機動戦士ガンダム 紺碧の空へ   作:黄昏仮面

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第06話 新型MS開発計画

 俺の目の前にはあのスターダストメモリーのキャラであったジョン・コーウェンその人が立っていた。原作では新型ガンダム開発計画の立案者としてGPシリーズの開発に携わっていたがデラーズ紛争で失脚しその後はどうなったか語られていない、だが派閥争いに負けたのだからその後日の目を見ることはなかったのだろう。比較的善人ポジションではあるけど核搭載のGP02などを開発してたりタカ派と思われる言動もあり評価は連邦軍好きの人間でも別れる人物である。

 

「ははは、そう畏まらずに楽にしたまえ。私はレビル将軍の派閥ではあるが今回はゴップ将軍のお誘いがあって此処に来たのだ、痛くもない腹を探りに来たわけではないから安心するといい。」

 

 ポンポンと俺の肩を叩く准将、ガタイが良いからか無駄に痛いんだけどそんな事言えんよなぁ。

 

「失礼致しましたコーウェン准将、私に聞きたい事とは何でありましょうか。」

 

「うむ、まずはこれを見てもらえるかな。」

 

 そう言ってコーウェン准将は自分の電子端末を基地のコンピュータに繋げて大型のモニターに表示させる。

 其処にはMSの設計図、ガンタンクに似たものとガンキャノンに似たものが表示されていた。

 

「これは……もしかして『V作戦』の……?」

 

 もしかしても何も原作を見てたら誰でも分かると思うがこの世界では完全に初見なのでそれっぽく反応する、下手に知ってるような反応でもしたら後が怖いし。

 

「そうだ、以前から設計自体はされていたがV作戦に伴い少し変更を加えてはいるがね。これを見て君はどう思う?」

 

「そうですね……。」

 

 ちょっと考える、下手に答えてV作戦のMSに大幅な変更がかかったらどうしようかとも思ったけど今更原作通りに作るより更に発展させた方が前にアーニャが言っていたように早期に戦争を終わらせる事が可能かもしれない。物は試しに思った事を言ってみるか。

 

「まずこのMS……一つは殆ど戦車みたいな感じですけど、どちらも支援用のMSですね?」

 

「そうだ、本来はこれにもう一機白兵戦用の機体が有るのだがまだ設計途中でね。それの支援用に開発されているMSだ。」

 

 白兵戦用MS、恐らくガンダムだろう。流石にまだテム・レイ博士も試行錯誤の途中だろうな。

 

「個人的な視感ですがキャノンを装備した人型はともかく、このタンクもどきは機動性に難がありませんか?ザクに接近されたら幾ら火力が高くても機動性で不利ですよ。」

 

「ふむ……」

 

「しかし火力的には従来の61式戦車よりは遥かに高そうですね、拠点制圧や防衛には向いていると思います。」

 

「通常の戦闘には向いていないと思うかな?」

 

「厚い皮膚より速い脚と同じですよ閣下、どれだけ火力が高くても当たらなければ意味がありません。」

 

「成る程な……。」

 

 劇中では活躍する場面もあるが正直脚の遅さは戦場では致命的なものがある、ホワイトベース隊ならともかく通常の部隊では対MS戦闘時にあの火力は持て余す事になるはずだ。なら拠点制圧や防衛に専念した方が有用ではある。

 

「キャノンを装備しているMSに関しては特に気になる所はありませんね、中距離支援のコンセプトとしては充分なレベルだと思います。」

 

「やはり現場のパイロットの意見は新鮮なものだな、開発局だけだとどうしても既存の考えでモノを語る事が多いから似たり寄ったりな意見になりがちなのだよ。」

 

 それは多分ジオンも一緒だろう、ゲテモノ系誰得MSなんかは正に現場を知ってるパイロットからしたら何の役に立つんだよと言われるレベルの物もあるし。あの手のMSの開発者は絶対現場見てないだろうし。

 

「パイロットに一番都合が良いのは戦局に応じて装備を変更できる機体ですかね、コンセプトありきで作るより最初からMS自体に拡張性を持たせて場面に適した状態で戦えるのが理想的ですね。」

 

 ジオンのMSは確かに素晴らしい出来の物が多い、ただジオニックやツィマッド、MIP社などMS開発が枝分かれしてそれぞれ独自のMS開発になり機体の乗り換え時のコクピットの違いだったり他社の部品が合わなかったりとパイロットや整備兵に不便を強いる状況が多い印象だった。

