シンフォギアの消えた世界で アナザー 作:現実の夢想者
「エレクライト装着者と遭遇したっ!?」
『はい。切歌お姉ちゃんと調お姉ちゃんが言うには接近戦型と遠距離型のエレクライトだったそうです。コンビで動いているらしく、お姉ちゃん達も苦戦したみたいで』
スサノオ絡みの一件から明けた翌日、寝ていた俺を起こしたのはゲートリンクからの通信であり、相手はエルだった。寝惚けた頭で受け応えていたら、まさかの言葉に目が一瞬で醒めた。
それにしても早すぎる。こうなると相手は多発的にレーベンガーを動かして派遣していると考えた方がいいかもしれない。スサノオがそれを感知してくれるから、ツクヨミを通してスサノオへその時手が空いてる装者を同行させて欲しいと頼んだのが功を奏したようだ。
ちなみにスサノオがその頼みを聞いてくれた理由はツクヨミが教えてくれた。
――そなたの事を創造主と思うておるようじゃ。何でも妙な人の子と交戦した際に、その攻撃で暴走を始めていたらしく、それをそなたが直してみせたようじゃ。
スサノオは依り代がやった事を、俺が自分の力でやったと思っているようだった。だから依り代を別の人間が持っても質問に答えなかったのだろう。
「そ、それで一体どうなったんだ?」
『はい、戦闘自体はスサノオもいたおかげで相手を撤退させて終わったそうです』
「そっか。切歌と調が無事のようで何よりだよ。それで、スターリットさん絡みの情報は?」
『そちらも進展がありました。こちらの交戦内容を伝えると、相手の名前を教えてくれました。近接戦型を展開している方がフォルテで、遠距離型がララだそうです』
「やっぱり女性?」
『そうですね。でも何故女性だと思ったんですか?』
「いや、これは言うならばメタ的思考ってやつなんだ。簡単に言うと、シンフォギアに出てくる男性でギアみたいな物を展開出来る人がいなかったからさ」
いてもゲーム独自の平行世界シナリオだけだし、それだって欠点の多い代物だった。後は、フォルテはともかくララって名前なら男性って事はないだろうと思ったのもある。
まぁ好奇心の塊であり素直なエルへそんな言い方をすれば、そこからどうなるかは分かってはいたけども。
ええ、しっかり説明させられましたとも。ついでにそこにいるだろう弦十郎さん達にも。
その見返りと言うか、スターリットさんからの情報を教えてもらった。
何でも彼女達はテックという組織を名乗っているそうで、首領というかトップはニコラ・テスラという男性みたいだ。
で、そのテスラさんは有名人らしく、科学者としては超がつくぐらいの天才らしい。そんな人がエレクライトだのレーベンガーだのを作り、各平行世界から星命力なるものを吸収し、それらを一つに集める事で永遠に死が訪れない理想郷を作ろうとしている。
……うん、見事なまでにカギ爪の男だ。まぁさすがのカギ爪の男も死が訪れないなんて事は目指さなかったけども。
『それで只野君。君は、君が参考資料として我々に渡してくれた漫画のように、それぞれの世界が助けを求める声を出しているから依り代が力を失っていないと、そう考えているんだな?』
「はい。今の話を聞くと余計そう思います。そのテックとやらがやってるのは強引に他の世界の命を奪い、それを使って自分達の世界を延命させているに過ぎませんし」
『兄様、僕は彼らの行動目的がソール11遊星主に似ていると思いますがどうでしょう?』
「あ~……俺も同意見だよ」
エルの指摘に思わず納得する。そうか、これはたしかにそういう見方も出来るな。
きっとテスラって奴は自分のやっている事を悪とは思っていないだろう。こうなると、だ。出来る限り早くテスラって奴を止めないと不味い。いくら平行世界が沢山あるからといって、それを滅ぼして自分達の世界を延命させていいはずがない。
「エル、可能ならスサノオに絶縁処理か似た効果を持つ装備を考えて欲しい。今後もエレクライトと交戦する機会があるかもしれない」
『大丈夫です。既に司令から同様の指示を受けて製作中です!』
「そ、そっか。そうだよな……」
さすがは本職。素人の俺も思いつく事はとっくに気付いてるか。ならここは大人しく向こうに任せよう。下手に素人が口出しや手出しをしたら不味いしな。
『只野君、もしスサノオが暴走する事があれば君の力を頼る事になる。可能な限りないようにするが、その際は申し訳ないが協力を頼む』
「分かりました。俺としてもそういう事のない事を願います」
