機動戦士ガンダム 紺碧の空へ   作:黄昏仮面

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第3話 ガンダム追撃

 

 状況の落ち着いたトリントン基地で、慌ただしくも迅速に奪われたガンダム試作2号機の奪還の話し合いが始まる。

 

「こちらペガサス級アルビオン艦長エイパー・シナプス大佐だ。敵の襲撃で左舷エンジンを被弾、現在航行不可能な状態だ。」

 

「こちらはアマテラス級巡洋艦曙光の艦長アンナ・フォン・エルデヴァッサー大佐。こちらは目立った損害も無く、このまま核を積んでいると言う奪われたアナハイムのガンダムの追撃に当たります。」

 

「自分はトリントン基地所属のサウス・バニング大尉であります。我々トリントン基地のパイロットもガンダム追撃に加えていただきたい。」

 

「申し訳ありませんが曙光は実験艦である為これ以上のMSは搭載出来ません、陸路での捜索となりますが宜しいですか?」

 

「問題はありません、この付近の地理は熟知しています。上空と地上からであれば追撃も容易になるでしょう。」

 

 既に出立の準備を終えているのは流石だ、かなりの実力を持ち合わせていると言っても過言はないだろう。しかし……。

 

「しかしながらもう1機のガンダムも追撃に加わるのは容認し難いですね、乗っているのは本来のパイロットでは無いのでしょう?」

 

「ハッ、乗っているのは新米のテストパイロットであるコウ・ウラキ少尉であります。」

 

「他のガンダムまで奪われる事態は避けたいのです、ご理解頂けるとありがたいですが。」

 

「しかし敵の数は未知数ですエルデヴァッサー大佐。今は1人でも1機でも数は多いに越した事はありません。」

 

「私もバニング大尉の意見に賛成ですなぁ大佐殿。」

 

 突如通信に割り込みが入る、これはあの黒いガンダムに乗っているパイロットからだ。

 

「……貴方は一体誰なのですか?見た所この基地の所属でも、アルビオンの所属でも無いように見えますが。」

 

「おっと、自己紹介が遅れました。私はアーウィン・レーゲンドルフ、地球連邦軍から特務を請け負って此処に来たところだ。その為軍籍は存在しないが連邦軍からは佐官レベルの権限は与えられている、ワンマンアーミーとでも認識してくれれば良い。更にもう1人弟のレイ・レーゲンドルフも尉官待遇としてこの機体に同乗している、以後お見知りおきを。」

 

「アーウィン・レーゲンドルフ……。」

 

 一体彼は何者なのだろうか、機体にしてもパイロットにしても不審な点は多いが。

 

「おっと、今はそれよりも奪われたガンダムを追う方が優先でしょう。既に他の基地からも追撃部隊が出ている、これにトリントン基地に集結したガンダムの力さえあればジオン残党がどれだけいようと物の数ではない。」

 

「私も彼の意見に賛成だエルデヴァッサー大佐、今は少しでも多くの機体で追撃をするべきだ。」

 

 シナプス大佐が彼の意見に乗る、確かに少しでも数は多い方が戦いは楽になるが……。

 

「悩んでいても仕方がないでしょう大佐殿、ジオンは待ってはくれないのですからなぁ。」

 

「くっ……分かりました、今より奪われた試作ガンダムの追撃を開始します。」

 

 押し切られる形で現在動ける全機での追撃となった、これが吉と出るか凶と出るか……。

 

 

ーーー

 

 

「隊長、あの機体……一体何なのでしょうか……。」

 

 一先ずの戦いを終え曙光へ帰投した僕達パイロットは、戦いの最中突如として現れたあの黒いガンダムについて語り始めた。

 

「分からない、だがあの機体コード《ガンダム ニグレド》は本来ペズンで造られる筈だったあの機体の名前であった筈だ。」

 

