シンフォギアの消えた世界で アナザー 作:現実の夢想者
「「「「「スイーツアラカルト?」」」」」
「そう。仮のユニット名だよ。そっちの感想と意見、それと別案があれば聞かせて欲しい」
夕方前に目覚めて飯の用意をしていると響と未来が板場さん達を連れてやってきたので、早速とばかりにいつかの話にあったユニット活動関連の話題を振ったらこうなった。
板場さん達三人によるユニット名は何となくだけどアイドルっぽい感じにしようと思った結果、お菓子とか甘いとかのイメージがする名前にした。
……ネーミングセンスがないのは今更なので仕方ない。ドライディーヴァなんてまんまだったし。
ともあれ俺の出した名称は女子高生五人にはそこまで悪くない印象らしく、そこから板場さん達が話し合いを始めた。俺はそれを眺めながらこの後の事を考え始める。
まぁ今夜も勤務があるので特に何かする訳じゃない。響達もおそらく少ししたら帰るだろうし、もし泊まるとしても俺がいないのである意味問題ないからな。
「只野さん、スイパラはどうですか?」
いきなり板場さんがそう尋ねてきたのは俺が副業をどうするか考えていた時だった。
「スイパラ?」
「スイーツパラダイスで略してスイパラです」
「この方が可愛い気がするってヒナが」
成程、略し方が分かり易いのはいいかもしれない。それにスイーツ食べ放題みたいな感じだし、色々と女性受けしそうだ。
とりあえずユニット名は決まった。次は歌の方だがそこも既に板場さん達で歌詞を考えてきてくれたそうだ。と、言う訳で近い内にカラオケへ行く事が決まった。
そのままの流れで響達は何を歌うかなどを話し出したので、俺は一人晩飯を食べる事に。とはいえ、炊いた白米を皿に盛りつけ、そこへレトルトのカレーをかけるだけの手抜き飯だ。
だがカレーの香りというのは大したものだと改めて痛感した。響だけでなく板場さん達までもその香りにやられたようで、一斉にお腹が空いたと言い出したのである。
しかし我が家にあるカレーは残り二つ。とてもではないが人数分はない上、米もジャーの中に残っているのは僅かだ。
「……少し待ってて。これを食べ終えたらカレー屋に連れてくから」
「やったぁ!」
「ほ、ホントにいいんですか?」
喜ぶ響と違い若干申し訳なさそうな顔をする寺島さんに俺は苦笑しながら頷いた。
「ただし、その分働いてもらうよ。洗い物と風呂やトイレ掃除、それと……」
「お買い物、しておきましょうか? 私と響なら服の下にギアを着ておけばいざとなっても平気だし」
「じゃお願いするよ」
正直五人分の仕事はないので未来の申し出は助かった。こうして洗い物と掃除を板場さん達三人が担当し、響と未来が翌日のための買い物をする事に。
それにしても響と未来だけじゃそこまで賑やかにはならないけど、板場さん達がいるとそうじゃなくなる辺りが学生らしくて微笑ましいな。
そして数分後、俺は車を家の近くへ移動させるべく外へ出た。今頃は板場さんが洗い物をしてくれてる事だろう。ちなみに安藤さんが風呂、寺島さんがトイレ掃除となった。
じゃんけんで決めていたのが何とも可愛らしいと思った。ホントに学生だよ、あのノリは。
で、それは車に乗ってからも健在だった。五人は、特に板場さん達三人は俺の車が自家用車では珍しい部類であるためかテンションを上げ、たった十分足らずのドライブを楽しんでいた。
そうして到着するのはいつかセレナと来たカレー屋。響達の世界にも似たような店はあるだろうが、ただファミレスとかでカレーを食べさせるだけではつまらないと思ったのでここにした。
「へぇ、カレーだけでこんなにメニューがあるんだ……」
「わぁ、トッピングがこんなにあるんですね。辛さやご飯の量まで選べるなんてナイスです」
「で、でもちょっと高くない?」
「値段は気にしないでいいよ。君達の動画が稼いでくれる分の前渡しだと思ってくれ」
板場さんが金額を気にしたのですかさず口を挟む。確かにここは値段が高めではある。昔はそこまででもなかったんだが、ここ数年は値段が高くなってしまってカレー一皿に出すには少々躊躇う金額となっているからなぁ。
「仁志さんらしいなぁ」
「板場さん、これは大変な事になったね」
「え?」
「あ~、そういう事か。ユミ、要はさ、ここの支払い分ぐらいは稼げるだけの歌を唄わないといけないって事だよ」
「おそらく支払いは最低でも五千円程度でしょうか。そうなると再生数で言うと……」
「うげっ、止めてよ。歌う前から色々と妙なプレッシャーかけられたくないのに」
「いいじゃん。これで俄然頑張らないといけなくなった訳だしさ」
「ふふっ、ここの支払いぐらい余裕で越えてみせましょう」
「う~っ……そ、そうね。うん、始める前から弱気は禁物だわ」
「よし、じゃあ好きな風に注文するといいよ。サラダとかも良ければどうぞ」
