Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜   作:春風駘蕩

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洞窟の魔物

Side:Filo

 

 フィーロだよ!

 ごしゅじんさまの声でいっぱいいじわるなこと言ってきた敵をやっつけて、大まんぞく!

 でもいっぱいうごいたから、すっごいおなかすいたよ。

 

「解放できる盾は……あまり役に立ちそうにないな」

 

 ごしゅじんさまはやっつけた魔物をあのふしぎな盾にすいこませて、むずかしそうな顔してる。ああやってつよくなるんだって。

 …もういっこくらいは、食べてもいいよね?

 

「オレは新しいボトルゲット〜♪」

「それは…マイクか? 見た感じコイツらメガホンとか拡声器っぽいんだけどな」

「音に関する力ってことだろ。はやく試してみたいな〜」

 

 お耳が長い、セントお姉ちゃんもふしぎな入れ物をもってはしゃいでる。

 中にジュースみたいなのが入ってて、フィーロにはすごくおいしそうに見える。でもそれ言ったらにげられちゃった。

 ちょっとショボーンってしてたら、何かきこえてきた。

 

「ごしゅじんさまー、なにかあっちにいるよ?」

「ん? どれどれ?」

 

 むー、ごしゅじんさまに言ったのにどうしてセントお姉ちゃんが出てくるのー!?

 フィーロがもんくを言ってるうちに、ごしゅじんさまはその音がしたほうに歩いてく。それで、洞くつのおくに何かがいるのを見つけたよ。

 

「あれは…ヌエね」

「ヌエ?」

「東方に生息しているキメラの一種よ。どうしてこんなところに…」

「この間の波で紛れてきたとか…?」

 

 何かへんな、いろんな魔物がくっついてるみたいな魔物を見つけて、ごしゅじんさまたちがむずかしそうなこと話してる。

 そんなことしてるばあいじゃないと思うけどなー。

 しょーがない、フィーロががんばっちゃうぞ!

 

「見た感じレベルも高そうだし、できれば避けて行きたいが…」

「とー!」

 

 ごしゅじんさまにかわって、フィーロがあの魔物をけりに行く。

 でもすぐによけられて、ものすごくうなられた。むー!

 

「フィーロちゃん!?」

「あのバカ!!」

 

 ごしゅじんさまとセントお姉ちゃんがあわててフィーロのところにくる。

 そしたら、ヌエって言われてた魔物がさっきよりすごく吠えだした。

 わっ! なんかバチバチしだしたよ!

 

「キシャアアア!!」

「下がれ、フィーロ!」

 

 ごしゅじんさまに言われて、フィーロは後ろに下がった。

 そしたらあの魔物、バチバチって音をたててすっごいピカピカしだしたの。びっくりした!

 

「変身!」

鋼のムーンサルトラビットタンク! イェイ!】

 

 セントお姉ちゃんがそう言って何かぐるぐるすると、へんな声がきこえて赤色と青色の変な格好になっちゃった。

 わー、なんかすっごーい!

 

「まったく…! お前のせいで気づかれただろうが!」

「えー? でもあいつ、ずっと前から聞こえてたみたいだよ?」

「なに?」

 

 ずっとあっちむいてたけど、ごしゅじんさまたちには気がついてたみたい。

 それでごしゅじんさまが近づいてくるのをまってたみたいだったよ?

 

「ここってすごく音が響くしー、あいつすごく耳がいいみたいだから!」

「そんなことわかるのか…?」

「まぁ…同じ魔物だから通じるものがあるのかもな」

 

 フィーロがはなしたら、ごしゅじんさまもセントお姉ちゃんも、おばさんもまたはなしはじめちゃった。

 むー、なかまはずれはやー!

 

「だったら作戦は決まりだな」

「ああ…とびきりでかいのを食らわせてやる」

 

 セントお姉ちゃんがそう言って、さっきとはちがう入れ物をもってシャカシャカふりだした。

 またちがう色の格好になるのかな?

