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第1話
ザクシャ イン ラブ (愛を永遠に)
あなたはこの『錠』を私はこの『鍵』を
肌身離さず、ずっと大切に持っていよう
いつの日か私たちが大きくなってまた再開したら
この『鍵』でその中の を取り出すから
そしたら二人で・・・
そしてあの日から10年後
まだ『鍵』は開かぬまま。
楽 「っ!! あの夢・・・か、 久しぶりだな、こうしてまた夢に出てきたのは」
少年の名は、一条 楽
今年の春から凡矢理高校に通い始めたどこにでもいるごくごく普通の高校1年生。
ただ一点を除けばの話だが・・・
布団から手を伸ばし、目覚まし時計を薄目で確認すると6:05
また無意識のうちにアラームを止めてしまったことにため息をつきながら、ゴソゴソと布団から出る。
大きなあくびをしながら手際よく制服に着替える。
楽 「おっといけねぇ、今日は寝坊してんだった。早く朝飯作らねえと」
自室から出て洗面所で顔を洗うとすぐに小走りでキッチンへと向かう。
楽は平日毎朝6時に起き、何十人もの分の朝食を作っている。 料理の腕前は人並み以上にあるため、みんなからの評判もかなりいい。女子力も高い。
楽 「今日は昨日煮込んでおいた肉じゃがとご飯にあれとこれと・・・」
この家のキッチンは、まるで料亭のような設備が整い、具材、調味料なども申し分なく何でもそろっている。というのも楽が様々な料理をいつでも作れるように、と父親が用意したものだが。
楽 「よしっ! これで完成っと、 おーいお前らー、朝飯できたぞー」
ヤクザ共 「あっ!! おはようごぜぇやす!! 坊ちゃん!!」
楽 「あ、あぁ おはよう・・・」
楽の家族は少し・・・いや、かなり個性的だった。
”集英組”といえばここらの町では知る人も少なくない有名なヤクザの元締めである。
竜 「坊ちゃん 毎朝ご苦労様っす!」
竜は集英組の若頭であり、楽はここの組長の一人息子でもある。
ヤクザ共はキッチンから各自、朝食を大広間へと持って行った。
ヤクザ共 「うんめぇー! さすが坊ちゃんだー!」
楽 「おう、お前らに任せたら何出てくるかわかんねぇからな、 それに一人暮らしをするときの練習と思えば・・・」
ヤクザ共 「えぇ! 坊ちゃんどっか行っちゃうんすか!? 行かねぇでくだせぇ二代目!」
楽 「だから二代目はやめろっつってんだろ、俺はヤクザになんてならねぇし、ちゃんと大学を卒業していい職について普通に生きていきてぇんだよ!」
楽はガタイもよくなければ、喧嘩も強くない、少し勉強ができるというくらいだ。
集英組の連中は楽をヤクザにしたいらしいが、はっきり言ってむいてはいないのだ。
ヤクザ共 「おぉ! なんかよくわかんねぇけどかっこいいっすよ坊ちゃん! さすが二代目だぜ!!」
楽 「はぁ・・・」
楽の父 「やれやれ、毎日騒がしいな、てめぇら」
大広間に最後に現れたのは組長でもある楽の父、ヤクザ共の中では一目置かれている存在である。
今までにも数々の組合のボスと抗争をしてきたが、負けた試しが1度もない。
ヤクザ共 「組長! おはようごぜーやす!!」
楽 「親父、」
楽の父 「おう、そうだ楽、近いうちにすげぇ大事な話があっから覚えときな、」
楽 「大事な話・・・? あぁ、わかったよ っといけねぇ、そろそろ行かねえと遅刻しちまう」
時計を見ると時刻は8時少し前。慌てて残った茶碗のご飯を口に運ぶ。
そしてまだこの時は、大事な話というのはきっと集英組の近い将来のことなどを長々と話しあうのだろう、とたかをくくっていた。
竜 「なに!? そいつはいけねぇ! てめぇら今すぐリムジンをご用意しろ! 10メートル級の、いや15メートル級のをご用意しろ!!」
