あの日見た青年は、空虚でした   作:Cross Alcanna

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どうも、Cross Alcannaです。

新作小説の方を投稿すると思っていた方にとって、この小説の更新は予想外のものではなかったでしょうか?実は、凪や氷川姉妹、ましろらのその後の話を見たいと過去にリクエストをいただいていました。その方がどうやら遠からずのうちにハーメルンを去るとの事でしたので、筆を動かした次第です。その方だけに向けた回…とはいきませんが、彼らの後日談を見届けて、この小説に一時の幕引きを致しましょう。

そして、☆9評価:8topetoraさん、お気に入り登録:アキレオさん、明日のやたからすさん、rikurikuさん、yama556さん、たくminさん、ガノトトスδさん、空島さんさん、ねこまんじゅうさん、秦こころさん、たまごメガネさん、彩桜~aoi~さん、評価及びお気に入り登録ありがとうございます。

では、本編を開始します。



【Epilogue】穏やかな日々、それは凪の如く

[氷川家 リビング]

 

 

「…日菜、テレビを見てる時くらい、抱き着くのを止めてちょうだい」

 

 

「やぁだぁ~!凪君がましろちゃんと暮らすって言って家から去っちゃったから、寂しいんだもん!!」

 

 

「その気持ちは分かるけど……毎日、しかもかなりの時間こうされるこっちの身にもなってくれないかしら…」

 

 

「や!」

 

 

とある休日。リビングには私と、妹の日菜だけ。お母さんは買い出しに行っていて、お父さんは出勤。そんな他愛もない日に、私は溜め息を漏らす。元凶は…言うまでもなく日菜である。

 

原因は至ってシンプルで、あの一件から凪と倉田さん…()()()()()()()()は恋仲になり、大学に入って結婚。それに合わせて2人暮らしをしたいと凪から切り出してきて、凪に説得された私達は渋々ソレを了承し、凪はこの家を離れた。日菜は凪がいる生活が恋しくて、それをこうして埋めてるのでしょうね。

 

一応、定期的に手紙や通話を通してやり取りをしたり、時折こっちに帰ってくる事もあるので、音信不通という訳ではないけど、それでも日菜にとっては辛いのだろう。……勿論、私も寂しいし、無理を通してでも凪に会いに行きたい。ただ、あっちに迷惑がかかる上に私も大学生であり、かつ今は長期休暇中という訳でもないので、そんな暴挙に出る事は叶わない。

 

 

「そう言うお姉ちゃんは凪君がいなくて寂しくないの?あんなにブラコン染みてたのに」

 

 

「ブラコ!?……いえ、寂しいわよ。ただ、凪には凪の生活があるのよ。あっちだって忙しいかもしれないし、そんな時に私達が行っても、あっちは困るのよ」

 

 

「むぅ~、それはそうだけどぉ…」

 

 

私が言った理由に納得しかけているのか、どもり始める日菜。納得できるけど納得したくない、そんな感情なのだろう。…私も最初はそうだったから。

 

余談ではあるが、日菜はあれから人の気持ちを理解しようととても努力しているようで、今では人の気持ち関連の事は人並みに理解できるようになった模様。…もしかして、凪の為にそうしたのかな、なんて考えてみたり。それだけ凪の事が大切なのかな、なんて考えてみたり。

 

…っとと、私らしくもない。そう考えてしまった私はそんな意識を遠くにやる。……さて、今日は日菜の説得にどれくらい時間がかかるかしら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[淵光孤児院]

 

 

「けーかせんせぇ!今日はこれをして遊ぼ!!」

 

 

「そうね、他の子も誘ってみたらどうかな?」

 

 

「うん!行ってくる!!」

 

 

あれから月日は流れて、私達は目的を果たした後に孤児院に戻ってきた。あの時は院長から送られた迎えの人にバレるかどうかの瀬戸際だったから、ああして真実を伝えられて良かったと思っている。…ただまぁ、あの後ここに戻ってきてすぐに院長から大目玉を喰らったけど。

 

