Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜   作:春風駘蕩

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自称天才

「さいっあくだ……よりによって盾の勇者が最初に見つかるなんて」

 

 草原での戦闘を終え、近くの村に向かう。

 さっき出会った目つきの悪い男の人と奴隷らしい亜人の女の子。

 聞けばなんと、男の方はなるべく会いたくなかった盾の勇者っていうじゃないの。

 ついてねぇ…。

 

「だったらさっさとよそに行けばいいだろう。なんでついてきてんだ」

「えっとー…なりゆき?」

 

 スッゲェムカついてる顔で睨んでくる。

 …うん、まぁいきなり最悪だとか言われたら誰だって腹も立つか。

 反省!

 

「オレ、この国に知り合いとかいないしさ。できることならどっかのパーティーとかに入れて欲しかったんだけど……それも難しそうでさ」

「あっそ」

 

 呆れた目で見られて、ちょっと落ち込む。

 しょうがないじゃんか、亜人ってだけで店に入っても嫌な顔されるし、この辺にいる冒険者とかって人間ばっかなんだし。

 生きづらいんだよ、オレにとってこの世界は……やれやれ。

 

「……ま、いいや。とりあえずその盾調べさせて♪」

「はぁ!?」

 

 暗い話はこの辺にしてとにかく突撃!

 ずっと待ち焦がれていたものを目の前にしてガマンできる科学者がいるだろうか、いやいない!

 ああ…ついに一目見たかった聖武器がこの手に!

 

「こ、これはオレが知ってるどの金属にも当てはまらない…いやそもそもこれは金属なのか? 無機物には違いないが単純な一元素では構成されていないのかなるほど!」

「気色悪い! 離れろ!!」

 

 よだれを垂らして聖武器にへばりついていると、力尽くで振り払われてしまった。

 おっと、また我を忘れて理性を飛ばしてしまったようだな……だがこんなことでくじけるオレじゃない!

 このためにどれだけ旅を続けて、ひもじい思いをしてきたことか!

 

「いいじゃんか〜調べさせてくれよぉ。四聖勇者に会う機会なんてそうそうないんだからさ」

「だったら他の勇者のところに行けよ! うっとうしい!」

「そんな固いこと言うなよ」

 

 ちっ、ついに近づくこともさせてくれなくなっちゃったか。

 本当にこいつ、人間不信なんだな。…自分で罪を犯したわりには、なんかこう、やさぐれてるような。

 ……今後のプランを変えてみるか。

 

「あんた、噂で聞くところじゃ防御力はピカイチでも、攻撃力に難があるんだろ? その子と一緒にいるのを見るに」

「…それがなんだってんだ」

「オレをメンバーとして雇わない?」

 

 噂を信じていたオレは、それが全くの間違いだったことに気づく。

 少なくとも話してみて、獣慾に任せて仲間を襲うような輩じゃなさそうだと言うのがわかった。

 噂は噂ってことだな、うん。

 もっかい反省! そんで、お詫びのつもりで売り込み!

 

「さっき見たとおり、オレは戦闘に関しちゃかなりの自信がある。報酬は……食事とか生活の保障とその盾を見せてくれる、ってのでどうよ?」

 

 オレの提案に、盾の勇者は明らかに胡散臭そうにオレを見てきた。

 …まぁ、確かにいきなり初対面の相手にこんなこと言われても戸惑うだろうけどよ。

 もうちょっと隠す努力しようぜ?

 

「信用できるか…」

「頭固いなー。そこを押して頼んでるんだよ」

 

 うーむ、これはちょっと時間がかかるか?

 このまま交渉を続けるか、それともさっさと諦めて別の勇者を探すか。

 オレが悩んでいると、盾の勇者の後ろに隠れていた亜人の女の子が、不安げにオレと盾の勇者を見上げてきた。

 

「……ご主人様と、一緒に戦うんですか…?」

 

 んんん?

 この子は一体何に怯えてるんだ? 味方が増えるならむしろ安心しそうなものを…。

 オレがそう思っていると、急速に女の子の目に涙が溢れ、ボロボロこぼし始めた!?

 

「わ、私…捨てられちゃうんですか…!?」

「わーわーわー! ごめん!君を邪魔者扱いしたいわけじゃないんだよ! 普通にいてくれていいからさ! ね?」

 

 ヤッベェ泣かしちゃったよ!

 確かにオレみたいな強い奴が入ったら、まだ弱い奴隷のこの子は用なしと思われても仕方ない。

 でもそう思っちゃうのはちょっとネガティブなんじゃなかろうか?

