「ガンダムの開発!?俺達がか……!?」
ジャブローから帰ってきたアーニャ達に、連邦軍再編計画の中で新型ガンダムの開発を提案されたという報告を聞いて驚く。
新型ガンダム開発計画は確かにガンダムの歴史の中で行われるのは知っているが、まさか俺達もそれに関わるなんて思ってもいなかった。
「はい。コーウェン中将がアナハイムを担当し、私達がEC社でグノーシスとは別にガンダムの開発も並行して行う事となりました。叔父様が少しでも私の為にと最後にしてくれた事です。」
……そうか、ゴップ将軍もそろそろ軍を引退する時期か。その為に少しでもアーニャが軍で発言力を上げる為に計らってくれたのだろう。
期待を裏切る訳にはいかないなこれは。
「しかしガンダム……ガンダムか……。」
いきなり新型ガンダム作れと急に言われてもなぁ……グノーシスですら四苦八苦しているのに。
「あまり良いアイデアは浮かびませんか?」
「うーん……そういう訳ではないけどな……。」
この計画で結構な額の軍事費が動く訳だし時代を先取りしてグリプス戦役時代くらいのMSでも開発したい気持ちもあるが……。
「ガンダリウムγなんて無いしなぁ……。」
「何か言いましたかジェシー?」
「いや、何でもないよ。」
第二世代MSはその多くがクワトロがアクシズから持ってきたガンダリウムγ精製技術によってそれを使用する事で装甲の硬さと軽量化を両立させる事が可能になり、それによってムーバブル・フレームを問題無く採用できる事から発展して行ったのだ、今の状況ではムーバブル・フレームの初期版みたいなのを採用しても結果的に重量が増えて重MSとなるだろうから時代を先取りなんてあまり出来そうもない。
使えるとしても装甲はルナ・チタニウム……所謂ガンダリウムαくらいが限界か、しかし通常のガンダリウム合金はその精製方法が特殊である事とコストが高いからな……まぁガンダムを作るのであればコストはある程度は度外視しても問題ないだろうけど。
「クロエも呼ぶか、一度全員で話したほうが無難だろう?フィーリウス隊のみんなも呼ぶぞ?参考にする意見は多いほど良いもんな。」
「そうですね、30分後にミーティングルームに集合しましょう。」
そしてグリム以外の今ペズンにいるリング・ア・ベル関係者全員が集まる。さて、どういう意見が出てくるかな。
「それでは先程ここに集まる前にも少し話しましたが連邦軍再編計画の中で新型ガンダムの開発をアナハイムとEC社に打診されました。連邦軍から軍事費は降りるのである程度コストは度外視して構いません、何か提案はないでしょうか?」
「よろしいかなエルデヴァッサー大佐。まずこの新型ガンダムとはどの様な定義を持ってガンダムと呼ぶつもりなのです?」
フィーリウス隊のガイウスから意見が挙がる、確かに言われてみれば確かに何をもってガンダムと呼べば良いんだ?ガンダムフェイスしてれば良いみたいな漫画的認識で良いんだろうか?
