機動戦士ガンダム 紺碧の空へ   作:黄昏仮面

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第19話 決戦 阻止限界点②

 

「視える……!」

 

 高速で移動するアルベドの動きに対応しながら、見慣れた機体達に懐かしさを感じながらも彼らに向かう敵に正確に狙いをつける。

 

「当たれぇぇぇ!」

 

 連邦カラーのガルバルディにビームライフルを構えたゲルググを中心に狙い、B・W・Sの先端から大きなビーム光が放たれた。

 

『なんだ……!?ウワァァァァァ!』

 

 数機の爆発を確認し、高速でそのまま彼らの横を過ぎ去るように駆けて行く。

 

「各機!敵のガンダムは俺が引き受ける!他の敵を集中して撃破しろ!」

 

「ア、アンダーセン大尉……!?」

 

「ジェシーさん!?」

 

 ガルバルディはフィーリウス君で間違いないだろうと思っていたが、青いヴァイスリッターはマリオンが乗っているのか……戦いに導きたくは無かったけど彼女の意志で戦っているのなら止められない。

 

「聞こえているだろう、ガンダムニグレド!お前の相手は俺だ!」

 

『クソが……!やはり生きたいやがった!生きていやがったなジェシー・アンダーセン!』

 

 ガンダムニグレドは後方に待機していたデラーズ艦隊のものと思われるドラッツェ隊と共に此方を追撃する、直線移動だけとは言え、急造機でその機動力の高さには驚きを隠せない。

 

「だが……飛んで火に入る夏の虫だ!」

 

 ある程度フィーリウス隊から戦域を放す、減速しB・W・Sをパージすると同時にアルベドの右腕部をパージ後に大きな槍のように変形したB・W・Sと連結させる。

 

『なんだ……!?白いガンダムだと!?』

 

『手に大型の武装を持ったようだが、このまま仕留めるぞ!』

 

 ドラッツェの部隊はそのまま直線移動しながら突っ込んでくる。まぁこの装備の威力に気付けと言われても無理だろう。

 

『チッ……!あの武装……まさか!』

 

 ガンダムニグレドだけ違和感を覚えたのか距離を置く、この一撃で奴を仕留められるとも思えなかったからどのみち関係ない。

 

「喰らえぇぇぇ!」

 

 天に向けるように展開したB・W・S改め、()()()()()()()()()の先端から高出力拡散ビーム砲が放たれ接近して来たドラッツェ隊を全滅させる。

 

『拡散メガ粒子砲だと……!厄介な物を!』

 

 ガンダムニグレドは俺の得物を確認すると接近戦が有利と判断したのかサーベルを構え此方に向かってきた。

 だがクロエ特製のこのメガ・ルガーランスは近接にも勿論対応出来るように刀身から大型のビーム刃が形成される様に設計されている、これはかつて戦ったグレイのキケロガの様に使えば良いだろうと経験的に感じた。

 

『クソが!』

 

「二度もやらせはしない!()()()()()()()()()()()!」

 

『その名で俺を呼ぶんじゃねぇぇぇ!』

 

 ニグレドは格闘攻撃と射撃を折り曲げながら間髪入れず攻撃してくる。その速さはかつて戦ったグレイ以上だ。

 

『何故だ……!何故俺の動きについてこれる!テメェ如きが!』

 

「悪いが俺も数年ただ眠っていた訳じゃないんだよ!」

 

 一進一退の攻防が続く。元はペズンで開発されていた機体だ、両機の基本性能に大きな差が無い以上は後はパイロットの腕が決め所か……!

 

『行けよ!ファング!』

 

 ニグレドの背部ウイングスラスターから放たれた有線のワイヤーに繋がれた兵器が直角的に動き此方に迫ってくる。

 インコム……!?いや、違う……!

