欠片の断片その2
「ようこそ!私はその子、タオの父ででチェンと申します。本日はうちの宿にお泊りいただきありがとうな」
エドワードの服を引っ張り連れてこられた宿の入り口で5人を迎えてくれたのは屈強な体の男性だった
「ホコリっぽくて悪いが炭鉱の給料が少ないんで店と二束のワラジってわけよ」
「何言ってんだ親方!その少ない給料を困っている奴にすぐ分けちまうくせによう!」
「うるせいな!文句あるなら酒代のツケをさっさと払いやがれ!!」
チェンは宿のほかにも炭鉱で働き、現場監督のような職についている。昼間の仕事が終わり夫婦で経営する宿の手伝いを夜に行っていた
その宿の一階は酒場となっており、炭鉱で働く部下を招き入れ、安く提供していた。そんなやり取りを見ていた5人の下にチェンの妻である女性が声をかけた
「1泊2食の5人分ね!」
「おいボウズ!うちは高けぇぞ!」
「ご心配なく、結構持ってるから、んでいくら?」
酒を持ったチェンが5人をテーブルへと案内し答えた
「50万!」
「ぼったくりもいいトコじゃねーか!!ひとケタ違うじゃねーか!!」
「だから、うちは高けぇって言ったろ?滅多に来ない外の国の観光客にはしっかり金を落としてってもらわねぇとな」
「あんまりカッカすんなよ!兄ちゃんそんなに怒ってると伸びるものも伸びねーぞ!」
店主とエドワードのやり取りを見ていた風・・・宝譿が口を挟んだ
「ブッコロス!!」
「ちょっと兄さんやめなよ」
「止めなさい!風!本当に申し訳ない。」
アルフォンスがエドワードをたしなめ稟は風を制しする
「冗談じゃない!他あたるわ!」
席を立ち宿を出ていこうとするエドワードの頭を店主であるチェンは鷲掴みにし無理矢理に座らせた
「逃がすかよ金づる!!」
「諦めてよお兄ちゃん!他所に行ってもこことそんなに変わらないよ?」
タオがエドワードへと告げる
「マジかよ・・・全然足りねぇーじゃないか!こうなったら錬金術でこの石ころを金に変えてやろうか!」
「やめてよ!金の錬成は国家錬金法で禁止されてるんでしょ!」
「バレなきゃ良いんだよ!バレなきゃ!フフフフフっ」
「兄さんあくどいよ」
そんな二人のやり取りをみていたタオが突然声を上げる
「お兄ちゃん錬金術師ってなーに?」
「あの~さっきから錬金術ってなんなんでしょうか?学的手法を用いて物質的に内服薬の丹を得ようとする外丹術ものなのでしょうか?もしくわ気を整える呼吸法や瞑想等の身体操作で、体内の丹田において仙丹を練ることにより仙人を目指す内丹術・・・」
稟は先ほどから二人の話を聞きたくてうずうずしているがチェンとエドワードのやり取りで全然口を挟めなかったが意を決し問うた
「えっと・・・郭嘉さんだっけ?錬金術ってのはな、無制限になんでも出せる便利な術だと思われてるんだが実際にはきちんと法則があって、おおざっぱに言えば質量保存の法則と自然摂理の法則だな!術師の中には四大元素や三原質を引き合いに出す人もいるけど」
「ふむ。まったくわからん。」
酒を飲みながら沈黙していた星
「質量が一の物からは同じく一の物しか、水の性質の物からは同じく水属性の物しか錬成できないってこと」
アルフォンスが星に対し補足をした
「つまり錬金術の基本は【等価交換】何かを得ようとするならそれと同等の代価が必要って事だ!」
「もぐもぐ・・・なら、その話を聞く限りでは、石を金に変えることも、物を生み出すことも簡単なんでしょうねぇ~」
食事をしながら風がそう言うと
「金を錬成するのは法で禁止されている」
「・・・そうか!」
エドワードの言葉をもとに思考していた稟がつぶやく
「何かわかったのか稟?」
「はい!きっと金を錬成すると貨幣価値の暴落・・・経済混乱を防ぐための法ではないでしょうか?確か・・・呉の抱朴子と言う方の本に書かれていたんですか」
「ちなみに貴金属も含まれる。その辺の石ころ全部が金になりゃ錬金術師は金持ちだ」
錬金術とはなにか?聞けばわかるのか?稟はこの話を仮説を立てながら推理をしていく、ブツブツ呟きながら考えていると宿のドアが壊され、二人の供を連れて一人の武将がやってきた
「ったく!相変わらず汚い店ですこと!チェンさん」
「これはこれは袁紹様!こんなむさ苦しいところへようこそ」
皮肉たっぷりに袁紹と呼ばれる武将へとあいさつをするチェン
「ふん!御託はいいですわ!それより、このところ献上品を滞納してるようですけど、貴方の所に限らず街全体に言えるようですけども・・・」
「すいませんぇどうにも稼ぎが少ないもんで、こうやって昼も夜も働いてるってわけなんですが」
「へぇ~そうですの?そのくせまだ酒をたしなむだけの生活の余裕はありますのね?でわもう少し献上品を増やしても良いと言うことですわね」
」
「っな!ふざけんじゃねーぞ!クルクル頭!雑巾で顔でも拭いて出直せ!」
袁紹の言葉に我慢が出来ない従業員達は立ち上がり詰め寄ったすると
「めんどくせぇーな、悪いけど大人しくしてなよっと!!」
袁紹が連れてきた供の一人に文醜と呼ばれる大剣を装備した武将が立ち上がった二人を軽々と投げ飛ばした
「見せしめですわ!猪々子さん殺ってしまいなさい」
「はーい!麗羽様~!ごめんね、楽に逝かせてあげるからね」
剣を取り出し倒れた男性へと振りかぶる、もう駄目だと言うとき、間合いにエドワードが右手で大剣を防いだ。鈍い金属音が響き猪々子が驚いた表情をする
「なんですの!?その小僧は・・・あなたには関係ありませんでしょ?下がってなさい!」
「いやー袁紹様が見えてるってんで挨拶しとこーかなっと!ほれ!これ見てみ?」
エドワードはそう言うとコートの裏から一通の手紙を袁紹へと差し出した
「これが・・・なんですの?こ!これは!!後漢の第12代皇帝霊帝様の勅書!!」
「「「な!」」」
袁紹の言葉に反応したのは、風、稟、星の三人だった
「なぜ、エドワードさんは霊帝様の勅書をお持ちになられているのかしら・・・」
「はぁ~人は見かけに寄らないとはこのことですねぇ~」
稟はあり得ないと言う顔で、手紙とエドワード見つめている、風も驚いた様子でじっと手紙を見ていた
しかし星とアルフォンスはだけは冷静に状況を確かめているのだった
「麗羽様~なんなんですこのガキ?」
麗羽とは袁紹の真名で、その真名を呼べるということはこの文醜も認められた者の1人
そしてもう一人の供がようやく口を開いた
「文ちゃん!この勅書がわからないの?勅書ってのは霊帝様による直々の手紙の事だよ!」
文ちゃんと呼んだ武将は顔良。こちらも袁紹の部下である、真名は斗詩。
「マジっすか?そんなに偉いんですかあのちっこいのが?」
「これは、好機ですわ!ここで印象を良くしていれば皇帝にコネを作れるかもしれませんわ!」
ニヤリと笑みを浮かべ袁紹はエドワードの差し出す手紙を受け取ったのだった」