カートなんとかだった気がする。
次の日の昼休み。
どこからか、害意を感じる。その方向を見たら。
男(名前を知らない)がいた。
シンが驚いているトコから、きっと停学になったヤツだろう。
そんな事を思ってたら。火球がこっちへ放り込まれる。
周りが途端に慌ただしくなる。
「逃げ……!」
「うお。ビックリしたぁ」
こちらの世界では比較的、高速ではあるが。
指パッチン(フィンガースナップ)で、暴発させた。
……比較的、安全な距離で。
空気を圧縮して、炸裂させる魔法を、指パッチンで発動できるようにしていたのだ。
周りが若干、冷めた空気になる。
一瞬で莫大な魔力が権兵衛のもとに集まっていく。
「……なぁジャック。あれは制御できてると思うか?」
シンからの質問。
「……僕ならできる」
僕からの答えに。
「では普通はできないという事か」
「……アイツはできないだろな」
予想通り、制御に
物凄い勢いで空気を吸い込み。次の瞬間、炸裂する。
……その目が、赤い。
魔物の目は、瞳孔、白目、全てが赤く染まる。どうやって物を見ているのか、不明だが。それの人間バージョン。
何年前に生まれたかは知らんが、じいちゃん達が倒した。
「『魔人』かぁ」
ちなみに、僕の場合も、魔力制御をしていると、目が紅く染まる。だが、それは瞳孔だけであり、『赤』というよりも『紅』。もっと濃く、赤黒く染まる。僕はそれを『魔力焼け』と呼ぶ。
あまりにも巨大な魔力を常に扱っていると、魔力の色が瞳に混ざってしまうのだ。
……ちなみに、魔力が強大だと紅に。更に巨大になると黄金に染まる。
つまり、魔人というのは、強くなるのを諦めた人という事だ。
あ。魔力制御が失敗して、魔人になるのではなく、魔力制御を放棄したら魔人になるのだ。
内側から魔力が暴走しているために、身体能力が強化されるし、内側の魔力をテキトーに制御するだけで、魔法が撃てる。
……ちなみに、僕の場合は、目の所の光をこっそり操作して、黒に見えるようにしてある。
『ウォルフォードオオオオオオオ』
「呼ばれてるぞ。シン」
「お前もウォルフォードだろが」
僕達は一歩前に踏み出す。
「俺達は、邪魔か?」
オーグの声。
「あぁ。下がっていてくれるか?」
シンの声と僕の無言の首肯。
「どっちがオフェンスやる?」
「俺が原因みたいだからな。俺がオフェンスやるよ」
シンがバイブレーションソード(超高速振動する剣。めちゃくちゃ切れ味の良い)を取り出すと、僕は手を構えながら口を開く。
「女の子にイイトコ見せたいのか。死んでしまえ」
飛んできたバスケットボール級の火炎に、
「全ての紅を盗め。紅くない炎に炎たる資格はない」
リトル・リトル・レッドシーフ
無数の小さな紅で対応する。
赤は炎の象徴だ。その色味が表す温度の高低に関わらず、
いくら、実の温度が高くても、全てを飲み込む熱量を持っていたとしても。
向こうのバスケットボール級の
その熱量にどんどん飲み込まれ、小さなピンポン球クラスの火球は次々と爆発していく。その中がひときわ濃く紅に輝いた。その中で大火球の赤がひどく色褪せて見えて……。
煙の中の火は豆粒のような火と共に消滅した。
「俺の大敵だよな。お前は」
シンの言葉に。
「常識人は非常識に勝てるんだよ」
なんせ当たり前の事を当たり前にできるって事だからな。
科学の火ではなく、神秘の火は、消し方さえわかれば簡単だ。
『オ前サエ、オ前サエイナケレバ!!!』
「
「ジャック!!!ふざけてる場合か!」
魔法をぶち込むと、名無しの権兵衛の腕が吹き飛ぶ。
「そういう時は、こっそり悪評を流すんだぞ。『シンはホモ』とか、『シンはタンシ○ウホー○ー』とか」
「ジャック!!!」
「ジョークジョーク。ジャックジョークに決まってんだろ。ホー○ーシン。ジャック、ウソ、ツカナイ」
無数の氷槍を炎で瞬時に蒸発させながら顔を反らす。
「そのタイミングでウソつかないって言うのはマズいだろが!こっちを向け!」
「ごめん。シン」
「噂流したのか!」
「幸福の手紙で」
「ジャック!!!」
幸福の手紙とは、不幸の手紙の亜種で、「この噂を10人以上に流すと、幸せになれますよ」っていうヤツ。
……こっちのほうが流布が早そうだったから。……つい。
「ほんの出来心だったんです!」
「凶悪犯罪者は皆そう言う!」
ちなみに、この間も攻防は止めてない。
阿吽の呼吸ではあるが。
「「予想外に弱い」」
揃った。
魔人にしては、弱すぎ。
虎やライオンの魔物よりも少し手応えがあるくらい。
世界を滅ぼせるかと言われたら、ムリだと思う。
と思ったら、急激に魔力が高まって行く。
「爆発するぞ!!!」
「リア充もろとも俺が爆発するってか。首を斬れ!俺が魔力障壁を張る!」
シンが首を斬ると共に、魔力が拡散した。
「……なぁ。ジャック」
「なんだ?シン?」
顔を反らす。
「こっちを向け。俺を一緒に閉じ込めなかったか?」
優しい声が怖い。
「気のせいじゃあないか?」
一緒に閉じ込めるのは当たり前だろう。
剣を使う以上、しょうがない事だ。
「あとな。俺の悪評を流したのはホントか?」
「それはウソだ」
ホントは流そうかと思っただけで、まだ流していない。
あ。
「『ゲート』」
「オイ。ジャック!!!」
魔人討伐の功績は全部シンに押し付けられた。
こういう、功績って動きにくくなるからからキライなんだよね。
次の日。恨めしそうな目で、シンに見られた。
……逃げ遅れた、お前が悪い。
「お前も勲章を貰う事になったぞ?」
「……なんだとッ!!!」
シンの自慢げな目に、僕の人差し指と中指がフレンチキスをプレゼントした(詩的表現)。
「目が!目がぁぁぁぁぁぁ!!!」
……ギリギリセーフか?
魔人の登場ですねー。
……軽いなぁ。
世界の危機のハズなのに。