「負けた…」
ライフが0になり、敗北して床に尻をついて呟く水面。
そんな水面に、雷兎は複雑な表情をしながら近寄る。
「…すまん、みなもっちゃん。フェアじゃなか「だぁーーー!!!悔しいぜちくしょう!!」
喋りだす雷兎の言葉を遮るかのように、水面は大声をあげる。
「なんだよ雷兎っち!見たことねぇテーマだったぞ!あとで寮に戻ったら教えてくれよな!」
「えっ、あっ、おぉ…」
「次は負けねぇぞ!覚悟しとけよ!」
予想外の言葉に、雷兎は戸惑い、水面はガッシリを握手をかわすと去っていく。
しばしポカンとする一同だが、少しずつ、やがて多くの観客が拍手し、2人のデュエルを称えたのであった。
「相浦君、とてもいいデュエルになりました。観客も大盛り上がり。素晴らしいデュエルをありがとうございました。」
そして、綺羅麗も真二に近寄ると、お辞儀をして礼を述べた。
「…ふん、嫌味な奴だ。僕は諦めないぞ。またいずれ、お前を倒してやる。お前だけじゃない。『超天星』どいつもだ!覚えてやがれー!」
捨て台詞を吐き散らして、真二は走り去っていった。
『さぁ!激動のデュエルが終わり、すぐ次のデュエルだ!対戦者はスタンバイしろー!』
ギーガーの呼び掛けに、次の対戦者達が動き出す。
「…よう、残念だったな。」
水面が会場から出た少し先で、花道が壁に背をつけて立っていた。
「いやぁ~負けた負けた!完膚なきまでに、って奴だな!雷兎っちは多分まだまだ動けただろうし、ほんと悔しいぜ!」
あっけらかんと言ってのける水面。
悔しさよりも、楽しさの方が上だったのだろうか。
「…はっ、よく言う。本来のお前とは動きが違いすぎた。お前、レベル下げたデッキを使ったな?」
「…バレたか。」
「当たり前だ。何年お前と腐れ縁やってると思ってる。」
「そりゃそうか。まあ流石に一年生の晴れ舞台おじゃんにするのも良くないからな~。とはいえ、全力でやりあってもそれはそれで良かったなとちょっぴり後悔だわ。」
「…お前、他の4人は勝つと思うか?」
「勝つね、間違いなく。お前と当たる影善っちも、見た目だけでなめてるとやられるぞ。」
「…はっ、負けないさ。僕には、勝利の女神がついてるからな。」
「言うね。まあ期待してるぜ!楽しんでこいよ!」
花道の肩を叩き、気楽そうに去っていく水面。
その姿を眺める花道の眼は、冷たい。
「ふん、いいさ。せいぜいやってやる。
僕にも、負けられない理由があるんでね。」
水面に聞こえないであろうが、決意に満ちた言葉を残し、花道は会場へと向かう。
「あっ!らいとー!きららー!」
雷兎と綺羅麗が会場から出た通路で、パタパタと明るく走り寄るのは心。
その屈託のない笑顔は、先程までデュエルをして集中していた2人の気持ちをなごませる。
「おーう心ー!」
「らいとー!」
「「いぇーい!」」
両手でハイタッチをする、雷兎と心。
なんとも楽しげな雰囲気だ。
「2人とも凄かったー!綺羅麗なんて負けちゃうんじゃないかって心配だったんだからねー!」
「えぇ、ほんとに負けるかなと思いました。でも僕も意地がありますからね。ほんの少し本気を出してしまいました。」
「俺はまだまだだなぁ、やっぱもう少し練習しとくんだった。電脳堺、受け取った時にも言われたけどやっぱ難しいわ。」
心からの言葉に、2人ともそれぞれの感想を口々にする。
「よーし、僕も頑張るぞー!いってくるー!」
「おうよ、楽しんでこい!」
両手を広げ、無邪気な仔犬のように走っていく心。
雷兎も綺羅麗も、思わず笑顔だ。
「お疲れ様、2人とも。」
「よぉ影善。…いい眼をしてるな。やる気いっぱいって感じか。」
「いっておいで、影善。君なら大丈夫だ。君は強いのだから。えぇ。」
普段とは雰囲気の違う影善を見て、2人は静かにエールを送る。
「ありがとう、2人とも。
勝ってくる。」
『さぁさぁ、お次はこいつら!
まずはAゾーンの挑戦者。
震える身体に決意の瞳!音乃木 之音(おとのぎ ののん)!』
ギーガーの紹介通り、おぼつかない足取りで歩く少女、之音。
その眼は今にも泣きそうなのに、どこか力強かった。
「音乃木さん…」
モニターに映る之音の表情。
凛音は、複雑な思いだ。
『対する相手は!待ってた奴らも多いだろう!
