機動戦士ガンダム 紺碧の空へ   作:黄昏仮面

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第64話 決戦 ソーラ・レイ④

「カルラさん!アンゼリカから最新のIFFのデータがレーザー通信で送信されてきました!……これは、ジオン公国の機体識別!?」

 

「さっきの艦長の通信が届いたってのかい!?」

 

 受信したデータを機体に反映させると、少なくはない数のジオンのMSと、それを乗せていた艦艇の識別が敵から味方へと切り替わる。

 

『聞こえるか連邦のMS!ソーラ・レイまで誘導する!こちらについて来い!』

 

「ジオンが……なんでアタイらを!?」

 

『ふん、俺達だってホントは連邦なんかと手を組むつもりなんて無かったがな。あのコロニーは、マハルは俺達の故郷だったんだ!俺達が必死になって戦ってた最中に国は俺達に何も知らせずあんなモンに改造しちまっていやがった。そんなの許せる訳がねえだろ!お頭だってそうさ!あんな……あんな慟哭を聞いちゃ俺達も堪忍袋の緒が切れるってもんだぜ!』

 

 それは、今から数十分前に遡る。

 

 

ーーー

 

「シーマ様!目標ポイントに到達!……あれが、ソーラ・レイってヤツなのか……!」

 

 艦内にいる全員が望遠カメラに映るソーラ・レイを確認し驚く。自分ですらあんな超兵器の存在など事前に知っていなかったら驚いただろう。

 だが、今の私にはそれ以外の事に驚き……いや気を落としていた。

 

「お前達……あのコロニーに見覚えがないのか?私にはアレが兵器には見えないんだよ……!」

 

 やはり、やはりあのサイド6で出会ったガキは預言者か何かだったのだろう。目の前にあるソレは紛れもなく自分達の故郷であるマハルそのものだった。

 

「なっ……ありゃあマハル……!?シーマ様、これは一体!?」

 

「アタシに分かる訳があるか!」

 

 半ば発狂した様に叫ぶ、最後の……そう、どれだけ手を汚しても最後に帰れる筈だった場所ですら、アタシは奪われたのだ。

 

『シーマ艦隊、ようやく所定の位置に着いたか!現在連邦軍がソーラ・レイに向けて奇襲を仕掛けてきている!数は少ないが虚を突かれた事で上手く迎撃出来ていないのだ!貴様達の艦隊は迫り来る連邦軍を迎撃しソーラ・レイを守るのが任務となる、ジオン軍人として使命を果たすのだ!』

 

 通信が入る。声の主はお飾りではあるが海兵隊の上官となるアサクラ大佐だ。

 

「その前にアサクラ大佐、この兵器は一体なんなのですか。これはアタシらの故郷であるコロニーのマハルじゃないか……!」

 

『その通りだ、ギレン総帥の特命により極秘に改造がされた。お前達のような愚連隊どもの住むコロニーが公国の存亡をかけた重要な兵器として生まれ変わったのだ、喜ばしく思うのだな。』

 

「ふざけるな……。」

 

『なんだと?良く聞こえないぞシーマ中佐。』

 

「ふざけるなと言っているんだ!アタシが……アタシらが何の為に今まで手を汚して来たと思っているんだい!毒ガスも……コロニー落としも……スペースノイドの独立の為だと、ジオン公国の為だと信じたからやって来たことだ!どんなに手を血で染めようと……最後にマハルに帰れさえすれば……そう思いながら戦ってきたアタシ達をどれだけ裏切れば済むんだい!」

 

 人が腐り落ち、もがき苦しみ死んでいく様が、今でも悪夢として出てくるのだ。それを大義の為だと、いつかはマハルに帰り安息が訪れるのだと信じて国の為に戦ってきたと言うのに……。

 

『だから何だと言うのだ?ギレン総帥の命に逆らいマハルを取り戻すつもりか?それともそれを理由にソーラ・レイを奪取しキシリアの為に使うつもりでは無かろうな!?』

 

