シンフォギアの消えた世界で アナザー 作:現実の夢想者
地味にあのシナリオへの伏線回でもあります。
あと、今回以降は更新時間を固定していこうと思っています。
いつになるか分かりませんが更新されるとしたら午後八時です。
『俺はゼロ、ウルトラマンゼロっ! セブンの息子だっ!』
その発言に周囲から大小の感嘆符が聞こえた。やはりこの宣言には痺れるものがある。ウルトラマンという名の意味と重さ、そして親子の絆と想い。それらも描きながら光と闇のウルトラマン対決を主軸に据える“ウルトラ銀河伝説”は何度見ても考えさせられるなぁ。
「力に溺れた者と溺れずに済んだ者。それを分けたのは、大切に思ってくれる存在の有無、かぁ……」
「それと、その心の在り方、じゃない? ゼロはあの小さな怪獣を守った優しさがあったから」
「ですわ。他者を思う優しさを持つか否か。それが道を踏み外すか外さないのかの重要な要素かと」
弓美達の言葉に内心で同意する。既に見た事のあるエルも頷いていたし、キャロルなどどこか眩しいものを見るかのような表情で画面を見つめていた。ついでに言えばドヴァリンはかつてのヴェイグよろしく拳を握りしめてた。
実は、この催しは本来なら弓美達はいないはずだった。これはキャロルにゼロを教えてあげたいというエルの頼みで開催した事だからな。そこへ弓美達がスイパラの活動についての相談をするために現れて現状となっている。
ちなみにドヴァリンは、奏が任務兼仕事で外国へ出かけるのでしばらくエル達へ預けられたらしい。故に今回のイベント参加となってる。
……完全にペットを預ける独り身女性だな、奏。
「そうだ。大事なのは心の持ち方だ。自分のために力を使う奴は基本道を踏み外す。かつての俺のように」
「キャロル……」
やっぱりか。キャロルへゼロを教えたいとエルが考えたのはそういう事なんだろう。ゼロは、ある意味で今のキャロルだ。そしてベリアルはかつてのキャロルだ。
力を求め、道を踏み外した。けれど響達がそんな彼女を止め、やり直す切っ掛けを与えた。その結果がXVでの振る舞いと現状だ。うん、まさしく光と闇の差をその身で知る存在だな。
「でも、君はベリアルのようにはならなかった。何故ならその行動の奥底には亡くなったお父さんへの想いがあったからね」
「兄様……うん、そうだよキャロル。僕も知ってる。君が本当は何を求めていたかを」
「……そうか」
妹のようなエルの言葉と眼差しに普段なら照れ隠しをしただろうキャロルが、その時だけは素直に受け入れるような笑みを返した。本当に双子の姉妹だな、今の二人は。セレナがいたら少し拗ねるかもしれないけど、やっぱりエルの実姉はキャロルなんだろう。あるいは、もう一人の自分、かね。
「おおっ! ゼロは強いなっ!」
「そりゃあね。彼の師匠のレオは格闘戦ならウルトラマンの中で一番強いと言っても過言じゃない」
「しかも、そのレオの師匠は何とセブンなんです!」
「「そうなのか」」
「燃えるわね!」
「いいなぁ。絆、だね」
「ナイスです。ある意味で恩返し、ですね」
そうそう。この話は響達にも好評だった。ついでにレオとメビウスの共通する名場面と名台詞を教えたらその厳しさに一瞬息を呑んでもいたっけ。
……あの場面と台詞、多分だけど一番刺さったのは響だろうな。何せ彼女はメビウスに近い。涙を流す事を責め立てるアレは、相当心にくるものがあったはずだ。勿論、その裏に込められた想いと意味も理解して。
「キックに炎のエフェクトがカッコイイわねっ!」
「ホント。悪を許さない怒りみたいだね」
「あるいはゼロの闘志の表れかもしれないぞ」
「むしろそっちだろうな。血気盛んな性格をしているし」