 実際統合整備計画なんて規格合わせの計画が発令されるくらいだ、現地のパイロットも新型が来ても乗りこなせ無かったら意味がないと旧来のMSに乗り続けたって話しも見たことあるしそれなら最初から一つの機体を基に場面に応じた装備を使わせた方が効率が良い。特化型の機体は作戦毎に必要なら数機要請すればいいのだ。

 

「面白い意見だ、参考にさせてもらうよ。だが一機のMSで場面に応じた装備をと言うのは現時点では難しいだろうな。」

 

「何故ですか?」

 

「単純にデータ不足だよ少尉、現時点の開発力で仮に一機のMSに拡張性の持たせようにも基準となるデータが存在しなければ一方の装備に対応できても別の装備では支障が発生するかもしれない。V作戦のMSは正にその実用データの回収も兼ねている。」

 

 流石はガンダム開発計画を推し進めた人物と言うべきか、連邦内でもここまでMS開発に理解のある将校は中々いないだろう。 

 確かコーウェン准将は技術屋上がりだった筈だ、この一年戦争の時期でもノエル・アンダーソンちゃんが書いたMS戦術論にいち早く理解を示していたし今の話で今後のMS開発がスムーズになると良いのだが果たしてどうなるのか。

 

「君みたいな優秀なパイロットがこんな所で埋もれているとは思わなかったよ、正直なところゴップ将軍が我々のV作戦にムキになって作り上げた部隊だと思っていたからな。」

 

 どちらかと言えばムキになって部隊を作ってくれと頼んだのはアーニャの方でゴップ将軍は日和見な感じではあったが側から見るとそんな感じに見えてたのか?……まぁ確かにMS開発に消極的だった人間がいきなり運用部隊を作ったとあれば直接関わってない人間にはそう見えても仕方ないか。

 

「自分達は単純に連邦のMS開発に貢献したいだけですよ閣下。まともなMSさえ開発出来ればジオンとの戦いも有利になって早期に決着を付けられるって自分の上官も言っていましたから。」

 

「君の上官……アンナ・フォン・エルデヴァッサー少佐か。彼女も相当優秀だと聞いているよ、士官学校で数少ない飛び級で卒業した人間だからな。噂を聞く事も多い。」

 

 どんな噂なのかは気になるがそれよりも聞きたいことがあった。

 

「閣下、これらは所謂試作機で量産を前提とした設計が為されてるんですよね?」

 

「あぁ、まず採算度外視で試作機を組み上げてその後量産化をする為にコストを調整して実戦配備する流れになっている。MS開発のノウハウが無い以上、試作機の完成には糸目はつけられないのでな。」

 

「量産機の完成はどのくらいになりそうですか?」

 

「こればかりはまだ何とも言えんな、だが現状では恐らく数ヶ月以上先の話になるだろう。何もかもがまだ手探りの状況だからな。」

 

 数ヶ月以上先……それでは7,8月に陸ガンや陸ジムが配備された時期と変わらない、やはり史実を変えようとするのは難しいか……?

 

「そう思い悩むな少尉、今言った通り現状のままなら数ヶ月先だが君たちのようなテスト部隊が成果を出し続けてくれればそれだけ開発速度も上がる筈だ。頑張りたまえ。」

 

 俺達の活躍次第……パイロットで史実を変えるのは難しいだろうなと思っていたがこういう形で歴史を変える事も可能なんだな、そうなると俄然やる気が湧いてくる。

 

「ハッ!了解であります!」

 

 熱を帯びる俺の声にコーウェン准将も満足気に頷く。

 

「そろそろ時間だな、今日はとても有意義な時間を過ごせたよ少尉、レビル将軍らに持っていく土産話も多くなった。また会える時を楽しみにしているよ。」

 

 そう言うと側近を引き連れ准将は開発室を後にした。また会う時があればその時は新型でも持ってきて欲しいなぁとか図々しく思いながら俺も開発室を後に……って確か開発室の人間がコーウェン准将関係なく用があるって話だったじゃないか。危うくそのまま帰る所だった。

 

 その後開発室の人達との話し合いで盛り上がる、「どんな装備があれば有効活用できますか!?」とか「現状の兵器でもMSの支援は可能だからどんな使い方をしたら良いですか!?」みたいな建設的な意見から「ドリルとかロマンあっていいと思うんですけどどうですか!?」ってお前のネジが外れてるんじゃないかって意見までたくさんだ。

 さっきのコーウェン准将との話しがここのスタッフにも熱を持たせたのか和気藹々とした雰囲気で意見が交わされ纏められていく。こちらの成果もゴップ将軍を通して結果を出していくだろう。