入学早々学年のアイドルか!
『超天星』天宮 心(あまみや こころ)ー!』
「「「きゃああああああ!!!心ちゃーーーん!!!」」」
ギーガーが心の名前を呼んだ途端、多くの女子生徒(中にはいくつかの男も)がきゃーきゃーと叫んだ。
「えぇぇ!?な、なんなのこれ!?心さんどうしてこんなに人気者なの!?」
急激な大歓声に、凛音は驚愕せざるをえない。
「あらあら、凄い人気ね~」
「あれ、知らなかったのか。心は有名人だぜ。」
「有名人!?」
テレビやニュースを全く見ない訳ではないが、そんな事はまるで知らなかった凛音。
驚くばかりである。
『天宮 心!なんと一部カードのデザイナーとして巷では有名人!そんな奴が獅子神 王牙の弟子とはたまげるぜ!」
「えぇぇぇぇぇぇぇえ!!!??」
「やっほーー!!みんなー!盛り上がっていこーねーーー!!」
「「「わぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!」」」
パタパタ走り、元気に手を振りながら現れた心。
それに答えるように、周囲からは会場が割れんばかりの大歓声。
「どどどどういう事なの!?全然知らなかったのだけれど!?」
「落ち着け白皇女史。」
「ひ、聖さん…」
「俺も知らなかった。」
「もぉーーー!!!」
「あっ、こーやー!しんばー!」
大歓声の観客達の中から光夜達を見つけられた心は、にこやかに2人に手を振る。
天真爛漫。
その笑顔は太陽のごとく。
「こ、心ちゃん!」
「ほぇっ!?」
急に大声で呼ばれ、心は驚く。
その声の方にいるのは、之音。
「心ちゃん…私、負けないよ…絶対に、勝つんだから…」
今にも泣いてしまいそうな思い詰めた表情をしながら、之音は勝つと告げる。
その姿に、観客達はざわめく。
すると…
ふわっ…
「えっ、こ、心ちゃん…!?」
心が、之音の両手を優しく握っていた。
驚く之音。
「もちろん!それくらいやる気出してもらわないとね!デュエルはいつだって真剣勝負だ!
でもね之音。
今は、楽しもう!」
「心ちゃん…!」
ニカッ、と八重歯を見せて笑う心の笑顔を見て、之音の表情が明るくなる。
そして観客達も更に熱量を増す。
「ふふふ、やはり心は人気者ですねぇ。
僕らはまるで前座ですね、えぇ。」
光夜の横に現れた、綺羅麗と雷兎。
どこにいるのかはわかっていたようだ。
「おう2人とも。お疲れさん。
いいデュエルだった。」
「まあ綺羅麗は危なっかしかったし雷兎はプレミ目立ってたけどな。」
労う光夜と、辛口評価の辰覇。
それぞれの優しさだ。
「えぇ、僕もヒヤリとしました。ですがとても楽しかったです。」
「辰覇の言う通りだったぜ。まだまだ修練が足りなかったわ。」
「だが、勝ちは勝ちだ。経験をしっかりいかせよ2人共。」
2人を一言だけ諭すのは、聖。
落ち着きのある言葉だ。
『よし!それじゃあ続いてBゾーン!
挑戦者は二年生!クールな外見に熱いハート!
『雪花の貴公子(せっかのきこうし)』、雪咲 花道(ゆさき はなみち)ーー!!』
「…ふん、あだ名なんてどうだっていい。デュエルには関係ないのだからな。」
くだらない。
そんな言葉が表情から読み取れる。
だが、そのあだ名こそ、彼の体現である。
『そして対するは『超天星』!地味な外見だが侮れない!黒崎 影善(くろさき かげよし)ーー!!』
一番影の薄い人物。
超天星とはいえ、見栄えはなく対して盛り上がりもしない。
わけではなかった。
そうではないが、会場は静まりかえった。
何故なら、影善は後ろ髪を結い、普段とは違う鋭い目付きをしているのだ。
まるで侍。
その気迫は、今日の対戦者の誰よりも、凄まじい。
「…へぇ、ずいぶんイメージが違うな。
やる気は十分みたいだな。」
「………はい。残念ですが、倒します。完膚なきまでに。それが僕達『超天星』なので。」
大層な物言い。
だが、その言葉は脅しでも虚言でもない。
「…良いだろう。僕だって、まがりなりにもこの学園で戦ってきたんだ。負けはしない。全力でいく。」
『ようし、全員準備出来たな!さぁ構えろ!始めるぞ!』
それぞれがデッキを取り出す。
カードを引き、手札を用意。
準備は、出来た。
『いざ尋常に!
デュエル、スタート!!』