『ああ。ではな』
本当に大人だよなぁ。俺がどう思いどう考えるかを察してるとしか言いようがない。気遣いが凄いな、ホント。
「あ~……俺もちゃんとした大人になりたいなぁ」
一人きりでそう愚痴ってみる。答える者も聞いている者さえもいない、一軒家で。
あの日々では、俺は司令塔をさせてもらっていた。気付けば、それが当たり前で自然なものになっていた。けど、本来はそうじゃないんだ。俺は所詮一般人で、戦術やら戦略やらに関しては素人だ。
分を弁えろって事だな、うん。もう俺は司令塔でもリーダーでもない。依り代を持つってだけの、ただの人だ。
「……だからこそ、最後の切り札でもあるのか」
ヒーローものでもよくあるやつだ。何の力もない存在が、なけなしの勇気を振り絞って立ち上がる事で結果的にヒーロー達の逆転劇へ繋がるのは。
なら、必要とされたり、必要になるまで俺なりにここで頑張りましょう。非日常へ自分から首を突っ込むとろくな事にならないし。
……前回のは結果的に良かっただけで、一つ間違えばアウトだっただろうから。
「とりあえず寝直すか」
まだ眠気も残ってるし、今夜も勤務だ。さすがに昨日の今日で俺が呼ばれる事にはならないはずだ。うん、きっとそうだ。
そう思って寝直した俺が次に目覚めた原因は、また朝と同じゲートリンクへの連絡音だった……。
いつかこうなる事は分かってた。あの時、スサノオが人に跪いているのを見た時から、私の歩いている道はテスラ達と同じ道ではなくなったのだから。
でも、でもだからってこんなにすぐそうなるなんて思わなかった。まさか、昨日の今日で……
「何で……何でだよ。何でお前がアタシらの前に立つんだよっ!」
「スターリット……どうして?」
「フォルテ……ララ……」
フォルテとララがこの世界にやってくるなんてっ!
「あれが例の?」
「間違いないだろう。聞いていた特徴と一致する」
ヒビキと翼の話し声が聞こえるけど、私の目は前にいる二人から離せなかった。フォルテは怒りに震え、ララは悲しみに震えていたからだ。
その瞳に宿っているのは疑問と戸惑い、だと思う。この身を包むエレクライトは目の前の二人と同じなのに、今いる立ち位置は正反対になってしまっている。それを二人も何となく感じ取っているんだろうな。
私がどうしようと動けないでいると、二人の周囲にレーベンガーが再度出現する。
「あれはっ!」
「レーベンガー……っ!」
「ヒビキ、翼もレーベンガーをお願い。フォルテとララは私が」
「スターリット……」
「いいのか?」
「ええ」
優しいね、二人共。声も表情も私の事を心配してくれているって分かる。だからこそここは私が一人でフォルテとララを説得ないし撤退させないといけないんだ。
「大丈夫。戦うつもりはないから。だから、悪いけどレーベンガーはお願い」
「分かった。行こう立花」
「でもっ」
「彼女だけの方が相手へ余計な刺激をせず済む。それに、あちらには星命力を奪う事は出来ない」
「……分かりました。スターリット、気を付けて」
「ありがとう。二人も気を付けてね」
ヒビキと翼が離れていくのを感じながら、私は一時も目の前の二人から目を離さなかった。フォルテとララも少しだけヒビキと翼へ目を動かしたけど、すぐに私へ視線を戻した。
しばらく無言が続いた。私はどう二人へ話を切り出そうと考えていたし、多分フォルテとララも似たような感じだったんだと思う。
だからこそ、私から会話を切り出そうと思った。こうなる前と、同じように。
「まずはありがとうを言わせて。私と話をする事を選んでくれて本当に嬉しい」
「スターリット、どうして?」
「返答次第じゃただじゃおかねーぞ」
「うん、分かってる」
小さく深呼吸する。説得出来る自信はない。でもやってみようとは思う。只野さんが教えてくれた、テスラが目指す先に待つ事。少し前までならそれはないだろうと思えたけど、あのツインドライブを始めとする想像を超えた現実にそれは完全に打ち砕かれた。
テスラの使っている力は電気だ。ならあのもう一人のヒビキのギアはそれを物ともしないし、ミクと呼ばれていた子は鏡の属性を持っているから反射出来るはず。
何より、単純に出力で負けてる。エレクライトでさえ超える力であり、おそらくだけどスサノオさえも圧倒できるだろう性能。聞いた話では九人もの装者がそれを発現可能だ。もうテスラに勝ち目はない。
なら私に出来る事はただ一つ。計画を犠牲を最初から肯定しないものへ変えてもらう事だ。