「格闘に上手く光線なども取り入れて、戦い方が上手いです」
「この辺りもセブンに似てるんです!」
怪獣墓場で繰り広げられるゼロとベリアルの戦いは、ゼロがその勢いと若さで優勢を作り出していた。勿論ベリアルも負けてはいない。だがその強さを支えるギガバトルナイザーを手放す事になった後は終始劣勢となる。
ここ、地味にレオを意識してる気がするんだよなぁ。武器に頼れば隙が生まれる。最後に頼るべきは自分自身。そうメビウスに言ってたし、ここは徒手空拳で戦うゼロと道具に頼るベリアルの差が如実に出る展開だから。
そう、最後の展開もそれを裏付ける。プラズマスパークの光がゼロへ味方し、ベリアルを倒す力を授けるのだ。それこそただ貪欲に力を求めた者へ眩しく輝く希望の光が下した審判。誰かを守る。そのために力を、強さを磨き、けしてそれに驕らぬ者にこそ奇跡は起こせるのだと。
怪獣達の怨念と合体したベリアルを打ち倒し、ゼロとセブンが親子として向き合い出したところで物語は幕を閉じる。そのラストに二度目となるエルが瞳を潤ませ、ドヴァリンは何度も細かに頷き、弓美達は感じ入ったのか黙り込む中、キャロルは……なんと涙を流していたのだ。
しかも黙って涙を流すキャロルはそのままこちらへ顔を向けてきた。
「……小父さん」
「何だい?」
心持ち優しく声を出す。今のキャロルは本来の彼女、父親を失った頃の少女だと思ったからだ。
「セブンも、ゼロのパパって言いたかったの?」
「多分ね。自分が父だとなれば余計な重圧をかけてしまうし、周囲も妙な気遣いや視線を向ける。だからこそ、ゼロがそれらに負けない立派なウルトラマンとなるまでは黙っていたんじゃないかな?」
「…………そっか」
納得したとばかりに小さく笑みを浮かべ、キャロルはそっとその胸へ手をあてた。きっとキャロルはゼロとセブンにかつての自分とイザークさんを重ねたんだ。許されない事をした自分をイザークさんが見て、どう思い、どうするのかをそこに見たのかもしれないな。
こうして鑑賞会が終わると弓美達がスイパラの活動について話し始め、ドヴァリンはエルやキャロルとゲームを始める。何と言うか、まるで正月やお盆のようだ。
でも、ここはみんながただの人であれる場所だからこそそうなるんだろう。マリアや奏に翼さえも、いやセレナやエルだってそうだ。この世界では、この家では、みんな肩書きなんてない存在なんだから。
「でさ、今度は三人曲じゃなくて二人曲にしてぇ……」
「あー、あたしとユミとかテラジとあたしみたいな?」
「面白いですね。あっ、じゃあじゃあいっそ今までに歌った歌をカバーするのはどうでしょう!」
楽しげに話すスイパラの三人はある意味平常運転だろう。
「ドヴァリンさん、そっちへ行きました!」
「任せろ。罠を仕掛ける」
「エル、今の内に回復しておけ。罠にかかったら一気にいくぞ」
一狩りいこうぜ、な三人はある意味で本当ならそう出来ていない組み合わせなんだよな。それも、ああやってゲームをやって楽しそうに笑ったり悔しがったりなんて余計に。
これが、平和ってやつなんだと心から思う。ここにいる六人はそれぞれがそれぞれで普通じゃない力を持っている。それらが必要なく、非常の才が求められない事が平和であり幸せだ。
今の俺では、それを仮初めにしか維持出来ない。もしかしたら、その内維持さえも出来なくなるかもしれない。
それでも、それでも叶う事なら、これがみんなの居場所での普通になって欲しいと思う。訓練や出動なんてものが遠い思い出になり、過去になって、歴史となってくれるようにと。
「……ヒーローなんて必要とされないのが、一番なんだし」
心の底からそう思って、俺は静かに立ち上がると全員分の飲み物を用意するべくキッチンへと向かう。