「「「「「はーい」」」」」
ホント、気分は軽い女子校の教師だ。あるいは部活の顧問かね。
メニューを広げて楽しげに話す五人を眺めていると本当にそんな気になってくる。ただ現実には実現不可能な事ではあるんだが。今更教師になんてなろうと思わないしなれるとさえ思えないんだ。まず大学受験からして無理だし。
でも、もし教師やってたらあの戦いは切り抜けられなかった気がするな。
そう思うとコンビニ夜勤の俺が響と出会ったのはやっぱり狙っての事だったんだろう。
「只野さん、注文決まりました」
「了解……っと」
呼び出しボタンを押して後は響達にお任せだ。俺の仕事は支払いと自宅へ彼女達を送る事だけだしな。
ちまちまと水を飲みながら、俺はこれからの事を話題に盛り上がる五人を眺めてそう思った。これから五年経っても、十年経っても、彼女達が今の様に笑い合える事を願いながら……。
「それじゃ行ってきます」
「「「「「いってらっしゃい」」」」」
五人の女子高生に見送られて仁志は玄関のドアを開けて外へ出て行く。ゆっくりとドアが閉まるのを見て響達はリビングへと戻る。
「さてと、じゃあ二人から色々教えてもらいましょうか」
「いいよ。見終わったんだよね、クウガ」
「はい。その、正直胸が苦しくなるような作品でした」
「そうなんだよねぇ。何て言うの? ビッキー達もこれに近い事をしてるんだなって思うと余計に、さ」
その創世の言葉に響と未来が表情を曇らせた。それは彼女達もクウガを見ている時にどこかで感じていた事だったのだ。
「あたしは、だからこそ見れて良かったと思うわ。そりゃあんた達は体が人間じゃなくなるなんて事にはなってないけど、人知れず恐ろしい存在を相手に戦ってる事は同じだもの」
「板場さん……」
凛とした表情で目を見て告げられた弓美の言葉は響の心を強く打った。
「それで、聞きたい事があるのよ。何で現代のクウガはグロンギを倒せたのに古代のクウガは封印だったのかとか」
「あー、うん。えっと、それはね……」
仁志から聞いた知識を話し始める響。その補足や補助を未来が担い、五人のクウガ話は続く。仮面ライダーという存在が持つ意味と重さ。それらも響の口から話され、弓美達は思わず息を呑んだ。
人ならざる者へと改造される存在、あるいは人ならざる者へと変わっていく存在。それが仮面ライダーの本質と教えられて。
更に語られるかつての響に起こっていた現象も三人の心を締め付けた。融合症例。そう呼ばれていた頃の響はまさしく仮面ライダーと近しい状態だったと知って。
「仁志さんが言ってたんだ。あの頃の私はまさにクウガだったって。ギアを展開すればするだけ危ない状態になる。だけど、それでも目の前で困っている人を助けられるなら、救えない今を変えられるならって、そう思って私はギアを使ってた」
「ビッキー……」
「勿論今も同じ。だけど、あの頃はそこに今以上の覚悟みたいなものがあったかもしれない。絶対死んでたまるか。私は私のままでいるんだって」
「……五代さんも、きっと同じような気持ちを持っていたはずです」
「そうよね。あ~、うん……絶対そうだわ。みんなの笑顔のためにって戦ってた人だもん。自分が死んだりしたら笑顔じゃなくなる人が出るなら、そんな事させないって頑張る人だし」
弓美の言葉にその場の全員が頷いた。その中で響をずっと傍で見てきた未来はある人物にもっとも感情移入をしていた。
「私ね、桜子さんの気持ちがよく分かったんだ。私も響が装者をしてるって分かった時、似たような気持ちになったから。何で響がって」
「未来……」
「でも、こっちで暮らしてた頃は私も響側になってた。だからきっと只野さんが一番辛い気持ちだったかもしれない。一緒に戦う事が出来ないし、しかも年上の男の人だから」
「そうだよねぇ……。只野さん、ただでさえヒーロー好きだし」
「だからこそ、きっと只野さんは人一倍明るく振舞ってたのでは? 皆さんが暗く沈んだりしないように」
詩織の言葉に響と未来はあの頃を思い返して小さく頷いた。自分達がいる前では仁志は暗くなったところを見た覚えがほとんどないと。
あの悪意との戦いの日々で仁志は一番のムードメーカーだった。響や切歌へ影響を与える存在となった彼は、だからこそ意図的に誰かといる時は努めて明るく振舞っていたのだ。その事に響と未来もここではっきりと気付いたのである。
「きっとさ、只野さんがクウガになったら五代さんと違って研究するためにいっぱい変身するよね」
「「「「あ~……」」」」
五人の脳裏に浮かぶ人気のない場所で一人変身してその能力を確かめるクウガの姿。五代と違い戦う事を忌避せず、むしろその力をヒーローらしく使えるためにと努力しそうな仁志の性格を考えればそうなる方が自然だと思ったのだ。
彼女達は知らない。それはどちらかと言えば、小野寺ユウスケという青年が変身するリ・イマジンクウガと呼ばれる存在に近い事を。
