あの日見た青年は、空虚でした 作:Cross Alcanna
今回で、一先ず本編2は終わりになります。次回からは日常回に移りますので、アンケート結果のキャラが登場予定です。
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では、本編を開始します。
[氷川家 凪の部屋]
「…………ぅうん…」
『凪(君)!!』
ふと、意識が覚醒したようで、自分の体を起こすと……凄い形相で僕の顔を覗き込む2人の姉の姿が、まず目に入ってきた。…正直、ちょっとビビっちゃったんだけど……何て思っていると部屋の扉が開いた音がして、母さんが一言、2人に放つ。
「2人共…そんなんじゃ凪がビックリするじゃないの。まだ病み上がりみたいなものなんだから、抑えなさい」
少し落ち着いたのか、2人はゴメンねと僕に一言言ってから僕から離れる。その代わりに、母さんが近づいてきて「大丈夫?」と一言。不思議と安心する。特に不調もなかったため、大丈夫と言っておいた。その一言を聞いて、3人がホッと息を漏らしたのを確認した。
「…僕、どうなってたの?」
「家の前で倒れてたのよ、凪」
家の前で……?もしかして、あの2人が…?でも、どうやって家の場所がわかったんだろう……?続々と思い浮かぶ疑問に対面していると、日菜姉が僕に訊ねてくる。
「ねぇ、そういえば昨日の夕方どこに行ってたの?」
「昨日……」
正直なところ、素直に話すか隠し通すか、悩む。地図にない廃墟に行ったのは別に言っても問題ないとは思う(怒られはするだろうけど)。問題はその後の事だ。どう説明したものか……しばらく自分で考えるのも手なんだろうけど…前に似た事があった時はそれも行き詰った。……どうしようか。
「……実は…」
「…まぁこの際、廃墟に行ったことは良いとして、問題はその後でしょうね」
あ、良いんだ。…結局、僕は打ち明ける事にした。相手の素性が明らかじゃないうちはこっちも警戒しておかないといけないだろうし。何せ、推測の域ではあるけど、家の位置も把握されてるみたいだし。…警察の人が連れてきてくれた線もなくはないだろうけど、その警察の人もあの2人に家の場所を教えて帰したって考えた方が妥当だろうし。
「阿達に…景華……この辺りにはそんな苗字の人はいなかったはず……」
「て事はさ~、どっか遠くから来た人とかじゃない?何が目的なのかはわかんないけど」
…日菜姉の推理を聞いて、1人で合点が行った。紗夜姉の言う事が本当なら、恐らくこの辺には住んでいない事になる。そうなると、遠くから来たからあそこしかなかった。わざわざ家を借りるまででもなかったと想定していたとしたら……
「…多分、日菜姉の言った通りかもしれない。あの人達、"だから来なかった"って言ってたし」
「…一先ず、凪も私達も気を付けた方が良さそうね」
最後まで冷静に分析していた(と思う)紗夜姉が、皆が思っていたであろう事を再確認するように言った。僕含めて、皆がコクリと小さく頷く。…そうして雰囲気を変えるかのように、母さんが一言。
「さ、そろそろ夕ご飯の時間だし、3人はゆっくりしてなさいね」
「おかーさん!今日は何~?」
「野菜炒めと鮭よ~、紗夜~?ちゃんと人参も食べるのよ~?」
「……はい」
そんなやり取りを最後に、母さんは僕の部屋を後にした。僕の部屋には、少しウキウキしている日菜姉と、気持ち沈んでいる紗夜姉がいた。……紗夜姉、いい加減人参食べようよ…
[花咲川学園 2-E]
「大丈夫だったの?凪」
「…粗方何の事かはわかるから聞くけど……どうして知ってるの?僕から言ってないよね?」
「氷川先輩が言ってたよ?昨日…一昨日だっけ?凪が大変な目に遭ったって」
「紗夜姉が?意外だなぁ……」
日菜姉は学校違う事だし、伝わるにしろ放課後以降かなって思ってたんだけど……まさかの方向からの情報源。正直ビックリである。
「……待って、って事は……」
「大丈夫でしたか!?凪さん!!」
「……当たった」
教室の扉を勢いよく開けながら、僕の心配をする若宮さんの登場に、僕は片手で頭を抱える。
日菜姉から伝えられると思っていたから、これ自体は想定していた状態ではあるけれど……白昼堂々と皆の前で言うことまで想定しなかった。
「問題ないよ、その辺りは紗夜姉から聞いたでしょ?」
「はい!ですが…この目で見るまでは……」
成程ね、と僕が納得したところでいつもの如く花園さんが僕の頭を撫でる。…どうしてこれが恒例になってしまったのかは、永遠の謎ではあるけれど。
「……花園さん、会う度これやるつもりなの……?」
「?そうだよ」
淡々と顔色も変えない辺り、花園さんの中では当たり前の事になってそうだよね。……諦めるのが早そう。
「なんか落ち着くんだよね、凪に触れてると」
「…?何で?」
「私もわからない」
何だろうそれ。小動物に触る時のそれに近しいのかな?……僕、そんなに小動物感あるのかな……。何か複雑な感じ。
「あ、そろそろ時間だよ、花園さん」
「…ホントだ、じゃあまた後でね」
そう言いながら自分の席に戻る花園さん。……ちゃっかり約束させれらたし。その辺は無駄にしっかりしてるんだよね、あの人。
「……僕も準備しよっと」
何だかんだありながらも、僕の日常は息を吹き返した。それを自覚しながら、僕の手は教材を取り出していた。
ということで、第20話が終わりました。
不穏な感じが多少漂っていましたが、この後の展開はどうなるのでしょうか?お楽しみにしてお待ち下さい。
次回『青年は、デジャヴな目に逢いました』