 目の前で聞こえてくる言葉に、そう言う目でしか物事が見れないのかと怒りが込み上げてくる。政争のことしか頭に無いのか、自分達末端の兵士の感情など全く分からないと言うのか。

 

「馬鹿にするのもいい加減にしなと言っているんだ!政治闘争なんざアタシらには何の興味もないんだよ!大義の為と、理想の為と言いながら結局は自分達の利権争いの為に末端は切り捨てても構わないっていう、今のお前みたいな連中の為にアタシらは汚れ仕事をやってきたんじゃないんだ!」

 

『乱心したかシーマ・ガラハウ!上官に向かって先程から何様のつもりだ!』

 

【この宙域──全てのジオン──の兵士に──。私は地球連邦軍──】

 

 口論の最中、艦が広域通信を受信する。これは……連邦軍のものか?

 

【コロニー落と──、この兵器──スペースコロニー──が大量虐殺のための存在と化し──!この先の宇宙に、未来を生きる者にどう顔向けが出来る!?貴君らの戦いはそれを良しとするのか!】

 

 徐々に通信が鮮明になる。……これは現在進行中の連邦の船からの広域通信だろう。

 

『なんだこの通信は……!それよりもだシーマ中佐!これ以上我が軍に対して批判的な言動を取るようで有れば味方と言えど不穏分子として処理するぞ!よいな!?』

 

 この状況に、いつまでも人をコケにし続ける態度に思わず呆れて笑ってしまう。こんな……こんなものの為にアタシは、アタシらは戦ってきたのか。

 

「聞いたねお前達、これ以上アタシといると敵だと見做されちまうよ。……アタシの腹はもう括った。だがお前達まで巻き込むつもりはない、出て行きたい奴はさっさと──」

 

「よし!お前ら進路変更だ!目標はあのマハルをぶっ壊して作ったとかいうソーラ・レイだ!」

 

「アイアイサー!」

 

 デカい声で号令をかけるコッセルとそれに応える部下達。

 

「ちょっと待ちな、さっきの話を──」

 

「シーマ様!」

 

 此方に向けて普段は見せないような真面目な顔をするコッセル。

 

「同じですぜ、シーマ様。俺達ぁマハルに帰る為にと……それ以上にシーマ様の為に役に立とうって戦ってきたんです。今更なんの確認が必要って言うんですか?」

 

「お前達……。後悔はしないんだね?」

 

「当たり前でさぁ!なぁお前ら!」

 

「おうよ!」「あのアサクラの野郎は一発ぶん殴っておきたかったんだ!」「やっちまおうぜ!」

 

 反乱を起こすって言うのにどいつもこいつもいつもと変わらない陽気さだ。……そうさ、こんな馬鹿達がいるからアタシはやってこれた。今までもこれからもだ。

 

「よし!今からアタシらシーマ艦隊はジオン公国を離脱する!全軍に打電しな!」

 

「了解!」

 

「シーマ様!連邦のマゼランにMS部隊が進行してます!」

 

「連中に貸しを作っておけばこの戦いの後でも融通利かせてくれるかもしれないからね、援護に回る!アタシも出るぞ!」

 

「了解!」

 

 MSカタパルトに向かう、アタシらがソーラ・レイを破壊した所でマハルが戻る訳でもない、連邦を助けた所で今まで犯した罪が帳消しになる訳でもないしあの悪夢も醒める事は決して無いだろう。

 だが、落とし前だけはつけさせてもらう。アタシ達を駒にして散々汚れ仕事をさせてきたツケは払ってもらわないと気が済まない。

 

「シーマ様!大漁を!」

 

「あいよ!マリーネ・ライター出るぞ!」

 

 今までで一番自由な宇宙(そら)を、アタシは駆けていく。

 

 

 

ーーー

 

 

「ウッディ艦長!マチルダ艦長のコロンブスに敵機接近中!」

 