「じゃ、多分仁志さんだと最初白だけど途中で変身ポーズを取って赤いクウガになりそう」
「おおっ、いいじゃないそれ。それはそれで燃える展開ね!」
「一話で変身するのか……」
「しかも二段変身です。どの辺りでそうなるでしょう?」
「只野さんだと……車をぶつけた後、とか?」
「成程ねぇ。車をぶつけたけどやり返されるもんね。そこでこのままじゃ勝てないって思って……」
「イメージが浮かぶのねっ! 古代の戦士が変身するやつがっ!」
「うわっ、すっごく想像出来た! でもでも赤のままでいられるのが短い時間とかになりそう!」
「体が適応出来ない?」
「ううん、単に体力不足」
「うわぁ、只野さんって感じね」
盛り上がる弓美と響を未来達が小さく苦笑しながら見つめる。だがそこで話へ入らない辺り彼女達も二人の意見には同意しているのだろう。
やがて話はクウガから仮面ライダーへと移り変わっていき、響と未来が“仮面ライダーSPIRITS”の話をし、丁度リビングにあったため弓美達がそれを読み始める。響と未来と言えばあまり読んだ事のない“ウルトラマンSTORY0”を読み出した。
静寂が、室内を包んでいた。改造人間である仮面ライダーを初めて知る弓美達はその内容にページを捲る手がゆっくりとなり、ウルトラマン達の未熟な部分などを描く物語は響と未来に驚きと共感を与えた。
(これが……仮面ライダー、なんだわ。人のまま怪物にするなんて……アニメ、じゃないからこそキツイわね……)
(これが、どこかで本当に起きた事なんだよね……。こういうの見ると、ホントビッキー達には頭が下がるよ)
(人のためと、そう言うのは簡単ですけど、それをやるのは難しいですもの。立花さん達も、きっとこういう方達も、強い心を持って生きてらっしゃるんでしょう……)
(これを読んだから仁志さんは星の声って考えをすぐ思い付いたんだ……。それに、テスラさん達の事があったからよく分かる。星も、世界も生きてるんだって)
(強い力を持つ事って、優しい心を持つ人たちには恐怖なんだ……。私はそんな風にギアを感じた事はなかったけど、考えてみればあれだって簡単に誰かを不幸に出来る力だ。そういえば只野さんが言ってたっけ。強い力を使う時は少し臆病なぐらいがちょうどいいって)
未来はまだ知らない。その言葉こそ今自分が読んでいる漫画に出てくる言葉だと。
そうやって五人は日付が変わる手前まで漫画を読み耽り、その後はやや慌てて就寝のために動き出す。
寝室に布団を五つ敷いてそれぞれが横になった後もすぐに寝る訳ではなく、五人は漫画を話題に会話を続けた。
特にウルトラマンに関してはマリア達が存在した世界へ行った事もあり、更には彼女達の世界にも宇宙人であるアヌンナキが存在するなど、色々と思う事が多い要素があったため盛り上がったのだ。
そんな会話も一段落し、そろそろ寝ようかと誰かが言い出しそうな雰囲気となった時、不意に弓美が呟いた。
「神様みたいのがいるって言っても、やっぱりいい奴と悪い奴といるのね。アニメじゃあるまいしって言いたいけど……」
「あー、こっちじゃ元々アニメだったんだよねぇ」
「ですが、只野さんの考えではアニメは私達の世界の事をこちらで描いてただけです。それにもう私達の世界とこちらで描かれているものは大きく異なっているそうですし」
「うん、だから仁志さんもとっくに別物って言ってた。もう私達の世界がどうなってくのかは仁志さん達の世界でも分からないって」
「これってニワトリが先かタマゴが先かって話みたいだね」
「「「「あ~……」」」」
未来の言葉に誰もが同意するような声を出し、そこで会話は終了となった。
翌早朝、勤務を終えた仁志が帰宅すると彼が想像していなかった出来事が待っていた。
「おかえりなさい只野さん。えっと、もう少し待っててくださいね。朝ごはん、もうちょっとで出来ますから」
未来が朝食の支度をしていたのである。二人だけの静かな朝食。ただ未来は後で響達と食べるために何も口にはしようとしなかった。そこで仁志は……
「一口だけなら大丈夫だからさ。はい、あーん」
「あ、あー……むっ」
「どう? 自分で作った玉子焼きのお味は」
「……美味しいです。ふふっ、只野さんが食べさせてくれたから余計かも」
と、新婚のような事をやりつつ仁志は朝食を食べ終えて食後の散歩へと出かけるべく玄関へ。
「じゃ、行ってくるよ」
「いってらっしゃい。気を付けて」
未来は小さく手を振って仁志を見送ると洗い物をするべくその場から動き出す。こうしてこの日は始まった。とはいえこの日のメインは弓美達“スイーツパラダイス”の動画撮影なので、仁志が仮眠を取った後から動き出す事となっている。
だから未来は洗い物を片付けるとそのままリビングで漫画を読みながら仁志の帰りを待った。読んでいるのは“キッチンの達人”である。
