Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜   作:春風駘蕩

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とばっちりレース

Side:Naofumi

 

「勝負は私たちのドラゴンと、罪人勇者の鳥とのレースで決めることとします!」

「おい、何勝手なこと言ってんだ!」

 

 謎の黒装束軍団が現れて、ビッチが見たことない顔になったと思ったら、そんなふざけたとを言われた。

 ふざけるな! なんでそんなもんに付き合わなければならない!

 

「お願いします勇者様! このお礼は必ずいたしますから…」

「断る! なんでそんな面倒なものに巻き込まれねばならないんだ!」

 

 ここの連中には世話になったが、それはそれこれはこれだ。

 ただでさえビッチと関わるとろくなことがないってのに!

 ん? セント、なぜお前がしゃしゃり出てくる?

 

「じゃあオレが代わろうか?」

 

 …それはつまり、自分がレースに出ると?

 何言ってんだお前、自分から面倒ごとに首突っ込む気か?

 

「代わるって……お前がフィーロに乗るのか?」

「うんにゃ、乗り物は自前で用意する」

 

 そう言ってセントは懐から何か……ものすごく見覚えのあるものを取り出した。

 おい、それ……スマホだろ。スマホだよな!?

 

【ビルドチェンジ!】

 

 固まるオレに構わず、セントはそのスマホらしきものにフルボトルを一本挿して、放り投げる。

 地面に落ちる前にスマホは変形し、しかも見る見るうちに巨大化して。

 一台のバイクになった……ってウソだろおい!?

 

「なにぃ!?」

「うはははは! これぞオレの新たな発明! マシンビルダー!」

 

 いやいやちょっと待て!

 バイクて! バイクて!

 スマホだけでも違和感満載なのになんてもの作ってやがるんだお前は!?

 

「い、いいな〜! かっけぇ!」

「いやせめて世界観守れよ! スマホとかバイクとか!」

「世界観? なにそれ食えるの?」

 

 なんか元康が興奮してるが関係ない!

 やめろそのキョトン顔! 絶対わざとだろ!

 そして案の定、バイクを見たビッチがまた騒ぎ始めた。

 

「そんなものの使用なんて認められるわけないじゃないの! 邪魔するのなら引っ込んでなさい!」

「えぇ〜!? せっかく作ったのに〜!」

 

 ビッチに即座に却下されて、セントが唇を尖らせる。

 くっ……確かにあれなら有利そうだしな、向こうの強引さを理由に使ったほうが良かったか?

 

「いいじゃないかマイン、ちょうどいいハンデになりそうだぜ?」

 

 だがそこに、見下した感じで元康が割って入ってくる。

 そのままうちのフィーロの方に近づいてきてボフボフと無遠慮に羽毛を叩き始めた。

 ……あ、なんかいい予感。

 

「あんな色が混ざった鳥がうちの騎竜に勝てるわけないって! 思いっきり安物だな、安物!!」

 

 そう言って笑う元康は。

 

 次の瞬間、股間をフィーロに思いっきり蹴り飛ばされ、天高く打ち上げられた。

 

「も、モトヤス様!?」

 

 一瞬の間の後に、吹っ飛んでいく元康をビッチが追いかけていく。

 ヒュルル……と墜落していく元康を見送っていた俺は、思わずセントやリュウガと目を見合わせる。

 そして全員で、満面の笑顔になってハイタッチを交わした。

 

「「「イェ〜イ!!!」」」

「グア〜!!」

「皆さん! 喜ばないでくださいよ! フィーロまで!」

 

 フィーロも同じ気持ちなのか、元気よく鳴く。

 ハハッ! 最近の鬱憤がちょっと晴れた気がするぞ! お前は最高だよフィーロ!!

 

「セント、手を出すなよ。あいつらには俺とフィーロが勝つ!」

「その方が良さそうだな。よし、任せた!」

「はぁ…どうしてこうなるのでしょうか」

「いいじゃねぇか、あれはかなりスッとしたぜ!」

 

 いい気分になったついでに、勝負とやらにもやる気が出てきた。

 フィーロもすでにやる気十分のようだしな。どうせならコテンパンに負かしてやる!

 ラフタリアもため息をつきながら、仕方ないと頷いていた。

 

「フィーロ、ナオフミ様のことをよろしくね」

「グア!」

「いっけ〜! ナオフミ〜!!」

「やってやれ盾の勇者ァ!!」

 

 セントとリュウガからもエールが起こり、村人からも声援が送られてくる。

 完全に向こうがアウェーだな。また気分が良くなってきた。

 よろよろと戻ってきた元康とともに、村人が用意した線の間に並ぶ。コースは……一本道だから間違いようもないな。

 

「村の全体を先に三周した方が勝ちとします」

「んじゃ、スタートの合図はオレから…」

 

 またセントがしゃしゃり出てきて、例のドリルを取り出して……って。

 おい、まさかそれ銃にもなるのか?

 こんなのが初披露でいいのか? …お前がそれでいいならいいけどさ。

 

「レディ〜……ゴー!!」

 

 俺たちが構えると、セントが構えた銃が爆音を鳴らす。

 そして俺とフィーロは……初っ端からものすごいスピードで走り始めた。

 さぁ! やるからには勝ってやろうじゃないか!

 

「……ラフタリアちゃん、ここ任せるわ」

「え?」

 

 俺たちが出発した後、そんな会話があったことなど、俺は気づかなかった。

 

 

Side:Sento

 

 ナオフミと槍の勇者が出た後、オレはこっそりとマシンビルダーに乗って後を追いかけた。

 理由? そんなのもちろん……あのクズどもの妨害のためだよ。

 

「力の根源たる我が命じる。真理を今一度読み解き、大地に…」

「おい」

「なっ……お、お前は!?」

 

 コースを見守るために配置された兵士の後ろに寄り、オレが声をかける。

 なんかの細工をしようとしていたそいつは慌てて振り向き、オレに剣を構えてくる。

 が、その間にコースをナオフミがさっさと通り抜けていった。

 うん、狙い通り!

