「戦いをやめろ!もうお前達が狙ったコロニー落としは阻止されたんだ!生きる為の選択をしろ!」
サウス・バニング大尉のジムが広域通信で敵に呼び掛けを行う。
「た、大尉!?本当にこんな通信を敵が聞き入れてくれるのでしょうか!?」
ガンダム試作1号機を駆るチャック・キース少尉は半信半疑と言った状況で事態を見つめていた。
「向こうも人間だ、わざわざ死にたがる事も無いだろう。それにな、3年前のア・バオア・クーでも最後はこうやって戦いを止める為に大勢が同じ事をやったもんだ。」
あの時見た光景を目に刻みつけたからこそ、人は助け合えると彼は信じていた。
それに応じるかの様に、幾つかのジオン兵は攻撃の手を止め始めた。
「ほ、本当に止まった……?」
「よーし、武器を捨てて大人しくしていれば共和国との協定に基づき捕虜として扱う。……ふぅ、やれやれだな。」
「これでこの戦いも終わりでありますかね大尉?」
「少なくとも今はな……。それよりもキース、さっきまでのガンダムの操縦だがウラキにも引けをとっていなかったぞ。成長したな。」
「あ、ありがとうございます!」
ほんの少し前までヒヨッコ同然だったのが今は一人前の兵士……、いやベテランにまで届く勢いにまで迫っている。
その事実に彼らを育てたバニングは誇りを感じるのだった。
「なぁキース、この戦いが終わったらお前とウラキで俺の家に来い。妻の飯を食わせてやる。」
「え……?バニング大尉の奥さんでありますか?」
「あぁ。ずっと別居中だったんだがな、この前復縁の話が来た、俺もパイロットを引退しようと思っていたからな、そろそろ家族の為に生活せねばならんと思っていたんだ。」
「そうだったんですね。それはウラキの奴も喜びますよ、楽しみだなぁ。」
「ハハッ、そうか?よし、そろそろ帰投す────」
その瞬間、バニングの機体が爆散する。キースは一瞬何が起きたのか理解できなかった。
……いや、理解したくなかったのだ。
「バニング……大尉?」
眼前には、投降した筈のゲルググがビームライフルを構えバニング機のあった方向に銃口を向けていた。
『腐った連邦に属してたまるか!我らの誇りを舐めるな!』
敵の声が聞こえる。だが何を言っているのか理解できない。
バニング大尉は敵を助けようとしていた、戦う必要はないと敵を助ける為に動いていた。その大尉が何故敵に撃ち落とされなければならない?
キースの脳内は絶望と怒りと、そして憎しみで満たされた。
「ウワァァァァァ!!!!!」
敵をビームライフルで撃破する、それに呼応するかの様に敵は再び攻撃を再開した。
『騙し討ちか!?俺達を騙しやがって!』
『敵は投降したんじゃなかったのか!?迎撃を開始する!』
事態を見ていた者、見ていなかった者、彼らの意志に関係なく再び泥沼の戦いが始まった。
『バニング大尉ィ!……この宇宙人野郎共がぁぁぁ!』
ベイト隊もまた敵への攻撃を開始した、そして戦いの火が一つ、また一つと灯り始めた。
戦いはまだ終わっていない。
ーーー
「ありがとうジェシー、私もまたあの人の元に還るわ。」
「マルグリット……。」
彼を……アーウィン・レーゲンドルフ、いやジェシー・アンダーセンを看取ったマルグリットがそう言った。
「本当は死人がここにいてはいけないんです、今を生きる人がいるべき場所ですから。」
「君には色々迷惑をかけた……彼の事も……。」
「あの人は……過ちを犯しました。この先の未来、貴方と彼女に訪れる出来事は貴方達を絶望の淵へ落としてしまう……。私にはその未来が見えました。」
彼女が見た刻……それが一体どんな未来なのか、俺には知る由はない。だけど……。
「大丈夫、大丈夫だマルグリット。俺達はどんな未来にだって負けずにより良い世界へと進んで行く、それでも……それでもいつかと。」
「……ありがとうジェシー。いつかきっと訪れる、巡りの先でまた会いましょう……。」
その言葉と共に、彼女の存在が消えていく……。
また会おうマルグリット、今度は彼と共に……。
「……終わったんだね、ジェシーさん。」
「あぁ、あの子にはいつも助けてもらってばっかりだった。すまなかったヘルミーナさん。」
「ううん……。きっと姉さん……お姉ちゃんも感謝してると思う。比翼連理の鳥が今またその存在を紡いだんだから。」
その言葉と共に、蒼い鳥が2羽
しかし、その光景の先には未だ癒えない憎悪が溢れている事に気づいた。
「なんだ……?戦闘の光……?」
俺達から見える距離で、一度止まった戦いの光がまた一つ一つ灯り始める、これは……。
「まだ戦っているのか……?この状況で……!」
愚かにも程がある、これ以上の戦いは意味なんてないのに……!