ページを捲り、内容に夢中となっていく未来。と、その手がある時ピタリと止まった。
「……これ美味しそう。只野さん好きそうだし、やってみようかな?」
笑みを浮かべながらそう呟く様はまさに新妻であった。装者の中では只野ともっとも話が弾まなかった未来だが、それも今は昔となりつつある。
仁志の趣味であるヒーロー物に関しては相変わらず切歌程の盛り上がりはない。それでも肌を重ねた事もあってか今はそんな仁志を微笑ましく思う事も増え、知り合った当初よりはその手の話題でも話が途切れる事は減っていた。
漫画を手に幸せオーラを放つ未来をそっと眺め、創世は若干困り顔を浮かべる。
(うわぁ、あれってヒナがビッキーの事考えてる時の顔だよね。でも何となくだけど今のヒナは只野さんの事でああなってそう……)
初めてハッキリと見る未来の乙女の、いや女の顔に創世は戸惑っていた。これまで響の事でそれに近しい顔をする事はあったが、やはり想う相手が異性となるとそれに違いがあると感じ取れてしまったためだ。
結局創世はドアの前で数分逡巡した後、意を決してリビングへと入る事となる。そこで創世はそうして良かったと実感する事となるのだ。そう、仁志が帰宅したのである。もう少し行動が遅ければ挙動不審な自分の姿を見られていたと思い、創世は仁志を未来と共に出迎えながら内心安堵するのだった。
仁志や響と未来にとっては久しぶりの、弓美達にとっては初めての来店となったカーリースをメインとするカラオケ店。動画撮影といえばこことばかりにやってきた仁志は、早速スイーツパラダイスに唄ってもらおうとしてある事に気付いて愕然となった。
「……そっか。三人にはギアがないから曲がフルサイズない」
響達はその身を包むギアを利用しオリジナル音源を使って歌う事が可能だった。だが当然ながら弓美達にはギアなどない。依り代から曲は流せるがそれではどうしてもチンケなものとなってしまう。どうすればいいのかと仁志が頭を抱えた時だ。
「私と響のギアから流せないですか?」
かつて依り代を使い、ギアから楽曲を歌付きで流した事を未来が思い出して、自分と響のギアから三人が歌詞を考えてきた曲を流す事を提案したのだ。それに天啓を得たとばかりに仁志が依り代のゲームを起動させミュージックボックスを開いてみる。
「……表示としては板場さん達だけなんだけど、どうなるか……」
そうして選ばれた楽曲が依り代から流れ始める。ただ響と未来が展開するギアからは流れない。
「ダメか……」
「ちょっと待って。只野さん、さっき表示はアタシ達って言ってましたけど、それってどういう事ですか?」
「そうですわね。私達はギアを持っていません。なのにどうして?」
「多分なんだけど……」
仁志は現在噂されている、かつて“戦姫絶唱シンフォギア”だった作品について話した。六期目が製作されていると言われていて、そこでは弓美達三人が装者のようになる可能性があるとなっている事を。
そして響が以前訪れた世界で弓美達三人はギアのような物を展開しノイズと戦っていたと補足を入れ、おそらくその平行世界の弓美達関係の楽曲ではないかと仁志は結論付けた。
「って事は……」
「私達も装者の適性があるんでしょうか?」
「アニメみたい……」
「ちなみに響、その平行世界の板場さん達が身に纏っていたのってどんな名前?」
「えっと、メックヴァラヌスです」
「とりあえずどうします? この曲を板場さん達に唄ってもらうの、厳しいですけど……」
室内に流れる音楽はやはりどこか力強さに欠けていた。なので仕方ないとばかりに仁志は依り代の音量を上げて一度やってみる事にした。
その結果は……
「う~っ……何か微妙」
「だねぇ。アタシ達もギアみたいなのがあれば違うんだろうけどさ」
「今のままでは歌っていると言うよりは歌わされている感じですわ」
何とも言えないものであった。下手ではないが上手くもない。それに何より心へ訴えるものがなかったのだ。
「う~ん……そうだね。よし、じゃあ板場さん達が楽しんで歌える事を重視しよう。この曲の事は一旦おいておいて、今回は三人の紹介動画だ。好きな歌を唄ってくれ。まずは三人で、次は個人個人で頼めるかな?」
その一番の理由が弓美達が楽しんで歌えていないからだと思った仁志は、収益化などを度外視して三人のアイドル欲と呼ぶべき欲求を満たす事だけを考えた。
弓美達はそんな彼の言葉に若干申し訳なくも思うも、すぐにその想いへ応えるように歌を探し始める。一方の響と未来はと言えば……
「「会えない時間が会えた時の幸せを強くするの」」
その胸の歌を仁志へ聞かせると共に、新曲を歌う事で彼の収入へ寄与していた。仁志への想いを歌ったそれは“離れるからこそ分かる事”と響と未来によって名付けられた。ちなみにその動画は響と未来がこれまで上げた中で一番の高評価を得る事となる。
