Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜   作:春風駘蕩

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魔法の服

Side:Raphtalia

 

「おやっさあああああああああん!!」

 

 私達の前を、ナオフミ様とセントさんがものすごい速さで走ります。そして、武器屋の親父さんの店に思い切り飛び込みました。

 お二人とも…! お気持ちはわかりますが落ち着いて下さい!

 

「なんだよセントの嬢ちゃん…俺はこれから晩飯だってのに」

「取り込み中ごめん! でもむっちゃ大事な用があるから!!」

 

 セントさんが謝りながら、リュウガちゃんとナオフミ様が抱えたその子を見せます。

 ナオフミ様のマントでくるんで肌を隠した、金の髪と青い瞳を持つ女の子を。

 

「…うっす」

「ごしゅじんさま、このおじさんだぁれ〜?」

 

 少し居心地悪そうにリュウガちゃんは会釈し、金髪の女の子は親父さんを指さして首を傾げます。

 …そのしぐさにはとても見覚えがあります。ですが、この子がそうだとはいまだに信じられません。

 

「ちょっと黙ってろ…!」

「アンちゃん…いい奴隷が手に入ったからって自慢すんなよな」

「違うっての!!」

 

 親父さんが呆れますが、すかさずナオフミ様が否定します。

 すると、あの子がクンクンと鼻を鳴らし、親父さんが持っていたサンドイッチに興味を示し始めました。

 

「それごはん〜?」

「ん? 一口食うかい?」

「いいの!? わぁ〜い!」

「いやあの…やめたほうがいいと思うんだが」

「いやぁ、子供一口くらい構わねぇよ」

 

あの…本当にやめた方が。

 そう止めようとしましたが、親父さんはあの娘にサンドイッチを差し出します、そして。

 

「いっただっきま〜す!」

 

 ボフンッと音を立てて、あの子…フィーロが煙に包まれます。

 そして一瞬にして一回りも二回りも大きくなり…フィロリアルクイーンの姿に変わり、親父さんの晩御飯をぺろりと平らげてしまいました。

 

「ん〜、味はイマイチ〜」

「…だから言ったのに」

「…すまん親父。あとで何か奢らせてくれ」

 

 絶句する親父さんに、ナオフミ様とセントさんが頭を下げます。

 そうですよね、いきなりこんなものを見せられたらこんな反応にもなりますよね。私達も正直まだ、自分の正気を疑っているんです。

 

「こ、これは一体どういう…!?」

「…話せば長くなるんだが」

 

 わなわなと目を見開く親父さんに、ナオフミ様が一から説明していきます。

 魔物のくじで買ったフィロリアルが特殊な育ち方をし、挙句に翼の生えた女の子の姿に変身するようになったこと。

 同時に、新たに奴隷として加わったリュウガちゃんの事も説明なさいました。

 そこまで聞いて親父さんは、ナオフミ様にひどく疑問に満ちた目を向けました。

 

「…それでなんで俺の店に?」

「変身しても破けない服とかはないか!?」

「縫っても縫ってもこの子簡単に破っちゃうんだよ!!」

「ナオフミ、セント、ここ武器屋」

 

 焦った様子で尋ねるお二人に、呆れた様子のリュウガちゃんが指摘を入れます。途中まで私も忘れてましたが、相談するお店を間違っていますね…。

 と思いましたが、親父さんは呆れながらも何か考えて下さいました。

 

「流石にウチの店にはねぇが……そういうのに心当たりありそうなやつなら知ってるぜ」

 

 

「そうねぇ…あるわよ、そういうの」

 

 親父さんの紹介で、私達は再び魔法屋のおばあさんの元を訪ねました。

 なるほど……そういう特殊な品なら、確かに魔法の出番です。

 

「自分の魔力を糸にして服を作るの。そうすれば変身したときに自分の体内に魔力が戻るから、破いたりしないわ」

「へぇ…そういうのがあるのか」

 

 私達のパーティーには、まだ魔法が使える者はあまりいません。

 セントさんも知識があり、ご自分の発明に使ってはいますが、分野が違うのか今回は役に立たないとのことでした。

 

「服飾については、近くにそういう店があるからそこに任せようぜ。顔見知りなんだ」

「ならそいつを頼るか…」

 

 そう言えば、私が急成長した際にお世話になったお店がありましたね。セントさんに連れて行ってもらったのを覚えています。

 ですが魔法屋さんは、お店の奥の方を見やって難しそうな顔を見せました。

 

「ただねぇ…糸を作るのに必要な道具が壊れててねぇ」

「…ああ、あれ?」

「そう、一番重要な宝石が割れちゃったの」

 

 魔法屋さんはそう言って、お店の奥においてある糸車を見せます。

 糸を集める輪の中心に、確かに割れた宝石が嵌っているのが見えます。以前の波の騒動のせいだそうです。

 

「今すぐには手に入らないのか?」

「少し離れたところにある洞窟で採れるんだけど、最近魔物が住み着いたって噂でね」

「…こないだの坑道みたいな感じか」

 

 以前はそうではなかったのが、波の影響で気軽に行けなくなってしまったという事ですね。

 それを聞くと、セントさんの顔がやる気に満ち溢れました。

 

「うっし、ならちゃっちゃと行って採ってくるか!」

 

 はい! 何故かフィーロも魔物の姿に戻ってくれなくなりましたし、女の子をいつまでも裸のままにはさせておけませんしね!

 いろんな意味で!!

 

 

Side:Sento

 

「おぇえええ…!」

 

 オレの目の前で、ラフタリアちゃんが吐き気を催して呻き声をあげている。今にも、美少女がとんでもない無様を晒しそうだ。

 途中まで我慢してたけど、やっぱ無理だったか……フィーロちゃん、思い切り馬車をかっ飛ばしてたからな。

 

「とうとうダウンしちゃったかー、めったくそに揺れたもんなー」

「ず、ずびばぜん…」

 

 かくいうオレも若干気分が悪い。魔法屋もちょっと苦しそう。

 で、なんでかナオフミは平然としてんだよな。どういう体質なんだ? 勇者としての力か?

