Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜 作:春風駘蕩
Side:Sento
ガタガタゴットン、馬車は行く。
始まってだいぶ経つ商人としての旅だけど、今は一人、同乗者が加わっていた。
「いやぁ…まさか神鳥様の馬車に乗せていただけるとは!」
「…神鳥?」
途中の町で乗ってきた、見るからに身なりの良さそうなおっちゃんが親しげに話しかけてくる。…聞きなれない単語とともに。
えっと…神鳥っていうからには鳥で、うちにいる鳥といえば。
「…これが?」
「ええ! 各地で奇跡を起こす神の鳥ともっぱらの噂ですよ」
「へぇ〜…」
奇跡…ああ、こないだの村とか、途中で人助けしたりとかのあれ?
ナオフミ、聖人って言われてるもんな。知らない間に噂が広まってたわけだ。
「よかったな、フィーロちゃん。神鳥って言われてるらしいぞ?」
「神の使いにしては口が悪いがな」
「あー、ひっどーい!」
ナオフミがぼそりと呟くと、フィーロちゃんが抗議の声を上げる。
そしたらおっちゃん、物すげぇびっくりした顔でフィーロちゃんを見つめ出した。
やべ、うっかり喋りかけちまった。
「なんと…! 話すことができるとは…」
「だからしゃべるなっつっただろうが!」
「やー!」
「まぁまぁ…」
ナオフミが叱るけど、フィーロちゃんは普通に嫌がる。
何でか知らないけど、ナオフミのやつは生き物が喋ってるのが妙に気に入らないみたいなんだよな。
…と、それなりに和気藹々としていたときだった。
「…全員、戦闘用意。前方に複数、敵を確認!」
「ちっ!」
オレの耳が、道の途中で息をひそめる複数の敵の音を捉える。
オレ達がすぐさま戦闘態勢に入った直後、左右の岩場から人相の悪い男達が飛び出してきた。
「おーっとそこまでぇ!」
「命が惜しけりゃ、そこのアクセサリー商と金目のもの全部差し出してもらうぜ!」
「ひぃい…!」
「テンプレな言い回ししやがって…」
これぞ盗賊!と言わんばかりの前置きをして、盗賊達がきったない武器を突きつけてくる。
なんかこう、これだけ聞くとザコっぽく思えるから不思議だよな。
そんなことを考えつつ、ベルトを取り出そうとした時、ナオフミの前にラフタリアちゃんとリュウガが突っ込んでいった。
「行きます!」
「おらぁ!」
「あっ!? おい待て! またか!?」
この間注意したばっかじゃん! 役割があるって!
実力は十分あるからか、2人とも普通に善戦してる。が、それで安心だとは言い切れないのが現実だ。
「初っ端から飛ばしすぎだぜ! 変身!」
【鋼のムーンサルト! ラビットタンク!】
オレは鎧をまとい、二人の元へ思い切り跳躍する。ついでに真下にいた盗賊の一人を蹴り飛ばしてやった。
弱い弱い! そんなもんじゃ誰もオレを止められないぞ!!
割と圧倒してたように思えたけど、ある男の登場で自体は急変した。
「はぁっ!」
「うらっ!」
「効くかよ、ふんっ!」
他より明らかに強そうな奴が、ラフタリアちゃんとリュウガの攻撃をいとも簡単に防いだ。
あいつまさか…クラスアップ済みか!
あんな奴に許可するなよ、この国の教会!!
「あいつ…妙に強いな」
「手加減は無用ってわけだ。だったら!」
【ラビット!】【電車!】
「ビルドアップ!」
オレは片方のフルボトルを入れ替えて、新しい鎧を展開する。
う〜ん、ベストマッチじゃなかったか。残念。
「だらっしゃぁ!」
オレは右足で地面を滑るように素早く走り、盗賊達を撹乱する。ついでにその速度のまま、連中の顔面を殴りつけた。
おお! このフルボトルの力は速いし酔いが少ないな!
あーでも、若干パワーが心もとないな。攻めきれないわ。
『力の根源たる私が命じる…!』
ん? 少し後ろに下がったラフタリアちゃんの尻尾が膨れてる…。
おお! 最近懸命に勉強してた魔法をついに!