「そうですね……、一年戦争で英雄的活躍をした機体ですから所謂ガンダムフェイスというのは必要になります。あまり好ましい表現ではありませんがジオン軍残党にとって『ガンダム』という存在は忌避すべき存在でありますから威圧を与えるという点では欠かせない物となるでしょう。」
「公国軍残党への心理的圧力……。」
フィーリウス君が考え込む、彼らからすれば以前の同胞であるからあまり心地の良い内容ではないなこれは。
「外面だけガンダムにして中身は今開発してるグノーシスじゃダメなのかい?アタイ的にはグノーシスですら自分達で頭捻って作ってるシロモノなんだし装甲とか一部のパーツ何かをグノーシスの物よりアップグレードすれば充分ガンダムだと言えるもんが出来ると思うけどねえ?」
戦闘の事になるとやたらと普段より知的になるなララサーバルは。
確かに量産機としては破格の性能になるだろうと俺達が必死に作り上げてるグノーシスを色々な部分をアップグレードしてガンダムフェイスにすればそれだけでも新型ガンダムと言えなくもないか。
「技師長としての意見だけど、カルラの案も悪くはないし潤沢な予算があるのならハイスペックグノーシスを作ってそれをガンダムって呼ばせれば性能的な面では問題ないと思うわ。けどアンナちゃん、これはどちらかと言えば政治的な案件でしょ?アナハイムと競わせて、どっちが勝つか負けるかってやってるような状況ならそんなのじゃインパクトに欠けるわ。必要なのは対外的に分かりやすいくらい大袈裟な機体を作って宣伝する事じゃないかな?」
……成程なぁ、確かにグノーシスのアップグレードじゃ高性能機なのは間違いないけどただそれだけの機体って認識で終わる訳だ、別にそれでも治安維持の点では問題無いけどアーニャのこれからの事を考えると確かに大袈裟にしてでもインパクトのある機体で宣伝でもした方がウケは良いのだろうな。
「俺達の作ってるグノーシスはメガセリオンと同じで様々な戦況に対応する為に素体に様々な装備を装着するって考えで作ってるけど、新型のガンダムだと喧伝するなら何かに特化させた機体か、或いは新技術を搭載した機体を目指すのが良いかもしれないな。」
「何かに特化させた機体と新技術を搭載した機体ですか……、誰か提案はありませんか?」
「新米二人も意見を出して良いんだぞ?この場合俺達みたいに既にMSに対して固定概念がある人間よりは二人の方が新鮮な意見が出ると思うぞ。」
「はい!はい!よろしいですか大尉!」
「元気が良いなベアトリス、何か提案があるのか?」
新米の一人、ベアトリス・フィンレイ少尉が元気良く手を挙げる、期待に応えようとする姿勢は嬉しいものだ。
「えーっと……そう!機体もそうですけどやっぱりこの新型ガンダムってパイロットが乗るわけじゃないですか!?」
「あぁ、MSだからそうなるな。」
「EC社が作るのであればEC社に縁が深いパイロット、つまり大佐や大尉が乗るべきだと思うんです!ですから大佐のフィルマメントや大尉のヴァイスリッターのアップグレードされた機体なんて如何かと思います!」
「フィルマメントとヴァイスリッターのアップグレード……。」
確かにこの2機はコンセプト自体は今でも通用するし狙撃特化と高機動型の白兵特化の機体なら世界観は違うけど00のデュナメスやエクシアみたいなのをイメージすれば無難な仕上がりになりそうだな。
「あの、私もよろしいでしょうか?」
いつも通りのクールな表情で手を上げるのはもう一人の新米セレナ・エレス少尉だ。
性格は二人とも正反対だが仲は悪くないしライバル意識もあるのでこうやって対抗心を燃やしてくれるのは良い事だ。
「セレナにも何か提案があるのか?」
「はい。EC社はジオニック、そしてハービック社も一部吸収しています、であれば航空機の技術をMSに転用するのも良いかと思います。」
航空技術のMS転用……つまりは可変MSって事だよな?今突っ込みを入れるのも良いが詳しく聞いてみるか。
「MSが幾ら機動性に優れていると言っても、それは地上や宇宙空間のみで制空権の確保には未だ航空支援が必要なのが現実です。しかしMS産業が勃興し航空機や戦車と言った旧時代の兵器は必要性が皆無とまでは行きませんが重要性が低くなったのが現実です。サブ・フライト・システムでMSに下駄を履かせるなどジオン公国は独自の航空戦力としての役割をMSにも担わせようとしていました。それをMS単独の機能として持たせればどの戦局にも対応し得る機体が出来上がると思います。」
着眼点は良い、実際の宇宙世紀でも航空機は0100年代でも制空権確保の為に使われていたし、爆撃機としての使用も続けられていたから完全に死に体とはなっていないからな。MSにも航空戦力として活躍して貰うってのは地上戦の優位にしても宇宙戦にしても本当に悪くはない案だ。
ただ問題があるとすれば……。
「セレナ、着眼点は良いが肝心のMSをどう変形させるつもりだ?」
「実は以前からイメージと言うか構想はありました。本当ならちゃんと形になってからクロエ技師長に提案したかったのですが……少し待ってください。」
セレナは端末を取り出すとミーティングルームの大型モニターに映像を投影する。
