機動戦士ガンダム 紺碧の空へ   作:黄昏仮面

9 / 126
第08話 白騎士と呼ばれるMS

 メキシコで辛勝ながら敵部隊を撃破した俺達は味方の補給部隊が来るまで野営地の守備に就き、数週間の期間を経てようやく基地へと帰投した。カレンダーは一月めくれ五月になっていた。

 

「この基地も久しぶりだな。」

 

 たったの数週間とはいえ長く見ていないとかなり懐かしく感じてしまう、向こうでの中身が濃かったから尚更だ。

 ミデアを降ろしてMSを整備ハンガーに格納する、一斉に基地の整備兵達がやってきて修理や戦闘記録などの解析を始めた。

 

「此処は私とジュネット中尉でやっておきますのでお二人は偶にはゆっくりしたらどうですか?」

 

 クロエ曹長の御好意に甘えてちょっとした休暇を貰うことにする、ここ最近働き詰めて正直心身共に疲れが溜まっていた。

 

「とは言っても普段が忙しいとこういう急に暇な時間が出来たら何したら良いか分からなくなるな。」

 

「えぇ、今思うと私達って仕事人間な所ありましたね。」

 

 少なくても俺が仕事人間に見えるのはお前のせいだぞとアーニャに言いたくなったが下手に逆鱗に触れてストレステストと言う名の虐待項目が増やされても敵わんし黙っておこう。

 

「基地周辺には街とかないしなぁ。……あっそうだ、この基地の散策でもしないか?俺主要な場所しか回ってないし。」

 

「そうですね、今日は基地探索デートと洒落込みましょうか。」

 

 デートという単語に思わずドキっとしてしまった、悲しい話だが憑依前の俺そういう単語とは無縁の人生を送ってきたから冗談で言ってるのは分かっているのだが動揺してしまう。

 

「お、おおお、おう。エスコートは任せたぜ!」

 

「わ、私がエスコートする側なのですか!?」

 

 いかんいかん、テンパり過ぎてる。これじゃ純情少年じゃないか、とは言っても先程も言ったように基地内部は主要な場所しか見てないのでエスコートはできないのは確かだ。

 取り敢えずグルっと回ってみようと言って何ちゃってデートの幕が開けた。

 

「まずは基地の正門からですね、私達は普段ミデアから滑走路に直接降りてるのでここを通る事は少ないですが。」

 

 正門ゲートでは客が来ないからか暇そうにラジオを聴いてる警備兵がいた、こちらを確認すると慌ててビシッとするがいつも通りで構わないと伝える、楽できる時は楽したほうが良いのだ。まぁ非常時とかは困るから気は抜かずにと伝えたが。

 

「正門ゲートを抜けたら資材倉庫、整備ハンガーに辿り着きます、中継基地なので届くのが殆ど資材ばかりだから到着してすぐに降ろせるようにですね。」

 

 整備ハンガーではクロエ曹長が他の整備兵達に大声であれこれ指示をしている、今ではすっかり整備も板に付きMS整備兵としては現在右に出る人間はいないだろう。とは言っても現在MS整備に関わってる人間は極一部なので今後は分からないが。

 ジュネット中尉も溜まりに溜まったデータを一つ一つ説明しながら渡している、特定状況下におけるMSの運用データもそれなりに増えて今後のOSの改良に期待ができそうだ。

 

 整備ハンガーを後にして続いては基地内部に入って行く、中継基地とは言え結構な広さでそれなりの区画に分かれている。

 

「此処は兵士用の宿舎……って普段私達が使っている場所ですね。」

 

 そうは言うが未だにコクピット内で寝ることが多いので柔らかいベッドで寝ることは稀なのだが……最近節々が痛いしそろそろ宿舎で寝させてもらうように後で言っておこう。

 

「隣接してるのは食堂ですね、まだお昼では無いので誰もいませんが……。」

 

「おや!お嬢さん帰って来てたのかい!?」

 

 調理場から職員のおばちゃんが顔を出す、「新型のレーション入ったってさ!」などと何か怪しげなことを言っていたがキコエナイキコエナイ。

 

「そんで?お昼前だってのに何しに来たんだい?」

 

「ちょっとお暇を貰いましたので、彼とデート中なんですよ。」

 