私も柊君もようやく肩の荷が下りたし、院長もその事を察してくれたのか、最後には労いの言葉をかけてくれた。何も言わずに院を出た事を考えると、それくらいの措置で済んだのは、院長なりの優しさなんだと、実感すると共に、感謝の念で一杯である。

 

 

「景華さん」

 

 

「…柊君?……疲れてるように見えるけど、大丈夫なの?」

 

 

「実際疲れてますから。…全く、子供達の活気具合ときたら……付き合う度に驚くばかりですね」

 

 

この孤児院に彼が来てから今日までずっとこんな感じだったのを、ふと思い出した。私にとっての彼の印象はあまり良くなかったような気がした事もセットで。今では、ただ柊君が不器用な性格なだけと知っているからこそ、少し尖った言い方をする時も、ある程度冷静でいられる。

 

 

「それでも、子供が好きなんでしょう?」

 

 

「…その質問に肯定したら、色んな意味で危険そうなので、コメントは控えますけど……そうですね、子供が元気に笑っているのを見るのは好きですね」

 

 

…もしかして、ロリコンか否かという意味合いにも取れてしまったのだろうか。だとしたら、ホントに申し訳ない。決してそんな意味で聞いたわけではない。…それはさておき、そう答えた彼の横顔を見ると、とっても爽やかな顔をしていた。…うん、イケメン。

 

 

「……景華さん、そんなに顔を見られるのは、少しむず痒いんですが」

 

 

「あ、ごめんなさい」

 

 

若干やるせない顔をしながら、私にそう訴える彼。ふむ、人の顔はまじまじと見るものではないわね。…知ってるけども。

 

 

「せんせぇ~!こっちでやろ~!!」

 

 

「はいは~い!今行きますよ~」

 

 

そんなやり取りが一区切りすると、他の子を誘い終わった子からのお誘い。柊君に「途中でゴメンね」という感情を乗せた目で見ると、「お気になさらず」という感情を乗せたような目線。……さて、今はあの子達の遊び相手にならないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[淵光孤児院 ???]

 

 

「…ふぅ、ようやっと2人が戻ってきて、儂の仕事も減ったわい」

 

 

全く、儂が2人がどこに何の目的で行ったかをどことなく分かっておったから良かったものの……そうでなかった事を想定すると、少々動揺せずにはいられんわ。人は迷惑をかけるもの、とはよく言うものの、こんな老人にかける迷惑にしちゃあデカすぎるわい。もう少し儂を労わってくれても良いと思うのじゃが。

 

 

「まぁ、結果だけ見たら問題なしではあるんじゃろうな」

 

 

戻ってきて、そして儂が説教をした時の2人の肩の荷が下りたとでも言わんばかりの顔を見て、儂も安心したのはあるのじゃが。

 

…まぁ、分からんくもない。儂もあの子らには入れ込んでいたし、凪…じゃったかの?の方の家が火災に見舞われたと聞いた時は、かなりヒヤッとしたからのぅ。…ただ、職業柄もあって、この立場にいる者として一個人に肩入れするのは、叶わぬ事じゃからな。……何だかんだ、2人が会ったのは正解じゃったのかもしれんのぅ。

 

 

「…どんな大人になるんじゃのぅ、顔でも見てみたいわい」

 

 

思い出せば思い出す程、あの頃の記憶が蘇るわい。…2人はくっついたのかのぅ?年不相応なまでに甘々な空間じゃったのは、今でも鮮明に覚えておるわい。

 

……いかんいかん、これ以上懐かしんでいたら仕事が終わりそうにないのぅ。懐かしむのは仕事が終わってからにせねば……ん?ドアのノック?誰じゃ、この時間は子供らと遊んでる時間帯の筈じゃが…?

 

 

「院長、院長宛ての手紙です」

 

 

その疑問は、ドアを開けた1人の先生が放った一言で、解決。…手紙とな?珍しいモノが来たのぅ。取り敢えずその辺りに置いてもらい、下がってもらった。…誰からじゃ?

