荊州へ向かう道を3人の女性が明かりも無しに早足で歩いていく。月明かりが照らし目が慣れていれば見える程度の道を
今、大陸で問題を起こしている黄巾党。その長を務めるは長女の張角、自らを天公将軍となのり奇跡の業を見せ信仰を集めている。真名を天和(てんほう)
次女である張宝は地公将軍をなのり、張角にかわって黄巾党の兵達の指揮をとっている。真名は地和(ちーほう)
三女である張梁、彼女もまた人公将軍を自ら名乗り黄巾党の指揮を取っている。真名を人和(れんほう)
そんな三人は今大急ぎで荊州へと急いでいた。
「はぁ・・・はぁ・・・急いで姉さん達!早く荊州へ行って兵を纏めないと・・・」
先頭で言を発するは三女の人和
荷物を雑に扱い息を切らしながら先へと進む
「ま・・・待ってよ!人和!休憩・・・ちょっとだけ休憩・・・」
「そうだよ!人和ちゃん!そんなに急いだって疲れるだけだよ・・・」
急ぎ荊州へと向かう人和とは相反して、次女の地和と長女の天和が休憩を要求していた。
「姉さん達!今回は本当にまずいのよ!さっき居た場所で斥候から聞いた話なんだけど、私達を討伐するために朝廷が兵を集めているの!」
「っは!あのボンクラ天子!今頃になってようやく兵を集めだしたの?本当に物事の是非を判断する力がなく、愚かなことね!だから御しやすいのかしら?」
地和は天子である霊帝を暗愚と罵った。姉妹だけとは言え、ほかの人に聞かれれば当然問題となる発言であるが、その霊帝に対して喧嘩を売っているのが黄巾党であった
「で?朝廷はいつ動くの?」
「多分20日後には先遣隊が来ると思う。それまでに荊州で集まている兵を本隊へと合流したいのよ!彼らはほとんどが農民とは言え数のチカラで圧倒できるわ。天和姉さんは本隊と合流したら【業】を使って武器や盾を作ってほしいの!今のままじゃあ全然足りないから!」
「うん!それは良いんだけど、この指輪って本当になんなんだろうね?あの南華老仙って名乗っていた【若い男の子】は何で私達にこんなチカラを授けてくれたのかな?」
天和は右手の人差し指につけてある指輪を月へとかざす。月明かりで指輪にはめられている宝石は赤く輝いていた
「べっつになんでもいいわよ!これさえあれば朝廷だろうが軍隊だろうが全然怖くないもん!あんな天子なんて、さっさと殺しちゃって私達が皇帝を名乗ればいいのよ!」
「地和姉さん・・・皇帝には興味はないけれど、霊帝には不満はある。それの改善と私達の夢の為にも、今の時代は荒れすぎている。それを収めるのが目的」
人和が言った私達の夢とは、3姉妹が大陸の村々で歌謡祭を開くことである。三姉妹は歌うことが幼いころから好きだった。それを月日を重ね、年月を追う毎に大きくなっていった。
そんな中、夢をつかむために旅に出た3人は大道芸人として行く先々の村で歌い踊り、その見返りとしておひねりを貰い旅の資金へとしていた。
だが後漢の情勢は厳しく、貧困と富裕層との差が大きく開いていた。民達は働けど働けど年貢としてほぼすべてが朝廷へと献上されていた。それが先の袁紹である。
それを行く先々で目にし肌で感じていた三姉妹は、そんな朝廷にたいして不満をもつ同士を募り始める
もっと安心した生活を望みませんか?もっと安定した職業を望みませんか?もっと安寧な暮らしを望みませんか?と
それに賛同するものは少なからず居たのだが声を上げて天子に喧嘩を売ることは、民衆は望まなかった。
何度も何度も村を渡り歩き、歌い踊り人を集め勧誘をするが成果はほとんどあがらなかった。そんなある日、次の村へ向かっている途中の山道で南華老仙と出会った。
「ねぇ人和ちゃん、いつになったらお姉ちゃん達についてきてくれる人達ってできるかな?もう・・・何度目になるんだろう。話は聞いてくれるけど、みんなうつむいていなくなっちゃうよ」
「天和姉さん・・・でも!少しずつ繰り返して行けば、きっと村人達も分かってくれると思うわ」
休憩中なのか山道の途中にある場所で座りながら木を背もたれにして足を延ばし天和が本音を漏らす。その言葉に人和は根気よくやれば信者は増えるから!と姉を気遣っていた
「でも、いい加減、そろそろ成果が欲しいのも事実よね。こんなに頑張って勧誘しても、不満はあるけれど、誰も武器を取ろうとはしない」
天和の横で同じ木を背もたれにしながら地和も愚痴をこぼした
「それは・・・」
「実績でしょうかね!あなた達に必要なのは!」
突然、姉妹の目の前に白い法服(ローブ)を羽織った男が現れた。
「っな!なんですか、貴方は!」
人和は現れた男を前に護身用である小刀を取り出し構える。座ってた、天和と地和は慌てて男から距離を取り、二人とも武器を構えた。すると男は笑いながらフードを外し答えた
