機動戦士ガンダム 紺碧の空へ   作:黄昏仮面

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第16話 ガンダム試作3号機

 

「ではレイ・レーゲンドルフ、キミはアーウィン・レーゲンドルフが何故あの様な行動を取ったか説明出来ないのだな?」

 

 観艦式の後、部隊権限で別行動を取ったリング・ア・ベル隊と離れ、アルビオンはコーウェン中将の指示で月に向かったコロニーの破壊命令を受けた、その為に必要となるガンダム試作3号機の受領の為、現在アナハイムのドック艦であるラビアンローズに向かっていた。

 その道中、エイパー・シナプス艦長はコンペイトウ宙域で突如暴挙を働いたアーウィン・レーゲンドルフについて、弟であるレイ・レーゲンドルフを問いただしていた。

 

「あぁ……、僕の方が知りたいくらいだ……。」

 

 項垂れたまま覇気の無い声でレイは答える。

 少なくない時間を過ごしたアルビオンのクルーですら何故彼があの様な事をしたのか理解出来ずにいた。弟だと言っていたレイならと聞いてはみたものの、結局は彼もまた同じであったのだ。

 

「ジャブローは君達の持つ特別な権限を剥奪した。君は最早軍部に属した者ではない、これからキミは我々の監視下に置かれる。よろしいかな?」

 

 そもそも、彼らに特別な権限を与えた連邦軍の将校は誰なのか、それすら分かっていない。

 巧妙に情報は隠蔽され、彼らに佐官と同等の権力を与えたのが誰であるのかをコーウェン中将もワイアット大将も知らないのだ。

 となると権謀渦巻くジャブローで何かしらの権力闘争に彼らが使われていたのは明白だろう。下手をすればコーウェン中将の権力を剥奪する為に動き、そしてワイアット大将やこの観艦式に参加する将校達をも……結果からの考察になるがそう読み取ることも可能なのだ。

 

「構わない……何なら独房にでも入れたらどうだ……。」

 

「……。」

 

 溜め息を吐く、この少年も哀れと言えば哀れなのだ。

 彼による自白とウラキ少尉の報告、そして試作1号機の通信内容から彼とアーウィン・レーゲンドルフが強化人間と呼ばれる人体実験に近い処置を施された人間であることが分かった。

 薬物による身体的な強化、そして洗脳と言っても良いレベルのブレインコントロールにより常人よりも優れた反応速度を手に入れた存在であると知ったのだ。

 

 彼ら二人は軍によって秘匿された研究所でその人体実験を受け、その後彼はアーウィン・レーゲンドルフの手引きにより共に施設から脱走。

 そしてどの様な伝手を利用したかは分からないがジャブローの内偵という地位を手に入れた二人は活動を開始したと言う事らしい。

 

 しかしアーウィン・レーゲンドルフが何故アナハイムとEC社を監視し、ガンダムニグレドを手に入れ、そして何故この様な行動を起こしたか……その真相は未だ掴めずにいた。

 

「今のキミは精神的に不安定な状態だ。独房に入れて置くことも可能だがそれよりはウラキ少尉やキース少尉と行動を共にした方が良いだろう。二人にキミの監視を命じる。」

 

「……。」

 

 どうでも良い、そんな風に見て取れる素振りをレイは見せる。

 だが今のまま独房に閉じ込めてしまえば最悪の事態も起こりかねない、それならば年齢が近い少尉二人に面倒を見させた方が幾分マシだろう。

 そう思いながらシナプス艦長はウラキとキースに連絡を入れ、レイを監視するように命令したのであった。

 

 

ーーー

 

 

「落ち込むな、って言っても無理な話なのは分かるけどさぁ、ずっと落ち込んでても仕方ないんじゃないか?」

 

 同僚のキースが、気の抜けた声でレイに問いかける。レイは心ここに在らずと言った感じでまともに話を聞いてすらいないが、キースは構わず喋り続ける。

 

「こういう時は酒でも飲んでスッキリしたりしないか?なぁコウ?」

 

「待てよキース、そもそもレイは酒は飲めないんじゃないか?」

 