 ガンダム ニグレド、EC社で性能実証試験を行なっている最中に事故により消失したと思われていた機体。あのアンダーセン大尉が最後に乗っていた機体だ。

 機体こそあの時とは違い更に過重が増して基礎設計図には無かった装備が多数組み込まれてはいたが、それでも基本的な構造はあの時に考えられていた物を踏襲している。

 

 だからこそ、あの機体はおかしいのだ。

 

「今からブリッジに行って大佐にお伺いをするのはナンセンスでしょうね。」

 

「そうだろうねセレナ少尉、少なくとも僕ら以上に大佐の方が困惑している筈だ。」

 

 僕の頭の中ですら、あの機体に関して色々と考察できるのだ。

 機体そのものが奪われていたのか、ハッキングされていた設計図から完成させた物なのか、それともアンダーセン大尉が裏切っていて裏工作により何者かに機体と情報を売ったか……これは考えるだけ無粋だろうが。

 思慮深い大佐であれば更に色々と思い浮かぶ筈だ、だからこそ今下手にあの機体について触れない方が良いだろう。

 仮にも味方だと言うのなら、後で色々と分かる筈だ。

 

「今は気持ちを切り替えよう、僕達の今の主任務は奪われた核搭載MSであるアナハイムの試作2号機の奪還だ。」

 

「この霧の深さ……逃げるには打ってつけの場所ですね。」

 

「あぁ、更に待ち伏せするのにもね。敵は基地に攻勢を仕掛けた第一波ですら既存の残党軍より統制された部隊を送ってきた、なら退路の確保も万全を期している筈だ。」

 

「隊長、隊長。」

 

「何だベアトリス少尉?」

 

「……敵は何故ここまで用意周到に準備が出来ているのでしょうか?」

 

「……恐らくは君が考えている事も要因の一つにはなるだろうね。」

 

 何者かによる情報のリーク。これが無くてはここまでの数の部隊を流石に用意しないだろう。

 敵は最初からこの日にトリントン基地に新型の核搭載用MSが到着し、更に核装備を終えていると確信していたからこそ基地を攻めてきたのだ。

 となると内通者が何処かにいると考える方が普通だ、問題は一体誰がどの程度の情報を提供しているかだ。更に言えばスパイは1人だけとは限らない。

 

「ふぅ……一兵卒が考えるには難し過ぎる案件ばかりだな。」

 

「ベアトリスの言も確かに気をつける必要はありますが今は敵への対処が第一優先ですね隊長。」

 

 こうやって話の流れを戻しパイロットに必要な事だけを考えさせてくれるのはセレナの良い所だ、生真面目と言うより自分のやるべき事にしっかり専念する心掛けがある。

 

「あぁ。この濃霧もそうだが敵はある程度の地理を把握していると言っても過言ではない、アドバンテージは敵の方が大きいと思え。」

 

「しかもこの辺り、岩場が多くて敵が隠れるには持ってこいですものね。」

 

 ベアトリスの言葉に頷く、敵も退路に選ぶだけあって元々入り組んだ地形が多いこの土地で更に要衝を抑えている。

 

「岩場もそうだが、この周辺は沿岸部に近い湿地帯だ。足が取られる可能性もあるのも忘れるなよ。」

 

「岩場だけならデブリで慣れてますけど湿地かぁ……、足回りのセッティングも気をつけないとですね。」

 

 細かい部分は機械に任せるより自分で手動調整する場面が多くなる、敵の練度を考えると一瞬の隙が命取りになるだろう。

 

「幸い僕達は1人じゃない、トリントン基地の部隊も追撃に参加する。彼らはこの地を熟知した強者だ、胸を借りるつもりで戦いに挑もう。」

 

「はい!」「了解です!」

 

 

 

ーーー

 

 

「先程はありがとうございましたバニング大尉。」

 

「何の事だ?」

 

「このガンダムで追撃を許してくれた事です。」

 

「エルデヴァッサー大佐に1号機まで奪われる可能性があると言われた事か?別にお前を庇った訳ではないぞウラキ。」

 