「くっ……!MS部隊は間に合わんのか!?」

 

「戦線の維持の為に護衛に回せる数も少なく……!」

 

「玉砕覚悟と分かってはいても……!」

 

 死地に飛び込んでいるのも、死ぬ覚悟も出来てはいる。だが頭では分かっていてもマチルダが死ぬかもしれないその現実を心が認めたがってはいない。マシーンになど人はなれないのだから当然ではあるが……。

 

「艦長!このまま全速でMSの進軍コースに割り込めばマチルダ艦長の盾くらいにはなれますよ!」

 

「バカを言うな!各々が最善だと思う手を尽くしてあの兵器を止めねばならん!今はマチルダの事よりも大事な……。」

 

「最善と思う事を自分達はやるだけです艦長!……そうでしょう?」

 

「お前達……。ふっ、どの道物資の殆どは放出してMS隊の補給は済ませたのだから後は盾になるくらいしかこの艦の使い道はない。だが……良いのだな?」

 

「えぇ!どうせ死ぬなら護るべき人の為に使いたいですから!」

 

 良い部下に恵まれた……、そう思いながら部下達に指示をする。

 

「よし!この艦を敵の進軍コースに向かわせマチルダ艦の盾となる!全速前進!」

 

『ウッディ!……いやウッディ艦長!何をしている!?』

 

「マチルダか、見ての通りだ。俺達はやれるだけの事はやった。後は盾になるくらいしか艦の使い道がなかったのでな。」

 

『……ウッディ!』

 

「最後くらいは格好良く決めさせてくれ。……すまない、お前と共に未来が見たかった。」

 

『ウッディ───』

 

 敵のMS部隊が此方に武器を構える、死を覚悟した瞬間敵機の爆発が目の前で起きる。

 

「なんだ!?」

 

「これは……艦長!アンゼリカより通信!敵の艦隊が此方に寝返った模様です!新たにIFFのデータが送信されました!」

 

「寝返り……!?この状況でか!」

 

 先程のアンダーセン艦長の広域通信は耳に入っている、だがまさか本当に敵が寝返るなどとは思いもしていなかった。

 

「だが……これは決定的なチャンスになり得る!各部隊に新たなIFFのデータを送信すると共に通達!戦線を立て直しあの兵器を止める!」

 

「了解!」

 

『ウッディ……これは……。』

 

「あぁ、俺達はジオンとも分かり合えるかもしれない。これはアンダーセン艦長の言っていた未来を生きる者達に顔向けできるような世界になる為の一歩だ。彼らと共に進もう!」

 

『……えぇ!』

 

 例えここで散る運命だとしても、彼らと共に歩んだという事実は消えない。その誇りを後世に生きる者達に伝えるために最後の最後まで諦める訳にはいかない!

 

 

 

ーーー

 

 

「これは……シーマ艦隊が寝返ったって事なのか?」

 

 アーニャのいる宙域へ向かう最中、途切れ途切れながらも聞こえてくる通信内容に胸に込み上げてくるものがあった。

 

【貴方が繋いだ言葉の結果、それが未来をより良くしようとしてる。】

 

「マルグリット……。」

 

【酔い潰れた貴方が偶然出会って、何気ない一言で彼女の心境を変えた。貴方が彼女と出会ったから、私はこの時代の流れでも貴方に会えた。たった数時間の出会いが、私達の運命を変える刻になった。】

 

「……。」

 

 マルグリットと出会ったあの日、酔い潰れてうろ覚えになっていた記憶にシーマ様と出会ったなんてバカみたいな内容があった。流石に夢だろうと思っていたがどうやら本当に彼女と出会い、何かを伝えたのだろう。

 恐らくはソーラ・レイ、マハルに関わる事だろう。彼女が変わるとしたらそれが一番の理由の筈だ。

 

【人は巡り会って変わって行く。私もお兄さんも、そして妹も。だから貴方には変えて行って欲しい、この素晴らしい世界を。】

 