「これ以上の戦いは無意味だ……!止めに行かなければ!」
ガンダムアルベドに乗り込む、それに続きコウ・ウラキが試作3号機に、フィルマメントにヘルミーナさんが乗り込む。
「アーウィンは僕が連れて帰る……ウラキ、3号機は任せた。僕はニグレドに乗る!」
この陣容であれば例えガトーが相手でも立ち向かえる、そう思った矢先だった。
「……ッ!何だ!?」
異様な感覚に襲われると同時にNT-Aが発動し機体が回避行動を取る。
咄嗟の出来事に機体のコントロールを失う、システムのデメリットをこの状況で引き起こしたのは致命的だ……!一体何が……!?
『見事な活躍だったぞガンダム。それでこそニュータイプが時代を切り拓く為に必要な存在として相応しい!』
アルベドと同等かそれ以上の高速機動で跳ね回る機体を追いきれず、呆気に取られていると謎の機体は試作3号機へと向かう。
「なんだ……!?速い……!うわぁぁぁぁ!!!」
「ウラキ少尉!」
その巨体さ故に小回りが効かず敵機に攻撃を受けてステイメンは何とか無事に脱出が出来たようだがデンドロビウムが破壊される、Iフィールドジェネレーターを的確に破壊したと言う事は敵は恐らくアナハイムから……!
『その装備は厄介なのでね、潰させてもらった。成る程……流石はこの機体もまたガンダムを冠するだけはある。』
「まさか……あれは……!」
あの機体のフォルム……見間違えようがない……!
「ガンダム試作4号機!ガーベラ・テトラか!」
『ここで墜ちてくれると有り難いのだがな!』
敵のビームサーベルをメガ・ルガーランスで受ける。そ
『やはりガンダムとは乗り手と機体が合わさってこその機体と言うわけだ!あのお方が乗るに相応しい!』
「接触回線……!この声は……!」
聞き覚えのある声……しかし……これは……!
「まさか……!奴が生きているとでも言うのか!?」
『接触回線か、私の存在をよもや連邦で知る者がいるとでも言うのか?』
「名を名乗れ!」
『ふっ、名前など無い。敢えて名乗るなら
「くっ……!」
敵の機動にギリギリで対応するが先程までの連戦が響いているせいで中々対応しきれない……!
「ジェシーさん!援護する!」
フィルマメントの狙撃もギリギリの所で躱されてしまう。やはりガンダムと言うだけあって並大抵の機体では倒し切れないと言うことか……!?
『さて、そろそろ切り上げさせてもらうとする。あくまで私の任務は来たる時代の為の偵察なのでね。』
「なんだと……!?」
『また会おう連邦のニュータイプ共、その力……今度は
「クソッ!待て!……っ!?」
追おうとするが突如現れた敵の増援に足が止まる、何より驚くべき事は……!
「ジオンカラーのジム改……!?」
識別コードはジオンの物だが機体は紛れもなく連邦の物だ。デラーズの広域通信でジオンに寝返る連邦側もいるとは聞いていたが……!
『戦いはこの一戦で終わりではない。よく覚えておくのだな。』
去って行くガーベラ・テトラを追いきれず、みすみす逃してしまう。
敵のジム改を撃破して行くが、他の戦線もまた同じ様に戦いを再開させていた。
それから数時間の時を経て、漸く地球周回軌道上での戦いは落ち着きを見せた。
……しかしそれは多くの犠牲の上で成り立ったものだ……。
「嘘だろ……キース……バニング大尉が戦死したなんて……。」
「嘘じゃない……っ!嘘じゃないんだよコウ……!ジオンの奴ら……投降した振りをしてバニング大尉を……!俺は許せない……!デラーズ・フリートもジオンも……!絶対に許したりしない……っ!」
アルビオン隊と合流した際に、まさかの試作1号機に乗るキース少尉からバニング大尉の戦死の報を聞く。
この戦いまで生き延びた彼の最後が投降したと思われたデラーズ兵による不意打ちによる死だという事実は彼らに大きなトラウマを植えつけただろう……。
戦いには勝った。しかしこの勝利は単純に手を上げて喜べるものではない。多くの不安要素を抱えたものとなった。
コロニーは止められた、デラーズ・フリートとの戦いだけで言えば圧倒的勝利と言える。ガトーのノイエ・ジールはどうやらアクシズに合流した様だがエギーユ・デラーズが死んだ今、デラーズ・フリートはもう組織だった活動はできないだろう。
しかし、アクシズへ逃走したガトーを始め……アクシズへ寝返った連邦艦隊、そしてフォルシュ・リューゲと名乗る謎の男、アクシズを起因とする不安要素を多く抱える結果となった。
「……。まだ戦いは終わりそうにないな。」
本来の時代の流れであればこの争乱を機にティターンズが結成される筈だが、デラーズ・フリートの作戦が全て不意に終わったこの時代ではジオン残党鎮圧を強行するには厳しいだろう。
仮に結成されるとしても、連邦軍の中で大きくウエイトを占めるには難しいはずだ。
となるとエゥーゴもティターンズに反抗して結成される可能性も低くなる……。
いや、俺の想像の中の話では最早未来の予測は不可能に近いだろう。
俺の知る未来は、全て変わったのだから。
そして俺は、俺が帰るべき場所へと漸く帰還を果たした。