さて本来歌うべきものが駄目になった弓美達は三人で何を歌うかを考えた結果、仁志の助言をもらい“オーバーマスター”というアイドルマスターの楽曲を歌う事にした。
それは仁志が弓美達三人をフェアリーというユニットと重ねたからこその提案であったが、その歌を聴いた三人も乗り気となって決定と相成ったのだ。
「「「thrillのない愛なんて興味あるわけないじゃない」」」
「「大人っぽい……」」
やや危険な香りを漂わせる歌詞に響と未来が感嘆の息を漏らす中、仁志はスイーツパラダイスの今後をどうするかを考えていた。
(オリジナル楽曲がないのは厳しいなぁ。俺にそっち系の才能はないし、だからと言ってギアは簡単に作れるものじゃない。そもそも動画配信やアイドルごっこのために作るもんじゃないよなぁ……)
弓美達が楽しんでやってくれればそれでいいと思いつつも、だからこそ自分達だけの歌を唄わせてやりたいと仁志は思っていた。と、そこで彼は思い出す。
(そうだ……。エレクライトならどうだ? あれはたしか純粋な科学技術らしいし、戦闘能力じゃなくその補助や援護に特化した物なら板場さん達が所持しててもそこまで問題ないはずだ)
弦十郎の許可や理解が必要だろうが、緊急事態対策としては十分アリだと思える事でもある。そう仁志は考え、弓美達個人個人の動画を撮影すると駐車場に止めてある車へと向かった。
仁志はロックを解除すると後部座席へ入り、そこで腕時計のように偽装されているゲートリンクを口元へ近付けた。
「ゲートリンク、起動」
“アクセスコードを入力してくれ”
「アクセスコードは、グリッドマン」
“アクセスコード、確認した。ゲートリンク、オールアクティブ。全機能解放”
「よし。S.O.N.G本部、聞こえますか? こちら只野です」
キャロルの声による音声案内を聞きながら仁志は根幹世界へと呼びかける。程なくして発令所にいるあおいが反応、仁志へ何事かあったのかと問いかけてきたので弓美達へエレクライトを持たせてやりたい旨を告げたのだ。
勿論表向きは、未来の事を例に挙げての響達の不安や心配を軽減する事やいざという時の予備戦力、あるいは緊急時の連絡要員という役割を担えるとして許可を得ようとした。
『たしかに緊急時にギャラルホルンを経由せずに他の世界へ行けるのは助かる。ただ、あれに関しては所有するとなれば上も黙っていないだろう』
「……でもたしかエレクライトがどういう物かはそっちでは確認されてませんよね?」
『それはそうだが……』
「あれは聖遺物を使用してないからあの波形も感知されませんし、そもそも個人が開発した便利物みたいなもんです。それに秘密の切り札は秘密だからこそ切り札になるんですから現場の最高責任者さえ知っていれば十分じゃないでしょうか?」
『……君は中々狸だな』
「いえ、こんなのはガキの開き直りですよ。でも、実際下手に知る人間が増えれば厄介事の種になりかねません。言っちゃなんですが、どうしたって組織ってもんは規模が大きければ大きいだけ色んな事が絡み付いてきますし」
そこで仁志は言葉を切って小さく息を吐いた。
「とにかく、どうでしょうか? もし許されるなら俺が直接テスラさん達に頼んできます」
『君が?』
「そうすれば、いざとなった時に俺が勝手にやった事に出来ます。幸いテスラさん達は他の世界と接触したくない世界にいますから知り様もないって言い張れますしね。それに、いくら国連でも上位世界にいる俺の事をどうこうは出来ないでしょう? まぁ、そうなると俺は二度とそっちへは行けなくなりますけどね」
あの悪意との戦いは仁志の心を強くしていた。時には周囲の目や声を気にせず己を貫く力を持てるようになっていたのだ。弦十郎は仁志の言葉からそれを感じた。例えここで自分が許可を出さずとも、仁志はエレクライト製作を依頼しに行き、今話したように全て自分が独断でやった事と言い切るだろうと。
(やれやれ、やはり彼は熱い男のようだ)
それと若さも残しているとも感じていた。青さ、と言い換える事も出来るそれを、弦十郎はどこか好ましく思っていた。それがあったからこそ、仁志は装者達と共に悪意という恐ろしい相手と戦いぬけたと察していたからだ。
『分かった。こちらとしても装者以外の平行世界を行き来出来る存在は有難い』
「ありがとうございます。じゃあこれで失礼します」
『ああ』
勿論仁志も弦十郎の返事に込められた意味を感じ取っていた。大人になり切れないと言っている仁志だが、それでも半年以上も店長として動いていれば多少なりともそれらしくなれるのだろう。
弦十郎が自分の事を考えて許可を出してくれた事を嬉しく思いながら、仁志は車から出ると再びカラオケ店内へと戻った。