さて、どうせこのまま今日は泊まりになるだろうし、頃合いを見て買い物へ出かけますか。
発令所のメインモニターに流れる映像に誰も言葉がなかった。それはどこかで起きている惨状を映しているのではない。だが、ある意味ではどこかで起きた事なのかもしれなかった。
『成敗っ!』
『せいやぁぁぁぁぁっ!!』
ヤミーと呼ばれる怪人が仮面ライダーオーズによって倒される。それを見て弦十郎が小さく息を吐いた。
(まさか錬金術で時間操作とはな。それも徳川八代将軍吉宗の時代か……)
今彼が見ているのは“仮面ライダーオーズ~将軍と21のコアメダル~”という作品だ。当然仁志から提供されたもので、二週間レンタルだからとエルを通じて根幹世界へ持ち込まれていた。
これが提供された理由は大きく二つ。一つは仮面ライダーというものを弦十郎達に知ってもらう事。もう一つがこの作品に出てくる敵が錬金術師である事だ。要はキャロルが興味を持っていたので見せてあげたかったと言う訳である。
ちなみに仁志から事前に将軍とは暴れん坊将軍こと徳川吉宗であるとエルを通じて教えられていた。しかも、そちらに関してはDVD-Rという形で暴れん坊将軍の再放送を録画したものが届けられており、弦十郎の懐へと収められている。
「……おいおい、とんでもないな、この男性」
「本当に。だけど、機転が利くわ。相手の誘惑を逆手にとって、その思い込みを利用して逆転するなんて」
「まったくだ。ここにいる全員を家族扱いとは……」
朔也、あおい、キャロルが仮面ライダーオーズこと火野映司の行動に感心しつつも苦笑する。だが三人はこうも感じていた。どこか仁志に似てると。
正確には仁志は幾多ものヒーロー物を見ているために自然と似る部分があるだけなのだが、残念ながらそれを指摘できる人物はここにはいない。
時代を現代へと戻し、オーズはなんと敵であるはずのグリード達からの密かな援護を受けて強大な敵となったガラと戦う。
ガタキリバと呼ばれるフォームの特殊能力である分身を作り出し、一体を残して別のフォームへと変身するという奇策により、ガラは見事打ち倒される。
「……トドメのシーンは圧巻だったな」
映画を見終えた弦十郎の呟きに誰もが頷く。だがそれだけで弦十郎の感想は終わりではない。
「それにしても仮面ライダーか。装者達が共感を覚えたのも理解出来る」
「ええ。完全にやってる事の規模が装者レベルです。しかも、元々は一般人」
「それが正体を隠して危険な存在と戦う、だもんなぁ。あれで支える組織があったら完璧ですよ」
「実は、ライダーと近い戦いをしているスーパー戦隊という存在がいます。彼らは場合によっては支援する組織を持ち、もっと僕らに近いそうです」
その発言に弦十郎はやはりかと息を吐いた。何せ一般人であった仁志は、強力なコネや資産などないまま装者達をまとめ上げた。それには少なからず組織というものをどうまとめ上げるかの手本を知っていなければならない。
だがフリーターである彼が組織運営に関わる事があったとは思えなかったのだ。故にどこかでそれらを知るか、あるいは学ぶ機会があったと読んでいたのである。
「エルフナイン君、もし可能であればなんだが」
「分かっています。兄様に言えばスーパー戦隊の本などを入手出来るはずです」
「……頼む」
既にウルトラマンがいた世界と関った事もあり、ライダーや戦隊と関わる事がないとは言い切れない。その際、上位世界の情報が活きる事もあるだろう。そう思った弦十郎は、繰り返し調べる事が面倒な映像ではなくそれらが容易な書類として情報を求めたのだ。
