あの日見た青年は、空虚でした   作:Cross Alcanna

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どうも、Cross Alcannaです。

今回も引き続き本編となっています。そして、現在投稿頻度についてのアンケートを行っております。これはバンドリだけでなく、私の小説全てのものを総括しております事を、予めご理解下さい。

そして、☆9評価:テト・ストラトスさん、お気に入り登録:Yamamotoさん、まこちー(旧:遅音 誠)さん、こととさん、零樹さん、にゃるさーさん、5Colorsさん、ハンベイさん、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンさん、ゼロメイさん、評価及びお気に入り登録ありがとうございます。

では、本編を開始します。



【本編】青年は、真実に至りました(前)

[氷川家 凪の部屋]

 

 

「…怖いなぁ」

 

 

あの後は流れるように話は進み、日菜姉と紗夜姉と一緒にあの廃墟に行く事に結論づいた。それから少し時間が経って、今は部屋に僕1人。…僕は部屋に戻ってから今の今まで、ずっとこんな調子だった。と言うのにも訳があって…まぁ、僕自身が危険なのは前々からわかっている事だから、言う程重視しているわけでもない。僕の心配は別のところにあって……

 

 

「姉さん達に何かあったら、僕がどうにかしないといけないんだよなぁ……怖い」

 

 

…そう、姉さん達の事だ。自分の事よりも姉さん達に心配が行ってしまう。当人達は気にしなくていい等と言ってはいたものの、あの人らがいるとも限らない且つ、いたとしても襲われないとも限らない。しかも、今回は核心に迫る事を訊きに行く為に、危険度が跳ね上がる事は間違いないだろう。それに、姉さん達はバンド活動をしている。それはつまり、何かあったらバンドの皆に迷惑をかける事になってしまう事にもなる。それもまた、僕の責任感を強める要因となっていた。

 

 

「でも、知らなきゃいけない事みたいだし……いい加減、腹を括るしかないのかなぁ…?」

 

 

…いい加減に、しっかりしないと。きっと姉さん達も僕がこんなに弱気になる事を良しとはしないだろうし、あらぬ心配をかける事にもなる。…これは僕の問題なんだ、それに危険を冒してまで2人はついて行くって言ってくれたんだ。僕がしっかりしないでどうする。そう自分に言い聞かせながら、僕は何回も深呼吸をする。そして、決意するように一言。

 

 

「…何でも、来やがれ。……何てね」

 

 

僕らしくもない口調で、決意の一言を、宛先もなく言い放った。その言葉は当然ながら虚空に溶けていく。その一言を言って少しして、僕はようやく眠りについたのだった。不安であったさっきとは裏腹に、僕が眠りにつくのに、大して時間はかからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[朽ちた町はずれの廃墟]

 

 

「ここが……あんまり蒸し返すのも嫌だけど、こんなに危険な場所には今後近づかないで頂戴。心配でしょうがないわ」

 

 

「うん、これからは最大限注意するよ」

 

 

翌日、僕らは例の廃墟に来ていた。あれからは僕の不安もほとんど表面に出てくる事も無くなって、今ではもう腹を括っている。紗夜姉から見ても不気味に映るらしく、やはりこの建物の雰囲気や佇まいが、只ならぬものである事は否めないようだ。日菜姉も、興味はあるのだろうが、やはり少したじろいでいるようにも見える。

 

 

「凪君!今日、こんなところに1人で行こうとしてたの?危険だよ!」

 

 

その発言は、僕の事を思っての発言だった。嬉しさと共に、予想以上に姉達に心配をかけていた事に気付かされ、何だか申し訳なく思えてもくる。…これからは今以上に、周りの事も考えないと。

 

そうして1人反省会を終え、僕達は静かな足取りで中へと入っていった。果たして、目的の人達はいるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…凪、あそこが一番広いところだけど…凪が言ってた人はいるのかしら?」

 

 

「ちょっと待って、確認してみる……」

 