 

「新しい組み合わせ、試してみるか!」

ドッグ!】【マイク!

 

 フィーロずっと思ってたんだけど、この声の人だれだろう?

 でもだれもフィーロのぎもんにこたえてくれなくて、お姉ちゃんはまたぐるぐるやりはじめた。

 

【ベストマッチ!】

「都合よすぎだろ!」

「きたきたきた〜!!」

 

 こうふんしたお姉ちゃんがぐるぐるをつづけると、お姉ちゃんのまわりにいっぱい柱みたいなのができてく。

 そんでさっきみたいに、ちがう色の服みたいなのがつくられた。

 

【Are you ready?】

「ビルドアップ!」

癒しの 大爆音ドッグ! マイク! イェイ!】

 

 セントお姉ちゃんがそのへんなのにはさまれて、また格好がかわる。

 ぶしゅーってけむりみたいなのが出て、さっきのおじさんの声がうるさいくらいにひびく。

 さっきからコレ、どういう意味なのかな?

 

「魔法屋! 耳をふさげ!」

「わかったわ!」

「フィーロ! コイツに向かって思いっきり叫べ!」

 

 ごしゅじんさまが耳をふさぎながら、フィーロに形がかわった盾をさしだしてくる。

 でばん? フィーロのでばん?

 

「これにー?」

「そうだ! 思いっきりだ!」

「わかったー! すぅ〜…」

 

 フィーロ、ごしゅじんさまのためならがんばるよ!

 となりでセントお姉ちゃんも、じぶんの左手にむかっていっぱいいきをすいこんでる。

 フィーロたちはがんばって、いっしょに思いきり声をだした。

 

「わあああああああああ!!!」

「わおおおおおおおおん!!!」

 

 ぐわあっ!!って、ごしゅじんさまの盾とセントお姉ちゃんの左手からすっごい音がでる。

 そしたらあの魔物、耳から血をだして苦しみだしたの。耳がよすぎてやぶけちゃったんだね!

 

「今だ!」

「『ファスト・ファイアブラスト』!」

 

 ごしゅじんさまのあいずで、おばさんが魔物に向かっておっきな火の玉をぶつける。

 フィーロもまけない! とどめはフィーロがさしちゃうもんね!

 

【Ready Go! ボルテックフィニッシュ!】

「勝利の法則は、決まった!」

「てぇええええい!!」

 

 フィーロといっしょに、セントお姉ちゃんも思いきりとぶ。お姉ちゃんはなんか、犬の形をした光をからだにくっつけてる。

 それでくろこげになった魔物に、いっちばんつよいひっさつキックをおみまいしてやったよ!!

 

「イェーイ!!」

 

 ぐちゃっ、ってちょっとイヤなかんしょくがしたけど、これで魔物はやっとやっつけた。

 思わずフィーロ、セントお姉ちゃんとハイタッチまでしちゃった。

 そしたらごしゅじんさまも、フィーロのあたまをよしよしってなでてくれたの。

 

「よくやったぞ、お前ら」

「えへへ〜」

 

 ごしゅじんさまにほめられて、フィーロすっごいいい気分!

 あとごしゅじんさまになでられると、セントお姉ちゃんやラフタリアお姉ちゃんになでられるのより気持ちいいんだよね~。

 その後なんだけど、フィーロたちはものすごくいい景色を見つけたよ。

 

「わー…」

「すっげぇ…!」

 

 そこはね、えっと…すごくキラキラしてたの。

 上を見てもどこを見てもキラキラがいっぱいで、なにも言えなくなっちゃった。

 あの魔物、こんなにいいものをひとじめしてたなんてズルーい!!

