「おっす聖。しっかり勝ち取ってきたぜ。」
三年生かつ生徒会長を務める聖に気軽に呼びかける光夜に、凛音はたいそう驚く。
「暁くん!?貴方なんて無礼な!」
「いいんだ白皇女史。光夜とは長い付き合いがある。だがな光夜。見てはいたが危なっかしかったぞ。初日からハラハラさせてくれる。だが、よく勝利した。先生もお目が高いだろう。」
「へっ、し、知り合い…?っていうか先生って…」
「あぁ、今まで隠していたが、私は獅子神
王牙の弟子の1人だ。」
「えぇぇっ!??」
衝撃の事実を叩きつけられ、驚かずにはいられない。
なんせ、会うのが今日が初めてではない2人。
多少会話だってしたこともある。
が、王牙と関係を持っていたなんて話は一度も無かったらかだ。
「どうして黙っていたんですか!?わ、私一度も…!」
「それは先生からの頼みでな。光夜達が入学してくるまでは隠しておけと。光夜達が初めて弟子であることを公表する事による、光夜達に対する印象を他者に刻み込むためと、何かあった際に私も弟子であることを武器の一つにしたいのだろう。」
今ここにいるのは、『覇者』の意思を継ぐもの達ばかり。
凛音は、自分だけが除け者のような感覚に陥る。
「そういえば、ひじりんなんか用あったんじゃないの?」
そんな凛音をよそに、心が聖に問いかける。
「おぉ、そうだった。先生から頼まれていた事があってな。白皇女史。君のための部屋への案内と、荷物の運搬の手伝いをしろとの事だ。辰覇、お前の力を貸してくれ。光夜。お前が連れて来たのだ、お前も手伝いたまえ。」
「ほぇっ…?」
聖の用事は、凛音の居住のための手伝いだった。
予想外な言葉に、凛音は惚けた声を漏らす。
「まあ~仕方ねぇなぁ。やるならさっさとしよう。夕飯前には終わらせてぇしな。」
「そのまま部屋のもん使えばいいと思うけどなぁ~…まあ先生に言われたら仕方ないか。」
「ひじりん!僕は?僕は何したらいい?」
「おう、お前は留守番だ。」
「ガーーーーン!!!」
こうして、凛音の寮引っ越し作業が始まった。
~三時間後~
「…ふぅ………疲れた~………」
あれからどうにか引っ越しを終え、凛音は脱衣場にいた。
荷物を運んでいる時の、女子寮に男がいる!という目と凛音様どこへ!?という声それぞれがやむことはなく、果てしなく凛音は疲れた。
夕飯の前に汗を流そう。そう思った凛音は服を脱ぎ、浴室へと入る。
横開きの扉を開けると、左右にシャワーが二台ずつあり、奥には大の男6人くらいは余裕で入れそうなかなり広い湯船。
男女兼用でここしか風呂場は無いらしいが、風呂に行くと事前にしっかり伝えているため、覗きにでも来ない限りは入る事は無いだろう。もちろん、覗いた者は白皇家の力の限りを振り絞って社会的に抹殺するつもりだ。
湯船は用意はされていなかったが、今日はシャワーでもいいだろう。蛇口を捻り、シャワーを浴びる。
「はぁ~…それにしても、ほんっと今日は最悪の1日だったわ………あの男ぉぉ………!」
シャワーを浴びて身体を流しながら、凛音は今日の事を思い出してはムカムカする。
朝出会い頭の時、デュエルをしていた時。この寮へと連れてこられた時。そして、引っ越しの時。
「まさか鍵を開けたらズカズカ部屋に上がりこんで、あまつさえ干してる下着を掴もうとするなんて…!!」
怒りと恥ずかしさでプルプル震える凛音。
なんとか手に取られるのは防いだものの、完全に見られてしまった事も相まって怒りは収まらない。
「それに比べて聖会長と坂本くんはとても紳士的だったわね…部屋入るのにも一言くれたしタンスも勝手に開かないようテープで止めるなりして気を使ってくれてたし…というか、1人で1つのタンス持ち上げるって怪力がすぎません…?見た目通りといえば失礼かもしれないけれど………」
いろいろありすぎたのか、ぼそぼそと一人言を溢し続ける凛音。
「はぁ……どうしてこうなってしまったのかしら………」
身体を洗いながら、昨日思い描いていたのとはまるで違う今の自分。
気持ちはどんよりと落ち込む。
「……………いいえ、むしろこれはチャンスなのよ凛音…だって、あの王牙プロと、その弟子達と近くにいられるなんて見方を変えれば多くの経験を積める絶好の機会…そうよ、素晴らしい事じゃない!…綺羅麗くんと暁くんさえいなけれは…」
光夜の事は余程嫌いになっているらしい。ついでに気味の悪い綺羅麗も。
しかし、気持ちの切り替えは出来たようだ。
「…さーて、お腹も空いたしそろそろ上がりますか。」
しばらくすると立ち上がり、蛇口を閉めると軽く身体についた水気を払い、凛音は浴室を出る。
「え~と、タオルタオル…」
「おせーぞ白皇!もう飯できて…る………」
バタン!
と勢いよく扉が開き、イラつきながら光夜が入ってくる。
「えっ…なっ……えっ………」
「あ…ええと…その………」
裸のまま、とっさに最低限を隠して固まる凛音。
高校一年生なりたてとは思えないくらいのプロポーション抜群のその裸体を、生まれて初めて同年代の男に目撃されてしまう。
それを見て次第に言葉を無くし、徐々に後ずさる光夜。
そしてみるみるうちに顔どころか全身赤らめていく凛音。
「…ご………ごめん………」
謝罪の言葉を絞り出し、扉を静かに閉める光夜。
そして…
「…き………きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!??////」
我に帰り、パニックになってしゃがみこんで叫ぶ凛音。
「うぉぉ………予想外の一撃………」
扉の向こう、崩れ落ちる光夜は顔を真っ赤に染め、とんでもないものを見てしまったと身体を震わせていた。
「くそ…見る目変わっちまうだろうが………」
騒ぎを聞きつけ、なんだなんだと寮内の人間がバタバタと各自の部屋から飛び出てきたのは言うまでもない…