 今度調べよ。

 

「しょうがない。オレたちだけで行くか」

「ああ、意外に狭そうだし、多人数で行く必要もないだろう」

「い、いえ! 私も一緒に…!」

 

 馬車に二人を置いて行こうとしたら、ラフタリアちゃんが慌てて起き上がろうとする。

 おい、やめとけ。リバースすっから、オレたちも迷惑だから。

 

「その状態で来られても足手まといだ。いいから休んでおけ」

「はい……うぷ」

 

 がっくりと項垂れて、ラフタリアちゃんが素直に引っ込む。

 さて、じゃあオレらは先に……ってどうしたリュウガ? 来ねぇのか?

 

「……流石に気の毒だから残ってる」

「そうか。じゃあ頼む」

「……おう」

 

 そう言うと、リュウガは幌の中に引っ込んでいった。多分、ラフタリアちゃんの背中でも摩ってやってんだろう。

 二人を置いて、オレ達は目的の場所へと向かった。

 

 

 

「わー! あー!」

 

 例の洞窟の中に入ると、響く音がおもしろいのかフィーロちゃんが声を上げて遊んでいる。ちなみに、馬車を引く際に魔物姿に戻ってくれた。

 

「ごしゅじんさまー、ここすっごくこえがひびくよ〜」

「あー、そうだな」

 

 …おいナオフミ、正体はともかく小さな女の子なのは確かなんだから、ちゃんと相手してやれよ。

 だがナオフミは、この妙に造りがしっかりした通路の方が気になるらしい。

 

「ここってなんの遺跡なんだ?」

「大昔の錬金術師が使っていたそうよ。危険なものも多いんだって」

「ふーん…」

 

 大昔の科学者か……会えるもんなら話をしてみたかったな。

 ん? なんか通路の途中に妙な空間が……って、あ。

 

「…あ、もしかしてあれが発明ってやつ?」

 

 何かへんな部屋ができていて、その真ん中に台座が置かれてる。

 そんでその上に……空っぽの宝箱みたいなのが置かれていた。

 

「空だな」

「もうすでに盗掘されたってことだろう」

「なんでぇ」

 

 見て見たかったのにと思うけど、先を越されたんなら仕方ない。

 あ、隣になんか注意書きみたいなのが残ってる。…小難しい書き方されてるけど、これは要するに気軽に手を出すなって意味だな。

 

「……触らぬ神に祟りなしってあれだな。さっさと行っちまおう」

「ああ」

「そうね」

「はーい」

 

 たいして気に止めることもなく、オレ達はその部屋を後にする。

 そんでまた暗い道をしばらく進んでた時だった。

 

 その声が聞こえてきたのは。

 

「しかし本当に暗いな…」

『そうだな…ここならお前を始末しても誰も気づかない』

 

 ふっ、とオレ達が持っていた松明が急に消える。

 そして次の瞬間、オレの肩にザクっと小さな何かが突き刺さる感触がした。

 

「なんだぁ!?」

『馬鹿なウサギ…俺が本気でお前を仲間だと思うわけねぇだろ』

「あぁん!?」

 

 暗闇の中で、悪意に満ちた声が聞こえてくる。

 これは……ナオフミの声!?

 

『今のお前なら、結構な金になりそうだよなぁ!』

 

 真っ暗闇の中で、オレを嘲笑う声とともにひゅっと何かが近づいてくる音がする。

 ……なるほど。なるほどなるほど。

 

「うるせぇ!!」

 

 オレは思い切り怒鳴りながら、近付いてくる何かを思い切り蹴り飛ばす。

 思った通りナオフミじゃない。ナオフミにしては小さすぎるし、声も微妙に違う!!

 本物の気配は…こっちだ!

 

「ナオフミ、大丈夫か!?」

「セントか! そっちにいたのか…」

「その様子じゃ、お前も嫌なもん見せられてたみたいだな」

 

 ものすげぇげんなりした顔してる…おい、そっちでオレは何言ってた?

 すっげぇ気になるけど、聞いたら聞いたですっげぇ気分悪くなりそうだな。

 

「やはりこれは…」

「やー! ごしゅじんさま、フィーロのこと捨てないでー!!」

「ぶっ!」

 

 あ、フィーロちゃんが泣きながらナオフミに抱きついた。そんでナオフミがもふもふの中に捕まった。

 何? お前はいくらで売れるかなって言われた?

 流石にナオフミはそんな事言わないだろ……言わないよね、うん。

 

「待ってて…『ファスト・アンチバインド』!」

 

 すると、魔法屋が魔法を使って、オレたちを襲っていた暗闇を吹き飛ばした。

 そんでその後には、何体もの魔物が表れて右往左往し始めた。全部なんか、音に関わりそうな器官が生えてる種類の奴だ。

 

「コイツらの仕業か…!」

「ここの魔物は人の声をマネて、疑心暗鬼に陥らせるのよ。よく引っかからなかったわね」

「…昔のゲームに似たような展開があってな」

「むー! ご主人様に捨てられるかもってホントに怖かったのに!」

 

 騙されてたことを知って、フィーロちゃんが憤り始めた。

 いいぞ…オレもイヤなこといっぱい聞かされたから、一緒に暴れてやろうぜ!

 

「いっけー、フィーロちゃん! 片っ端から狩り尽くしてやれ!!」

「おー!!」

「素材の分は残しておけよー」

「「はーい!」」

 

 この後めちゃくちゃ魔物狩りした!

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