「聞いて。実は私、ここでスサノオと交戦したの」
「スサノオと……」
「それで、撃退したのか? さっきの奴らと一緒に」
ここだ。ここから私の話に強く興味を持ってもらわないといけない。
「ううん、実はスサノオに命令出来る人が出てきたの」
「「っ!?」」
「しかも、その人は平行世界のシンフォギア装者達と強い繋がりを持っていて、その力を信じられない程強化出来るんだ」
「……どんぐらいだ?」
「エレクライトを簡単に超えるぐらい」
「なっ!?」
「ナインっ! エレクライト、テスラ様がスターリットと一緒になってシンフォギアを参考に作った物! それが負けるはずない!」
「そうだぜ! 大体スターリットが言ったじゃねーか! エレクライトはシンフォギアを超えてるって!」
私の言葉に噛み付いてくる二人を見てとりあえず目論見は成功したと感じた。後はこれを途切れさせないようにするだけ。
「私もそう思ってた。だけど違った。私が知ってるシンフォギアは所詮実戦を経てない物で、実戦を経たシンフォギアはエレクライトさえ上回るポテンシャルを秘めていたんだ」
「……それがさっきの奴らか?」
「違うの。それは別の世界のシンフォギアなんだ。だけど、エレクライトを超える力を持つ装者が九人もいる」
「きゅっ!?」
「そんな……人数でもララ達を超えてる……」
「実際私は戦ったから分かるの。最初こそ優勢だった。けど、向こうがその力の一部を解放しただけであっという間に劣勢にされて、それなのに向こうは更なる力を隠してた。それで私は悟ったの。エレクライトじゃシンフォギアには勝てないって」
そこで私は二人の反応を見た。するとフォルテとララは何かを思い出すような表情を浮かべてた。
「フォルテ、昨日戦った二人のシンフォギアって……」
「間違いねーな。スサノオと共闘してたから妙だとは思ってたが、そいつらがきっと……」
本当に二人はあのもう一人のヒビキ達の仲間と交戦したみたい。じゃ、私の話が嘘じゃないって分かってくれるかも。
「スターリット、アタシらはそのシンフォギアと戦ったぜ。たしかにそれなりに手強かったがエレクライトを超えてるなんざ……」
「ギアは途中で変わった?」
「ナイン、変化してない」
「だからよ。言ったでしょ? 私も最初は優勢だったって」
どうやってるか知らないけどあの変化が起きた直後、もう一人のヒビキとミクのギアは凄まじい力を発揮した。攻撃力だけじゃない。速度や防御力まで段違いに上昇した。
エレクライト三基を同調させたとしても、きっとあの二人のツインドライブというものに並ぶのが精一杯だ。とてもじゃないけど九人ものツインドライブシンフォギアを相手に勝てる気はしない。
「でもな、いくら何でも負けるなんて思えないっての」
「疑うのならそれでもいいわ。だけどスサノオがシンフォギア装者と一緒になって動いてるのは知ってるんでしょ? 本当に今のスサノオはある人の指示で動いてるの」
私もまだ半信半疑だった。でも本当にそうみたい。只野さん、どうやって言う事を聞かせたんだろう? 意思疎通がそこまで綿密に出来るようには見えなかったんだけど、どうやら詳しい話を聞く必要がありそうだ。
と、そこで二人が同じ方向へ顔を向けた。私もそちらへ顔を向けると、そこにはスサノオと共にこちらへ近付いてくる装者が見えた。しかも二人いる。
「あいつらは……っ!」
「ヤー、昨日戦った相手」
そしてどうやらフォルテとララが交戦した相手みたいね。スサノオを連れた二人の装者は私達から若干距離を取った場所に降り立つと、私をチラリと見てからフォルテとララへ顔を向けた。
「どうやら間に合ったようデスね」
「うん、みたい」
「貴方達はソングの装者でいい?」
もう一人のヒビキ達が所属する組織名を口にすると二人の装者は小さく頷いてくれた。ただ顔はフォルテやララを警戒するように二人へ向いている。スサノオは不気味な程大人しくしていた。その体をヒビキと翼がいるだろう方へ向けているからレーベンガーを攻撃しようとしてるんだと思うけど……。
「えっと、そっちのはじめましての人がスターリットさんでいいデスか?」
「ええ」
「話は響さんや師匠から聞いてます。とりあえず……スサノオ、ここはわらわ達で十分故あの絡繰共を頼んだぞ」
ピンク色のシンフォギアの子がそう言うと、スサノオは一瞬にしてその場からレーベンガーがいる方へと移動していった。あ、あの子の言う事も聞くの?