 

「し、しまった!」

「直接手ぇ出したら変な邪推されそうだから、このくらいで勘弁してやるよ。じゃあな」

 

 慌てて戻ろうとした兵士を放置し、オレは次の兵士が立っているところを目指す。

 やれやれ……後何人いたっけ? 一人目なのにもう面倒くさくなってきたぞ。

 

「チッ…王女もクズなら兵士もクズだな、この国は」

 

 どうせあのクソ女の差し金だろうけど、従う方も従う方だ。

 兵士の誇りとかそういうのはないのか!

 ああもう! 森の中走りにくい!

 なんとか次のポイントに向かうけど、そこでは明らかに様子のおかしいフィーロの姿が見えた。

 

「ヤッベ! 間に合わなかったか!?」

 

 あれは多分、力を弱めさせる類の魔法だな。逆に向こうの騎竜はパワーアップしてる。

 あ、尻尾で殴られた。竜のくせにやることセコいなおい!

 でもフィーロちゃんは怯まず、最初の時よりも力強い走りで後を追いかけていった。

 

「…あの子、根性あるなぁ」

 

 ちょっと驚いた。

 このまま妨害とか、証拠映像残したりとか色々やろうと思ってたけど、なんかあれ見てたら野暮に思えてきた。

 

「あんまり手を出すのもアレか」

 

 オレが考えてるうちに、レースは終盤へさしかかってくる。

 なおも続いていた妨害に苦しめられたあいつらだけど、かなり巻き返しているのが見えた。

 いけいけ〜! あとちょっと〜!!

 そんなオレの願いが通じたのか、ナオフミとフィーロは圧倒的な差をつけて、ゴールを超えていった。

 

「よっしゃあああああ!!」

 

 思わずその場で、オレは拳を掲げて吠えていた。

 ざまぁ!!

 

 

「あの穴は不正の証拠として抑えました。勝負は盾の勇者様の勝ち、領主は引き続きあの方に任せるということで…」

「やりなおしよ! こんなのおかしいわ!」

「どこがだよ…」

 

 明らかに正当な勝負で勝ったのに、クソ女がギャーギャー喚いている。

 なんかもう……見苦しい。なんでああも醜態を晒せるの、あの女。

 

「あの穴だって、盾の勇者がやったことに決まってるわ! 絶対認めない! こんな勝負無効よ無効!」

「彼らは我々が連行します」

「おう、よろしく〜」

 

 向こうの言い分なんぞ関係ねぇ、と黒装束たちが去っていく。

 味方、でいいのかな? 謎ばっかだけどそう思いたいな。

 ん? なんだよ槍の勇者、あんたもなんか文句あんの?

 

「今回は引き下がるが、次は負けないからな」

「あっそ、さっさといけよ」

「せいぜい首を洗って待っておけ!」

 

 ああ、単に負け惜しみを言いたかっただけか。

 こいつは今回、そう腹が立ったわけじゃないけど……こういう態度ならなんか意趣返しをしておきたいな。

 あ、リュウガが忍び足で近づいていく。

 

「おい、後ろにフィーロがいるぞ」

「ひぃっ!!」

 

 ビクッ、と震え上がった槍の勇者が、内股になりながら逃げていく。

 なんとも滑稽な格好の円柱が引き上げていくのを見て、リュウガがものすごく清々しそうな笑みを浮かべてるのが見えた。

 ……あいつの気も、これでちょっとは晴れたかな。

 

 

Side:Raphtalia

 

「まったく、どこ行っても迷惑かけやがるあいつら…!」

「本当ですね…」

 

 いなくなった槍の勇者様や兵士の方々のことを思い出し、ナオフミ様がため息をつきます。

 本当に…どうしてこうナオフミ様を苦しめるのでしょうか。

 

「ああ、本当にありがとうございます!」

「そういうのはもうはいい……で、礼のことだが」

 

 慌ててお礼を言いに来る村長さんに、ナオフミ様が切り出します。

 ああ、そうでした……レースに応じたのはそれが理由の一つでしたね。

 ですがナオフミ様は、村長さんに思いがけない答えを返しました。

 

「言っておくが金は求めない。復興費を削ったらあいつらと大差ないからな、他の価値があるものをよこせ」

 

 ナオフミ様の言葉に、私は少し驚きます。ですが、すぐに安堵の笑みがこぼれました。

 やっぱりこのかたは優しい方です。口調は厳しくても、人のためにどこまでも思いやれる真の勇者様です。

 セントさんもリュウガちゃんも、私と同じように笑っていました。

 

「…でしたら、こういうものはどうでしょう?」

 

 そんなナオフミ様に、村長さんがある提案をしました。

 

「俺が…行商を?」

「ええ、聞けば勇者様は薬や素材を売っておられるとか。通商の手形を発行しますので、基本的にはどこの村でも商売ができるようになります。幸い勇者様には健脚のフィロリアルがいますし、時間はかかりますが馬車もご用意します。今よりも楽に稼げるようになると思いますよ」

「なるほど……今まで生産側だったのが販売側にも回れるってことか」

 

 これは…ナオフミ様にはうってつけの報酬かもしれません。

 今まではどうしても、ナオフミ様の噂を知っていても迫害しない限られた方にしか売れなかった商品が、自分の手で販売できるようになるのですから。

 それを聞いたナオフミ様はやがて、ニヤリと笑って答えました。

 

「なら、それをもらおう」

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