 

「手動操作か!」

 

 あの装備からは殺気という生の感情が此方に伝わっている。インコムはまだ技術的に無理であるしサイコミュ技術もまた秘匿されたテクノロジーであるため、クロエやララサーバルも想定していたが手動操作の方があり得るだろう。

 だが、ここまでインコムと大差無い動きをさせられる事に驚愕する。

 彼……()()のジェシー・アンダーセンが今名乗っているアーウィン・レーゲンドルフ……その名前が俺の想像通りなら彼は……。

 

「これ以上の暴挙はよせ!こんな事をしても彼女は喜んだりはしない!」

 

『黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇぇぇ!!!!!お前がアイツを語る事は許さねえ!』

 

 普通のパイロットなら機体の動きに耐えられず、レッドアウトしかねないような戦闘機動を彼は取る。

 だが、俺も負けてはいられないのだ。同じレベルの動きで奴の機体を追従していく。

 

『何故だ……!何故お前が……!』

 

()()だからだ……!お前も俺も……!」

 

『貴様……まさか!』

 

「お前は未来を壊すために……でも俺は!未来を生きる!」

 

 メガ・ルガーランスを構え、最大出力でニグレドへと放つ。

 

『くっ……!』

 

 放たれたビームはニグレドに回避されるもそのまま出力を維持しコロニーに向かいコロニーの先端に打ち当たる。

 その威力はかつてソーラ・レイの戦いでフィルマメントが装備したバストライナー砲の威力に引けを取らない。長時間照射させられれば如何にコロニーと言えど……!

 

『クソ!やらせはしない!』

 

 ニグレドはビームキャノンで此方を攻撃してくる。

 やはり彼を無視してコロニーは破壊は出来ないか……しかし!

 

「今の威力を見たか!俺にはコロニーを破壊出来る力がある!」

 

『何だと……!』

 

「お前だけに構ってはいられないって事さ!」

 

『貴様ァァァ!』

 

 アルベドの機動力を上げコロニーへと向かう、この挑発に乗った彼は俺を追いながら攻撃する。

 だが機動力はこのアルベドの方が一枚も二枚も上手だ、このまま奴を引きつけながらコロニーの破壊に向かえば……!

 

『お前の考えは分かるぞジェシー・アンダーセン!俺やアナベル・ガトーを引きつけ続ければコロニー落下の阻止は容易だと考えているんだろう!だがな……!もう世界はお前の知っている()()()通りだと思わない事だな!』

 

「何だと……!?」

 

 奴の言葉を裏付けるように、フィーリウス隊がいる戦域に赤いモビルアーマーが接近している事に気付く。あれは……!

 

「ヴァル・ヴァロだと……!?」

 

『残念だったなぁ!思い通りにならなくてなぁ!』

 

「……いや。お前にこそ敢えて言う、確かに世界はもう俺の知っている世界じゃない。」

 

 そう……、俺がこの世界に来た時に、最初からもう俺の知っているガンダムの世界じゃ無かったんだ。

 アーニャやみんな……そして色々な事があったけど、今では信頼できる仲間になった彼らがいる。

 

「──頼んだぞ。グレイ。」

 

 

ーーー

 

 

『見つけたぞコンペイトウで邪魔をしたジオンの売国奴ども!星の屑の礎となれ!』

 

 カリウスの駆るヴァル・ヴァロはゲルググ隊を退け漸く一息吐けるかと言う最悪のタイミングで現れた。

 既にスタミナ切れになりかけているフィーリウスは勿論の事、他の面々もまた練度の高い兵を相手にして満身創痍になっていた。

 

「皆さんは一度後退を!ここは私が……!」

 

「無茶だ!マリオン様!」

 

 公式記録では共同撃墜で2機のモビルアーマーを撃破しているヴァイスリッターだが、それはその時の状況があったからこそであり、かなり分が悪い状況には間違いない。

 

「私が……みんなを護る……!」

 

『一騎討ちか!望み通り葬ってやる!星の屑に散れ!』

 

 高速で対峙した両機は目まぐるしい動きを見せながら攻防戦に入るがやはりマリオンも疲労が溜まっており後一手というところでヴァル・ヴァロのクローに機体が掴まれる。

 

『これで終わりだ!』

 

「くっ……ニムバス……ッ!」

 

 彼から貰った命を無為にしてしまう事に心の中で詫びながら、収束するメガ粒子の光に目を閉じた。

 