カラオケは仁志がいない間も続いていたようで、彼が部屋へ戻った時には五人は楽しそうに唄っていたのだ。その曲名は何と“青空になる”だった。
「……何というか、本気で最終回のEDみたいだな」
五人の女子高生による歌唱は幸福感に満ちており、まさしく浄化されるような癒しの効果を仁志に感じさせた。その歌を聴き終ると仁志は自然と拍手を送っていた。それだけの何かがあったのだ。
響達はまさかの反応に軽く驚いたものの、すぐに笑みを返してみせるとそれぞれに手を振ったりとアイドルのような動きをみせる。そのらしい感じに仁志は笑みを深くした。
その後は仁志が弓美の要望に応える形でヒーローソングを唄う事になった。そこで彼が選んだのは“仮面ライダーアギト”だった。
「見てるだけの君でいいかいっ!」
その歌詞と映像に響達は意識を奪われ、心を動かす。そのまま仁志は続いて“BELIEVE YOURSELF”を歌う。
「挑む事、恐れないっ!」
どちらも同じ作品で使用された楽曲であり、歌い終わった後は仁志へ弓美と響からの質問が飛んだ。
「仁志さん仁志さんっ! アギトってあのライダー達の中のどれですかっ!?」
「あの角が展開する奴ですよねっ!」
「板場さん正解。で、緑色のはギルス、メカメカしいのがG3だ。まぁ映像に映ってたのはG3-Xもいるんだけど……」
「始まっちゃった……」
「あはは、いいんじゃない? 特にユミはそういう話が大好きだしさ」
「そうですね。只野さんもそういうものがお好きな方ですし、私達は私達でカラオケを楽しみましょう」
「……そうしよっか」
こうして仁志達話に夢中になる組と、未来達歌う事に夢中になる組と分かれて時間は過ぎていく。
たった三時間のカラオケだが、その濃度は濃いと言えた。歌い、喋り、笑い、驚き、心と表情を沢山動かして疲れた仁志達は、食料品の買い物がてらかつて彼がマリア達を連れて行った大型スーパーへと向かった。
響達五人と共に動く仁志は、傍目には休日に女子高生を引率する教師辺りに見えるだろう。実際近いものではあるが、本質は引率と言うよりは財布であった。
ただし、その代わりに可愛らしい女子高生五人と過ごせ、更には食事などの世話をしてもらえるのだから、人や考えようによっては安いものかもしれない。
「あっ、たい焼きだ!」
「つぶあんにカスタード、桜あんだってさ」
「いいじゃないいいじゃない。只野さーん」
「はいはい。ただし三つずつ買うから半分に分けて食べる事にしてくれ。三種類を六つってなると意外と、さ」
「分かってます。じゃ、私は響とだね」
「なら私は……創世さんとですね」
「え? じゃあ……」
「俺と、って事になるか。構わないかい?」
「えっ、えっと……はい」
何故かやや赤面する弓美に仁志は内心で首を捻った。何故彼女は照れるのだろうかと。既に弓美と仁志は趣味が似ている事もあって親しくなっていると言えた。なので今更たい焼きを分け合う事程度なら平気だろうと思っていたのだ。
(どうしたんだろう? やっぱり年上のおっさん相手じゃ嫌なのか……?)
(只野さんと同じ物を分け合って食べるって考えたら、あの夜に聞いた事を思い出しちゃったわ……。こ、こう見えて複数の女の子を受け止めて愛しちゃってるのよね、この人……)
実は弓美と創世は詩織と違いあの夜の話を途中から聞いていた。そのため二人の中では仁志は響達学院組と男女関係にあると思っていたのだ。
つまり装者全員とそうなっていると知っているのは詩織だけ。どちらにせよ弓美達三人は仁志が一般的には良くない関係を持っている事を知りながらも、これまでと変わらぬ接し方を彼に続ける事が出来ていた。
とはいえ、それは特段仁志を意識しないで済む場合だ。今のように彼をハッキリと意識する状況になると弓美はやや狼狽えてしまうようになっていた。
たい焼きを購入し自分のための食料品の買い物を終えた仁志は、響達を家の前で降ろして車で駐車場へと向かう。さて先に帰宅した響達はと言えば……
「ヒナ~、野菜しまい終わったよ~。他にはない~?」
「ありがとう。それで終わりだから大丈夫」
「お風呂掃除も終わったわ。朝に水を抜いて軽く流しておいたおかげね」
「じゃあ、後は」
「お布団も取り込んでおいたよっ!」
「ナイスです。後は只野さんが帰ってくるのを待つだけですね」
それぞれが仁志に世話になった礼とばかりに動いていたのだ。
さすがに今夜は泊まる訳にもいかないのでたい焼きを食べたら帰る事にしていた事もあり、その前に出来る限りの事をと思って働いていたのである。
買ったたい焼きをテーブルの上へ置き、お茶を用意して準備万端とばかりに仁志の帰りを待つ響達。その様子はまるで父親の帰りを待つ娘達のようだった。
「……遅いね」
だがそこから十分経っても仁志が戻ってこないのである。駐車場から仁志の家まで精々かかっても十五分程度。もう帰宅していないとおかしいと、そう思って響が漏らした呟きに未来達も無言で頷いた。
