テンポが悪いかと思いますが、読んで頂けると幸いです。
命。
生物が例外なく持つもの。
全ての命は命から生まれて、育ち、戦い、営む。
やがていつかは老いていき、そして死ぬ。
それは平等に与えられた権利であり、幸福。
悪人も善人も、皆死ぬ事が出来る。
そして人は求めたがる。
老いる事も死ぬ事も無く永遠を生きる。
ああ、それもまた甘露だ。それが出来たならどれだけ良い事か。
まさに生物の理想と言える。
ある人は言う。
『不老不死など虚しいだけ』
『永遠に生きるとは永遠に苦しむという事だ』
『死なない事は摂理に反している』
なるほど。それも一理あるか。
確かに虚しいだろう。
確かに苦しいだろう。
確かに摂理に反しているだろう。
でも本当にそれだけだろうか?
本当に虚無しか無いのだろうか?
生きて死ぬ事の素晴らしさがあるのなら。
そう思わずにはいられない。
しかしてこれらはただの妄想だ。
実際はどうなのか。
私には見当がつかない。
突然だが言わせてくれ。
俺、女になった。
そして森に1人ぼっちだ。
そして全裸だ。
・・・・・・
いや待ってくれ。アホな事言ってるのは分かってる。
妄想酷い奴でもこんな事言わない。
でも実際現実になってるんだよ。信じられないけど。
なんでこうなったのか。
何も悪いことしてないぞ俺は。昨日だってゲームして夜中の2時くらいに寝ただけなのに。
見た目も変わらない普通の高校生だった。
なのにどうしてこんな事になるんだよ!俺は純真無垢で無力な一般人だぞ!
それを裸にひん剥いて何処かも分からない場所に放り込むなんて!
鬼!外道!悪魔!
見てるんなら出てこーい!
・・・・・・
待てよ。
・・・もしかしたら、そうなのか?
これは転生という奴なのか?
交通事故にあったり召喚されたりする事が原因で起こるという超常現象の1つ。
そして転生先でチートを手に入れウハウハライフを送るという
それが俺の身にも起きたのか?デジマ?
なら何で俺は女の子になってるんだ?可笑しくない?
誰が何のために俺を?チートはあるの?
そもそも何で裸なの?
うーーーーーーん。
まあいっか!
ウジウジしていたってしょうがない!前を向こうぜ前を!
持ち前の明るさを今こそ生かすんだ!ピカー!
・・・・・・はい。
そうなるとまずはこの森から出なきゃな。
全裸の丸腰状態で熊にでもあったらたまんないし。
とりあえず状況判断だ。
まず俺の身体だが、髪が足元まで長く伸び、赤黒く染まっている。
背丈は縮んで肌は白く、爪が長くなっている。
そしてそこそこ大きい胸とお尻。我ながら良いものを持っているな。
水溜りに映った顔を見るとかなりの美人である事が窺える。
「・・・寒っ」
口から可愛らしい声が漏れる。
全裸なせいで夜風が染みる。美女じゃなかったら酷い絵面だ。
そして森のど真ん中に放り出されている。見覚えのない森の中だ。
マズいな。襲われたら一溜りもないぞ。
チートの使い方とかまだ分かんないし。
「よし」
とにかく森を出よう。そして街を見つけるんだ。
全裸美女なら皆の目を引く事間違いなし。
そのまま保護してもらえるって寸法よ。
フッ。我ながら完璧すぎる作戦だ。
そうと決まれば早速実行だ。
方角は・・・まあ真っ直ぐ突っ切ればなんとかなるでしょ。迷路でも無いんだし。
「いざ、出発!」
いくぜ森の外へ!
待ってろ俺の異世界ライフ!
数時間後
「何もない・・・だと・・・」
がらんどう。
街が何かあると期待していたのも束の間。
目の前にあるのは広々とした野原だった。
そしてそれが地平線の彼方まで広がっている。
「・・・どうしよう」
ヤバい。計算が狂った。こんなんじゃ1人で全裸のまま夜を過ごさなきゃならなくなる。それだけは避けたい。
でももう動きたくないんだよ。素足で歩きまくったせいで足傷だらけだし。
寒い時期なのか知らないけど息も白いし。
眠いし。
「あーもう!何で誰もいないんだよお!」
森を抜けたらなんとかなると思ってた俺が馬鹿だった。
どうやらこの世界はハード系の場所らしい。
気を抜くとゾンビやドラゴンにやられるパターンだ。
良いだろう。ならば俺も本気を出すだけだ!
ここから能力やら何やら発現させて人のいる場所まで行ってやる!
そこでチート無双しまくってやるよオラア!
そして可愛い女の子とハーレムキングダムを結成してやるんだ!
性別?知らねえよそんなもの!
「グウウウウ・・・」
というかここ本当に魔法とか使えるんだろうな?
ここまで魔法の魔の字も無かったぞ。
ステータスも開かないし変なキノコや宝石があるわけでもなかったし。
もしかしたら中世風のファンタジーじゃないのかも知れないな。
だとしたらガッカリだ。
いや、だからと言って魔法がない訳じゃないはずだ。
転生したからには絶対に何かあるはずだ。
ガサガサッ
こんな野原にいてもしょうがないし森に戻ろう。
食べ物ならこっちの方が見つけやすいし、落ち葉で暖とかも取れそう。
上手く火つけれるかな・・・
ガサガサッ
・・・何の音?