「えっ……?」

 

「確かに彼女の言う通り、敵が2号機だけ狙っていたと限らない場合は1号機にも目を付ける可能性は高い。その時ヒヨッコのパイロットが乗っていましたでは確かにリスクが高いと思うのは普通だ。仮に俺が彼女の立場ならお前が追撃に加わるのを良しとしていなかっただろうな。」

 

「では何故……?」

 

「その場合は今の俺の立場の人間がお前を立てるだけだウラキ、周囲にとってはお前はただの新米のテストパイロットだ。だが俺はお前の日々の模擬戦を常に見ている、その実力もな。だから俺はお前ならこの追撃に参加しても問題無いと思ったから参加させる様に頼んだんだ。実際にお前はその機体を無難に使いこなしているじゃないか、なら下手に他の機体に乗っているパイロットを乗せるよりリスクは下がる筈だ。」

 

 成る程、自分を庇った訳ではなくちゃんと状況を正確に判断した上での発言であったのかと感心する。

 

「大尉の言う通りだウラキ少尉。本当なら俺が乗ってやりたい所だが流石に慣熟訓練も無しに機体を乗りこなすのは難しいだろうからな。その点お前は機体構造を見抜くセンスがある、パイロットの実力としてはまだまだだがそこを大尉は高く評価しているんだ期待に背くなよ。」

 

「りょ、了解でありますアレン中尉。」

 

 期待に背くな……か、中尉の言う通り足手纏いにはならない様に気をつけなければ。

 

「そ、それにしても大尉。ジオンはまだこの近くに潜伏しているのでしょうか?」

 

 同僚のキースが不安そうにそう発言する。

 

「当然いるだろうな。敵は基地にあれだけの部隊を送ったんだ、退路を確保していない訳がない。」

 

「と、と言うことはまだこの辺りにもいるという事でありますか大尉!?」

 

「ピーピー騒ぐなキース。良いか勝敗はお前達がヒヨッコかどうかで決まる、安心しろいつも通りにやれば良いんだ。」

 

 いつも通り……訓練通りにやれば良い……、それは分かるけれどいざ実戦となったらそう冷静でいられるだろうか……?

 

「そうビビるんじゃない、その為に俺達がいるんだ。安心しろ、お前達を死なせたりはせんよ。それにあのリング・ア・ベル隊もご同行してるんだ胸を借りるつもりで行け。」

 

「リング・ア・ベル隊……。」

 

「お前達は知らんだろうが彼らは俺の命の恩人みたいなもんだ、ア・バオア・クーでの戦いでジオンがソーラ・レイというコロニー兵器を使ったのは知っているな?」

 

「は、はい。コロニーを改造した戦略兵器があったのは士官学校の教本で教わりました。」

 

「あの時俺はア・バオア・クーで戦っていた、戦況はかなり苦しかったがそれでも俺の隊は1人も欠けることなく戦い続けそして勝利した。だがその戦いの裏ではサイド3本国でソーラ・レイの破壊に少ない部隊で尽力した彼らがいたんだ。もしも彼らがソーラ・レイを止めなければ2射目が放たれた時に俺は死んで今ここに俺はいなかっただろうな。」

 

「そんなことが……。」

 

 バニング大尉が命の恩人と言うことも頷ける、彼らが間接的に大尉の命を救ったという事か。

 

「彼らのMS操縦センスは中々の物だ、お前達も負けずと頑張るんだな。」

 

「了解です大尉!」

 

 そう答えると同時に紅いガンダムが濃霧の中上空を飛び去って行く。

 

「あのガンダム……この霧の中を飛んで行くのか……。」

 

 下手をすれば岩場に激突する可能性があるがそこは自信があると言うことだろうか、大尉の言っている通りかなりの実力を備えていそうだ。

 

「……!バニング大尉!アレン中尉!て、敵の反応です!」

 

 キースが大声で叫ぶ、モニターから複数の敵機の反応が表示される。

 

「よし!キースはアレンに!ウラキは俺に着いてこい!敵を各個撃破する!この濃霧だ、同士討ちだけは避けろよ!」

 

「了解!」

 

 奪われた2号機もこの戦いに参加しているのか?色々な考えが頭を巡るが今は目の前の敵を叩くのが優先な筈だ……!