 

あれから僕達は、初めてここに侵入した僕と同じように、1部屋1部屋をくまなく探索し、一番広い部屋まで来た。やはり警戒しているからか、日菜姉も紗夜姉も(勿論僕も)無暗に前に出ようとはしない。一応僕の前に紗夜姉がいるが、紗夜姉達は目的の人物の姿形を見ている訳ではないので、目的の人を探すよう、1度しっかりと顔を見た事のある僕に促す。それを承諾し、僕は姿を隠しながらも、中を見渡す。…すると、奥の方に見覚えのある人影が2つあったのが確認できた。

 

 

「…多分、あの2人で間違いない。……どうしようか?いっきに飛び出して問いただしてみる?それとも、隠れながら近づいてみる?」

 

 

「凪君、多分後の方法は危険じゃないかな?近づいて気付かれたよりも、一気に飛び出した方がこっちが危険になりそうな時にもある程度の反応は出来ると思うし」

 

 

…ホントに失礼極まりないけど、日菜姉の思考力には圧巻だ。いつもの「るん♪ってきた!」等と言っている日菜姉と同一人物であるとは、身内である僕でも疑いたくなる。…どうやらそれは、僕の隣にいる紗夜姉も同じだったみたい。

 

ただ、日菜姉の意見は賛同するに足るものではある。相手の不意をつけれれば、こちらの有効的な時間が増えるし、相手の判断も多少鈍る。思考も瞬間的ではあるけれど遅くなるのは、考えればすぐにわかる事だろう。一方で、ここで隠れながら行動する方を選択すれば、こちらがその危険性に見回される事が大いに懸念される。…どうやらはじめっからこっちの選択肢しかないようにも思えてきて、少し頭痛がしてくる。

 

 

「…そうだね、日菜姉の意見を採用しようか。じゃあ、合図したら皆で飛び出そう。僕があの2人に話しかけるから、2人はいつでも逃げれる準備をしておいて」

 

 

そう提言した僕に、静かに頷いて肯定の意を示す2人。それを確認した僕は、数瞬後には合図を出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あの子、今は大丈夫かしら」

 

 

「どうでしょう。彼は私達が捜している人物には酷似してはいましたが、果たしてその通りなのかはわからないですし、結局は動きもないまま硬直状態って感じでしょうね」

 

 

私達は、今日もまたここで横着していた。相も変わらず、あの子の手掛かりがなく、ずっとここで立ち往生している。ただ、今日は少し進展がある……と思う。

 

 

「あのっ!」

 

 

『!?』

 

 

そんな私達に対し、そのような声が。不意をつかれた私達は硬直していたけど、それが一体どのくらいの時間だったのかはわからない。

 

 

「あの時の2人……ですよね?…今日は話があって来ました」

 

 

「……貴方は…」

 

 

「氷川 凪です。前にここに来た男子です」

 

 

凪君。私達がここに来て少し経ってから、ここに足を運んだ子で、あの時は途中で気絶してしまった。心配だったけど、その心肺は今なくなった。

 

 

「…君がいるのはわかった。しかし、後ろの2人は何用だ?」

 

 

「私達は凪の姉です。万が一の時の為に来ました。…今のところ敵意はないと見受けますが?」

 

 

「敵意を向ける理由もないだろう。それに彼の連れだ、信用に値する」

 

 

彼のその一言で、このピリついた雰囲気は幾分か和らぎ、互いに冷静さを取り戻して、私達は話を聞く事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凪君、私達に話って……?」

 

 

「はい、その事なんですが……えっと…」

 

 

話を切り出したいのは山々だけど、早速つまづいてしまう。……そう、この2人の名前を知らない。前回は警戒心MAXだった為に、僕達は互いの名前を言わなかった。

 

それを察したのか、男性の方が僕達にこう言った。

 

 

「俺は阿達 柊で、この人は景華 那奈だ。好きに呼ぶといい」

 

 