「まぁまぁ!落ち着きなさい、私はあなた達へご支援させていただきたくついてまいりました。村々でのあなた方の演説は本当に心に響くものがありました。今の暮らしをもっと豊かに生活を安定して子供達が安心して暮らせる世界を作りたいと言う言葉に、感服したのですよ」
男はそう言うと膝をつき、臣下が主へと敬意を表すように礼を示した。
「貴方は私達とともに協力してくれるというわけですか?」
男への警戒は解かず武器を構えたまま人和は問いかけた
「えぇ!今日はこれをあなた達に献上致したく参りました。これさえあれば、貴方たちの夢は大きく前進することでしょう」
男は腰につけているカバンから小さな箱を取り出し、フタを開けて人和の前へと差し出した。その中には指輪が入っており赤く光る宝石がついていた
「・・・綺麗」
思わず天和が言葉を漏らした
「この指輪がなんだと言うのですか?これを売って金に換えろと?」
人和は一瞬ではあるが指輪に見惚れてしまった。しかし怪しい男が差し出したものをすぐに受け取ることはできない。その様子を地和が見て、話を進める
「で?それがなんの役にたつのかしら?」
「はい!これはですね!あなた達三姉妹の実績を作れるものと申し上げました。これは如意宝珠と言いまして錬丹術などに使われる物でございます。ほかの国では呼び名は交わり仏舎利や霊薬、賢者の石などと呼ばれている代物にございます」
男はそういうと小箱の中に入っている3つの指輪から1つを手にし、今から実演をして見せると言ってきた
「言うより、ご自身の目でご確認いただいた方が確かだと思われますので一度私の方で実演させてもらいます。そうですね・・・こんなのは如何でしょうか?」
男は指輪をはめると神に祈るように胸の前で手を合わせた。すると赤い雷のような光が走る。両手を開いていくと右手と左手の間から物質が飛び出してきた
「これは拡声器ともうします。こちらを使ってもらえますか?」
拡声器と言われたものを天和へと渡した
「ちょ!姉さん!そんな物騒なもの軽々しく受け取らないでよ!!」
天和はきょとんとした顔で言われるがまま男から受け取った。それを地和に咎められる
「えっと・・・これはどう使えば?」
「こちらの突起を押していただいて喋ってもらえますか?」
「こう?・・・数え役萬☆姉妹です」
すると拡声器から普段は出せないであろう声が、大音量にて吐き出された。その音に驚いた天和は手に持っていたものを地面へと落とした
「なに・・・これ・・・」
腰が抜けて立てない天和のそばに落ちている拡声器を男が拾い上げ、説明をした
「こちらは、ご自身の声を、今感じてもらった通り、大きくできるものにございます。あなた方は演説をされていますが、声が聞こえるのは前列の方にいる方だけなのですよ。こちらをお使い頂けましたら後方まで声が届きます。あなた方の歌う事にも役に立つものかとお思いですが如何でしょうか?」
説明が終わると男は拾い上げたものをもう一度、天和へと差し出した
「・・・たしかに凄いわね・・・これがあれば私達の夢も、演説で民を集めるのも楽に、確実に効率が良くなるわ。でもこれを私達に与えてあなたには何の得があるのかしら?」
人和は今だ警戒はとかず・・・否!解けずに居た。得体もしれぬものを作り出し、それを私達に使えと言ってきた。見返りはなに?無名の私達に与えて何の得があるのか。
混乱する人和は冷や汗を流しながら男を見つめる
「別に見返りが欲しくてこんなことをするわけではございません。私はあなた達の賛同者なのですよ!この国は腐っているし、官僚たちは腐敗している。そんな連中に意を唱える方々をお待ちしていたのです」
行業しくまた礼を見せた
「申し遅れましたが私は南華老仙と申します。このチカラは正しく使っていただけるのでしたら大いなる希望を、悪しき事に使えば天罰が下りますので、くれぐれも使い道を間違えぬようお願いいたします」
男は自らを南華老仙と紹介した、手から指輪を外し木箱へと戻すと、木箱を天和へと渡した
「これさえあれば、貴方達は大きく前進することができます。この国をどうかお助けください」
「人和ちゃん・・・」
「人和・・・」
どうするの?どうしたらいい?という目で天和も地和も人和をみつめる
「わかったわ!今私達は確かに実績もチカラも持ちえない!この指輪はありがたく使わせてもらいたいと思います。そこでこの指輪の使い方を教えてください」
警戒していた人和はここでやっと、刀を下し警戒を解いた。いや、本当は今すぐにでも立ち去りたかった。でもチカラが無いのは事実、今この男が見せたのは奇跡である。これを私達が使うことが出来れば・・・
「えっと、南華老仙さん!この指輪はどんなことができるの?」
人和が警戒を解いたことにより天和が小箱を手に持ち指輪を眺めながら南華老仙へと聞いた。
南華老仙は当然であるかのように呟いたのだった
「なんでも・・・ですよ!」