連絡しようにも今の響達は上位世界のスマートフォンを持っていない。ただただ待つしかない中、さすがに三十分が経過した辺りで響が立ち上がった。
「私、ちょっと見て」
「ただいま~」
響が動き出そうとしたのを合図にするように聞こえた声に五人が一斉に動き出した。
「「「「「只野(仁志)さんっ!」」」」」
「ただいま。いやぁ、ごめんな。実は駐車場からこっちへ向かう途中で前住んでたアパートの大家さんと会ってね。ついつい話し込んじゃったんだ。心配させて申し訳ない」
靴を脱ぎながらの説明に響達は安堵するように息を吐いた。いくらノイズや錬金術師などがいないとはいえ、それ以外の日常的に潜む脅威は存在しているのだ。しかもそれらから身を守れる程の力は仁志にはない。
「本当に心配したんですからね?」
「ごめんごめん」
「ビッキーなんてもう探しに行くとこだったしね」
「そうそう。只野さん、ちょっと気を付けてくださいよ?」
「うん、今度からはそうする」
「さぁ、とりあえず手を洗ってきてください。たい焼きを食べましょう」
「響は座って待ってようね。まだ食べちゃダメだよ?」
「言われなくても分かってるよ。もうっ、未来ってば……」
「ははっ、じゃあ急いで手を洗って来るよ。響のためにも、ね」
「仁志さんっ!」
「「「「あはは(ふふ)っ」」」」
明るく楽しげな笑い声を聞きながら仁志は洗面所へと向かい、響はやや拗ねた表情で椅子へと座る。
その後、三種類のたい焼きを笑顔で食べ終えた響達と共に仁志はギャラルホルン前まで同行し、彼女達と別れた後でそのままヒビキ達の世界へ向かうと風鳴司令とテスラへ弓美達用に三つのエレクライトを作ってくれるように頼んだ。
しかもその際に依り代を彼らへ手渡し、その技術も利用出来るのならして欲しいとまで付け加えて。
「依頼料みたいなもんだと思ってください。三日ぐらいしたら取りに来ます。それで足りませんか?」
「三日、か。私はそれで構わないが……」
差し出された依り代を眺めテスラはそう言うと視線を風鳴司令へ向ける。彼は神妙な表情で依り代を見つめていた。
「ダメですかね、やっぱり」
「……ノイズを撃退出来る術を、他の世界がこれから作り出したというのは本当か?」
「あ、みたいです。セレナや奏の世界はそれで二人の外出や外泊を許可出来るまでになりましたし」
「そうか。分かった。ならば対価としては十分だ。シンフォギアの仕組みを組み込んだエレクライトの件、たしかに引き受けた。テスラ君、頼めるな?」
「こちらとしても、未知の技術を応用しこれまでにないエレクライトを作るのは楽しみでもある。異論はない」
こうしてテスラ達によって弓美達用のエレクライトが開発される事となる。ちなみにそのデザインに関しては、仁志が“戦姫咆哮ギアヴァラヌスZX”の公式に挙げられたそれぞれのギアデザイン画を見せる事で解決され、出来上がりは“メックヴァラヌス”に近しい物となる事が確定した。
「テスラ様、最近楽しそう」
「スターリットもご機嫌だよな。まぁ、そっちは何でかが分かり易いけどよ」
「色々新しい事をやってるからなんだっけ。司令が上手くいけばわたし達の負担が減らせるって言ってた」
「あの依り代を分析してノイズ撃退に役立てるそうだ。別の世界では既に実用化されているらしい」
すっかりチームとなった四人は、トレーニング終わりのシャワールームで汗を流しながら何気ない会話を交わす。ララは汗を掻く訳ではないのでシャワーを浴びる必要はないのだが、スターリットから「これからはヒビキ達とチームでもあるんだから、ララには必要ない事でも可能な限りヒビキ達と同じ事をしてみて」と言われたためである。
余談ではあるが、それを知ったテスラはララへ「防水加工などは完璧だ」と言って安心させようとしたが、それをララから聞いたスターリットが「心配するのはそういう事じゃないのに……」と苦笑したとか。
後日奏の手によってノイズキャンセラーのデータがテスラ達に届けられ、更なる改良が加えられる事となるのだが、それは今回は関係ないので詳しくは語らない。
さて、遂にデビューとなったスイーツパラダイスだったが、その評価は今一つというものだった。
「……可愛いけどそれだけ、かぁ」
「歌も上手い方だけど特に引かれるものがない、ねぇ……」
「今後に期待、ですか。中々厳しいですわね」
学院も卒業近くとなったため自主登校で良くなった事もあってか、弓美達は早速数日後には仁志の世界を訪れていた。その腕にはそれぞれゲートリンクが装着されている。これも三人をいずれ装者に近い立場とするという弦十郎からの無言のメッセージであった。
ただしそれに気付いたのは今のところ少数だ。とはいえそれでいいのだろう。何せ弓美達は秘密の切り札。その事を知る者は少なければ少ない程いいのだから。