「嘘だろ……」
「スサノオが命令に従った……」
「ううん、今のは命令じゃない。お願いだよ」
「「お願い(だぁ)?」」
「調の中にはツクヨミって名前のスサノオの仲間がいるんデス。だから調の言う事も聞いてくれるんデスよ」
ツクヨミ……。そっか、只野さんが会わせて話をしてみるって言ってたわね。うん、間違いない。もうテスラの計画は暗礁に乗り上げたって言える。どんどんテスラの行く先に暗雲が立ち込めていくのが分かるよ。本当に早くしないと危ない。彼が大人しく自分の計画を諦める訳がない。そうなると待っているのは装者達との全面衝突だ。
その結果がどうなるかはもう考えるまでもない。テスラは一人で装者は最低でも九人。しかもその力はエレクライトを超えていて、更にスサノオまでも手を貸している。
「フォルテ、ララ、分かってくれた? このままじゃ」
「スサノオがいるから何だっ! アタシらはそんな事で諦めねーぞっ!」
「ヤーっ! テスラ様の計画、邪魔させないっ!」
「フォルテっ! ララっ!」
「来るデスかっ! 調っ!」
「うん、分かってるよ切ちゃんっ!」
私よりも戦いやすいと思ってフォルテとララが動き出して二人のシンフォギア装者へと襲いかかる。その状況はやや装者達が不利という感じ。私が援護に入れば五分には出来る、でも……。
「どうしたら……」
フォルテとララが迷ってくれたように私も二人を敵にする事を躊躇っている。ううん、二人へ刃を向ける事を、だろうな。あの二人を悲しませ、苦しませるだろう行為。しかも傷付けるかもしれない事をしたくないんだ。
何も出来ず動けない私の視線の先ではフォルテとララが終始優勢を保ち続けている。最初こそ様子見をしていた二人もやはりエレクライトの敵じゃないと思ったのか、今や攻勢をかけ出していた。
「へっ! 所詮シンフォギアなんざアタシらの敵じゃねーっ!」
「ヤーっ! このまま押し切るっ!」
「不味いっ!?」
「調っ!」
しらべと呼ばれた子がフォルテの攻撃をかわしたところへララの攻撃が殺到し、それを庇う形で緑色のシンフォギアの子が駆け寄った。そこへララの攻撃が直撃し周囲に砂煙が立ち上る。
「どうだ? やったか?」
「ヤー、命中した。無傷じゃ済まない」
ゆっくりと砂煙が晴れていき、視界に二つの影が見えてくる。けれど、その雰囲気がさっきとは違っている気がした。
「まさか……」
息を呑む私の視線の先に、予想通りギアを変化させた二人の装者が立っていた。
「なっ!?」
「色が変わった……」
「間一髪、だね」
「デスよ。エルに感謝デス。あと、ししょーはナイスタイミングデス」
形は同じだけど色の異なるギア。それに私はあの時の事を思い出す。終始押していたはずの状況を、もう一人のヒビキがギアの色を変化させた瞬間、一瞬にして互角どころか劣勢にされた事を。
「けっ、んなこけおどしでっ!」
フォルテが勇んで飛び出して手にした刃を振り下ろす。さっきまでなら相手はそれを避けるか辛うじて防ぐしかなかった攻撃。それを……
「ほっ!」
「なっ?! ぐっ!? う、嘘だろ!? 力負けしてるだとぉ!」
余裕を持って鎌で受け止めたのだ。しかもそこからすぐにフォルテを押し込み始めた。
「フォルテっ!」
「切ちゃんの邪魔はさせないっ!」
「っ!? 速いっ!?」
すぐに助けに入ろうとしたララの眼前にもう一人の装者が迫っていた。私も気付かなかったぐらいの速度だ。ララが攻撃しようにも相手は手にした武器を変幻自在に使い、更に頭部ギアの伸びている箇所から刃を射出してララの攻撃よりも攻撃頻度を上げていた。
あっという間に戦況は一変した。フォルテもララも相手の凄まじい強化に驚き、戸惑い、その精神を大いに乱されているのが分かる。
それを感じ取っているんだろう。二人の装者は余裕を崩さず、けれど油断はしないで戦闘を進めていた。気付けば鎌対斧と高速機動対制圧射撃の戦いとなっている。でも……
「戦闘経験が、しかも対人戦闘経験値が違い過ぎる……」