「えー……幾つか案があって一つはグノーシスの外装として考えててそれを応用する形で……こうですね。」
別の画面が表示され殴り書きのような形の絵ではあるが何をしたいのかは何となく分かった。リ・ガズィのようなバック・ウェポン・システムだ。
「グノーシスの局地用装備の一種で考えていたのですが外付けのユニットを使用する事でMSに航空性能を持たせ、必要が無くなった場合はパージする事でその後も継続して戦闘が可能になる。これが一つの案です、この場合なら先に敵航空戦力を削った後で地上戦にスムーズに移行できます。」
「へぇ……面白いじゃない。」
クロエ自身も端末に殴り書きするように今の意見をメモしながら図面も適当に引いている。俺も俺で良くこんな案が思いついたなと驚いている。
「えっと……後は……これですね。」
自分の端末だと言うのに何故か不慣れに操作をするセレナ、次に映し出されたのは変形機構としてはかなり簡単な物だ。んー……例えるならガザCみたいな感じか?Z系列みたいな難しい変形を数秒で行うような感じではない構造だな。
「ブロックビルドという構造……だそうです、機体の主要パーツをブロックモジュールと見做した上で、それを動力パイプ、ケーブル、シャフトなどで繋ぐ事で変形を可能にします。……出来るはずです。」
「待ってくれセレナ、もしかしてこの端末……お前のじゃないのか?」
「は、はい……すみません大尉。流石に気付きますよね。」
「いや、それは良いんだがこれは何処で入手したものなんだ?」
殴り書き程度のシロモノとは言えかなり先の時代を見越した設計思想だ。俺以外にもこの世界に憑依した者がいるのではないかとすら思った程に。
「……ソロモンで死んだ兄の物です。兄は元々航空機のパイロットだったのですがMS乗りに転向し戦って散りました。これは兄がソロモン攻略戦前に私にビデオレターと共に送ってきた物なんです。」
セレナは端末に入っていた動画を俺達に見せる、そこには彼女の兄が今まで何処で戦っていたんだとか、両親は元気にしているかとか、士官学校で苦労はしていないかなど家族に対する愛が深く感じられる映像があった。
『それでだなセレナ、MSも今のままでも凄く強いがやっぱり不満な所もある。俺は戦闘機に憧れてパイロットになったのにMSは空を飛べない。いや、ジェットパックみたいなのや浮遊だけなら短時間行える物もあるけどやっぱり空が飛びたいんだよ。だから兄さんはこんなのを考えたんだ!』
まるで子供のように笑いながら先程の殴り書きの絵を見せてくる青年、子供の様に見えながらも話している内容はクロエもマジマジとメモを付けるほど精巧に考えられている物ばかりだった。
『俺はいつ死ぬか分からない、だからもしも俺が死んだらお前が俺の夢を継いでくれると嬉しい。……いや、別に継がなくても良いな。お前はお前で俺は俺なんだから自分の好きな道を歩むと良いさ。あ〜……だけどもし開発部とかと縁があるようならこれだけでも見せてくれると嬉しいな。……おっと、そろそろ時間だ、今度は戦争が終わった時にまた会おうセレナ。父さんや母さんにもよろしくな。』
笑う彼の姿を最後に映像が終わる、彼も死ぬつもりなんて無かった筈だ。未来を見たかった……その筈だ。
「兄は空に憧れていましたから、私も軍に入ってこのリング・ア・ベルに編入されてMS開発に少しでも携われる環境が凄く嬉しくて。だからこの案をいつか活かせるようにって……それで……。」
兄との思い出が蘇ったのか少し涙を流すセレナ、隣にいたベアトリスは普通に泣いてた、俺も貰い泣きしそうだ。
「良いわ……このクロエ・ファミール技師長がこの変形機構を完成させて見せる……セレナ少尉!お兄さんの意志は私が引き継ぐわ、良いわね!?」
「は、はい……!よろしくお願いしますクロエ技師長!」
技術者魂に火が付いたのかクロエもやる気満々だ。
……それにしても、もしかしたらこの人は本来の歴史なら生き残ってそれこそ本当に可変MSの開発を手掛けてたかもしれない……そう思うとやはり胸が痛む。これだけ大きく歴史は変わったのだ、……俺がいた為に。
「それでは今までの案を纏めると狙撃戦特化の機体、白兵戦特化の機体、変形機構を取り入れた機体、この3つと言った所ですかね。」
「変形システムが上手く作動するなら狙撃特化の機体は一撃離脱も視野に入るんじゃないかい?」
バネッサからの意見に頷く、変形し高速で狙撃地点へ到達し狙撃後速やかに戦域を離脱すれば一機だけで残党の指揮官を狙い撃ちし降伏を促すなんて戦法も取れる、そもそも白兵戦特化の方でもバック・ウェポン・システムを搭載すれば同じように一撃離脱出来るだろうし。
「それもそうね……そうだ!」
「お、どうしたクロエ。技師長だし何か閃いてくれると嬉しいんだが。」
「白兵戦用MS……、そして狙撃……つまり射撃型支援MS……。」
そこまで聞いて少し頭に何かが閃く。もしかして……。
「ガンダム……ガンキャノン ……ガンタンク……。そうよ!砲撃特化のMSよ!」
「おぉ!V作戦的コンセプトか!」
ガンダムオタク魂に火が付く。つまりは別に全てのコンセプトを一機に纏めないリボーンズガンダム的な感じで行けば良いじゃないか!