 量産機開発までスムーズに進ませる為にも、みんなと力を合わせて頑張って行こう。そう思わせるとても充実した一日となった。

 




  ーー南米ジャブローのとある一室にて

「どうだったかねコーウェン准将。」

 そう私に声を掛ける人物、正直私はこの人物には好感が持てずにいた。レビル将軍のように前線には立たず、クーラーの効いたジャブローのオフィスで堂々と構えているだけのモグラだと思っていたからだ。

「いやはや、正直かなり驚かされましたよ。ジャンク同然のMSを運用し、尚且つ戦果を上げて敵の新型まで鹵獲した部隊。第774独立機械化混成部隊でしたな、パイロットと話をしてみるとMS開発に対しての視野も広いではありませんか。我々のV作戦のMSにも指摘を頂きましてね、開発局は大慌てですよ。」

 無駄な駆け引きはせず率直に感じたことをそのまま話す、この手の輩に下手な小細工を使うと逆に痛い目にあうと直感的にそう思ったからだ。

「ハハハ、それはアンダーセン少尉だろう。彼は上官相手でも臆しない所があるからな、父親に似たのだろう。」

 彼が連邦海軍きっての名将であったアンダーセン提督の息子だと知ったのはレビル将軍に報告をした時だった、会った事は無かったが彼も上官に臆せず自身の信念を通した人間であったと聞いている。

「聞いた話によると個々に特化させた機体を作るより戦況に応じた装備に換装できるMSを開発したらどうかと聞いてきたみたいだね。」

 耳が早い、まぁ自分の庭で起こったことだ。口の早い人間がすぐに内容を報告したのだろうと呆れる。

「面白い意見ではありましたがデータ不足で採用されるのはかなり後になると伝えましたよ。残念がっていました。」

「それでもだコーウェン准将、君がそのMS開発の先導を取れば早期実装が可能になるのではないかね?」

「何を仰いますかゴップ将軍、私は一准将でしかありませんV作戦に少し関わらせてもらっている程度の私がMS開発の指示などと。」

 突然何を言い出すのかと思ったが確かにあの理論でMSを開発出来れば低コストで大成果が見込めるものをと思ってはいた、開発局からは難色を示されたが。

「私はこの戦争中の事だけを考えている訳ではないのだよコーウェン准将、この戦時中に間に合わなくても例えば戦後であっても構わない。考えてみたまえ、戦争中は必要だったMSも敵がいなければ無用の長物だ、しかし治安維持の為には一定数必要になる。その時のコストは低ければ低いほど良い、そうだろう?」

 確かにそうだ、兵器というのは平時では煙たがられるだけの存在でしかないし軍事費もタダではない。民衆の目もあるから戦時と違い贅沢に使える訳でもない。

「平和になった場合もだが、仮にジオンと同じような勢力が現れた時に場面に応じた兵器を使えるというの利点だね。そうなった時は君の株が上がるというものだよコーウェン准将。」

「先程も言いましたが私にはそんな権限は無いとーー」

「無いなら作れば良いじゃないか。」

 何なのだこの男は、さっきから腹の底が全く見えない。何故私のような一将校にこんな話をしているのだ?

「正直に話すとしよう、この戦争が終われば私やレビルはお役御免になるだろう、年齢も年齢だからね。だからそうなった後の軍を率いる者が気になるのだよ。」

「序列で言えばティアンム、エルラン両中将がいるではいるではありませんか。」

「ティアンムは軍人としては優秀だがトップに立つ器では無いしエルランは穏健派だ、平時は良くても戦時になれば怖気付くタイプだよ。だからこそ君に目を掛けてる訳だコーウェン君。」

 トントンと私の肩を叩く、この男の言っていることは本音なのか嘘なのか?これではモグラではなく狸だ、化かされているかのように感じる。

「今度の会議で君を技術将校として推薦しておくよ、その時に彼の考えたMS理論でも話して計画してみたらどうだい?レビルも決して無碍にはせんだろう。結果が出せればレビル閥の後継者もあり得るかも知れないぞ?」

 私が……レビル将軍の後継者?ふとその想像が頭をよぎった、私が連邦軍のトップとして立っている姿を。その愉悦さを。

「君の活躍に期待してるよコーウェン君。また会おう。」

 そう言うとゴップ将軍はオフィスから立ち去る、私の心に野望と言う種を植え付けて。
 この植え付けられた野望という種は邪念という養分を吸い取りどんどんと芽を吹かそうとしていた。
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