これまでエレクライトよりも上の相手と戦う事なんてなかった私達。大抵相手はアルカ・ノイズやその世界の軍隊だった。しかもレーベンガーの援護がある中での、そんな有利な状況ばかりの経験値だ。
それに比べると相手の装者達は対人戦闘に慣れているように見える。今もフォルテやララの動きや戦い方を踏まえ、対処法をすぐに構築出来ている。
あれはきっとこれまでで培ってきた経験からくるものだ。しかも自分達よりも強い相手を想定した訓練や実戦で磨かれてきたはずの戦術だ。
「くそっ! 調子にっ!」
「乗るつもりはないデスっ!」
「ぐっ! ち、畜生っ! 何で、何でだっ! 何で当たらないんだよっ!」
きりちゃんと呼ばれた子に比べると力任せに見えてしまうフォルテは、大振りを狙われて的確にカウンターでダメージを与えられているし……
「迎撃っ!」
「だけじゃ勝てないよっ!」
「っ!? また後ろっ!? 動きが追えない……っ! このままじゃ……」
しらべと呼ばれた子はララの攻撃が前方にしか出来ない事を利用して、手にした武器や頭部ギアから飛ばした刃で攻撃しつつ脚部のローラーによる高速移動で後方へ回り込む形を取っていた。
二人の受けているダメージはそこまで大きくはない。けれどこのまま続ければどうなるかはきっと二人も分かってる。何せフォルテもララも焦りが浮かんできているけど、相手をしてる二人はまだ落ち着きさえ見せている。
「フォルテっ! ララっ! お願いだから戦うのを止めて話を聞いてっ! このままじゃテスラも貴方達も笑顔になれないのっ! そっちの二人もお願いっ! これ以上フォルテとララを攻撃しないであげてっ!」
エレクライトを収納して私はその場から駆け出した。そうしないと二人が止まってくれないと思ったからだ。装者二人は私の言葉と行動にその手にした武器を下げてくれて、フォルテとララはそれを好機と思ったのか反撃に出ようとしていた。
「ダメぇぇぇぇぇっ!!」
きっと、きっとその攻撃が当たっても二人の装者は死にはしないはず。だけど、だけど攻撃の意思を失った相手へ攻撃するなんてさせちゃいけない。
特に、まだ幼いあの二人にはっ!
そんな時だ。私の目の前に巨大な何かが振ってきたのは。それはフォルテとララの攻撃を遮るように地面へ突き刺さり、二人の攻撃を受けて脆くも砕け散る。
「あれは……」
「剣だ。故に盾にはなれなかったようだ」
聞こえた声に顔を動かすとそこには苦い顔の翼が立っていた。
「翼……」
「何とか間に合ったようだな。それにしても……」
「あっさり砕かれましたね、今」
「ああ。どうやら今の私ではあの二人を遮るには力不足かもしれん」
「ヒビキ……じゃあレーベンガーはスサノオが?」
それと、その後ろにはヒビキもいた。スサノオがいないところを見ると、レーベンガーの残りを任せてきたって事かもしれない。
「そ。スサノオが来た時は驚いたけど、見事にわたし達を無視してレーベンガーを壊し始めた時はもっと驚いた」
「ああ。あの調子ならすぐにでもこちらへ来るだろう。それよりも今は……」
「っ! フォルテとララっ!」
視線を二人がいた場所へ向けると、もうそこには誰もいなかった。きっと状況が完全に不利となったから撤退したんだ。それにどこかでホッとしてる自分がいる事に気付いてため息が出そうになる。
「はじめましてデス! アタシは暁切歌デス!」
「月読調です。よろしくお願いします」
「話は司令から聞いている。どうやら色々と助けてもらったようだな。感謝する」
「いえいえ、お役に立てて良かったデス」
そう言って、きりかと名乗った子はとっても元気で見てるこっちも明るくなれる笑顔を見せた。
「それで、何で追い駆けなかったの?」
そこへヒビキがそう問いかけた。やっぱり彼女達はフォルテやララを見逃したんだとそこで分かった。
「深追いはダメだと思ったんです。それと、私達はあの子達を信じたいんです」
「「「え(は)?」」」