こうしてエルを経由して弦十郎の頼みを聞いた仁志は、そういう事ならと戦隊だけでなくライダーやウルトラマン、メタルヒーローなどの大全集を(頼まれもしていないのに)購入する。勿論その資金は動画収入で得た物だ。しかも当然ではあるが渡す前に確認作業と称して仁志が目を通していた。要は自分の利益を兼ねた情報収集及び資料調達であった。
ただ、これが意外な形で功を奏す事になるのだが、それは語られる事はない。
──あのさ、昨日あたしの夢に赤いスーツのヒーローが出てきたんだけどよ……。
それもまた、忘れられない思い出の一ページとなる。
有り得ない光景が展開されていた。少なくても、小父さんを除いてそう感じていたはずだ。
画面に映し出されていたのは今や私もよく知る存在となった二人のヒーロー。片方は光の巨人、ウルトラマン。もう一方は自然と科学の申し子、仮面ライダー。その二人が今、画面の中で対峙していた。
「な、何でライダーが巨大化してるんですか?」
「まぁこれは一種の夢みたいなもんだと思ってよ」
響の疑問に小父さんがそう返して笑う。場所は当然ながら小父さんの家。そこに響達かつての学院組と切歌に調の現学生二人、そして私にエルもいる。
「ライダーが跳んだぞっ!」
「ウルトラマンも構えたっ!」
それだけじゃない。翼にマリア、セレナや奏もいた。当然ヴェイグとドヴァリンもだ。そして……
「これでタイトル回収って事かよ。まぁ好きな奴らが見たいもんだとは思うけどな」
実はクリスもいる。春休みだと言って短期休暇を取って帰国しているからだ。まぁおそらくだけど少し前に小父さんが会いに行ったのが関係してると思う。司令達に無理を言って強行軍で留学先へ行ったぐらいだし、それを受けてクリスがどう思うかなんて想像が出来るし。
それと今回のイベントは全部小父さん主導だ。
──やっと手に入れたかった物が手に入ったからみんなで見ない?
そんな言葉から始まった誘いは案の定あっさりと声をかけられた全員が乗った。本当はここにあと三人いるはずだった。響と未来の友人でツインテクターを持つあの三人だ。
──すみません。お受けしたいのは山々なのですが……。
──実はツインテクターの定期メンテに行かないといけないんで。
──ごめんなさい! 出来ればまた誘ってくださいっ!
と、そんな理由で今回不参加となっている。小父さんは残念そうだったが、購入した以上はいつでも見られるからと三人へ告げて、都合がついたらいつでもおいでと締め括ったそうだ。
……何だろう。今の小父さんとあの三人だといかがわしい事をしそうで嫌。
そんな事を思っている間にも画面の中では物語が進行中。今はウルトラマンとライダーがそれぞれ街で暴れる怪獣や怪人と対峙していた。
「ししょー、ウルトラマンとライダーって同じ世界にいるデスか?」
「そういう世界もあるかもね。何せゴレンジャーやジャッカー電撃隊がいる世界だと、ライダーやキカイダーも一緒にいて悪と戦ってると明言された事があるし」
「マジかよ」
「じゃあ、ゴーカイジャーがいた世界も?」
「かもしれないなぁ。何せ宇宙刑事がいるぐらいだし」
「じゃあじゃあ、あの世界は悪と戦ってる人達が、ヒーローが沢山いる?」
「そうなる、か。マクーやマドー、フーマの宇宙犯罪組織に、黒十字団を始めとする悪の軍団、更にはショッカーから連なる秘密結社。それらから世界を、地球を、宇宙を守り抜き、その後も平和を守って戦い続けるヒーロー達が」
小父さんの噛み締めるような言い方に誰も言葉がなかった。告げられた内容は私にだって分かる程重たいものだ。平行世界でもヒーロー達はその運命に負けず、孤独な戦いや苦難の道を行き、平和と笑顔のために進み続けている、か……。
世界を識るんだ。そんなパパの言葉を思い出して、小父さんの言った言葉を噛み締める。いくつもある平行世界。そこには恐ろしい存在や不気味な存在もいる。それらから人々を、笑顔を守るように戦う存在達も。