 

 

 

ーーー

 

 

「トリントン基地部隊、敵との交戦を確認!」

 

「曙光からは援護できん、グリム隊を派遣しろ!」

 

 この濃霧で計画性も無しに発砲すれば確実に味方を巻き込む、そうでなくとも敵の動きの分からない中で下手にこの艦の位置を晒す訳にもいかない。

 大佐が出撃した今、艦を指揮する者として最善の手を打ち続けるのが私の義務だ。

 

「グリム隊出撃後、艦の高度を上げ敵の脱出源を探る。各員警戒を厳に敵を逃すことのない様に務めよ。」

 

「了解!」

 

 考えろ、敵の狙いは何だ?奴らは核弾頭を装備したMSを奪った、その後の狙いは?

 まずはその核弾頭を使い何らかのテロ行為を行うつもりなのは明白だ、となると次は何処に対してそれを行うかだ。

 考えられるのは地上であればジャブロー、連邦軍の本拠地であるのだから狙う可能性は非常に高い。だがジャブローは広大で闇雲に核を放った所で効果は薄い、敵がジャブローの司令部の位置まで明確に把握しているなら可能性は高いが今の段階では可能性としては高くないだろう。

 

 次に考えられるのは宇宙、公国軍残党であればサイド3のジオン共和国やサイド8のネオ・ジオン共和国を狙う可能性も高い。彼らは奴ら公国軍残党からすれば袂を別れた裏切り者である筈だから恨みから狙う可能性も薄くはない。

 

 ……可能性としては宇宙に上がる確率の方が高いか、となると脱出経路にはHLVやコムサイと言ったものを用意している筈だ。しかしこの地形、沿岸部にも面している事から海路での逃走も考えられる。

 

「逃走手段は多い、やはり計画性を持った作戦か……。」

 

 残党軍というより、これは最早一つの勢力と言える。今までの小規模な部隊レベルの行動ではなく、一定の規模を持った勢力による線密に計画された軍事行動だ。

 

「高度上昇後、曙光は地上の熱源探知と海路での回収艇の捜索にあたる、各員戦闘の援護が出来ない分を敵の逃亡を防ぐ事で挽回するぞ!良いな!」

 

「了解!」

 

 

 

ーーー

 

 

「うわぁぁぁ!来るな!来るなぁぁ!」

 

 トリントン基地所属の機体から悲鳴の様な叫びが聞こえてくる、交戦状態に入ったと言う事だろう。

 

「今は……敵のコムサイを発見する事が優先……。」

 

 ジェシーの残した記録によれば、敵は万全を期していればコムサイを、それが駄目であるなら潜水艇を利用して逃亡すると言っていた。

 この状況なら……曙光を見送った後に演習という名目で現在地球の衛星軌道上に待機させているリング・ア・ベル隊旗艦であるアマテラス級のフラグシップであるアマテラスに敵が飛来した所を迎撃させれば良い筈だ。

 敢えて逃せば敵が合流する前にコムサイを叩ける、そうなれば奪われたガンダムを悪用されずに済むのだから。

 

 だが問題はそんな事は私以外の誰も知らないと言うことだ、ジェシーの予言を信じている私だから考えられる事で他の全員にはこの機体を奪う理由が何なのか知る由もない。私がここでコムサイを見逃そうと言った所で分かってはくれないだろう。

 

「ジェシー……私はどうすれば……。」

 

 ここで敵を倒せるのであればそれで良い筈だ。問題は私に敵を倒すだけの力があるかどうかだ。

 

「やってみせる……。」

 

 例え彼が示した未来が変わるとしても……彼との最後の繋がりが絶たれるとしても、より良い未来を作る為にはそれが一番の筈なのだ。

 

 そう思っていると開けた地形に到着する、コムサイで離脱するのであればある程度の滑走距離が必要になる、だとすればこの辺りに待機していてもおかしくはないが……。

 そう思っているとビーム光が横を掠める、これは……!

