「マジですか?」
彼女は言われた事が信じられなかった。
「マジです。」
しかし、現実は非情である。彼女に救いはなかった。
「残念ですが、貴女はクビです。」
彼女が今、最も聞きたくない言葉がその耳に届く。
「そんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
彼女は泣き崩れた。彼女の心を奥深くまで抉ったその言葉はいっそ冷酷に告げられた方が良かったであろう。しかし、上司の言葉は憐憫と慈愛に満ちた同情の言葉であった。
「貴女みたいな優秀な社員を私達もクビにしたくは無いんです。ですが、就業規則第596条の第3項にもあるとおり"自身の担当となった魂を見失ってしまい正当な業務ができなくなった場合"その社員を正規非正規の区別なくクビにする事になってますので。残念ですが……。」
さらなる追撃によってHPはもう0だったのにも拘らず、ダメージを受けた彼女はさめざめと泣く事しか出来なくなっていた。
しかし、神への祈りが通じたのか分からんけれども、一筋の希望が彼女に舞い降りた。
「……ですが、我々は悪魔ではありません。貴女にチャンスを上げましょう。」
その言葉は傷付き、ボロボロになった彼女の心に染み込んでいった。
「チャンス……ですか?」
もう駄目だぁ。お終いだぁ。となっていた所にチャンスである。まともな思考なら、何か裏があると感じただろう。しかし、この時の彼女はまともでは無かった。このまま"放り出されて路地裏に連れ込まれて犯されるんだろう"という自身の最悪な未来を想像していたのである。
「そうです。貴女にチャンスを上げると言っているのです。就業規則第464条によると、クビになる社員への特例的撤回法があるのです。そして、貴女は第9項に当てはまります。人間に身を落とし、本来ならば担当する筈だった魂をサポートするのです。幸いな事に件の魂が何処に行ったのかは分かりました。貴女はその魂をその人生を掛けてサポートしなさい。それが達成出来た暁には貴女は晴れて、ここの正社員として戻ってこれます。やりますか?」
彼女の上司が言ったこの提案はどんな甘味よりも甘く、美味しそうなものであった。そして、彼女は迷わずこの提案に食らいついた。
「やります!!私にやらせて下さい!!」
彼女は叫ぶ様に言い放つと、その瞳にメラメラと炎を燃え上がらせた。"全ては自身の生活の為に!!その魂をサポートしてみせる !!"と。
「わかりました。では直ぐに用意をしましょう。」
上司がそう言った途端に彼女の足元が魔法陣に変わり始め、彼女自体が光り始めた。
「えっ!?」
彼女が自身に起きている事を理解するのに戸惑っている間にも、着々と準備が整っていく。そうして、彼女が現状を理解した頃には全てが終わった後だった。
彼女の立っている床に急に穴が空き、彼女は落ちていったのだ。
キャアァァァァァァァァァァァァァァァァ…………。
"神の御加護があらん事を。"彼女は真っ逆さまに下界に落ちていく際、そんな声が聞こえた気がした。
こうして、また一人の犠牲者が生まれたのであった。
こんな感じで良いのでしょうか?