あの日見た青年は、空虚でした 作:Cross Alcanna
今回は日常回ではありますが、本編に関わってくる回となっていますので、ここを飛ばして本編に突入するのは、オススメ出来ません。一応、新設定に繋がりますので。
そして、☆10評価:エネゴリくんさん、☆9評価:Kiriya@Roselia箱推しさん、☆1評価:ステゴロガンジーさん、お気に入り登録:FAKERさん、正宗03698さん、Ibukijimaさん、レインピーさん、✨zero✨さん、tori@さん、ミクさんさん、テレフォン31さん、評価及びお気に入り登録、ありがとうございます。皆さん、シリアスが好きなんですかね?私は世間で何が好かれてるかは全く知らないのですが。
では、本編を開始します。
[花咲川学園 調理室]
「はい、今日は調理実習です!今日作るのは野菜炒めです!火を扱いますので、くれぐれも怪我はしないようにして下さい!」パン!
某日某所、2時間に渡る授業のコマ数の調理実習が始まろうとしていた。凪率いる班のメンツは、凪とたえイヴである。他の班含め、皆教師の言う事に耳を傾けている。
「では、各班準備でき次第始めて下さい!」
そうして皆準備に取り掛かる。勿論の事、凪達の班も準備に取り掛かる。その途中で、凪達の中でこんな会話があった。
「…若宮さん」
「…?何でしょう」
「火使うの…お願い出来ますか?」
「?良いですよ!」
果たして、何故凪がこんな事を言ったのか、それは後に判明する事に……
「花園さん、そっちは終わりましたか?」
「うん、全部切り終わったよ」
「若宮さん、野菜入れますのでお願いします」
「はい!わかりました!」
どうやら順調に進んでいる模様。全員がしっかりと働いており、これといったミスもしていない。この後も順調に進んでいくのか……と思っていたが…
「わっ!?火が!」
「大丈夫?イヴ?」
そんな調子でたえが答えているが、そこそこ強い火になっている。何故先生が気付いていないのかが、若干の不審感を覚える限りであるくらいには。しかし、これでは終わらなかった。
「あぁぁぁぁぁ!?!?」ブルブル
「…凪?」
たえが振り向いた先には、大声でブルブルと震える、まるで小動物の如く怯えている凪の姿が。いつもとはかけ離れているその光景に、思わずたえはいつもとは違う真剣な雰囲気を醸している。
「ちょっと!火が強すぎますよ!?」
そんな状況の中、ようやく先生が気付いた模様。急いでイヴのもとに駆け付けて火を止めるも、今度はたえが一言。
「先生!凪が変です!!」
「は、花園さん!?凪君が…?って、どうしたの凪君!?」
切羽詰まったような声を出すたえに、思わずたじろいでしまう先生。言われた通りに凪の方を見ると、先程よりも酷く怯えながら、念仏のように何かを言っている凪の姿。その光景に、先生は思いもよらない声をあげた。
「花園さん!凪君を保健室に!」
当のたえはと言うと、そう言う前にもう凪を担いでいる。周りの皆が何かを思う前にたえは凪を担ぎ、急いで駆けていった。
[保健室]
「…………ぅん…」
目が覚めた。が、思っていた場所とは全く違う場所での目覚めとなった。…そう言えば記憶がないけど、どうしたんだろう?
「おや、ようやく目が覚めたみたいだね」
そう言いながら、僕の顔を覗き込んでいるのは成ヶ谷さん。この前もお世話になったわけだけど…どうしてここにいるんだろう?
「火を見て倒れたそうだね、火が嫌いなのかい?」
「…わからないです」
…そうは言ったものの、心当たりが全くないわけではない。あの時、先生が火って言った瞬間に、僅かながら僕は身震いしていた。…どうしてかはわからないけど。
記憶が無いからかもしれないけど、火に対して何かエピソードがあるのかと問われても、「知らない」としか言えない。本当に何なんだろう……
「…とりあえず、火には気を付けた方が良いかもしれないね。聞いた事をまとめると、トラウマを抱えてると解釈した方が良いだろうし」
「…記憶が無いって、こういう時不便ですね」
自分に訴えかけるように、そして自嘲を込めてそう放つ。成ヶ谷さんは、気にし過ぎじゃないかな?とは言ってくれるけど、僕はそう思わない。氷川家の一員になってから、こうした出来事も多い。そういう意味では、ある種本音なのかもしれない。
「で、どうするのかな?教室に戻るのか、もう少し休んでいくのか」
「…一応、もう少しだけ寝ておきます」
その一言に、成ヶ谷さんは少し意外そうな顔を浮かべていた。本当はすぐ戻ろうかと思ったけど、正直気分が少し優れない。無理はするなって、早雪さんにも言われてるし。
「わかった。戻る時に声をかけてくれればそれで良いからね」
「はい」
僕の返事を聞いて、成ヶ谷さんは自分の机に戻っていく。僕も、少し寝る為にベッドに入って、瞼を閉じた。
──きゃぁぁぁ!!!
──くそっ!……麗!お前だけでも……!
──麗!
──……お__ん、__さ_……
──いたぞ!子供を最優先で助けるんだ!!
──隊長!この子の親と思われる人が!
──くっ!行けるか!?
──俺達が行きます!
──…わかった!くれぐれも死ぬなよ!
──はい!
[2-E]
「凪!大丈夫?」
「凪さん!休まなくて大丈夫なんですか?」
「…大丈夫ですよ、少し休みましたから」
あれから時間は経ち、元気になった凪が教室に戻ると、クラスの皆に心配される。特にたえとイヴは、過保護ではないかとばかりの心配具合だ。
「火を見てああなったって事は…」
「もしかして、火が苦手なの?」
至極当然の質問が飛び交う。しかし、先程のやり取りを見ての通り、凪には火が苦手なのかを判別する為のエピソード的なもののない為、言ってしまえばどっちつかず状態だ。
が、とりあえず先程のやり取りを説明すると、2人は少々堅い表情を浮かべる。
「記憶が無い……凪さん、大変ですね」
「まぁ、今が楽しいので良いんですけどね」アハハ
「今を楽しむのは良い事だからね」ウンウン
1人だけ変な納得をしてはいるが、とりあえずこの場を収めることに成功した模様。そうして、いつも通りの日常は過ぎていく……
[帰り道]
「凪、大丈夫だったの?」
「うん、今は何ともないよ」
あれから更に時間は経ち、姉さん達と帰路に立っていた。思っていた通り、かなり心配されてるけど。あの後は特に何も無かったから、それを伝えると、姉さん達も安心したのか、言葉に併せて息をホッと漏らした。
「今日の晩御飯何だろうね〜?」
こうして、色々あった今日も終わりを迎える。そんな事を思いながら、僕は姉さん達の横を歩いて行った。
「……見つけた」
古い新聞紙を片手でグシャリと握るその人に、気付かないまま。
ということで、第16話が終わりました。
この話はここらで入れておきたかったので、本編との繋ぎとして導入しました。次回からは本編に突入します。
次回『青年は、鉢合わせました』