 

 

「……全く、今日は仕事が終わりそうにないのぅ」

 

 

──その手紙は、儂宛てに送られた、とある青年からの手紙じゃった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[とある家]

 

 

「ただいまぁ……疲れるなぁ」

 

 

あれから結構な月日が流れて、今僕は氷川家から離れて暮らしている。いつかはこうしていこうって考えていたから、遅かれ早かれって感じだから、遅くないうちにこうしておいて良かったかも、なんて。…紗夜姉達がいないのは、少し寂しいけど。

 

 

「ましろは…バンド練習の日だっけ」

 

 

誰もいない家にいると考えていると、無意識にそんな一言を呟いていた。…そう、あれから僕はましろと2人暮らしを始めた。高校を卒業する辺りにましろに(玉砕覚悟の)告白をした。結果はオーケー。その時の僕の舞い上がり様は……思い出したくないな、恥ずかしくなりそうだし。

 

今では婚姻届も出し終えて、晴れて正式に夫婦となった。…未だに実感が湧かないのは、それ程僕がこの現状を恋焦がれていた事を意味しているのだろうか。…まぁ、そんな事は置いておいて。あれからモニカをはじめとしたガールズバンドは、今ではバンド界の新しい風になっているだの何だので、かなり上手くいってるらしい。テレビでもそんな事をニュースだったりで見たりする。…順調かどうかなんて、嫁から聞けば早いんだけど。

 

 

「…さて、今日の夕飯は何にしようかな」

 

 

バンド練習で忙しいましろに代わって、基本僕が家事だの何だのをやっている。ましろも、家事は出来なくはないのだが、如何せん僕の気持ちの問題で、疲れて帰ってきた彼女には、是非ともゆっくりしてもらいたいのだ。…そう言って、この前ましろに「凪君も休んで!」なんて言われたけど。あそこまで怒るましろも、珍しかった(怖くはなかったし、寧ろ不覚にも可愛いと思ってしまって、拗ねてしまったのは、いい思い出)。

 

…まぁ、何はともあれ、モニカもポピパ等と言ったバンドと肩を並べる程に人気バンドになっているようで、色んな所でファンに詰め寄られる事もしばしばなまでの人気っぷり。ま、渡さないけど。そんな事を考えながら、頭の中のレシピを引っ張り出して、手を進めていく。…とと、その前にスマホを確認する。何故かって?

 

 

「…皆が来る、か。了解…っと」

 

 

そう、練習がてら、うちにバンドメンバーが来る事もあるからだ。作る際には確認しないといけない事なのだ。実を言うと、結構頻繁にこうなったりしている。その都度瑠唯さんが「ごめんなさいね」と謝ってくれるのだが、気にはしていない。…ただ、透子さんがやたらと距離感が近いから、ましろがすぐ拗ねる。そこくらいかな。

 

 

「…と、いつの間にか終わってた」

 

 

…相変わらず、時の流れは速い。あの頃から結構な日が過ぎている事に、今も尚実感がない。昨日の自分は高校生ではなかったかなんて思ってしまう辺り、精神が老いてきているのかな。…やだなぁ。

 

等と思いながら料理を並べていると、インターフォンが鳴る。…恐らく、彼女らだろう。そうである事を祈る。…さて、今日もお疲れ、ましろ。

 

 

「今日も、ゆっくり語ろう」

 

 

その一言は、玄関に向かった僕以外に聞かれることはなく、これから賑やかになる空間の中に、スッと消えていったのだった。

 




ということで、Epilogueが終わりました。

エピローグですので、若干短めになっています。どうでしたか?この作品は、比較的静かに進んでいく小説だったな、なんて思った方もいたのではないでしょうか。…()()()()()()()()()()()()()かもしれませんね。

これにて、この小説は殆ど終結でしょう。リクエストがあれば執筆するかもしれませんが、恐らく新作の方に集中するかと思います。ただ、リクエスト(感想)はしっかりと目を通していますので、気軽にどうぞ。

では皆さん、またお会いしましょう。
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