きっとそれを識る事が出来たのは小父さんのおかげ。
この上位世界で響達が出会ったただの人。それが知っていた知識と情報は、ある意味では恐怖と不安を呼び起こすものかもしれない。けど、ある意味では大きな希望や安心をくれるものでもある。
今もどこかで誰かが平和や笑顔のために頑張ってくれてる。いつか私達と出会い、絆を結び、共に願う未来を掴むために誓い合えるかもしれないと。
ウルトラマンゼロや仮面ライダーディケイドを知った今なら、私もそう思える。ヒーローは
私も、そうだった。本当は気付いてた。私の事を思うエルや響の気持ちは。それをあの頃の私は見えない振りをして、気付かぬ振りをして、分からぬ振りをして最期まで我が道を行った。
あの時、私が少しでもその願いに、祈りに、助けに向き合っていたら、パパの最期のお願いを歪ませて叶えようとしなかった。
「おおっ! ライダーキックだ!」
「スペシウム光線も決まったぞ!」
ドヴァリンとヴェイグが出した声に私は意識を切り換えて画面へと集中する。そこでは怪人と怪獣がそれぞれヒーローの必殺技を受けて今にも倒れそうだった。
「デデッ?!」
「嘘……」
「合体、した?」
だがそこで死にたくないという怪人と怪獣の想いが最悪の奇跡を起こした。まさかの融合とはな。戦隊じゃあるまいし、人間サイズが巨大ロボサイズへ融合か。
「あっ! ウルトラマンがっ!」
「思わぬ強化に苦戦しているな」
「さっきまでの相手に近いのに攻撃力も戦術も異なるのよ。仕方ないわ」
「ライダーはこうなると戦い辛いしな」
「あっ! クリスちゃん見て!」
「バイクで攻撃しようなんて……」
「やるねぇ。相手の大きさに怯まず自分に出来る最大限の事を、か」
「だがあれだけでは援護がやっとだ」
言いながら私はチラッと小父さんを見る。小父さんはどこか楽しそうに笑っていた。
「諦めない気持ちが不可能を可能にする。それはもしかしたらこの事があったから生まれた言葉かもしれないな」
「どういう意味デス?」
切歌が疑問符を浮かべると小父さんは画面を指さした。
「見ててごらん」
言われるまま全員が画面へと視線を向ける。するとライダーがバイクに乗ったまま上空へ跳び上がった。
──えっ!?
全員の声が一致する中、ウルトラマンが出現する時のようなポーズをライダーがしたかと思うと何と巨大化した。
あまりの事に瞬きする。どういう原理? ううん、どういう力でこうなった? きっと全員同じ事を思ってるはず。けれどそれに対する説明も解説もないまま、ただ同じ画面に並び立つ二人のヒーローは何とも言えない高揚感と微かな、でも確かな安心感を与えてくれる。
「負けはない、な」
「ええ。絶対勝利ね」
翼とマリアの言葉に小父さんが静かに頷く。きっとみんな同じ気持ちだ。
しっかり小父さんに感化された私達は、すっかりこのヒーロー達に心を掴まれている。
片や宇宙の平和のために頼まれもしないのに戦う宇宙人。片や人ならざる体となったのに自由と平和のために戦う地球人。
共通するのは願うもの。誰もが笑顔で暮らせる世界。そのためにこの二人はその身に宿した力を使い続けていくんだ。
「何か感動……」
「響?」
「だってさ、本当ならこの二人が一緒に戦うなんて出来ないんだよ。でも、それが出来たら、こんなにも頼もしいんだ。それを絶対ウルトラマンもライダーもお互いに思ってるはずだもん」
「普段は孤独な戦い。そこへ肩を並べて戦える者が、友が来る。これ程心強く、また有難い事はない」
「分かったわ。これを考えた人達は、きっと仁志のようにヒーローが好きなんでしょうね」