どうやら阿達さんは、僕が考えていた事に気付いたらしく、僕達に名前を提示してくれた。……ん?阿達 柊……景華 那奈……?何処かで聞いた事あるような……

 

 

「…もう、この名前を聞いても大丈夫なんですね」

 

 

「待って下さい。それはどういう事ですか?」

 

 

()()()()()()()()()()という、日常生活では聞かない様な言葉を聞いた紗夜姉は、「いや、説明が欲しいんだけど」と言わんばかりに食い気味に訊ねた。

 

 

「この前に凪君が倒れた原因が、それを聞いたからなんです」

 

 

「そんな事あるの?聞いた事無いけど〜?」

 

 

「俺も聞いた事は無いし、ましてやそれを見た事なんてソレが初めてだ。身近に記憶関連のいざこざがある奴がいないからだろうな」

 

 

阿達さんの言い分も最もで、一部の人の気に障るかもしれないけど、そういう人が身近にいるケースは、僕らにとってはレアケースに分類される。日菜姉がそう思うのも、正直仕方ない事でもある。

 

 

「…で?話っていうのは何だ?わざわざここに来たって事は、俺らに関係する事なんだろう?」

 

 

少し話題がそれかけているのを察知してか、阿達さんが話題の軌道修正を図ってくれた。この人、場の状況を読み取るのに長けてるように感じる。……敵対関係じゃなくて良かったと、ハッキリと思わされる。

 

 

「はい。…今回は、僕について話を聞きに来ました」

 

 

「その口振りだと、俺らがお前について知っている事前提みたいなんだが…その根拠は?」

 

 

「憶測ですが、僕はお2人が訊ねた事で気絶したので、僕に関する何かを知っていると思ったんです。それに、こっちも進展が無かったのもあります」

 

 

「……根拠があんまり無いのに来たのか。まぁ、縋りたい気持ちも分からんでもないが、気を付けるべきだろ」

 

 

……改めて人に言われると、耳が痛い話。でも、結果だけ見たら良かったので、結果オーライという事にしておこう。

 

傍目で見えるところで溜め息をついている阿達さんを置いて、景華さんが話し出した。

 

 

「…話を戻しますが、実は貴方達がここに来る前に、凪君と関わり深い人がここに来ていたの。恐らく、その人の事も忘れてると思うけど……倉田(くらた) ましろちゃんっていう子よ」

 

 

「…ましろ……」

 

 

またこの名前だ。夢らしきもので男の子が女の子に向かって言っていたものと一致する。その人と夢の人が一致するかは別だけど、ここに聞きに来る辺り、恐らく関係者とみて良いだろう。それより驚いたのは、こんな近くに結構な関係者がいた事だ。まぁ、ここに来ないとどの道これらは知りえなかった事ではあるけど。

 

 

「…予想外でした。まさかましろちゃんの名前に反応するまで迫っているとは……嬉しい誤算です」

 

 

「嬉しい誤算…?」

 

 

「あぁ、俺らは凪を追って来たからな。だからと言って、取って食う気なぞは更々無いがな」

 

 

僕を追って来た…?それが正しいとなると、この人らは関係者、それもかなり重要な関係者である事が確定する。…僕の記憶に関して、知っている事が多い事にも期待できる。…本当は自分で思い出したいところだけど、この際、なりふり構ってられもしない。それに、僕自身早く知りたいのもあるし。

 

 

「……詳しく、教えてください」

 

 

そう言った僕の瞳は恐らく、覚悟の色を持ったものだったと思う。

 




ということで、第26話が終わりました。

今回の話はどうやら長くなりそうでしたので、前後編にわけての投稿としました。ここで登場するましろ。…果たして偶然なのでしょうか?今後の展開が楽しみですね。さて、話は変わりますが、この小説もじきに終わります。ですので、新作の企画も始まっています。前作が終了した際のアンケート結果が、次回作となりますので、お楽しみに。

次回『青年は、真実に至りました(後)』
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