 成年になってからしか本来酒は飲めないが、中には隠れて飲んでいる人もいる、目の前にいるキース自身もその中の一人であるのだけど。

 しかしレイはこのガンダム強奪事件が始まってからその様な姿は一度も見せていないし、そもそも自分達より年齢が下かもしれない。

 キースは冗談で場を和ませようとしてるだけかもしれないけど、そう深く考える自分やいつまでも話すのをやめないキースにレイはイラついたのか大声を上げた。

 

「もう僕の事は放っておいてくれ!どうせ裏切り者だとバカにしているんだろう!?」

 

 兄であるアーウィンさんに裏切られた事実、そのストレスは大きいだろう。溜まっていた物を吐き出すように大声を上げたレイであったが……。

 

「……?何でバカにする必要があるんだよ?」

 

 良くも悪くも、キースのこういう鈍感なところは見習うべきかもしれない。その姿にレイも呆気に取られていた。

 

「レイはさ、真面目過ぎるんだよ。もうちょっと気を抜いてみても良いんじゃないか?なぁコウ?」

 

「あ、あぁ。」

 

「こういう時は彼女の一人でも作ってみると良いと思うぜ俺は。コウなんか見てみろよ、ニナさんと仲良くなってから変わったって思わないか?」

 

 突然ニナとの関係を振られ、思わず焦ってしまう。

 

「な、なんでそこでニナが出てくるんだよ!?」

 

「だってなぁ?月に降りてからちょっと距離感が変わった感じがするもんなぁ?それに前までニナ『さん』って呼んでたのが今じゃ呼び捨てだぜ?レイだってそう思うだろ?」

 

「……それは確かに。」

 

「レイ!?」

 

 キースに相槌を打つレイに思わず素っ頓狂な声を出してしまう。

 その姿が滑稽だったのか、レイは笑い出した。

 

「ハハ……ハッ……。……どうして二人は僕の為にここまでするんだ。もう僕は軍属でも何でもない、ただの民間人と同じなのに……。」

 

 その言葉に自分もキースもほぼ同じタイミングで同じ言葉を返した。

 

『仲間だからに決まってるだろ?』

 

 レイはその言葉を聞くと、一瞬何を言っているか本当に理解出来ずにいたのだろう。そして言葉の意味を脳がちゃんと理解した時、彼は涙を流し膝をついた。

 

「僕は……僕は……っ!」

 

「良いんだよレイ、俺達の前で我慢なんてしなくて。俺達は仲間なんだからさ。」

 

「ウラキ……キース……ッ!」

 

 声を上げて泣き始めたレイを慰めながら、やはりアーウィンさんは止めなければならない、レイの為にも……と自分は決意を新たにするのだった。

 

 

 

 3人の姿をバニング大尉は遠くから見つめていた。

 

「アイツら……。フッ、パイロットとしても人間としても俺はもうロートルかもしれんな。」

 

 年の功からレイについて何かアドバイスでもしようと思い、声を掛けようと思ったが既にその必要は無いと実感する。

 この戦いの中でヒヨッコだった二人はいつの間にか立派な戦士に変わって行った、それはパイロットの技能としてだけではなく戦士としての心構えとしてもだ。

 これならもう自分が付いていてやらなくとも大丈夫だろう。

 

 そうバニング大尉は感じるとその場を後にするのであった。

 

 

 

 

ーーー

 

 

 アナハイム所有ドック艦ラビアンローズ、アルビオンは接舷すると補給とコロニー落とし阻止の為に用意されたガンダム試作3号機の受領を開始する。

 

「ニナ!」

 

「ルセット!」

 

 ニナ・パープルトンは同僚でガンダム試作3号機のシステムエンジニアであるルセット・オデビーと邂逅する。

 

「聞いたわよ、コンペイトウでは大変だったみたいじゃない?」

 

「そうね、そして今もそう。3号機の調整の方は?」

 

「今最終調整中よ、素体であるステイメンの方は問題ないけれどオーキスの方の調整が少し手間取ってね。」

 

 試作3号機は1号機、2号機と違いMSユニットのステイメンとMAとも言えるアームド・ベースであるオーキスによって構成されている。その為システムは他の2機よりも遥かに複雑であり結局実地試験すら間に合わなかった機体である。

 

「私も調整を手伝うわ、少しでもパイロットに負担がかからないようにしないと……。」

 

「1号機のパイロットが壊れないように……?」

 

「えっ?」

 