「マルグリット……。あぁ、変えてみせるさ……!」

 

 間も無くアーニャのいる所に辿り着く。彼女が戦っている相手の憎しみが既にヒシヒシと伝わっている。

 憎悪と慟哭に塗れ、自分に蓋をしてしまっているマルグリットの妹……。

 

「だけど……まだ未来はある……!」

 

 ビーム・ルガーランスを構えモニターで狙いをつける。

 まさかジオングが此処に配備されているとは思わなかったが、ジェイソン・グレイが乗っていたMSにしろ、ジオンに残っているニュータイプは原作的にも多くはいない筈だ。シャアのいない今の状況なら彼女が乗っていても不思議ではない。

 

「コクピットさえ狙わなければ!」

 

 ジオングは頭部がコクピットになっている、そこに直撃さえさせなければ殺さずに止める事も可能な筈だ!

 そう思いながらビームを放つが、やはり反応速度が段違いなのか見えていない筈なのに躱されてしまう。

 

『ビーム……!?あの青い奴からの攻撃じゃない……!どこから……!』

 

「……!ジェシー!?」

 

「アーニャ!無事で良かった!」

 

「どうしてここに……、状況はあの兵器を止める事を最優先に動かなくてはいけないのに!」

 

「お前が心配だからに決まってるだろ?……大丈夫だ、あの兵器を止める為にジオンの中から動いてくれる人達もいるんだ。」

 

「ジオンからも……?」

 

 親父達の通信は流石に聞いている余裕がなかったようだ。これだけの相手だから当然ではあるが。

 

「そうだ。ジオンの中にだって、自分達が住んでたコロニーが兵器にされてまで使われる事に疑問を持ってる人達もいるんだ。コロニー落としをした事実はあるが、それだって自分達のサイドの為って大義名分があったからこそだった。」

 

 他サイドの住民を虐殺するといった凶行ではあるが、それまでの連邦の体制による圧政がそれを生んでしまった。連邦に属した他のサイドも敵なのだと、そうザビ家は認識させ大義名分を与えたのだ。

 

 だからこそ彼らジオンの兵士は知ってか知らずかは分からないが多くの人間が手を血に染めてまで戦ってきた。ジオンの為に、サイド3の為にと。

 だがこのソーラ・レイは違う、他のサイドのコロニーなどではなく自分達が住んでいたコロニーであり、彼らが護る筈だった場所であり還るべき家なのだ。

 自分達が護るべき場所が、住むべき家が、自分達によって壊されていく事なんてあっていい筈がない。そう思う国民がいると言うことをザビ家は理解していなかったのだ。

 

「まだアレは止められる……だからまず彼女を止めなきゃならない。行けるか?」

 

「えぇ、止めなければなりません。あの兵器も彼女も。」

 

『白い奴……!?なんでお前がここにいるんだ!グレイは……グレイは……!』

 

「……っ!まずい!」

 

 ジオングからオールレンジ攻撃が放たれる、流石に圧倒的な火力だ。それに彼女から放たれる憎しみのプレッシャーがヒシヒシと伝わってくる。

 

『グレイを……!グレイも殺した……!?姉さんも……お姉ちゃんも……うわぁぁぁぁ!』

 

「くっ……よせ!まだ奴は生きて──」

 

「ジェシー!」

 

 流石に俺の声が届く様な状況じゃない、彼女の精神はかなり危険な状態だ。マルグリットと、そしてジェイソン・グレイも失ったと思っているのか錯乱に近い状態になっている。

 

『みんな──みんな死んじゃえばいいんだ!』

 

 ジオングの攻撃は収まる気配はない、このままの状況では俺達2機では性能的にも押されていく一方だ……何とか彼女を止めなければ。

 

「止まれ!奴は……ジェイソン・グレイはまだ生きている!」

 

『そんなの信じるもんか!グレイは……グレイは死んでもお前を倒すって言ったんだ!グレイは嘘をついたりなんてしない!』

 

「く……っ!」

 

 簡単に声が届くわけがないか……、だがまだ諦める訳にはいかない!