 その時だった。

 

「命は大事にしろと言った筈だぞマリオン。ニムバス大尉の為にな。」

 

「えっ……!?」

 

『なにぃ!?』

 

 突如掴まれていたクローの圧力が無くなる。

 閃光がクローのアームを正確に射抜いていた。

 

「行くよアナタ。我儘なお願いだけど、敵は出来るだけ殺さないで欲しい。」

 

「分かっているさヘルミーナ、兵の中には道を選ばずデラーズ・フリートに参加した者も、今はまだ癒えない怒りで戦っている者もいる。俺達の様に救われる可能性は……残してやりたいからな。」

 

 白いMSは道中の敵をコクピットを狙わずビーム・ルガーランスで袈裟切りにして行く。

 青いMSもまたバックパックのみを正確に射抜き敵を無力化させていた。

 

「ヴァイスリッターにフィルマメント……?一体誰が……?」

 

 困惑するフィーリウス達、本来の乗り手は今は2人ともガンダムに乗っている筈だ。

 となると誰が乗っているのか……、と考えている中でただ1人マリオンだけがその心の暖かさに懐かしさを感じていた。

 

「グレイさんにヘルミーナさん……!」

 

「久しぶりだなマリオン、EC社に世話になっているとアンダーセンから聞いたが元気そうで何よりだ。ニムバス大尉は複雑に感じるだろうが、それでもお前の生きる道を祝福してくれているだろう。」

 

「でも気をつけてマリオン、貴方がいなくなったら悲しむ人は大勢いるわ。私たちもそう、だから絶対に生きて……どんな事があっても。」

 

「……はい!」

 

 先程までの消耗を忘れ、かつての知人達と肩を並べられる事の嬉しさを感じるマリオン。

 

「フィーリウスさん達は一旦アマテラスに補給に戻ってください!ここは……私達が引き受けます!」

 

『あの機体……!ドズル閣下をガンダムと共に撃破したあの白い機体と青い機体か!良いだろう!相手にとって不足はない!3年前の雪辱晴らさせてもらう!』

 

「行くぞマリオン、これは道を違えた同胞達を救う為の戦いだ。」

 

「はい!」

 

「憎しみは癒えない……だけど、新しい道を選ぶ事は誰にでも出来る……。そうだよね、姉さん……。」

 

 3機のMSは先程合流したとは思えない程の連携で、モビルアーマーに攻撃を仕掛けた。

 

 

ーーー

 

 

「グリム隊長!こちらに急速接近するMSを確認!……あれは……!?」

 

「待たせたねヒヨッコ達!アタイが来たからにはもう安心だよ!」

 

「グノーシス!?カルラか……!?」

 

 キャスバルと共に敵の迎撃に当たっていたグリム隊、そこに駆けつけたのは砲撃使用の重装備を積んだグノーシスに乗ったカルラ・ララサーバル軍曹だった。

 

「ハハッ、アタイがいなくて寂しかったかいグリム?」

 

「あぁ、鬼軍曹がいないとウチの新米達は気を抜いてしまうからね。……現在の状況は分かるかいカルラ?」

 

 カルラのジョークを受け流し、状況を再確認する。

 彼女が来たということは戦線にある程度影響が発生する場合もある、1人で来たと言うわけでもないのだから。

 

「大体はね、こっちはソーラ・システムの起動準備待ちなんだろ?アタイらの方はシショーがコロニーに直接移動してるし運送屋がアマテラスのMS隊の援護に向かってる。」

 

「運送屋?」

 

 自分達の状況は分かっているようだが、こちらは逆にカルラ達の行動がよく掴めない。

 アンダーセン隊長が来たのは分かったが……。

 

「運送屋……そうか、彼らも戦線に加わったのだな?」

 

「その声はキャスバル代表かい?頼りになる援軍にシショーが感謝してたよ。」

 

「ララサーバル、久しぶりだな。彼らが来たならアンダーセンも来たと言う事だな?」

 