今あの草むらから聞こえてきたぞ。
あ!
もしかして第一村人か!
やったー!ついに誰かに会えたぞー!
もうこのまま1人かと思ってたわ助かったー!
やっぱり俺の計算は間違ってなかったんだ!
「おーい!やっほー!」
声をかけながら草むらに近づく。
誰かなー。猟師かなー。
「グアアアアア!!!!!」
え。
ちょっと待っでぐべが
その熊は口を血で濡らしながら獲物を眺めていた。
草むらから奇襲して一発。
獲物は頭を噛み砕かれて絶命した。
大量の血を流して倒れ込み、ビクビクと痙攣している。
熊は口の中の物を飲み込み、今度は足を食いちぎった。
ブチッと音がして容易くもがれる。
その場に座り込んで前足で持ちながら咀嚼を開始した。
ガリ・・・ブチュ・・・
この寒い時期は熊にとって大変だ。
冬眠するまでに大量のエサを喰らい、皮下脂肪を蓄えなければならないのだ。さもなくば凍えて死ぬ。
これは彼にとって生きるために必要な事。
そこに悪意や罪悪感は微塵も存在しなかった。
「・・・・・・」
骨と肉を纏めて噛み砕き、その味を堪能していた。
その時だった。
ドクンッ!
もう決して動かないはずの肉体が、大きく跳ねた。
あまりに突然の出来事に、思わず咀嚼をやめて飛び上がる。
目が警戒の色で染まっていく。
グシャリと、咥えていた足が地面に落ちた。
そして信じられない物を見る。
グニュグニュ
首と片足の断面が、盛り上がってきている。
それは、徐々に形を作っていった。
「あば・・・ああああああ・・・」
口が。
鼻が。
目が。
頭が。
時間が巻き戻るように美しい顔が組み直されていき、長い赤黒の髪もあっという間に伸び揃う。
「うぐううう・・・」
足もまた同じように。
ニョキニョキと植物が生えるように長く、綺麗に伸びていく。
「はあ・・・はあ・・・」
そして気づけば。
長い髪と華奢な身体を持つ、無傷の獲物がそこにあった。
「あれ・・・俺、今・・・」
いつの間にか警戒から恐怖に変わっていた。
仕留めた獲物が再び動き出すなどあってはならない事だからだ。
それが現実になっている。
まるでお前の力など無意味だと嘲笑うように。
「え・・・待って・・・何で熊・・・?」
獲物が動き出した。
相変わらずノロい動き方だった。
だが熊は動けなかった。あまりの事態に処理が出来ず、頭の中が大混乱に陥っていた。
「嘘・・・あれ、俺の足・・・」
向こうも目を見開く。
こっちを見てくる。
何だ。一体何をする気だ。
「う・・・ああああ・・・」
やめろ。動くな。
何もするな。
お願いだ。死にたくない。
動くな死にたくない。
何もするなやめろ絶対に何もす
「うわああああああああああ!!!」
獲物が叫んだ。
それと同時に熊の精神のダムは決壊した。
「ゴアアアアアアアアアア!!!」
やっとの思いで熊は逃走を選択した。
ふうー。すっとしたぜ。
俺はパニックになって頭がとち狂いそうになると今みたいに叫んでクールダウンするようにしている。
それよりも重大な問題がある。
俺さっき完全に死んでたよな?
口が血塗れな熊さんがいた所を見るにアイツに食い殺されたのか。
じゃあなんで今生きてるんだ?
というか俺殺されたのに冷静すぎない?
「あーそういう事ね。完全に理解した」
なるほど。これが俺のチートという訳だ。
つまり不死身。
死んでも生き返る事が出来る能力だ。
これはいいぞ、ハッハー!つまり俺はこの森で死ぬ心配がないという事だ。
1番心配していた動物の襲撃とかの心配もいらない!
まあついさっき襲撃されたんだけど!あはははは!
・・・・・・
やっぱりおかしくね?
さっきから何で俺こんなに落ち着いてるの?
転生した事とかさっき死んだ時とか殆ど動揺していないじゃないか。
別に生前俺はクール系のキャラじゃ無かったぞ?転んで膝擦りむいただけで泣いちゃうくらいのヨワヨワメンタルだぞ?
これもチートの1つ?
「むう・・・・・・」
自分の食いちぎられた足を見ても何ともないからな。
自分でも気味が悪くなってきた。
・・・もしかしたら今の俺って変な影響受けて歪んでるんじゃ・・・
いやいやいや!よそうそんな事考えるのは!
今の俺は今の俺!何もおかしくない!ないったらない!
「・・・それにまだチートの実態が分かったわけじゃないし、あれこれ考えてもしょーがないよな」
悩んでるだけじゃ何も始まらない。
ここからじっくりと探っていこう。
とりあえず当面の目標はチート能力の解析と拠点の確保だ。
あと魔法が使えるかとかも確かめたい。使えなかったら泣く。
それらが落ち着いたら人間探しかな。やっぱり1人は寂しい。
・・・よし。計画は完成。
もう1回死んじゃったけど張り切って行こう。
俺の異世界ライフはこれからだ!
「・・・くしゅっ」
あと服も何とかしよう。
不老不死のメリット
・死なない
・痛みが無い
不老不死のデメリット
・死ねない
・心が痛まない