 クスクスと笑いながらアーニャがそういう、「デ、デ、デートなんて大それた事じゃないですです基地の見学ですぞぞぞ!」とキョドる俺を見て笑っているから分かってて遊んでいそうだ、というか絶対ネタにしている。

 

「そんじゃあデートなのに何にもないってのもあれさね、ちょっと待ってなよ!」

 

 そう言うとおばちゃんはカップを取り出して手慣れた手付きでアイスクリームとフルーツを盛り合わせてこちらに持ってきた。

 

「あいよ!フルーツパフェ2つ!アンタらのデートのお祝いさ、奢ってあげるからゆっくりお食べ!」

 

 やったぁ、と可愛くアクションをするアーニャ。俺は今人生初デートの感覚をしっかりと噛み締めていた。父さん、母さん、俺色々あったけど元気です……。

 その後パフェを食べ終わりおばちゃんに感謝して「レーション、いらないよ。」と釘を刺してから食堂を後にした。

 

「続いては娯楽区画ですね、ちょっとした映画館やスポーツ施設、あっ見てくださいジェシー!MSのシミュレーターですよ!」

 

 其処には以前ジャブローで使用していた物に酷似したシミュレーターが数機置いてあった、ちょうど誰かが利用しているのか人だかりが出来ている。

 

「ハッハッハッ!これでアタイの8戦6勝!賭け金置いて出直してきな!」

 

 ワイワイと盛り上がりを見せているのを確認し、どうやら賭け勝負をしているようだ。勝ったと思われる女性士官が「次だ次!」と周りに煽りを入れている。

 

「面白そうだな、次は俺がやろう。賭け金は今迄の額全部でどうだ?」

 

 俺は兵士の間に割って入る、シミュレーターで幾ら強かろうが実戦経験を積んだ俺相手にどこまでやれるかちょっとした興味が湧く。

 

「へぇ、威勢の良いボーヤだね!後で賭け金払えませんでしたって泣いて謝っても無駄だよ?」

 

「そっちこそ、賭け金全部無くしても知らんぞ?逃げるなら今の内だ。」

 

 そう言うと対面のシミュレーターに乗り機体設定を弄る、本来全ての挙動は基準値に設定されているのだが全て俺好みに調整し置き換える、周りの兵士はそれで勘付いたのか少しザワザワし出した。

 

「おい、あの人もしかして……」

 

「黙ってろ!あの姉ちゃんに気付かれたらマズイ!」

 

 徐々に緊迫した空気が場に流れ出して模擬戦スタートの合図が画面に表示される。

 シミュレーション戦域は市街地、お互いザニーでの戦いとなる。装備は120mm低反動キャノン砲と100mmマシンガンのみとなる。

 俺は素早く建物に身を隠し相手の出方を見る。ミノフスキー粒子の仮想散布濃度は戦闘濃度、センサーには頼れず有視界戦闘でないと索敵は通常難しいだろう。だがこの市街地では相手の移動音での索敵も有効だから俺は息を殺して相手の出方を伺う。

 

「オラオラー!隠れてたら勝負にならないよ!さっさと出てきなぁ!」

 

 相手は建物に向けマシンガンをばら撒き建物を崩し視界を確保しようとする、はっきり言ってこの場では愚策だ。これでは見つけてくれと言わんばかりだ。

 正直シミュレーターで連戦連勝だからと粋がっているようでは戦場では通じない、此処らでお仕置きと行こう。

 

「なら!これではどうかな!」

 

 キャノン砲で敵がいたと思われる地点の建物を攻撃する、崩れた建物に動揺してか相手はブーストを起動させて飛び跳ねた。

 

「ちぃっ!小賢しいことを!」

 

 空中からこちらを索敵しマシンガンを放つも有効射程距離外からの攻撃では有効打にはならず被弾はするが損害軽微、そして相手は弾切れを起こし着地をする。その隙は見逃さない!