そんな事を今は知らない弓美達は自分達の動画に着いたコメントを読んでいき、それが終わると揃って微妙な表情を浮かべていた。
「概ね好評ではあるけど……」
「それも手放しでって感じじゃないよね……」
「一体何がいけないのでしょうか……」
高評価の数が低評価を完全に上回っているものの、コメント内容はいまいちとしか言いようがないために三人は素直に喜べないでいた。そんな彼女達へ仁志は笑みを浮かべてこう告げるのだ。
「出だしから順風満帆だった翼達がおかしいんだよ。むしろプロでやってる翼達と君達が同じような評価を受けない辺り、与えられた評価は市場の妥当なものだと思わないと。しかもそれで叩かれるんじゃなくてまあまあなら御の字だ。いきなり高いハードルを設定されないだけ良しと思った方がいいよ」
「それはその通りなんですけど……」
「やっぱどっかで甘く考えてたなぁ」
「でも、只野さんの言う通りです。ここから頑張れば私達は評価を上げていけます。そう考えればこのスタートはナイスです」
前向きな詩織の言葉に弓美と創世も小さく頷き、スイーツパラダイスは次なる動きをどうするかを話し合い始める。その横では響と未来が自分達の動画へのコメントなどを読んでいた。
「あっ、未来未来、前よりも可愛くなった気がするだって」
「……ホントだ。何でだろう?」
「やっぱりアレじゃない?」
「…………かも」
響の口にした“アレ”の意味を悟り、未来は少しだけ赤い顔をして仁志を一瞬だけ見る。彼は無料の求人誌を眺めていた。その横顔はどこか真剣なもので、それに未来の心は高鳴った。
(只野さん、もしかして本当に転職を考えてる? ……やっぱりあの調ちゃんへの言葉はそういう事なんだ……)
コンビニ店長はスーパーの店長とは違って実態はバイトリーダーに近いものだ。権限はあるが、それも内容によっては上層部やオーナーの許可がいるし、そもそも社員でさえない。福利厚生や待遇などは比べるまでもなくスーパーの社員の方が上である。
未来もそこまでは知らずとも、バイトと社員ならバイト寄りだとは感じていた。だからこそ仁志が現状を打破するには転職を考える事はよく分かったのである。
「只野さ~ん、ちょっといいですか?」
「ん?」
手にしていた求人誌を下に置き、仁志は弓美達の方へ顔を向ける。もうその表情は先程までの真剣さが失せて普段の彼のものとなっていた。
「やっぱりオリジナル楽曲っていうか、あたし達だけの歌が欲しいんです。でも……」
「さすがに作曲とかまではアタシ達も手が出せないんで」
「何か良い方法はないんでしょうか?」
「あー、それについてはちょっと考えがあるんだ。だから待ってて欲しい」
「「「考え?」」」
意味ありげな笑みを浮かべる仁志に弓美達三人が首を傾げる。だが仁志はプロデューサーのようなものだ。その彼が待ってて欲しいと言った以上は弓美達はそれを信じて待つしかない。
思いもしないだろう。まさか自分達のアイドルごっこのために彼が大掛かりな事をしているとは。だがそれも広い目で見れば全世界を守るための動きとも言える。だからこそ二つの世界は彼の発案に協力しているのだ。
それから少しして五人は自分達の世界へと戻る。ただ、寮へ帰る途中で雨が降り出して五人の服を濡らした。そこで微かに透けて見えた響と未来の下着は、とても下着には思えないような南国模様であった。
ただ、それに気付いたのは創世だけ。故にこっそりと尋ねたのだ。
――えっとさ、ビッキー、ヒナ、その下着ってホントに下着?
その問いかけに二人は意味深な微笑みを返すのみ。それが何よりの答えだと創世は思い、そして赤面したと言う。
それはつまり、本来二人が着けていた下着は脱いだと言う事であり、そうなればそれはどこでかは言うまでもないからだ。
「……響と未来の攻め方、凄いよなぁ」
その頃、仁志は二組の下着を前に頭を抱えていた。可愛らしいピンクの上下と清純なホワイトの上下のそれは、響と未来が着けていた下着である。
――仁志さん、エッチ出来ない分、これで我慢してくださいね?
――エッチな本とか映像じゃなくて、私達の事で抜いてください。
帰り際に囁きと共に手へ押し付けられた物がそれだった。ほんのりと温もりが残っていた事もあり、響達の姿が見えなくなった瞬間仁志が二階へ上がり自分を慰める事になったのは言うまでもない。
「…………早朝から二時間だけのバイト、探してみるか」
休日や時間がどうなるか分からない転職ではなく、現状とそこまで変わらないWワークで様子を見ようと考える仁志。その裏には自分と関係を持つ女性達との交わりを無くしたくないという欲があった……。
上位世界では何と六期の製作が決まり、メックヴァラヌスが遂にアニメとなって動き出すようです。
……現実ではおそらく無理でしょう(汗