 

『チッ!連邦軍め、ここを嗅ぎつけたみたいだ!』

 

『慌てるな。まだ少佐が気取られた訳ではない、落ち着いて敵を対処せよ。』

 

『了解!』

 

「ゲルググの陸戦タイプ……!?」

 

 大戦末期に開発されたゲルググであるが、少数の陸戦タイプも開発されていると報告されている。敵は残党と呼ぶには幅広く機体を揃えている、かなりの規模と言うのだろうか。

 

『ガンダムと言えど直撃させれば!』

 

「やらせません!」

 

 ビームライフルよる攻撃を回避する、しかし敵の動きがエース級ともなればフライトユニットで飛行しながらの戦闘は動きが単調になり読まれてしまう。ならば……!

 

『なに……!?装備をパージしたとでも言うのか!』

 

 フライトユニットをパージ後、一気にゲルググへと駆け寄りビームサーベルを振り下ろす。

 

「奪われたガンダムは何処にあるのです!答えさえすれば命までは取りません!」

 

『女だと……!舐めるなァ!』

 

 ビームナギナタでこちらの近接攻撃を器用に受け流す、やはり侮れる力量ではない……しかし!

 

『くっ……!パワーダウンしていると言うのか……!』

 

 こちらのビームサーベルの方が出力が高く、徐々にゲルググは押されて行く。

 

「これ以上はよしなさい!幾ら当時は新型と言っても、もう3年も前の機体なのです、貴方なら分かるでしょう!」

 

『チッ……ならばぁ!』

 

 ゲルググは抱きつく様に私のガンダムを束縛する。

 

「なっ……!」

 

『幾らガンダムと言えどこの距離から自爆されればどうしようもあるまい!』

 

 自爆……!彼らはそこまでしてこの計画を完遂させたいとでも言うのだろうか……。やはりギレン・ザビらの意志はまだ彼らに生きていると……!

 

『ジーク・ジオ───』

 

 自爆されるかと思いきや、ゲルググは動きを止める。そこには黒いガンダム……ガンダムニグレドが敵のコクピットをサーベルで貫いていた。

 

「危ない所でしたなぁ大佐殿。」

 

「アーウィン……レーゲンドルフ……。」

 

 この感覚、他の人に感じる感覚とはまた別の、懐かしい様でそうでない異質な物を覚える。彼は一体……。

 

「先にコムサイを撃破しておきましたよ大佐殿、敵は宇宙に逃げるつもり……なのかそうで無いのか、アレを見る限り私にも何とも言えない所がある。」

 

「アレ……?」

 

 ガンダムニグレドが指を伸ばした先には、まるで花火が打ち上がるかの様に飛び去って行くコムサイが数機、光を放っていた。内一機は曙光の主砲と思わしき光で爆散している。

 

「私の装備と言えどあの距離ではもう届かない。しかしおかしいですなぁ大佐殿、『記憶』によれば敵はコムサイを多数用意できる程には感じなかったのだが……。」

 

「……っ。」

 

 彼は……彼はジェシーと同じ様に未来を知っているとでも言うのだろうか……?『記憶』などと私に問い掛ける様に質問してくるあざとさに苛つきを覚えた。

 

「貴方は……一体何者なのですか!」

 

「クックック……私は私、アーウィン・レーゲンドルフですよ大佐殿。さて、味方と合流せねば。未だ敵と接敵していてもおかしく無いでしょう。」

 

 悔しいが彼の言う通りだ、敵は予想していたよりも多く今もまだ戦っていてもおかしくはない。

 

 

ーーー

 

 

『我々は三年も待ったのだ!』

 

「くっ……!」

 