「月のスタッフから聞いたわよニナ、1号機のパイロットととても親密だって。もう元カレは振り切れたのかしら?」

 

「ガトー……、えぇそうね。そうかもしれない。」

 

 結局今でも彼の信念については理解できない事が多い、この戦いで彼が何を得ようとしているのか、何を求めているのかも……。

 

「私も3号機に乗るなら彼に、と思っていた所。月までの戦闘データを見させて貰ったけど、彼なら複雑な3号機を使い熟す事が出来るはず……後はオーキスの方のパイロットを確保出来れば……。」

 

 MAの機動力を超える戦闘機動を行うMS、1号機のフルバーニアンを使い熟したコウなら問題ない筈、しかし火器管制までとなると不安が残るのは事実だ。

 しかし彼の同僚で現在ジム・キャノンⅡに搭乗しているキース少尉なら何とかサポートが可能かもしれない。……しかし、状況を選ばないのであれば最善の手は常人を超えた耐久力と反応速度を持ち合わせた……。そこまで考えてから、考えを振り切る。

 

「……今は調整を急ぐわよ。月に向かっているコロニーを止めなくちゃならないんだから。」

 

「……そうね。」

 

 凡庸なエンジニアなら目を疑う様な速さで二人はシステムの調整を急いだ。

 

 

ーーー

 

 

「何だと!?コロニーは月に進路を取っていたのではないのか!」

 

 ブリッジで大きな声をあげるシナプス。

 

「は、はい。コロニーは月の推進レーザーによって火を入れられたコロニーは地球へと進路を変えました……!追撃中だったステファン・ヘボン准将率いるコンペイトウ艦隊は推進剤を使い果たし追撃困難との事です……!」

 

「何と言うことだ……!まさかエルデヴァッサー大佐の読み通りになるとは……!」

 

 2号機の襲撃後、月に向かわず地球周回軌道へと進路を取ったリング・ア・ベル隊に困惑したが、今にして思えばこの事態を予想していた可能性すらあったのかとシナプスは思った。ニュータイプ……未来を予知できるという能力を持った人種の可能性があると以前から言われていた彼女はこの未来を予測していたのだろうか。

 

「急ぎ地球に進路を取らねばならん!3号機の調整はまだか!?」

 

「現在最終調整中です!」

 

「急がせろ!敵は待ってはくれんぞ!」

 

 コンペイトウからの追撃は不可能とはなったが、地球軌道艦隊やルナツー方面の艦隊は動けるはずだ。更には第3地球軌道艦隊司令はコーウェン中将であるからコロニーが地球に向かったと判断すれば早急に動いてくれるだろう。

 

「だが……本当に間に合うかどうかだ。」

 

 2号機強奪の時からそうだったが敵は常に我々の先手を取ってきた。

 後手に回る事ばかりだったこの戦い……コンペイトウでのシステムトラップが発動しなければ観艦式ですら敵は襲撃を成功させていたのだ。

 

「まだ、敵は隠し玉を持っていると見るべきなのか……?」

 

 懸念は残るが今は急ぐ他ない。敵は待ってはくれないのだから。

 

 

 

ーーー

 

 

「コロニーが……地球に!?」

 

 バニング大尉から月に向かっていた筈のコロニーが地球に向かっているとの報告を聞き、自分もキースも……そしてモンシア中尉達も驚いていた。

 

「なんでよりにもよって地球の方に進路を取らせたんだ月の連中は!?まさかデラーズ・フリートとネンゴロって訳じゃねぇだろうな!?」

 

 モンシア中尉の懸念も分かるが、月に落着するのを恐れた行動である以上は責任は大きく問えないだろう。

 問題は今地球へ向かっているコロニーをどう止めるかだ。

 

「急いで3号機の積み込みをしなければならないのではバニング大尉!?」

 

「とっくに搬入作業は開始されている、俺達は今からブリーフィングルームだ。地球へ進路を取れば碌に作戦を聞いている時間も無いからな。」

 

「ハイ!」

 

 急ぎブリーフィングルームに向かおうとした矢先、レイが青褪めた姿になっている事に気づいた。

 

「……レイ!?どうしたんだ!?」

 

宇宙(そら)が……宇宙(そら)が地球に落ちてくるのか……!?」

 