「センサーもシショーも盛り上がってるけど、そもそも何機もガンダム作る必要あるのかい?一機に的を絞るって形でもよかないかい?」
「チッチッチ、ダメだぞララサーバル。新型ガンダム開発計画ってのは3機だから良いんだよ。」
正確には4機、0号機まで含めれば5機だけど。
「?……まぁシショーが良いならそれで良いと思うけどさ。」
砲撃特化タイプか……単語だけ見ると重MSみたく感じるから何ならメッサーラみたいなタイプにすればムーバブル・フレーム的なのを取り入れて重量が増えても問題無さそうだよな。
色々妄想は捗るがちゃんと現実的な着地点を見つけないとな。
「エルデヴァッサー大佐、この新型ガンダム開発計画はどの時期までに達成しなければならないのですか?」
そう考えているとフィーリウス君から滅茶苦茶冷静な意見が飛ぶ、そう言えば勝手に0083年くらいに完成するのかなと思ってたけど歴史が変わってるんだから早くなっても、遅くなってもおかしくないんだな。
「そうですね……特に期間は設けられていませんがアナハイムより先駆けて達成出来ればEC社の評価は上がるでしょうから急ぎたい所ですね。クロエ、今出てている案を纏めて開発するとなるとどれくらいの期間が最低でも必要になりますか?」
「えーっと……うーん……。」
色々と数字を書き連ねて算出しようとするクロエ、グノーシスがメガセリオンの技術などを組み合わせてなお一年近く必要だった訳だし、新規開発となるとやっぱり数年は掛かるのかな?
「ある程度はグノーシスの設計を流用するにしても一年以上は最低でも掛かるわね。下手なシロモノは作れないからそれも考えると更に数年……。」
やっぱり0083年くらいになりそうなのかな。だとするとデラーズ・フリートとかにスパイされない様に対策しといた方が良さそうだ。
エギーユ・デラーズは一年戦争で史実通りア・バオア・クーから撤退しその後は行方知れずなので歴史通りと考えて差し支えないだろうし。
早めに叩ければ良いんだろうけど流石に茨の園の正確な位置が全く検討付かない為手が出せない、あれって実際ジョニー・ライデンの帰還で再登場するまでアナハイム以外の誰からも見つかってない訳だしな。
「今回はアナハイムという競合相手がいる為、のんびりとは出来ませんが焦る必要もありません。次期主力MS開発の為のデータ取りと言う視点での試作機開発となるのですから既にグノーシスを開発中の私達はある程度アナハイムより先駆け出来ていると思います。」
「それもそうだな。並行して開発を進めれば主力量産機としての質も高まるし今までの流れにガンダム開発を組み込むって考えで行けばスムーズに行けそうだな。」
「その為にはまずフィーリウス隊の皆さんにちゃんと並んで戦える様にならないと行けませんからね?アンダーセン隊は。」
クロエからの厳しいツッコミに俺と新米二人はギクリと顔を引き攣らせる。
「が……頑張るぞ二人とも。」
「は、はい……!」
「頑張りましょう大尉……!」
仮にも新型ガンダムに乗れる可能性だってある訳だし情け無いパイロットと言われたくないもんな……。
決意を新たに新たな歴史の流れの中で、新型ガンダム開発に熱意を上げることとなる。
このガンダム達がどんな可能性を繋ぐのか、今から楽しみと少しの不安を感じながら夢を馳せるのであった。