あの日見た青年は、空虚でした 作:Cross Alcanna
今回は前回より幾分かシリアス味が無くなっております。端的に言えば、日常回と同じ空気感と思っていただいて結構です。…それはともかくとして、この作品が終わりましたら、前作でアンケートを取りましたバンドリ新作の執筆に取り掛かる予定です。今度は今井家主軸になります事を、先にお伝えします。
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では、本編を開始します。
[氷川家 リビング]
「ご馳走様でした。食器はここで良いよね?」
「えぇ、そこに置いといて頂戴」
「わかった」
あれから数日経って、今ではましろちゃんに会えるかどうかも少し薄れてきている。会いたくない訳じゃないし、寧ろ会いたいんだけど、あっちの都合もあるだろうし、会えたら良いな程度のものに留めている。だって、会おうとして動かれるのって、相手からしたらストーカーのソレだし。……ね?
「凪、今日は紗夜のバンドの練習に付き合うんだっけ?だったらこれ持っていきなさい!」
そう言って紙袋を渡す母さんも、いつも通りの良い笑顔。意外や意外、あれから僕含めた周りの生活は変わっておらず、誰かがましろちゃんを探そうと躍起になるまでには至っていない(少しは探してるらしいけど)。どうやら僕がそこまで躍起になって探さなくていいと釘を打ったのが効いたみたい。まぁ、当の僕は意外とショッピングモールだったり道端だったりで会えるんじゃないかなと楽観視しているんだけどね。
「うん。…じゃ、行ってきます」
「行ってらっしゃーい!」
…よし、取り敢えずあそこに行ってこようか。そう思った僕は、練習に遅れないようにする為に急いで練習前の用事を済ませに駆けだしていった。
[CiRCLE 2番スタジオ]
「すみません!少し遅れました!」
「凪…心配したわよ」
「ごめんなさい…」
「…無事なら良いのよ」
…思ったより用事先が混雑して、結果スタジオに着くのが遅れてしまった。反省。さて、今日は祝日のようで、そんな日でも営業しているCiRCLEに目を付けたらしく、Roseliaのメンバーが今日も練習をしている。今日は僕も呼ばれ、より高度な練習になる…と思う。あこちゃんの話を聞くと、僕が来る日の練習は何故かハードになるらしい。…何でかな?僕もわかんないや。
「…丁度良い時間ね、一度休憩にしましょう。凪、早速ここについての相談を……」
「あ、その前に……母さんから皆さんにこれを」
友希那さんが僕に早速の仕事を持ちかけようとしたところで、取り敢えずと思った僕は、一旦それを制止して、お土産(で良いのかな?)を渡す。…まぁ、家の余りのお菓子と僕の手作りお菓子の余りなんだけどね?…無いよりは良いと思いたい。
「…あら?凪、こっちのって、貴方が作ってたやつよね?」
「うん、余りだけどね?」
そんな僕と紗夜姉のやり取りを聞いた皆の顔色が、若干変わったような気がした。…どうやらそれは気のせいではないみたいで……。
「凪兄、凄~い!!こんなお菓子作れるんだ!!」
「ね、凪!今度アタシとお菓子作らない!?」
…こんな感じで、今現在問い詰められている状態になっている。…あ、燐子さんが僕のお菓子食べてる。……ウサギみたいに食べてる。…可愛いなぁ。…じゃなくって、この状況をどうにか……そうだ、友希那さんに何とかしてもら……
「…リサが持ってくるクッキーと遜色無い味だわ……凄いわね」
「私がお菓子作りを始めたのを凪が知って、それ以来凪の方がハマったみたいで……」
「…また今度、作ってきてくれるように言っておいてくれないかしら。その……また食べたいのだけど」
…えそうにもない。てかちょっと!?いつの間にそっちに行ったのさ、紗夜姉!?気付かなかったんだけど?……と言うか…
『ねぇねぇ!』
「…少し、落ち着いて下さ~い!!!」
『ごめんなさい……』
「ハァ……別に良いですけど、今度から気を付けて下さい!」
『は~い』
…ふぅ、どうにか収まったかな。…後で紗夜姉にも文句言っておこうっと。それくらいは許されるでしょ、うん。それよりも…
「友希那さん、さっき言った事やらなくて良いんですか?」
「…そう言えばそうだったわね。じゃあ始めましょう」
よし、これ以上話が脱線したらどうなる事かと。最近、少しだけどRoseliaにいる時間も増えてからわかった事だけど、ここの人達、結構クールなイメージとは離れてるし、なんなら年相応でもあるから。…まぁ、それが当然っちゃあ当然なんだけども。猫関連なら友希那さんが、お菓子関連ならリサさん、ゲーム関連は燐子さんとあこちゃん、そして、僕関連だと紗夜姉。……あれ?Roseliaってポンしかいない?
