Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜   作:春風駘蕩

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戦いの成果

Side:Naohumi

 

「おい! 話が違うだろうが!」

 

 薬屋に寄った俺に向かって、リュウガが怒鳴り声をあげる。

 おい、こんなところで騒ぐなよ。俺からぼったくろうとしなかった数少ない店なんだぞ、ここは。

 

「なんでレベル上げに行かないんだよ!?」

「お前やラフタリアを鍛える前に、先立つものが足りてないんだよ。卵ガチャの分を引いても、今後やっていくのは難しい」

 

 リュウガを買った分の料金がかからなかったのは幸いだが、食費や宿代の事を考えれば楽観視はできない。

 絶対この新入り達は、レベルが上がったら想定以上の量を食うだろうしな。

 

「本来なら国なら助成金が出るはずなんだが、あのクズにもう払う気はないだろう」

「本当に嫌な国に召喚されたもんだな、お前」

「まったくだ」

 

 あのクズ、無茶苦茶な理屈で貴重な軍資金をかっさらおうとしやがって…。

 さすがにおかしいと思った錬や樹のおかげで未遂に終わったが、次はないとまで言われた。

 べつにいいけどな!

 …やっぱりリュウガの奴、納得出来なさそうな顔をしているな。

 

「…これじゃいつになったらアイツらに復讐できるのか」

「落ち着いてください、リュウガさん。今はまだ焦る必要はないでしょう?」

「そうだけどよ!」

 

 ラフタリアが宥めてくれているが、そのうちまたごねだすだろう。

 …大きく事が運ばないもどかしさは俺にもわかる。

 だから今は……耐えてもらうほかにないんだ。

 

「俺の調合じゃまだ大した金にはならないが、少なくとも少しでも前には進めているはずだ」

「オレも覚えるよ、調合とか加工とか」

「……わかったよ。もう急かさねぇ」

 

 そう言って、リュウガはそっぽを向く。

 不満たらたらだが、仕方がないから妥協するって感じか。

 …うん、薬草や薬の需要が高い今なら、そこそこの金にはなったか。

 

「よし、なら次はお望み通りレベル上げに…」

「ちょいと待ちな」

 

 いい加減リュウガの不満を解消してやろうと、出発しようとした俺たちを、薬屋の爺さんが呼び止める。

 何だ、と思っていると、薬屋は俺に…一冊の本を手渡してきた。

 

「おい、これは何のつもりだ」

「親戚がリユート村にいてな、あんたに助けてもらったと聞いた」

 

 思わず問いかけた俺に、薬屋は不敵な笑みを浮かべてそう言う。

 正直、驚いた……武器屋の親父や奴隷商が例外なだけで、この国の連中はみんなおれを敵視してると思ってたのに…。

 

「デカくはねぇが、俺にできる精一杯の礼だ。使ってくれ」

「あ、ありがとうございます!」

「助かるぜ、おっさん!」

 

 ラフタリアやセントも、慌てて薬屋に頭を下げる。

 これは……思わぬ収穫だ。これでもっと効率よく稼げるようになるかもしれない。

 つい笑みが浮かぶ俺だったが、本を一ページ開くと、表情が固まったのがわかった。

 

「……セント、お前、文字は?」

「読めるぞ? あとで教えてやるよ」

「私も少しなら……」

 

 一番肝心な問題があったのを思い出した……俺、この世界の文字なんて読めないぞ。

 愕然とする俺に気づかないまま、薬屋は煙管をくゆらせながら続けて言った。

 

「魔法屋のばあさんもあんたに礼があるらしい。あとで行ってみな」

 

 

「まぁまぁ! 私の孫を助けてくれたそうじゃない? 本当にありがとう!」

「あ、ああ…」

 

 ジイさんの案内通り、町の魔法屋にも顔を出してみたが…。

 孫って…誰だよ。いたのか、あの中に。

 

「誰のことだ?」

「多分、生き延びた方のどなたかかと…」

「さぁさ、こっちに来て!」

 

 顔を寄せ合って話し合う俺たちの手を引き、魔法屋は店の奥に連れていく。

 そこで俺たちは……デカい水晶玉の前に立たされた。

 

「う〜ん、盾の勇者様は補助と回復に適性があるみたいね。そちらのお嬢さん方もどうぞ?」

「は、はい」

 

 水晶玉に手をかざした魔法屋は、俺たちを順々に見ていく。

 なんだ? 見るたびに色が変わっていっているが…ってこれ。

 

「ラクーン種のお嬢さんは、光と闇ね。ラビット種のお嬢さんは…あら珍しい、生成魔法だわ。そちらのアオタツ種のお嬢さんは、火に適性があるわ」

「お、おい。まさかこれは……」

「水晶玉は高価だからあげられないけど、中古の魔法教本があるから譲ってあげる。きっと役に立つわ!」

 