 

「…ラフタリアにも見せてやりたかったな」

「またいつか連れてくりゃいいさ」

「…そうだな」

 

 セントお姉ちゃんとそんなことをはなして、ごしゅじんさまがちょっと笑ってる。

 …よかった。ごしゅじんさまがうれしそうで。

 

 

Side:Naofumi

 

「ホラ頑張れ頑張れー」

 

 セントの応援に合わせて糸車が回り、長く輝く糸が作られていく。

 それを回し続けるフィーロは、すでに飽きた様子でつまらなそうに唇を尖らせていた。

 

「むー、これつまんなーい」

「お前の服を作るための大事な作業だ。我慢しろ」

「ぶー」

 

 仕方ないだろ、こればっかりは自分で魔力を出さなきゃならないんだから。

 だがまぁ、フィーロぐらいの幼い子供にこういう単純作業は苦痛だろう。完成するまで我慢してもらうほかにない。

 

「…あの洞窟に置かれてた箱、結局なんだったんだろうな」

「さぁな…すでに盗掘された後らしいし、調べる必要もないだろ」

「そうかねぇ…」

 

 セントが難しそうな顔をしているが、ぶっちゃけあんまり余計なものまで背負いたくない。絶対にああいうのは厄介事に巻き込まれるだろうからな。

 そんな会話をしてるうちに、フィーロが回していた糸車が止まった。

 

「あー! もーやっと終わったー!」

「はい、お疲れ様」

 

 できた糸を集め、魔法屋がフィーロを労わる。

 ふむ…あれが今後、フィーロの衣服になるのか。それまで今借りてる分をダメにしないように気をつけないとな。

 

「これで糸は十分だから、あとは裁縫屋さんのお仕事ね。それまで少し待ってて」

「どのくらいでできそうだ?」

「そうねぇ…2日か3日はかかるんじゃないかしら?」

 

 それまではお預けという事か、さてどうなることやら…。

 

 

 そして、その少しあとの事だ。

 後日訪れた裁縫屋で俺たちは、綺麗に着飾ったフィーロのお披露目をすることとなった。

 

「わぁ〜! きれーい!」

 

 喜ぶフィーロの言うように、白と青に彩られたドレスのような服は、フィーロの瞳の色と相まっていて実に似合っている。

 高い買い物にふさわしい出来だな。

 

「おお、これぞ天使って感じだな」

「可愛いですよ、フィーロ」

「ごしゅじんさま、どう? どう?」

「ああ、いいと思うぞ」

「えへへ〜」

 

 俺が褒めると、フィーロも嬉しそうに目を細める。

 その横で、目の下にぶっといクマを残した若い女……裁縫屋の主人が興奮した様子で鼻息を荒くしていた。

 

「久々に可愛い子の仕事ができて大満足でした! こちらこそありがとうございます!」

「助かったよ、ありがとう」

 

 そう言えば面識があったのか、セントが親し気に裁縫屋に感謝を伝えている。

 ラフタリアの服をしつらえてくれてたんだっけか…あとで俺からも礼を言っておかないとな。

 

「しっかし、まさか一晩で終わらせるとは……ってか大丈夫か? やつれてない?」

「インスピレーションに促されるままやっちゃいました! いまにも倒れそうですが私は決して後悔していません!!」

「そ、そうか…」

 

 なんかこう言う奴見た事あるな。どこぞのイベントの売り子とかで。

 どこの世界にもいるんだなぁ、こういう趣味に命を懸ける奴。

 

「立て替えてくれてありがとな、おやっさん」

「ま、兄ちゃん達はお得意様だからよ。これぐらい軽いもんさ」

 

 いろいろと世話を焼いてくれた親父が豪快に笑う。まったく、この世界に来てからずっと、こいつには頭が上がらないな。

 だがすぐに親父の奴、俺に若干ジト目を向けてきやがった。

 

「……それと俺の飯」

「ああ…はいはい、わかってるよ」

 

 ったく…言われなくてもわかってるっての。

 この後急遽バーベキューの用意をしたんだが、親父はぶつぶつ文句を言いつつ好評だったと、ここには記しておこう。

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