 

「残念だが終わりだ!」

 

 着地点へキャノン砲を構え、ザニーが着地してバランスを崩したところに直撃弾を喰らわせる、シミュレーションが終わり俺の画面にはWINの文字が表示された。

 

「嘘だろ……!?アタイがやられるなんて……!」

 

「どんなにシミュレーションで戦えても実戦では一回直撃を受けたら終わりだ、戦場を甘く見ない方が良い。」

 

「……。」

 

 ゲーム感覚では人を殺す覚悟も、殺される覚悟も鈍る。これでプライドが傷つきまともに訓練してくれると良いが……。

 

「お疲れ様です、カッコ良かったですよジェシー。まるでエースパイロットみたいでした。」

 

「おうおう、もっと褒めてくれたまえ。」

 

 湧き上がる歓声の中ドヤ顔で部屋を後にする、ちなみに賭け金は全部負けた人に返してあげた。

 

ーーー ーーー

 

「アイツ……例のパイロットか……?」

 

 女性士官はブツブツと一人で呟く。

 

『戦場を甘く見ない方が良い。』

 

 正直甘く見てなかったかと言えば甘く見ていた方だ、シミュレーションで連戦連勝、男どもが相手でも負け知らず、自信を持つなと言う方が難しいだろう。そんな自分が開始数分もせずに歳下のガキに無様なやられ方で負けてしまった。実力を出せなかったと言えば言い訳は立つが、戦場では敵から目を少しでも離せば実力が有ろうが無かろうが簡単にやられる……。そう言うことなんだろ……。

 

「決めたぜ『シショー!』アタイはアンタに着いて行く!」

 

 自分より若いパイロットを勝手に師匠を仰ぎ、女性士官は意気揚々と司令部へ足を運んで行った。

 

ーーー ーーー

 

 娯楽室を後にした俺達は次は技術開発部に足を運んでいた、先程のシミュレーションで熱が入って色々と開発案や装備案が思いついたので技術開発部のみんなに感想を聞いてみようという魂胆だった。

 部屋に入るとスタッフのみんなから大歓迎を受ける、曰く先程受け取ったデータに大喜びしてる最中だったとのこと。

 

「これで例の試作機のOSも何とかなりそうですよ!」

 

「例の試作機?」

 

 スタッフの一人がそんな事を呟く、そう言えば試作機で思い出したが整備ハンガーにグフがいつの間にかいなくなってたな。

 

「そう言えばザクもどきは何処に行ったんです?」

 

「あぁ、あれでしたらデータも取り終えたのでジャブローの技術部に送りましたよ。OS以外は隅から隅まで解析したので似たようなMSの開発も可能になって行くと思います。」

 

 グフの量産か……と一瞬これ地雷では?と思ったが例のグフはどちらかと言えば陸戦ザクの強化版的な立ち位置で整備性の悪いフィンガーバルカンみたいなのも無いから連邦の技術力さえあればグフより優位な量産機が出来るかもしれない、とワクワクした。

 

「それでですね、あの機体のデータを基にちょっとした試作機を開発していてジャブローから間も無く到着予定なんですよ!ゴップ将軍のアイデアを取り入れて我々が初の試作機を完成させたんです!」

 

 燃え上がるような覇気の篭った声でスタッフは喋る。その発言に俺も驚かずにいられない、V作戦以前に試作MSが完成なんて俺の知るガンダムの『史実』とは完全に違う流れになるからだ。狙ってはいたが本当に変わるなんて……と感動と共にちょっと恐怖もある、どんな風に世界は変わっていくのかと……。

 

 そう思っていると開発室に通信が入った。

 

「到着した!到着したぞー!」

 

 一斉に鳴り響くスタッフ全員の歓声に俺とアーニャは思わず驚く。「見に行きましょう!」

とスタッフに連れられ滑走路に降り立ったミデアへと足を運んだ。

 

「これが……試作MS……!」

 

 アーニャが運び出されたMSを見て驚き、俺もまた驚愕する。

 其処にはグフを彷彿させる形状ではあるが、動力パイプなどジオン系の特徴的な部分が尽く排除され連邦製だと強調せんとばかりの白く染め上げられたMSがあった。

 

「これがゴップ将軍により極秘裏に発令された計画『General order Project』の記念すべき一号機!《GOP-001 ヴァイスリッター》であります!」

 

 技術部の一人がそんな事を言っている、俺の知らないMS……。

 

「ヴァイスリッター……白騎士?」

 

 アーニャがそう呟く、ドイツ語が由来か?ネーミングセンスはどちらかと言えばジオン寄りだが機体自体もジオン由来だしまぁ良いか。

 後個人的に一つだけ物凄く気になる事がある、他の人から見たらしょうもなく感じるだろうその些細なことは……。

 

 

 

「General order Projectって名称的にはカッコイイけど頭文字取ったらゴップじゃん。」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。