 ドサドサッ、と魔法屋は俺の前に大量の本を積み重ねていく。

 これは…読めはしないが、たぶん魔法に関する知識が書かれたものだろう。表紙の絵がそれっぽく見えるから間違いない。

 だが、今の俺たちにしてみれば……正直、鈍器にしかならなそうだ。

 

「……た、助かる」

 

 だが、これは好意だ。

 無下に断ることは……俺には、できなかった。

 

 

Side:Ryuga

 

 大量の本を風呂敷に包んだオレの今のご主人―――ナオフミが、よろよろ歩いていく。

 その横を通り過ぎた人間は、やっぱりいい目をしないけど……さっきのやり取りを見た後だと、そこまで気分は悪くならなかった。

 

「……お前、本当に勇者やってんだな」

 

 思わず呟くオレに、ナオフミ達が振り向いてくる。

 な、なんだよ。見たまんまの感想を言っただけだろうが。

 

「何がだよ?」

「…に、人間の国で盾の勇者がまともにやってけるのかって思ってたけど、意外に慕わられてたからさ」

「…結果的に助けただけだ。善意じゃない」

 

 ちょっと居心地が悪くなって、目を逸らしながらオレが言うと、ナオフミもオレから目を逸らしてぶっきらぼうに答える。

 …何だ? その反応。

 悪ぶってんのか? 似合わねぇからやめとけよ。

 

「ていうか人間の国ってどういうことだ?」

「ん?」

 

 何を今更なことを……って、そういえば異世界人なんだっけ。

 そうか、ホントに何も知らないままこの世界に呼び出されてきたんだな。

 

「オレが説明する。…隣国にシルトヴェルトって国があってな、そっちじゃ盾の勇者は神様みたいに崇められてんだよ。で、この国とはメタクソに仲が悪い」

 

 そう、何かバカなのか頭いいのかわからないラビット種の女がナオフミに説明している。

 名前なんだっけ? …ああ、セントだっけ。

 そいつの説明で、ナオフミはより一層険しい顔で頬をヒクつかせだした。

 

「……宗教的な敵ってわけか、俺は」

「なんだってそっちに召喚されなかったんだろうな?」

 

 セントの言葉に、オレも同意する。

 亜人に信仰される勇者が人間の国に召喚されれば、敵視する奴がいてもおかしくない……バカな奴が多いからな。

 何だって伝説の盾はこの国に現れちまったんだか、本気でナオフミに同情する。

 でもナオフミは…それでも諦めないでここにいるんだよな。

 

「そんな国でちゃんとやれてんだから…大したもんだと思うぞ」

 

 ずっと檻の中で暴れてただけのオレとは違う……必死に戦って、敵ばかりの国の中でちゃんと味方を作ってる。

 それに比べてオレは……何ができるんだろうか。

 その時、考えこんでいたオレの首に、なんか馴れ馴れしく手が回されてきた。

 

「な〜に落ち込んでるんだよリュウガちゃん。自分と比較しちゃったわけ? 不幸自慢してるわけじゃないんだから気にすんなって」

「あぁ?」

 

 何言ってんだこのバカは。

 何だそのニヤケ面は。おいやめろ、なんか無性に殴りたくなるぞこの顔。

 

「『自分だって悲惨な目に遭ってるのに、それでも前を向こうとしてるこいつに比べていまのオレは一体…!』みたいなこと考えてるぽかったぞ」

「違うわ! ふざけんな!」

「そういうのマジでめんどくさいからやめといたほうがいいぞ。気楽に行けよ気楽に」

「だから違うっつってんだろうが!!」

 

 オレがそんな卑屈なこと考えるわけねぇだろ!

 くっつくな! ぶっとばすぞこのバカウサギ!!

 思わず手が出そうになったオレだったが、それより先にナオフミがギロッと鋭い目を向けてきた。

 

「もうやめれ」

「あだだだだだ!! ちょ、なんでオレだけ!?」

「ツッコミがわりだ。ちょっと黙れ」

「ひどくない!?」

 

 バチバチとセントの胸で紫色の電流が走っている。

 ああ、奴隷紋を発動させてんのか。ていうかそれ、ツッコミに使って大丈夫なのか?

 ……何だろう、悩んでたオレがバカらしくなってきた。

 

「…こんなんで本当に大丈夫なのかよ」

「が、がんばりましょう!」

 

 そう言って、もう一人の奴隷であるラクーン種の女が話しかけてくる。

 ああ、その通りなんだけどさ……先にいっこだけ言わせてくれ。

 

「ところでお前、誰?」

「いまさらですか!?」

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