 これは……普通ではない状況だと見て分かる。アーウィンさんが裏切った時以上にショックを受けているようだ、何かがフラッシュバックしているのか頭を抱えて呻いている。

 

「ダメだ……アレは二度と落としちゃいけない……!空を落としちゃいけないんだ……っ!」

 

「しっかりするんだレイ!俺達はコロニーを止める為に今から戦うんだ、だから大丈夫だ!」

 

「うぅ……!」

 

 異常に気づいた他のパイロット達も集まってくる。流石に状況が状況だからか普段なら揶揄うであろうモンシア中尉達も何も言わずにいた。

 

「……そいつぁ多分コロニー落としのフラッシュバックだな。一年戦争の後に今のコイツみたいなのを大勢見てきた。」

 

 ベイト中尉がそう口にする。

 

「コロニー落としの時に地上からそれを見ちまった人間ってのは大勢いる。あのデカさだからな、トラウマになっちまった連中はそれこそ山の様にいるらしい。」

 

「レイ……。」

 

「僕は……!僕は……!」

 

 ショックで混乱しているレイに掛ける声が見つからない……そう思っていた時だ。

 

 

 

『安心しろ、俺がお前を助けてやる。』

 

 

 

「……アーウィン……。そうだ……あの時……僕は……。」

 

 何かを思い出したのか、レイは徐々に落ち着きを取り戻していく。

 

「……コロニーを……デラーズ・フリートがコロニーを地球に落とすなら僕は……僕はそれを止めたい……!今度こそ止めなくちゃいけないんだ!」

 

 先程とは違う、決意を固めた目をしながらレイはそう言った。

 

「君の熱意は分かる、だが君はもう軍属じゃない。MSに乗せる事は出来ないぞ。」

 

 バニング大尉は精一杯の思いやりは見せるが厳しい現実を突きつける。

 確かに今のレイはアーウィンさんの行動によってジャブローから与えられた特別な権限は消えているのだ。

 

「旧式のMSでも、ボールでもいい!このドック艦なら一つくらいはある筈だ!捨て駒だって何だって良い!コロニーを止めるのを手伝わさせてくれ!」

 

「そうは言ってもだな……。」

 

 困惑しているバニング大尉達、そしてその様子を見ていたのかニナが話しかけてきた。

 

「コウ、ちょっと良いかしら?」

 

「ニナ……?3号機は大丈夫なのか?」

 

「えぇ、その件も含めて……レイ・レーゲンドルフさん。少しよろしいかしら?」

 

「……アナハイムのニナ・パープルトン……?」

 

「バニング大尉達にも聞いて欲しいのだけれどよろしいかしら?」

 

「……?えぇ、構いませんが。」

 

 この状況で自分達の足を止めると言うことはそれなりに重要な話のようだ。

 主だったパイロット達はみんな足を止めてニナの話を聞く。

 

「ガンダム試作3号機、現在ラビアンローズで受領中のこのMSなのですが……まずこれを見て欲しいのです。」

 

 そう言うとニナは持っていた端末の映像をホログラムで映し出す。

 

「これは……MA……!?」

 

 其処にはMSと言うには大き過ぎる機体のデータが表示されていた。

 

「いいえ、分類上は拠点防衛用の『モビルスーツ 』よ。その巨体なサイズの理由はメインユニットのステイメンと呼ばれる機体とは別のアームドベースとなっているオーキスと呼ばれるユニットのせい。」

 

 ニナは更に端末を弄りオーキスと呼ばれるユニットの詳細を表示する。其処には各種兵装などの情報がズラリと並んでいた。

 

「このガンダムは操縦と火器管制を同時に行う必要があり、その為にステイメンとオーキスの各ユニット毎に一人ずつパイロットを配備させる必要があるのです。それで……パイロットデータから操縦の方はウラキ少尉をフルバーニアンからステイメンのパイロットに配置してもらう様にシナプス艦長にはお願いしました。」

 

「3号機にパイロットに……俺を?」

 

「この3号機はフルバーニアン以上にピーキーなシロモノなの。コウになら出来るわ。」

 

「その配置に異論はありません、問題はオーキスと呼ばれるユニットの方はパイロットをどうするかですニナさん。」

 

 そうニナに問い掛けるバニング大尉、これほどの武装を積んだ機体だ……担当する以上は生半可な負担では済まされないだろう。

 

