あの日見た青年は、空虚でした 作:Cross Alcanna
今回から数話は日常回ではありますが、アンケート回ではない回が続きます。本編でもありません。…が、ここだけのお話、そろそろ本格的に動き出すところでもありますので、今回をはじめ、これからの回も、ぜひぜひ楽しんでいって下さい。
そして、☆9評価:砂糖のカタマリさん、お気に入り登録:砂糖のカタマリさん、武輝さん、「パルス」さん、コウレン〇△さん、まるちんさん、しーごさん、通りすがりの鵠さん、評価及びお気に入り登録ありがとうございます。この小説もそろそろ佳境に入りますので、ぜひ最後までご愛読下さると、嬉しい限りです。
では、本編を開始します。
[河川敷]
「……良い場所だなぁ」
某日、河川敷にて。今日も今日とてやる事もなくなったので外をぶらついていたんだけど、ここに来た時、何となくここ良さそうだなぁと思ったので、今いる次第だ。ここの川は昨今の都会の中でもかなり綺麗な河川敷らしく、水は澄んでおり、草原にゴミなども落ちていない。地域の人達のおかげか、しっかりと手入れされているので、ここまでの状態を保てているのかもしれない。
「…こういう景観、今じゃあ中々見れないって言うしね…。意外とレアなのかも」
こうものどかだと、ふと変な事も呟いてしまうものだ。僕は景色を見るのは大好きなので、こんな身近の景色にも喜びを感じるのだ。…そうだ、こんな時は昼寝でもしようかな?寒くなってくる時期でもないから、寧ろ寝心地が良いかもしれないし。…よし、そうと決まれば寝よっと。
そう決めてから僕が眠りにつくまで、大した時間はかからなかった。
─────
「…?誰か草のところで寝てる……?」
散歩をしていた私は、たまたま河川敷の近くを通っていたので、何んとなき行ってみようと思って来てみたら、誰かが寝ているのが遠目でわかった。誰だろう?今はそこまで寒くならない季節だとは言っても、外で寝るのは…少し気が引けると思うんだけど。…そんな思いは、近づいて誰かがわかったのと同時に消え去っていった。
「……麗君!?」
そこで寝ていたのは、まさかまさかの人物、凪君もとい麗君だった。麗君がこの名前を憶えているのかはわからないけど、恐らく私の事は覚えていない様子。先日のライブでの件でわかった事でもある。どうして記憶がないのかはサッパリだけど…私の事を忘れてるって結論づいた時は少しショックだった。
「…ぅん……」
「っ!」
私の声で目を覚ましたのかと思い、少しの申し訳なさと警戒心を露わにする私。…それはどうやら杞憂に終わったようで、ただ寝返りを打っただけの様だ。私は警戒心を解き、ホッと胸をなでおろした。
…それにしても麗君の寝顔、可愛い。どこか子供っぽさを醸していて、思わず頬をツンとしたくなってしまいそう。……流石にしないけど。
「…麗君、君に何があったの?」
どれだけ知りたいと思っているのか、私は返ってくるはずのない質問を眠っている彼に対して投げかける。…少ししても返答が返ってこないのは、普通の事だろう。わかっててもそうしてしまう理由は、ついぞ私にもわからないけど。
「…いつか、あの曲を一緒に…歌いたいな」
きっと今の私は、悲しそうな顔をしながら、麗君を見つめているような気がする。…いつか、歌おうね。
─────
──ねぇ、麗君?
──何?
(…これは?)
僕の意識が覚醒したのでそろそろ起きる時間かと思っていたら、どうやらそうはいかないようで…これは……何だろう、小さい子が2人で喋ってる。…
そんな内心困惑している僕を置いて、当の2人は話を続ける。
──麗君って、将来の夢ある?
──……わかんない。ましろちゃんはあるの?
──うん。私はね……
話題は至って普通の、何の変哲もない会話。小さい子ならいつかはするであろう互いの将来の夢について。…今思い返してみる事は、(僕はその辺りの記憶も持ち合わせていないために)出来そうにもない。…でも、そこの男の子の言う通り、
思案に暮れていると、女の子が自分の夢について話し始めた。
──私は、歌を歌いたい。小さい舞台とかじゃなくて、テレビで歌ってる人みたいな所で歌いたいの。…皆が笑ってくれる、そんな歌が歌いたい。
それを聞いた僕は、この女の子の強さに驚愕していた。こんなに小さいのに、目指している所は大人でもたどり着けるかどうかの場所。志しても途中で投げ出してしまう人が多い、そんな場所。例えてしまうと難攻不落の山の登頂くらいの事を、彼女は夢見ている。…この子は強い、そうとしか思えなかった。
──…凄いね、ましろちゃんは。僕なんて何にもわからないのに。
──麗君も、いつか見つかるよ。とっても大きい夢が。
──…そうかな?
──うん!絶対見つかるよ!
…自分でもない男の子を見てこう思うのもどうかとは思うけど、何だか情けない。本来なら立場は逆の事が多い。方やしっかりと道を見据えてる女の子、方や道もわからない迷子状態の男の子。…男女の立場逆でしょ、普通。まぁ、今も特段こうなりたいとかがない僕が言うのもアレだけどさ。
……ホントにおかしい話ではあるが、このやり取りが
(……ん?感覚が…もうそろそろ起きるのかな?)
どうとも言い難い感覚に襲われたものの、それが意識の覚醒だと推測したため、僕は特段焦る事もなく目が覚めるのを待っていた。
「……ぅぅん…ふぁぁ~」
先程とは違い、今度こそ河川敷での目覚め。気持ち体が軽い気もする。柔らかい草の上で寝たからなのか、それとも睡眠の質が良かったからなのかは、僕の知りえぬ領域なのだけど。
…それにしても、さっきのアレが頭から離れない。僕は知らないはずなのに、脳が、本能が、それを忘れてはいけないと訴えてくるように。麗、ましろ……聞き覚えのない名前…のようなその言葉が、ずっと脳に張り付いてくる。…ちょっと怖いまであるけどね。アハハ。
「…まぁでも、記憶が戻りでもしない限りは追求しようがないし、今は様子見になるのかなぁ」
そう、それを追おうにも、僕には生憎様記憶が一部分抜けている。そこに関係しているのなら尚の事記憶の問題を先に解決しないといけないのは明白。だから、どの道今は度外視する他ないのが現状。僕としては真偽をハッキリさせておきたいんだけどね。
「…変な気分だけど、一先ず家に帰ろうかな……あんまり長く出てると姉さん達が心配するだろうし」
そうして僕は、もどかしさを抱きながらもソレを飲み込み、家に向けて歩を進めた。…いつか、わかると良いんだけど。
──麗君、もし…もしね、麗君の夢が決まったら……
──いつか私に、教えてね?応援するから!
ということで、第24話が終わりました。
かなり意味深な回となりましたね。これはかなりのキーポイントになります。そして、ここ以前の"ソレ"にも深い意味がありますので、読み返してみても面白いかもしれません。
そして、新タグ『倉田ましろ』、追加致します。
次回『青年は、思考しました』