「いやぁ…やってくれたよね…ほんと…綺羅麗は加減ってものがわからねぇ…」
数分してから、光夜はボソリとこぼす。
「お前達弟子達は随分と目立ちたがりだな。まあ僕には関係のない話だ。じゃあな。」
我関せずといった様子で、花道は食器を片付けて去っていく。
「まあ昨日あれだけ光夜君が暴れたんだしこうなるのも遠くはないことっしょ。まあ頑張りなよ♪」
続いて水面も、励ましてはくれるものの他人事の様子で、同じく食器を片付けて去っていく。
「…それで、暁君はどうするのかしら。」
2人が去ってから、凛音が光夜に問い掛ける。
「…んまぁ、水面さんの言う通りなんだよな。昨日の時点で俺達は注目の的になるのはわかってはいたんだ。悪目立ちしちまうのもまあ仕方ない。俺が考えてたのとは多少予定が狂ってはいるけど、後はもう流れに任せるしか無さそうだ。」
そう言うと光夜は立ち上がり、決意に満ちた目をして、言葉を続ける。
「俺達は逃げない。立ちはだかる奴等は凪ぎ払う。俺達は仲良しこよしするために来た訳じゃない。
プロになるために今までやってきた。それは、これからも変わらない。」
その決意に満ちた言葉。
同じくその場にいる弟子達は力強く頷く。
(…なるほど。どうしてこの人がまとめ役なのかと疑問だったけれど、こういう所なのかしらね。)
光夜、そしてその他を見て、凛音はそう自分で納得する。
「カッコいいわねぇ光夜ちゃん。
それと、時間は大丈夫?あまりちんたらしてる時間無いんじゃない?」
涅槃の言葉にはっ!と皆で時計を見る。
まだ余裕はあると言えるが、食事を終わらせていない事を考えるならば、わりと微妙な時間だ。
「気合い入れ直せよお前達。先々の事まで考えてこその我々だ。そんなわけで先に行くぞ。」
慌てて食事を再開する光夜達に一言告げて席を立つのは聖。
常に規則正しくまともな動きと言動。
しかし、心なしか光夜達の慌てっぷりを面白がっているようにも見える。
「ぷはー!ごちそうさまー!よーし、頑張るぞー!」
続いて食べ終えた心が勢いよく立ち上がり、その勢いを保ったままパタパタ走って出ていった。
「あらあら、食器片付けていかなかったわね。まあ構わないけれど。面白い子ね。貴方達も、今日はそのままでも良いわよ。」
そう言うと涅槃は自分の席を立ち、凛音に近寄る。
なにか用だろうか?と凛音は不思議そうに涅槃を見る。
「貴方の部屋の外にカゴを置いて置いたわ。洗濯したい物をそこに入れて部屋の中に置いといてくれたら私が洗濯して、また部屋の中に置いといてあげる。合鍵を持っているから遠慮なく鍵も閉めていいわよ。あとカゴの中に私の連絡先を書いた紙を入れておいたから、なにか必要な物とかあるならメールなりで教えてちょうだい。この寮に女の子は珍しいから、私で良ければいくらでも頼って。」
凛音の耳元でそっと伝え、離れ際にウィンクしてそのまま皿の片付け等をしていく涅槃。
急遽周りに女の子がいなくなった環境で心細かった凛音にとって、何よりも心強い存在である。
「…よし、行きますか。」
食事を終え、自室に戻って用意を済ませたそれぞれ。
光夜、辰覇、心、雷兎。それと自室にいた綺羅麗、影善。
そして最後にやってきた凛音が揃うなり、光夜がその場にいた者達に声を掛ける。
「どうして皆揃っていくのかしら…?」
集合して皆で向かうとの光夜の指示に、疑問を持ちながらも従っていた凛音。
全員が集まってから、その疑問を投げる。
「それはね凛音君。この者達が我が弟子であるという、言わば凱旋なのだよ。」
問いに答えるは王牙。
なにやら箱を手に持ち、光夜へと近寄っている。
「綺羅麗、雷兎は既に受け取っていたが、君達もこれを付けてくれたまえ。」
それは、綺羅麗が腕に付け、ニュースでもあげられていた腕章。
『天』と描かれた周りを囲うように星マークが十三個。
その『天』の文字の背後には獣の鉤爪のような物が隠れている。
「これは…」
「天とはプロの事だ。それと、私を越える、という意味を込めておいた。君達は私の弟子であり、次の星々だ。
格好付けて『超天星(ちょうてんせい)』と呼ぼう。」
「先生…」
腕章を受け取りつつ王牙を見つめる光夜。
そして微笑む光夜。そして…
「いややっぱだせぇよ先生」
「な、なんだと!?」
ド直球に文句を言われて驚愕せずにはいられない王牙。
思わず笑いだしそうになる凛音。
「いやまあ言うのもなんだと思ったけどまあ結構中二感あるぞ先生。」
「かわいくなーい!」
「その…派手過ぎるかと…」
辰覇、心、影善からも不評の嵐。
がっくしと落ち込む王牙。
「そうですかねぇ?僕は気にいっていますが。」
「だよねぇ綺羅麗?めっちゃカッコいいと思うんだけどなぁ~」
綺羅麗、雷兎は絶賛。
王牙の眼に少し光が戻ったように見える。
「…まあ先生がせっかく考えたんだし、乗ってやるかぁ。ずっと「弟子達」って言われるのもなんか嫌だったしな。」
そう言いつつ、光夜はその腕章を腕に通す。
それに続いて他も腕に通していく。
(心だけはブレスレットのようにしていた。)
そして、残されたのは、1つだけ。
「あれ?これは誰の分だ?」
「これはね、凛音君。君の物だ。」
「えぇっ!?」
急に言われて困る凛音。
光夜がその腕章を掴み、凛音に差し出す。
が…
「い、いえ!お断りします!私は貴方の弟子ではないので!行きましょう!そろそろ出ないと時間がないわよ!」
きっぱりと断り、そそくさと凛音は寮を出てしまう。
「…やはり避けられているな…」
わかってはいたがやはりショックのようで、肩を落とす王牙。
「まあ仕方ないじゃない。元々プライドの高い娘なのだから、貴方に心を開くのはまだしばらく先よ。」
涅槃が王牙に優しく諭す。
涅槃の眼は光夜達を向いており、凛音の方へと視線を動かす。
「早く行きなさい。」と言っているようだ。
「…よし、じゃあ行ってくるぜ先生。俺達の事、見ててくれ。」
「じゃあな先生。」
「いってきまーす!」
「い、行ってきます…」
「では、アディオス。」
「バーイ!楽しんでくるぜ!」
それぞれが思い思いの言葉を述べ、寮から去っていく。
あるいは決意に満ちた様子で
あるいは何を考えているのかわからない様子で
あるいは元気よく楽しげで
あるいは不安げな表情で
あるいはその辺りを散歩するかのようで
あるいはテーマパークへと赴くようで
「…いっておいで。君達の今日が充実する事を、ここより願っているよ。」