「だと思うよ。もっと言えば、だ。ウルトラマンと仮面ライダーと言う日本を代表するヒーローの共演を見たいって思いはずっとどこかで誰もが抱いてたものなんだ。その気持ちを持った人が製作陣の中に増えたんだよ。丁度ウルトラマンやライダーを少年時代にリアルタイムで見た人達がそういう年齢になる頃の作品だし」
想い、か。その強さはよく知ってる。良くも悪くも人の想いは力となる。私がそうだったように、人は想いだけでどこまでも突き進んでしまう。いや、突き進んでいけるんだ。
それを良い方へ向けられると、こうやって誰かの笑顔を作る事が出来る。パパもそうだった。困っている誰かを助ける。その想いだけであの結末を予期しながらも突き進んだ。
あのパパの行動のおかげで笑顔を取り戻した人がいる。笑顔になれた人がいる。それを、私は忘れてた。パパのやった事は無駄じゃない。その結果私の笑顔が消えたとしても、それでも守れたものや取り戻せたものがあるんだ。
……多分小父さんにこの事を言ったらあの優しい表情でこう言うんだろうな。
──いいんだよキャロル。悲しい事は悲しいって言って。嫌な事は嫌だって言って。何でも飲み込むなんてのは決して良いと言えないんだしさ。
何だか想像の中の小父さんの声と記憶の中のパパの声と重なる。同じじゃないのにその言い方やあったかさが似てる、気がした。
思えば、パパも小父さんも人の善意というかその優しさや良心を信じてるところが同じだ。当然パパも小父さんも人には悪の面もあると知ってる上で。
それでも人の心の光を信じている。ううん、きっとそれを信じない事が持つ意味を理解しているからだ。人の心の闇に打ち勝つために人の心の光を信じる。自分の身を闇へ堕とさないように。
そう思って見れば画面の中のヒーロー二人が融合怪獣へそれぞれのトドメを放っていた。
きっと彼らもパパや小父さんと同じだろう。人の心の光と闇をよく知るからこそ、その闇と戦い光を信じるんだ。
「闇から生まれても光を目指せば……か」
小父さんはライダーを人の影と言った。闇から生まれた存在だからこそ光を目指す。その在り方故に闇ではなく影なのだと。
ウルトラマンは光の化身だけど、それ故に闇に身を落とす事もある。ヒーロー達でさえも闇からは逃げられない。だからこそ彼らは揃って言い切るんだ。
決して諦めない。信じ続けていれば必ず光は、希望はそこにあると。
「兄様、これで終わりですか?」
「う~ん、ある意味で終わりだけどお祭り作品としてはまだ終わりじゃないな」
「どういう意味だ?」
「見てれば分かるよ。最後まで、な」
ヴェイグの質問へそう返して小父さんは微笑む。それは完全に父親のそれだ。小父さん、最近父性が爆発してる事が多い。
そのまま小父さんに言われるまま私達はエンドロールを眺める。流れる歌は初めて聞くけどこの作品のために作られた事が分かる歌詞だ。戦う勇者手を組めば、二人の願いは一つ、か。
もう私だって分かる。ヒーローは、自分達が必要なくなる事を願ってるって。自己の否定とも取れるその矛盾。
それこそが
そう、自分を絶対正しいと思うのではなく、どこかで迷いや躊躇いを抱えながらも世界の平和やみんなの笑顔のためにと決断し行動する生き方を選べる存在なんだから。
かつての俺には思いもつかないもので、今の私なら少し理解出来て、きっとあの頃のパパがやっていた生き方。心が強くなければ出来ない、生き方だ。
と、そんな事を考えているといきなりそれは出てきた。
「ウルトラマンがサイクロンに跨ってる……」
「何か……凄い」
「あっ、ライダーがスペシウム光線のポーズしたデス!」
「兄様、今のが?」
「そう。ちなみにライダーが巨大化する事に対する原作者の要求がさっきのあれ。ウルトラマンがサイクロンに乗ってくれるならいいよ、だって」