 

「死に急ぐより、未来を見ろ!自分を捨てて戦うことなんてマルグリットは望んでなんかいない!」

 

『お前にお姉ちゃんの何が分かるって言うんだぁっ!』

 

 ヴァイスリッターの高速機動で格闘戦を仕掛けようと試みるが、やはりジオングは機動力が高い。オールレンジ攻撃の奇抜さもあるが機体そのものも簡単には捉えさせてくれない。

 

「何も分からないさ……!この世界のあの子の事を……俺は知ることも出来なくなった……だけど!」

 

 それでも彼女が望んだ未来は分かる、この子とジェイソン・グレイが死ぬ事なく、本来のジェシー・アンダーセンと彼女が歩んだ様な未来に辿り着いて欲しいと……マルグリットは望んでいる筈だ……!

 

「だからこそ……諦めてたまるかぁぁぁ!」

 

 ティターンズの毒ガスで死んでしまう未来だったが、それでもあの夢で見た二人は幸せな刻を歩んでいた。ジェイソン・グレイにも、彼女にも同じ様な幸福があるべきなんだ、憎しみだけじゃ何も変わらないのだから……!

 ヴァイスリッターの出力を上げて再びジオングへと接近する、回避さえされなければジェイソン・グレイがやったような出力の変更でサーベル状にビームを形成しない限りは原作の様に有利になる筈だ。

 

『やらせるもんか──』

 

【ヘルミーナ、もうやめなさい。これ以上私の為に戦うことなんてない。】

 

『……ッ!?』

 

 ほんの一瞬、ジオングの動きが止まる。数秒にも満たない事ではあったが、この極限の状況でその数秒は戦いの決着をつけるには充分だった。

 

「うおおおおお!」

 

 ヴァイスリッターでジオングの頭部を掴む、それと同時にアーニャへと通信をする。

 

「アーニャ!胴体を狙え!このMSのコックピットは頭部だ!」

 

「分かりました!」

 

 フィルマメントのビームライフルがジオングの胴体に直撃すると同時に無理矢理引き剥がす様に頭部を捥ぎ取る。力技だが何とか上手く行った!

 

『くそっ!離せ!離せぇ!』

 

「いい加減に……!ここだ、この座標まで行けば奴がいる!奴が死んでいたらまた俺を殺しに来ればいい!」

 

『なんで……!なんで……!』

 

「俺は確かにマルグリットが死んだ原因だ、だけど……もう起こってしまった事は変えられない。どうやったってマルグリットは生き返らない。けどだからって生きてる俺達が歩みを止める訳には行かないんだ……。身勝手な言い方になるが俺達はソーラ・レイを止める為に今を戦っているんだ。余計な犠牲は増やしたくない。」

 

 多くのジオン兵を殺している俺が言えた言葉ではない、マルグリットの大切な人達だからというエゴで逃がそうとしている。それでも……。

 

「ジェシー。行きましょう。」

 

「……あぁ。」

 

 それでも未来がより良い方向に向かうようにと願うからこそ、あの二人にはそれを見届けて欲しいという気持ちがあった。幸せだと感じてくれるような未来を、マルグリットと本来の俺が歩んだ幸せな刻のように。

 

 機動を上げて再びソーラ・レイへの進軍を再開する。

 敵のニュータイプ専用のMS、それにジオングを倒せたというガンダムの歴史を知っている者ならかなりの実績は上げた。だがそれよりも今はあのソーラ・レイの発射の阻止にだけ集中しなければならない。

 発射準備まで一刻の猶予も無い、敵はこの状況でなりふり構わず撃とうとしている筈だ。今からでは間に合うかどうかすら怪しいが歩みを止めるわけには行かない。

 

 いつか来る、未来の為に。


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