ヤクザの言うことは本当にシャレにならないので、楽も手をやいている。
ヤクザ共 「わっかりやした、竜さん! すぐに表に用意させやす!」
そういうとヤクザたちは慌ててリムジンを表に出そうとし、一段と騒がしくなる。
楽 「待て待て待てお前ら、リムジンなんかで行ったらまた中学の時みたいにみんなにドン引きされちまうだろうが!」
竜 「しかし坊ちゃん・・・」
中学の時の話だが、始業式の日にリムジンで行って物凄く痛い思いをしたことがあった。
楽 「じゃあ俺もう行くから、じゃあなっ!」
竜たちなりの気遣いを振り払い大急ぎで家を飛び出す楽、日々苦労の連続である。
竜 「あぁ、坊ちゃん! 坊ちゃん!」
楽 「あぶねぇ・・・ リムジンなんかで行ったらまた変な目で見られるしな、
っと急がねぇと」
-ーー学校 校門前ーーー
楽 「ふぅ、 なんとか予鈴前には余裕で間に合ったな」
涼しい顔で校門を通ろうとした瞬間後ろから物凄い気配、というかオーラを感じた。なんと楽の後ろには集英組の連中がぴっちりと整列していたのである。 ここまでくると悪質な嫌がらせなのかと思ってしまう。
楽 「お、お前ら・・・いつから・・・」
竜 「先回りさせてもらいやした、では坊ちゃんお気をつけて!」
ヤクザ共 「お気をつけて!!!」
生徒たち 「おい また来てるぞ・・・
私、この前町に集団でいるの見たよ・・・
肩に入れ墨入ってる・・・」
気がつけば、楽の周りには20人いや、30人近くの生徒が群がっていた。学校の校門にこんなヤクザが整列してたら、嫌でも目に入ってくる。
こんな日常続きのせいで楽は未だに‘ヤバい奴‘ ‘関わったら命がない‘と誤解されているのだ。
楽 「あぁ・・・」
周りの視線が・・・
楽 「はぁ・・・もう嫌だ、こんな血生臭い世界
あぁーー 早くこんな家から飛び出して静かに平和に暮らしていきたい・・・」
思えば楽は今まで勉強や料理ばかりで彼女ができたことはおろかモテたことすら一度もない。友達だって数えるほどしかいない。
ーーーこの日まで楽は毎日が苦労の連続だった、この日までは・・・ーーー
楽 「意外とまだ時間あるし、飼育小屋の様子でも見てくか」
この学校の飼育小屋には楽が大切に育てている様々な動物たちがたくさんいる。普通では考えられない種類の動物までもが。
美少女 「ハァハァ・・・ やっばーい 転校そうそう遅刻しちゃうっ」
金髪ロングの美少女が一人学校の裏沿いの長い道を走っている。華奢な見かけによらず、陸上部も欲しがるような速さで。
美少女 「あっ、この塀を飛び越えればかなりの近道よね、きっと」
学校の校門まで行くまでの時間がないと考えた美少女は走るのをやめ、学校裏にある塀に目をやった。
私ならこのくらいの高さは余裕だろうとタカをくくって、少し助走をつけ3メートルほどの塀を飛び越える。
が、その先には
楽 「え?」
千棘 「げ」
美少女の飛びたった先には蹴りをくらってしまった不幸な少年が1人いた
ギヤァァッァァ!!!
ーーーさらに凄まじい苦労の連続となるーーー
その美少女は楽の背中の上にうまいこと尻餅をつくという形で着地したが、楽は全身をおもいっきり強打し、気を失いかけていた。
少女 「いたた、助走つけすぎちゃった・・・ あ、私急いでたから ごめんなさ~い じゃっ!」ピュー
美少女は立ち上がりスカートについた埃を軽く手で払うと、楽のことも気にかけずすぐに昇降口のほうへと駈け出してしまった。
気が付いた時には楽の前にもうその美少女はいなかった。
楽 「な、なんなんだあいつは・・・」
楽が最後に目にしたのは、黒ニーソを履いた長い金髪に赤いリボンをつけた女子の後ろ姿だった。