「それは、何ともユーモアのある返しだ」
「ふふっ、そうね。きっとその原作者も仁志みたいな人だったんじゃない?」
「どうなの先輩」
「いやいや、石森先生は俺なんかよりも遊び心のある人だったと思うぞ。そうだなぁ。大人だけど子供の視点を忘れない人だったかも」
そう告げる小父さんはどこか子供のように見える笑顔だ。ヒーローなんてものを心から好きで、その作り物を目指してる小父さん。だからきっとその笑顔はどこか少年のような印象を与えるんじゃないかって、そう思う。
そうして全てを見終えた私達へ小父さんはニコニコしながら振り向いた。
「どう? 日本の特撮の歴史に残るお祭り作品は」
「ワクワクしたデス!」
「はい! さすがに今回は作り物らしさが強かったですが、だからこそ楽しめました!」
切歌とエルは小父さんの影響ですっかり、えっと、特オタ、とか言ったっけ。それになってる。だからこその反応と感想だ。
「うん、きっと師匠みたいな人達が作ったんだろうなって思った」
「これも、ある意味で大人が子供のために真剣に作った物ですね」
「みんなを笑顔にする物だな。俺もそういう物を作れるように頑張るぞ」
「そうだな。元気や勇気をもらえる話だった」
調やセレナは二人に比べれば小父さんの影響力は少ない。ただ、ヴェイグやドヴァリンは心配。最近じゃ小父さんは親友だって二人して言ってるし。
「私はEDの歌が気に入りました!」
「あっ、うん。それぞれを表す歌詞がいいよね。光を浴びてに、嵐の中を駆け抜けていくだもんね」
「あたしとしては二番の方が好きだな。かけがえのない
で、響は何故か挙手して発言。それに未来やクリスが同意するように感想を述べた。私もそれには同意する。あの歌、短いけどウルトラマンとライダーの表現として最適だと思う。
「あたしは最後の遊び心が良かったかな」
「うん、いいよね。大人も子供に戻れる感じで」
「あれこそが子供心を忘れないって意味なんでしょうね」
そして奏達は大人な意見。子供心、か。思えばパパもそういうとこがあった気がする。本当の大人って、意外と子供心を持ち続けられる事かもしれない。
なら、私も本当の大人になろう。少なくても、今のままじゃパパにも小父さんにも微笑まれる。
「そうだな。今日は改めて小父さんが好きなものが持つ力を感じ取った」
私がそう言うと予想通り周囲がこちらへ驚きの顔を向ける。ふふっ、そんなに驚きか? 私が小父さんとそう呼ぶ事は。
「きゃ、キャロルちゃん? 今、仁志さんの事、おじさんって」
「ああ、呼んだ」
「そ、そんな呼び方してた?」
「以前から時折な」
「おじさん、かぁ。でも、うん、只野さんとキャロルちゃんなら自然かも」
騒がしくなりそうな響へ淡々と返し、私は視線を小父さんへと向け続ける。小父さんは私を見つめて何度か瞬きを繰り返していたけど、何かに気付いたような顔をして小さく笑った。
まるでそれが、私の変化を喜んでるパパみたいにも見えてちょっとくすぐったかったけど。
もしかすると私、知らない間に年上好きになってる? あるいは父性を感じさせる相手に弱い?
だとしたらパパのせいだ。うん、間違いなくそうだ。覚えててねパパ。いつかそっちに行った時、後悔させてあげるんだから。
私は、パパみたいなオジサンを好きになっちゃったんだって。
ウルトラマンvs仮面ライダー。このタイトルを見た時の衝撃と興奮は忘れられません。
実際に目玉だった新作映像を見たのは発売より数年先の事になるのですが、やっぱり有り得ないと思っていた共演を見た時の事は強く覚えています。
……今回の話を書くに辺りついDVDを購入してしまったのは内緒(苦笑