「最初はジム・キャノンⅡで砲撃を担当しており、ある程度の能力を見込めるキース少尉にお願いしようとも思っていたのですが……。」

 

 そうニナは言いながら、レイの方へ顔を向ける……もしかして……。

 

「僕が……、ニグレドで火器管制をしていた僕の方が適任だ!」

 

「……えぇ、各パイロットのデータを先程見直した時にキース少尉よりもレイさんの方がオーキスを扱うのに最適だと判明しました……。」

 

「しかし……彼はもう軍属としては扱えません、軍の兵器を使用させる訳には……!」

 

「その件については私が責任を取る。」

 

「艦長……!?」

 

「これほどの機体だ。パイロットに掛かる負担も考えるとなると並のパイロットでは処理仕切れないだろう。」

 

「僕なら……強化人間の僕なら問題はない!僕に……僕にこのオーキスを任せてくれ!」

 

「……レイ・レーゲンドルフ、君がこのオーキスに乗ると言う事は軍を離反した可能性のあるアーウィン・レーゲンドルフと対峙する可能性もあるのだ、良いのかね?」

 

「……コロニーは……コロニーは落としちゃならないんだ。例えアーウィンと戦うことになっても……!」

 

「君に覚悟があるのなら、私は君をオーキスのパイロットに任命する。事態が事態だ、どんな手段を使ってでもコロニー落としは阻止しなければならない。」

 

「頼む艦長!僕をオーキスのパイロットに任命してくれ!」

 

「ウラキ少尉、君は問題無いかな?」

 

「僕は……。」

 

 考える、コロニーは止めなくてはならないが先程シナプス艦長が言った様にアーウィンさんとも戦う可能性があると考えた場合にレイは大丈夫なのか……。

 だが、彼の決意を固めた眼差しを見るとそれも杞憂でしか無いのかもしれない。だったら……。

 

「自分は問題ありません、レイの実力なら此方も頼もしくあります。」

 

「ウラキ……!」

 

「では、決定だな。3号機のステイメンのパイロットにコウ・ウラキ少尉。そしてアームド・ベースであるオーキスの火器管制をレイ・レーゲンドルフに命じる。」

 

『了解です!』

 

「艦長、空いた1号機のパイロットはどうするんです?」

 

「それも既に考えている。キース少尉、キミに1号機を任せたい。」

 

「え……?いや、じ、自分でありますか!?モンシア中尉達の方が適任では!?」

 

「キミがウラキ少尉に負けじと隠れてシミュレーターで1号機の慣熟を行っていた事を私が知らないとでも思っているのかね?ニナさんもキース少尉なら問題無いと言っていたのだ。」

 

 それは知らなかった、あのキースがそんな事をしていたなんて……。

 

「チッ、碌にシミュレーションすらしてなかった俺達よりは適任ってこった、キース!艦長の期待を裏切るんじゃねぇぞ!?」

 

「は、ハイ!モンシア中尉!」

 

 普段なら自分に譲れとゴネそうなモンシア中尉が事を荒立てる様な事もせずキースに1号機を譲った……どうしてだ?

 

「そもそもだ、2号機もそうだがガンダムなんてのは厄介ごとを呼んでくる災いじゃねえか、そんな機体になんか乗るくらいなら乗り慣れたジムの方がマシだってもんだ。」

 

 ……確かにそうだ。2号機の強奪から始まり、ガンダムニグレドの観艦式での味方への攻撃、この一連の騒乱の中でガンダムと云う存在はただの兵器という枠組みを超えた存在となりつつある……そう感じる時もある。

 

「コロニーが地球に近づくまで猶予はない。各員は各々の勤めを果たしコロニーの地球への落下を防ぐのだ!」

 

『了解!』

 

 コロニーの落下の阻止、連邦軍とデラーズ・フリートとの……そして自分とガトーの決着……。

 地球周回軌道の戦いで全てに決着が付くはずだ……。どんな結果になろうと月でケリィさんが言っていた様に、悔いの残る戦いにしないよう自分がやれる事を精一杯やらなければならない……。

 

 

 そう決意しながら、ラビアンローズから出航したアルビオンの中で、コウ・ウラキはガンダム試作3号機のデータを食い入る様に見入るのであった。

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