遊戯王‐creator‐   作:月花撩乱

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16話~夢宴、祭囃子~

午後になり、多くの生徒達はデュエル会場に集まっていた。

獅子神 王牙の弟子達、『超天星』達のデュエルとあっては黙っていられない。

今朝決められた事にも関わらず超天星達の顔写真が販売されたり、誰が勝つのかという賭けが盛んに行われていたり、飲み物や軽食の売店がいくつも開かれたりとお祭り騒ぎであった。

 

「す、凄い事になってるわね…」

 

キョロキョロ見渡しながら、会場を1人うろつく。

昼食は取ったばかりで軽食はいらないが、飲み物くらいはと思って歩いている。

のだが…

 

「白皇さん!俺とデュエルしませんか!」

「いやいや白皇さん!俺と一緒に観戦しましょう!」

「凛音様!そんな男達なんかといないで私達と!」

「凛音様!」「白皇!」「凛音たんはぁはぁ」

 

自分がアイドルかのような扱いを受けている。

煩わしいのはあまり好きではなく、かといって強すぎる言葉を使うのも躊躇われる。

どうしようか困っていると…

 

「よう白皇女史。待たせたな。」

 

「あっ、聖生徒会長。」

 

まさに救世主。

人ごみを威光だけで振り払い、凛音との間に何一つ隔てがない。

 

「何か買いたいのか?ならば行こう。売店は全て把握している。」

 

「えっ、あっ、はい!そ、それじゃあ皆さん、ごきげんよう。」

 

一言だけ周りに告げると、さっさと聖についていってしまう凛音。

素っ気ない態度だが、それはむしろ周囲から羨望の声を生むのである。

 

「可憐だ…」「あの2人お似合いね…」「暁君が本命じゃなかったのかしら…」「いや、あの2人は貴族同士での付き合いがあるってだけだろ?」「凛音たんはぁはぁ」

 

暫しざわめきが広がるものの、ここにいる本来の目的を思いだし、みんな一斉に動き出したのであった。

 

「まったく、人気者は大変だな白皇女史。」

 

「あの、助かりました…小波とかがいないものだからみんな群がってきてしまって…」

 

「うむ、奴等がいない時の事を考えていなかった我々の落ち度だ。次からは気を付けるとしよう。」

 

そう、凛音はそこら辺の一般女子生徒とは違う。

正真正銘貴族令嬢。しかもとびきりの美少女。

男女問わずに人が集まるのは明白。

初日は小波等周囲に付き人がいたために近寄る者は少なかったが、光夜に負けた事、そして付き人から引き離された事。それは大きな動きを作るきっかけになっている。

 

「いえ…ただ、そうしていただけると助かります…」

 

「うむ。任せておけ。」

 

それから2人は売店を2、3巡り、空いている観戦席を探す。

と…

 

「おっ、あそこにいるのは…」

 

「あら、聖ちゃんに凛音ちゃんじゃない。ちょうど良かったわ。席取ってあるからいらっしゃいな。」

 

中央モニターのよく見える席に、涅槃が座っていた。

一際目立つ風貌のせいか、周りは人が少ない。

聖達に気づいた涅槃は、2人を手招きして相席を求む。

断る理由も無ければ最高の観戦席。2人は迷う事なく涅槃の横へと座る。

 

「涅槃さんお一人ですか?」

 

「そうなのよ~。王牙さんったら私との観戦よりも大事な事があるってふらっとどこかへ行っちゃったのよね~。ほんと自由気ままな人。」

 

困ったような口調と、どこか嬉しそうな表情。

不思議な人だ。と凛音は思う。

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

所変わって王牙は、とある一室にてやや緊張した面持ちで座っていた。

 

「おうおう、《百獣の王牙》ともあろう奴が随分緊張しちまって。まるで借りてきた猫じゃあないか。」

 

王牙の前にいる男は辰覇よりも背丈、がたいが大きく、手には酒瓶。

その体格からすると瓶コーラでも持っているかのようだ。

壮年らしく、白髪で長い髭を生やしているが、その眼は鋭く、気楽そうにしているにも関わらず、気迫は王牙すら緊張しているのが表に出る程。

 

「…それはそうでしょう。貴方と2人きりなんてリラックス出来るものではないですよ。《神前寺(しんぜんじ)理事長》。」

 

そう、ここにいる壮年の男こそ、この学園の長。

神前寺 繁之助(しんぜんじ しげのすけ)

かつて遠い昔、初代デュエル王と戦った事があると言われている、年齢不詳の生きた伝説である。

 

「カカカ、まったくビビりなガキだなぁ。

太鼓判押してプロとして送り出してやったのにいきなり姿消して、かと思いきや寮長にさせろだの無茶苦茶ばかり言いやがって。お前じゃなかったら聞いてやらなかったっての。」

 

愉快そうに笑いながら、瓶を勢いよく傾ける。

度数がかなり高そうで、王牙は顔をしかめる。

が、当然この男が王牙の忠告など聞くわけはない事をしっているため、王牙はため息。

 

「…で、お前の育てた弟子達はどうなんだ。強いのか?昨日の生意気そうな小僧は無茶やって白皇の小娘潰したが、あれを実力そのものとはいえねぇからな。」

 

酒瓶を口から離すと、繁之助は真剣な表情で問う。

我が儘を聞いてやった意味はあるのか、と言っているのだ。

 

「…えぇ、強いですよ。順調に成長したなら、皆プロにまで到達出来る。それだけの原石達です。」

 

迷いの一切ない、力強き発言。そして繁之助と真っ直ぐ眼を合わせる王牙。

そして…

 

「…カカカ、それは何よりだ。この後のデュエル、楽しみだぜ。」

 

2人は言葉をそれきりにして、モニターを眺める事にした。

デュエル開始まで、もう間もなく…

 

 

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