 んー…これはオレの目的を省いても心配になってくるな。

 奴隷のこの子も……敵意丸出しのあいつも。

 しゃーない、こっちの路線で行くか。

 

「…この子、まだ幼いだろ? オレが仲間になれば、この子が強くなるまで余裕ができると思うんだ。無茶とかさせたくないだろ?」

 

 それっぽい理由をつけて、どうにか動向を認めてもらう!

 泣き出してしまった女の子を撫でながらそう提案するものの、盾の勇者は以前とオレを睨んだまま頷きもしない。

 

「…あーもーマジで頭固いなー」

 

 これは本気で長期戦になりそうだ。

 そう覚悟していたオレをよそに、何か考え込んでいたらしいたての勇者がようやく口を開いた。

 

「そもそもお前、何者だ? 何だあの妙な力は。あれだけ戦える奴がいるなら、勇者なんていなくてもいいだろう」

「あー、うん。そこからね…」

 

 そっちかー、気になるのはそっちからかー。

 そういやぁ、別の世界から召喚されてきたんだっけ? オレみたいな強い奴がいるなら、確かに波にも対抗出来るだろう。

 だったら召喚なんかするなって、苛立ってもおかしくはないか。

 でもなー、国の意向とオレの正義は別物だから、ぶっちゃけその怒りは冤罪なんだよなー。

 ……よし、じゃあ自己紹介だけでもしっかりやっとくか。

 

「さっき言った通り、オレの名前はセント。魔導科学者だ! ……多分」

「「多分⁉︎」」

「いやはや……お恥ずかしい話なんだが」

 

 しまった…喜び勇んで名乗り始めといて忘れてた。

 潔白を証明する以前にオレ、自分の存在すらあやふやなんだった。

 

「オレ、俗にいう記憶喪失って奴でして」

 

 オレがそう言うと、盾の勇者も奴隷の女の子も二人とも唖然とした様子で固まっちゃった。

 うん、気持ちはわかるけど最後まで聞いて?

 

「こう、言葉とか知識とかはちゃんと覚えてるんだけどさ? 自分の名前とかどこから来たのかとかは全然思い出せなくってさ……まいっちゃうよね全く。はっはっは」

「…………」

「無言でジト目はやめてほしいなー」

 

 疑いの視線を向けていた盾の勇者が、なんかこう、冷めた目でオレをじっと見つめてくる。

 あ、やめて。

 そんな目で見ないで、なんか目覚めそう。

 ……いかん、何か開いちゃいけない扉を開きそうだ。

 

「あー、じゃあさ⁉︎ どうやったら連れてってくれる? ラフタリアちゃんはいいの⁉︎」

「ラフタリアは俺の奴隷だ。嘘をつかない、裏切らない、そういう命令が下せるように設定している。だからそばに置いている」

 

 あー、そういう関係か。

 まぁ、世界の全てが敵みたいな目をしてるこいつにとっては、それぐらいじゃないと味方と認識できないのか。

 難儀な奴だ……って、そういうことだったら。

 

「じゃあ、オレもなるよ。奴隷」

「……は?」

 

 オレが自分を指差してそう言うと、盾の勇者はまたあっけに取られたように口を開いて固まった。

 うん、オレも自分で変なこと言ってる自覚はあるよ。

 でもさ、これが俗に言う誠意ってやつじゃないの?

 

「あんたはさ、裏切られたくないから、奴隷のその子以外連れて行きたくないんだろ? だったらオレもなるよ? 嘘もつかないし裏切らない、あんたが唯一信用できる奴隷に」

「……お前、正気か?」

「冗談でこんなこと言わないって」

 

 疑わしげに見つめてくる盾の勇者に、オレも真正面からじっと見つめ返す。

 確かに自分から奴隷になるなんておかしな話だけど、オレの目的のためならこっちの方が早いし、特に問題もないんだよね。

 盾の勇者は長いことオレと見つめあっていたけど、やがて深いため息をついて目を背けた。

 

「……いいだろう。しばらく様子を見てやる。使い物にならないときは容赦無く置いて行くぞ」

「よしきた!」

 

 話が早くて助かるよ。

 それにこう……仲間意識じゃなくて純粋な仕事相手と思ってくれるのもやりやすそうだ。

 

「あらためて、流浪の傭兵兼魔導科学者のセントだ。よろしく!」

「…盾の勇者、岩谷尚文だ」

「ラ、ラフタリア…です」

 

 オレのノリノリの名乗りに、盾の勇者ことナオフミと奴隷のラフタリアちゃんも名乗ってくれる。

 さてさて、楽しくなってきたじゃありませんか!

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