「あぁ、シショー達はコロニーの破壊に向かってアタイはこっちの援護さ。……けどわざわざソーラ・システムの防衛は必要なのかい?聞いたよキャスバル代表……アンタらは……。」

 

「その話はまだ伏せてくれララサーバル。使わずに越した事は無いものだ、使ってしまえば内外から多少の紛糾は起こる、そういう代物だと言う事は分かっているだろう?」

 

 カルラとキャスバル代表は何の話をしているんだ?自分の預かり知らない所で話が進んでいる。

 

「そうだね……、アレの件についてはキャスバル代表達に任せるよ。今はそれよりも……。」

 

 気になる話ではあるが、確かにカルラの言う通り今はそれよりもやるべきことがある。眼前の敵は未だ数が多く油断できる状況ではないのだ。

 

「さぁて!今回ずーっと留守番でアタイも鬱憤が溜まってんだ!ここを通るって言うんなら高い通行料を払ってもらうよ!」

 

「新米達!カルラに情け無い所を見せるなよ、これまでの戦いの成果を見せつけてやれ!」

 

「了解!」「了解です!」

 

 

 

 援軍が加わり、今まで以上にやる気を取り戻した仲間たちと共にグリム達は再び戦場を駆ける。

 

 

ーーー

 

 

「此処が……コロニーの制御室の入り口……。」

 

 ソーラ・システム発射までの間、ギリギリまでコロニーの進路を阻止しようとコロニー内部へと侵入する。

 入り口付近を護衛していたMSは何とか倒したがまだ内部に敵が残っていないとも限らない。慎重に動かなければ……。

 

「……。」

 

 静かだ、どうやら敵もソーラ・システムが放たれると知って人を残していないようだ。

 それか、既に最終調整を終わらせている可能性も高い。システムがロックされていればソーラ・システム発射までにそれを解除するのも不可能だ。

 

「けれど、打てる手は打っておかねばなりません……。」

 

 最悪の場合、ただ私がコロニー内部に侵入したというパフォーマンスで終わるだけでも良い。その事実はこの戦乱の後で私が台頭する為に役に立つのだから。

 

「ここがコロニーの制御室……。」

 

 敵が出てくると言うわけでもなく、容易に中枢に辿り着く。

 此処からコロニーの進路を変更出来れば……。

 

「……やはり最終調整は既に終わっている……。」

 

 懸念していた通りの状況だ、コロニーは既に進路を固定し終えておりシステムはロックされて再度の進路変更はハッキングしなければ不可能、それも今からでは間に合わない状況だ。

 

「コロニーの落下目標は……。」

 

 最悪の場合、入射角を少しでもずらす必要がある。

 どれだけ差異を出せば彼らが狙う目標からズレせるのか……それさえ分かれば……。

 

「……え……?」

 

 彼らが狙ったコロニー落としの目標、それを確認した私は困惑する。

 何故……?この状況下で彼らがそこを狙う意図が私には掴めない。

 

『ソーラ・システム起動まで残り15分。』

 

「……ッ。時間がない……。」

 

 考えることは多いが今は時間がない、今やるべき事は彼らの目標とする地点からどれだけ入射角をずらせば最悪の事態を阻止できるかだ。

 

「……良し、これさえ分かれば……。」

 

 端末にデータを入力し、急いでルベドへと戻る。機体に乗り込むとコロニーに大きな衝撃が加わるのが分かった。

 

「ソーラ・システム……ではない様ですね。」

 

 艦船の砲撃だろうか?しかしこの付近にはまだ射程圏内に味方の艦艇は届いていなかった様に感じるが……。

 

 ルベドを発進させコロニーから退避する、一度ソーラ・システムの射程から離れなければ……。

 そう考えながらシステムの射程圏外へ移動しようとすると、目の前で激しい光の点滅が起こる、どうやらMS戦のようだ。

 

「……っ、この感覚は……!」

 

 伝わる……そして……視える……。

 ずっと、ずっと待ち続けていた彼の姿が。

 

「ジェシー!」

 

 数秒の後、声が聞こえた。

 

 

 

「待たせたなアーニャ。今度こそ……お前を護ってみせる!」

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