Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜 作:春風駘蕩
Side:Sento
翌朝、誰もいなくなった闘技場を後にしたオレたちは、白の外の適当な場所で朝食を取ることにした。
そして、調理場で昨晩の料理の残りをもらってきたラフタリアちゃんが戻ってきたわけなんだが…。
「……ラフタリア 、なんだよな」
やりきった表情で、ありあわせのサンドイッチを作ってきたラフタリアちゃんを、ナオフミがじっと見つめている。
マジでこれがちっちゃい女の子に見えてたってんだから、損してたよな。
「なんだよ? まだ信じられないのか?」
「いや、だってこんなに綺麗になって…夢だって言われたほうが納得できそうで」
「な、ナオフミ様…!」
思わぬ褒め言葉に頬を赤く染めるラフタリアちゃん。
これは……この子の春もそのうち報われるかもかな?
そしたら今度はナオフミのやつ、オレの方にハッとした視線を向けてきた。
「もしや、お前も…!?」
「ん〜ん、オレは出会った時からこのまんま。歳は……たぶん20だから」
「…相変わらず胡散臭ぇ」
そう言うなって…しょうがないじゃん、記憶ないんだから。ほんとになんで記憶喪失なんてなっちまったんだろうなぁ。
…でもそうじゃなきゃ、こいつらにだって会ってなかったかもしれないし、別にいいか。
「まーとりあえずそんなのいいから、朝飯食べようぜ? 腹減ってしょうがないんだよ」
「昨晩の残り物をもらってきただけですけどね」
「見栄えは十分だしいいんじゃないか? ある意味手作りってことで」
苦笑するラフタリアちゃんだけど、そこまで気にする必要ないと思うけどな。
見た目はいいし、味は…まだわからないけど。
まぁ腹に入れば皆同じってことで、さっさとガブッと食べちまおうや。
「…うん、悪い。味落ちてたな」
「あんまり美味しくないですね」
料理ってやっぱ出来立てが一番うまいんだなぁ……。
昨日は結局、皿に盛るだけ持って食いだめあんまりできなかったんだよな。
おのれ槍の勇者め、許すまじ…!
ふと横を見ると、ナオフミもサンドイッチをかじった瞬間動きを止めていた。
「…どうしたナオフミ? そんなマズかったか?」
「……味がする」
「え?」
ん? なんか聞き捨てならない言葉が聞こえたぞ?
味がする……のは当たり前じゃ。
…もしかしてお前。
「今まで何を食べても感じなかったのに…美味い」
そのままナオフミは、パクパクとサンドイッチを口に運んで、あっという間に完食してしまう。
まるで長い間絶食していたみたいな、そんな感じだった。
…そうか、昨日も全然楽しそうじゃなかったもんな。
味覚もずっとおかしくなっていたなら、ほとんど何も食ってなかったのと同じようなもんか。
「…よかったです。ナオフミ様のご飯はいつも美味しいのに、作ってるナオフミ様自身が美味しそうじゃなかったので、心配していたんです」
「美味いものなんて、これからいくらでも食えばいいじゃんか! こっからはなんだってできるぞ!」
ほっと安堵の息を着くラフタリアちゃんと、オレは一緒に笑う。
評判も地位も相変わらずみたいだけど、そんなもん知ったこっちゃない。
オレは元から何にもなかったんだ。ここから手に入れればいい。
「とりあえずは、にっくき波にリベンジのためにレベリングといこうぜ?」
「…ああ」
「何から始めるかねぇ…薬作って売って装備を整えて戦って……やれることはいくらでもあるな」
ガブッとサンドイッチに噛み付いて、平らげる。
そこまで美味くはないけど、これが逆にやる気を出させてくれる気がする。
もっと美味いものを、もっといいものを、ってな。
「頑張りましょう、ナオフミ様」
ナオフミの手を取って、ラフタリアちゃんが微笑む。
…あんなに弱々しかった子が、ホントに強くなったよなぁ。
ナオフミと並ぶと画になるって言うかさ?
「頼りにしてるぞ、セント……ありがとう、ラフタリア」
初めてナオフミが笑顔を浮かべ、ラフタリアちゃんの手を握り返す。
そんで同時に、ラフタリアちゃんの頬にキスを……ってなにぃ!?
「あ、あああああ…!!」
「あ、悪い。こういうのは嫌だったか?」
「い、いいいえそんな決してめっそうもない!!」
「いや、これは俺がデリカシーがなかった。もうやらない」
「えっ.…!?」
あらやだ、ナオフミってばいきなりなんて大胆な…!
オレがここ位にいること忘れてたんじゃないだろうな……それはまぁ、置いといて。
この場でオレが言うべきことといったら…。
「式には呼んでね!?」
「セントさん!!」
この二人がちゃんとくっついたら、ちゃんと祝ってやろう。
そんなことを思いながら、オレは前より明るい気がする青空を見上げるのだった。