直撃させれば!」

 

 グリムのジムのハイパーバズーカもまた的確に敵を撃破していく。機体性能も上がっているし此方も少しはやれるというものだ。

 

『ええい!対空迎撃だ、敵を近寄らせるな!それにだ!まだゲルググの部隊はシャアを殺さんのか!ドズル閣下が見ておられるのだぞ!』

 

 チベとムサイの攻撃が激しくなる、所々に漂うデブリを盾にしながら何とか防ぐがやはり一気に突破は難しい……そう思った時だった。

 

 

ーーー

 

「ミラー展開完了!出力80%、敵はまだ此方を視認できておりません!」

 

「ふっ、第三艦隊は思った以上に敵を引きつけてくれた。ソーラー・システム、ミラー照点合わせ!狙いは敵要塞右翼のスペースゲート!」

 

 数千枚からなるミラーが光を集める、もう間も無くソロモンは丸裸になるのだ。

 

「閣下!敵グワジン級!並びに衛星ミサイルが此方に向かって放たれました!」

 

「馬鹿めが、今からでは間に合わんわ。ルウムでの借り……返させてもらうぞ。ソーラー・システム、起動!」

 

 ミラーが一斉に輝き、射線にある全ての物を燃やし尽くして行く。それは連邦軍に勝利をもたらす、まさに天の光であった。

 

 

ーーー

 

「この……輝きは!」

 

 間違いない、この光はソーラー・システムの物だ。ソロモンが……焼かれて行く……!

 

「す……凄まじい威力……これが対要塞兵器……!?」

 

「なんてパワーなんだい……!」

 

 アーニャを始めみんながその威力に驚いている。それは俺達だけで無く、ホワイトベース隊、それにジオン軍もそうであった。

 

『な!何事だ!』

 

『わ、分かりません!ソロモンが……ソロモンが焼かれています!』

 

『馬鹿な……レーザーだとでも言うのか……!?』

 

 敵は呆気に取られているのか攻撃が薄くなっている、今が絶好のタイミングだ。

 

「アーニャ!今がチャンスだ!」

 

「はい!全機、突撃!」

 

 全機散開して敵艦船に攻撃を仕掛ける、アーニャのフィルマメントの高出力ビームライフルがムサイを、ララサーバル軍曹とグリムのバズーカがもう一隻のムサイを沈める。

 

『コンスコン提督!ムサイ撃沈!本艦も危険です!』

 

『なんだと……!?ちぃ!木馬の部隊に向かわせたゲルググを呼び戻せ!』

 

『駄目です!全機シグナルロスト!反応ありません!直掩機も今からでは間に合いません!』

 

『馬鹿な……!ゲルググが……十機からなるゲルググが目を離した隙に全滅したというのか……!?』

 

『敵の白いMSが来ます!』

 

「ここからならぁ!」

 

 サブアームに固定してあるビーム・ルガーランスを取り出し、チベの下部に向けて一気に突っ込む。

 

『こんな……木馬だけでは無いと言うのか……!こんな連中が連邦に……!』

 

「うおおおお!」

 

 ビーム・ルガーランスがチベの装甲を貫く、その瞬間刀身を展開し大きく装甲が開かれる。

 

「喰らえぇぇぇ!」

 

 そこにビームを撃ち込む、それと同時に爆発に巻き込まれるのを防ぐ為に一気にチベから離れる。

 

『ド……ドズル閣下ァァァ!』

 

 チベが爆散していく。敵のMS部隊もホワイトベース隊のみんなが殆ど片付けてくれたようだ。

 ……しかしこれはまだ前半戦と言っても過言では無い、ソロモンの兵力はまだある程度健在であるだろうしビグ・ザムが出て来てもおかしくはない。まだまだ休める状況にはならないだろう。

 

 焼かれたソロモンのゲートに向けて味方の部隊がどんどん突入していく。

 俺達もまた、弾薬の補給を済ませ、要塞内部へと侵入するのだった。

 


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