 敵と接触し、その後コムサイを見つけ墜とした良いが2号機はコムサイにはおらず手痛い反撃を食らってしまった。

 

「大丈夫かウラキ少尉!」

 

「は、はい!」

 

 リング・ア・ベル隊のグリム中尉が援護に入る、しかしなお形勢は此方が不利そうだ。

 

「そのガンダムを奪い、何をするつもりだ!」

 

 グリム中尉の怒号が響く、彼らの目的は一体何だと言うのだ。

 

『貴様らに話す舌は持たん!自分の意志すら持たぬ者に!』

 

「お前達にそれが言えると言うのか!」

 

 中尉の機体がガンダムと鍔迫り合いを起こす、並のパイロットであれば撃破出来るほどの力量に見えるがあのガンダム相手にはまるで歯が立っていない。

 

『ほう、連邦の犬にしては良い太刀筋だ。名を聞いておこう。』

 

「リング・ア・ベル隊のヨハン・グリムだ!お前こそ何者だ!」

 

『リング・ア・ベル隊……?……!あのソロモンでドズル閣下を殺したペズンの魔女の部隊か!』

 

 そうだ、聞いたことがある。ソロモン攻略戦であるチェンバロ作戦でドズル・ザビを撃破したのはリング・ア・ベル隊の隊長であるアンナ・フォン・エルデヴァッサー、当時の中佐であったと。

 

『何という僥倖……!閣下の弔いに貴様らの首を頂く!このアナベル・ガトーがな!』

 

「アナベル・ガトーだと!?」

 

 アナベル・ガトー……!士官学校の教本で見た事のある名前だ、確かジオンのエースパイロットでソロモンの悪夢と呼ばれた……!それが僕達の敵だと言うのか!?

 2号機はサーベルとバルカンを駆使し中尉の機体を追い込み始めた、グリム中尉の機体が新型と言えどガンダムとの基本性能の差が現れ始めている、ならば!

 

「ウワァァァ!」

 

『チッ……!何度も邪魔を……!』

 

 マシンガンで2号機の猛攻を去なす、幾ら装甲が硬くとも当たりどころさえ良ければ……!

 

『ガトー少佐!ドライゼを待機させてあります!撤退を!』

 

『まだだ!敵はあのドズル閣下を殺した者達だ、このまま撤退など!』

 

『星の屑の為です少佐!』

 

『……クッ!仕方がない、撤退する!』

 

『ここはお任せを!』

 

 敵と合流した2号機は先程の威勢を見せず撤退を再開し始めた。

 

「逃げるつもりか!」

 

「行かせるものかぁ!」

 

『少佐の邪魔はさせん!』

 

 敵の重MSがこちらに突撃してくる。

 

「うわぁ!」

 

「避けろ!ウラキ!」

 

 敵を片付けて合流したバニング大尉のジムが庇う様に間に入る。そのまま敵と大尉は岩場にぶつかる。

 

「くっ……!」

 

『一機でも多く道連れに!死んでいった同胞の報いを受けろ!』

 

 敵がバニング大尉の機体を撃破しようとするも、紙一重でバニング大尉がサーベルで敵のコクピットを貫いていた。

 

「バニング大尉!お怪我は!?」

 

「くっ……足を負傷した……。俺の事は良い、早く2号機を追うんだ!」

 

「駄目ですバニング大尉、敵は既に……。」

 

 グリム中尉の言葉を聞くと同時に遠方から数機のコムサイが発進していた、敵は逃亡手段を幾重にも用意していたと言うことか……。

 

「……追撃は失敗した。」

 

 項垂れているとキースから通信が入る。

 

「コウ……!バニング大尉……!」

 

「キース!無事だったのか!」

 

「俺は無事だよコウ……でもアレン中尉が……!」

 

 キースからアレン中尉の戦死を聞く。多くの人間の命が失われた、ジオン公国残党軍は一体これから何をするつもりなのか、今の自分には何も分からずにいた。

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