思わず声が出た。ヒビキや翼もそうだったみたいで同じような声を出してた。信じたいって……。
「昔、アタシ達もある目的のために響さん達とぶつかりました。本気でぶつかって、戦って、最後には手を繋げたんデス。だから、あの二人とも最後には手を繋ぎたいんデスよ」
「スターリットさんが手を繋いでくれた事は知ってます。それはきっと師匠達がスターリットさんを信じたから。師匠が好きな漫画の台詞にあるんです。疑っていたら敵は見つかるかもしれない。でも信じないと仲間は見つからないって」
「貴方達……」
「それにししょーもそう考えてくれてるデスよ」
「すまないが、先程から二人が師匠と呼んでいるのは誰の事だろうか? 何となく分かってはいるんだが……」
「あっ、すみません。只野仁志さんの事です」
「只野さんはアタシと調のししょーなんデス。で、このリビルドギアはアタシ達の力じゃなれないギアで……」
そこからきりかはどうしてそのギアが只野さんの気持ちを伝えているかを教えてくれた。そう、ツインドライブにしていないからというのがその理由。本気でフォルテやララを倒してしまうならツインドライブにすればいい。だけどそれをしていない。そこからきりかとしらべは、只野さんが二人を倒すべき敵ではなく分かり合える相手と思っていると捉えたんだって。
それと、リビルドなのはきりかとしらべが危なくならないようにとの配慮だろうとも。何でもツインドライブを使わないなら現状それが一番強いギアみたい。
……倒すべき敵じゃない、か。思い返してみれば、私とあのヒビキ達が戦った時もあの人はツインドライブを使わなかった。使ったのはスサノオが現れた後だ。そっか、あの時から只野さんは私を倒すべき敵って考えてなかったんだね。
その後スサノオが現れ、しらべの中にいるツクヨミが呼びかけて彼女達は自分達の世界へ帰還する事となった。
「じゃあ私達はこれで」
「バイバイデース」
「では行くかの」
スサノオと共に二人はその場から去って行った。それを見送って私は思う。フォルテとララが今度動く時はテスラもいるような気がする、と……。
「……そうか。スターリットが……」
「それだけじゃねー。スサノオまでも仲間にしてやがる」
「それは興味深いな。アヌンナキの写し身を仲間にとは」
「テスラ様、それだけじゃない。相手の使うシンフォギア、エレクライトよりも強くなる」
「ふむ、それもまた興味を惹かれる話だ。ならばそこへレーベンガーを送り込むのは後回しだ。まずは障害の少ない場所からコンダクターによる星命力の吸収を行っていく」
「それでいいのかよ」
「むしろ余計な消耗は避けるべきだ。スサノオが相手と共に行動している以上、相手に有利となる場所へわざわざ行く事もあるまい。それと、次は私自身も同行しよう。私の目でそのシンフォギアの力を確かめてみたい」
たった二度の交戦。それが事態を収束へと向かって動かしていく。そう、さすがの天才も知らないのだ。既に自分が詰みまで追い込まれている事など。
エレクライトは三人揃わねば真価を発揮出来ず、しかもそれにはそれを扱う者の強い想いが必要。加えて彼の計画を成功させるにはその条件を満たした上で、彼らの本拠地があるその世界に建造されている高き塔が必要不可欠である。
つまり、自分達の世界までスターリットをおびき出した上でフォルテやララに強い想いを抱かせ、それを束ねなければならないのだ。
それがどれほど不可能な事かを今の彼は理解出来ないし想像も出来ないでいた。人としてのあったかい心を遠き日に凍らせてしまった、今の彼では……。
LOSTSONG編第二部終了。スサノオが本来の状態となっている+スターリットが生存し離反した時点でテスラは詰みです。
そこにツインドライブがあるのでどうあがいても勝ち目はありません。星命力の吸収が出来なくなっていますからね。
本来ならば第三部は平行世界装者達との関わりですが、今作では必要ないので次回で終わりです。