「…凪?どうしたのかしら?どこか調子でも優れないの?」
「!?そうなの?凪!?」
「そんな大袈裟な……別に何でもないって」
…前からこんな感じだった気がする紗夜姉だけど、例の件で僕の事を知ってから、今まで以上に過保護レベルがグッと上がった気がする(日菜姉の方はさほど変わってない感じだったけど)。…いい加減少し直してもらいたいと思うのは、贅沢な悩みなんだろうか。
「…こんな感じでどうです?」
「そうね、次にでもやってみるわ。その時にまた教えて頂戴」
「わかりました」
こうして話してると、友希那さんがポンとは露も思わないんだけどね。実際、猫さえ関わらないとこんな感じで基本クールで通せるんだけどね。そうして友希那さんと話をし終えた時、今度はあこちゃんが僕に話しかけてきた。
「そういえば凪兄って、楽器とか歌とかやってるの?」
「…?急にどうしたの?」
…ホントに不意だった。内容然り、タイミング然り。……あ、でもそっか。僕は皆の前で音楽関連の特技を披露した訳でもないから、
「いや?どこかで音楽をやってる訳でもないし、音楽に精通してる訳でもないよ」
「えぇ~?じゃあどうしてそんなに音楽には強いの?」
「…確かに、言われてみればその辺、前々から気になってたかも」
……さて、どう答えたものかな。正直な事を言うと、答えはたったの一言で済む。…でも、それを馬鹿正直に言ったところで、納得されない未来しか見えないんだよね。Roseliaなら尚の事。何だかんだ言って、音楽に懸ける思いが違うから。そんな人達相手に、果たして事実を言ったらどうなる事か。
「……正直に言うと、
『!?』
…あら?意外な反応をされたものだ。僕は真っ先に友希那さんと紗夜姉が『そんな訳ないでしょう!?ホントの事を言いなさい!』とか言って詰め寄ってくるものだとばかり……。2人だけじゃなくて、皆が驚愕してるのも、ちょっとだけ予想外。
「…だとしたら、無意識の才能かしら?前の私なら、ふざけないでと言ってたでしょうけど、そのアドバイスも的確だし、それに沢山助けられているのも事実……」
友希那さんが葛藤し始めた。友希那さんみたいに、音楽に真摯に向き合っている人程、この言葉がどれだけ異質なのかがわかるのだろう。まぁ、僕は音楽に携わってなくても本人だしね。流石にわかるよ、コレがおかしい事くらいは。
「…凪、ホントなの?」
「……うん。昔からましろちゃんと歌ったりしたからついた特技?なのかもね」
僕がそう口にした途端、あこちゃんとリサさん以外の人の纏う空気が変わった。…?どうしたんだろうか。皆僕をしきりに見て……何か睨まれてない?何で?
「…凪君、ちょっとこっちに来てくれるかな?」
「……?はい」
とか何とか状況がカオスになってきたその時、今度は燐子さんが話しかけてきた。…そっちに行く事自体は別に良いんだけど、せめてまだ少し出てるその不穏なオーラをしまって欲しい。そんなこんなで僕が燐子さんの所に着くと……何故かハグをされた。それに並行して、リサさんが目を輝かせ、あこちゃんが興奮し、2人のヤバいオーラが増していく。……何で僕は抱かれてるの?ねぇ。
「おぉ~!燐子ってば、大胆だねぇ~☆」
「りんりん、良いなぁ~」
「……燐子?何をしてるのかしら?」
「…白金さん、いくら貴女でも私がいる所でのその行為は許せませんよ?」
……更にカオスになっていくのが目に見えるんだけど。…ねぇ、どうして方や修羅場になろうとしてるの?ねぇ。怖いんだけど。そしてリサさん。貴女、この雰囲気を楽しんでますね?止めて下さい?収集着かないんですが?
「……ふぅ」
こんな慌ただしい日常が待っているなんて、氷川家に引き取られた時は思ってもみなかっただろうなぁ、きっと。
「さ、最近はあまり凪君とは会わなかったので、これくらいは許されるはずです…!」
「わぁお…ホントに大胆になってる……」
……ねぇ、聞こえるかな?ましろちゃん。
「わぁ~あこも凪君とギュ~ってしたいなぁ!」
…いや、聞こえてる訳もないよね。……でも、これだけは伝えておきたいんだ。
「ぐっ…宇田川さんまで……」
「いいから放しなさい燐子。それ以上続けるのなら、私も容赦しないわよ?」
──ねぇ、凪君。
──……何?
──凪君の夢って、どんなの?
──……騒がしくて、楽しい毎日を過ごす事。
──叶うと良いね!
──……うん
「僕は、今幸せだよ」
ということで、第28話が終わりました。
最終回の様な雰囲気ではありましたが、今回では終わりません。次回で最終回となります。まだ、彼は満たされていませんのでね。
さて、バンドリ小説も三作品完結が目前まで来ています。ここまで来れて、私としては嬉しいのと同時に、こうなるとは思っていなかったので、驚きの方が勝っています。ここまで愛読されるとも思いませんでしたし、想像より多くの温かいコメントに、励まされているのを、今も鮮明に記憶の中にあります。これからもソレを忘れず、精進いたしますので、どうかこれからもCrossをよろしくお願いいたします!
次回『青年は、満たされました』