「ファスト・ミラージュ!」
そう叫んだ途端、ラフタリアちゃんの姿が蜃気楼のように消える。
それに驚く盗賊は、きょろきょろと辺りを見渡して…そして、いきなり死角から現れたラフタリアちゃんに斬られた。
なるほど…あれが光と闇の属性の力か。
「フィーロもやるよー! はいくいっく!」
おお!? 今度はフィーロちゃんが高速移動で盗賊を蹴り飛ばした!
負けられないじゃないか!
「やるねフィーロちゃん! じゃあ次は一緒にだ!」
「おー!」
「オレだって…! おらああああ!!」
張り切るフィーロちゃんの横で、リュウガが雄叫びをあげる。
するとその両拳から、凄まじい勢いで青い炎が吹き上がった! てか燃えた!?
「龍炎拳!!」
炎を纏った拳を振るい、リュウガは盗賊達をボコボコにしていく。
あれは…魔法か? 魔法なのか?
とりあえずまぁ……全員何かしらのパワーアップを果たしたってわけだな。うん。
「この…!」
「悪いが手出しはさせねぇよ!」
「なっ!?」
割って入ろうとした腕利きの盗賊に、ナオフミが立ちふさがる。
そんで組みついて…ああそうか、このままやれってことか! よっし任しとけ!
「いくぜ!」
「いっくよー!」
「っしゃあ!」
【Ready GO!】
ナオフミに動きを止められ、焦りを見せる腕利きの盗賊。
そんな奴に向けて、オレとリュウガの拳と、フィーロちゃんの俊足の蹴りが次々に決まっていく!
盗賊は白目を剥き、ズシンとその場に倒れた。
「いっちょあがりぃ!」
後に残ったのは、戦闘不能になった盗賊達が積み重なった、死屍累々の光景だった。
Side:Naofumi
「何とかなったな…まさかクラスアップ済みだったとは」
「クラスアップ?」
思わぬ襲撃をやり過ごし、一息ついていたところにセントが何か呟く。
なんだ? また何か俺が知らない重要情報か?
「クラスアップっていうのは…」
「ごしゅじんさまー、このおじさんたちどうするー?」
セントが説明しかけ、フィーロに邪魔される。
おいフィーロ…それはそれで重要だが、人が話してる邪魔すんな。セントのやつすげぇ渋い顔してんだろうが。
…まぁいい、クラスアップとやらは後回しだ。
「身ぐるみ剥いで兵士に突き出すか…」
「剥ぎ取りか、よしきた」
「…その言い方は生皮まで剥ぎそうだからやめとけ」
俺の決定に、リュウガがベキベキと拳を鳴らす。
…大丈夫だよな、お前龍っぽいからってこいつら食ったりしないよな。
金目のものをこっちが奪うだけだぞ。命はいらんぞ命は。
「へっ、神鳥の聖人のくせにやることがせこいな!」
「別にそう名乗った覚えはない。何を言われようが気にならんな」
単に金稼ぎと足が欲しかっただけなんだが、いつの間にか噂が一人歩きしてる感じだな。
勇者でも聖人でも、こんな面倒なやつらに絡まれるんじゃ同じだろうけど。
「な、まぁ聖人様よ。見逃してくれよ、俺達が狙ってんのはそこのアクセサリー商なんだからよ〜」
「…わかってないようだな」
考えてみれば、俺を嫌うこの国じゃ兵士に突き出したところで俺が疑われかねない。
こいつらもそれをわかっているのか、ニヤニヤと完全に俺をバカにして見ている……だが、そうはさせん。
「俺は、お前らを生かしておく必要はないんだぞ?」
にたぁ…と俺はできる限り悪辣に笑ってみせる。すると連中、嫌な予感がしたのか顔を青ざめさせていった。
はっ! いい顔できるじゃないか!
「ここらでフィーロに人の味を覚えさせてもいいかもなぁ…!」
「ひぃい!!」
「それが嫌なら大人しくしてな」
悲鳴をあげる盗賊に、セントが俺に便乗するようにニヤリと笑みを浮かべる。
こういう時のお前は好ましいよ、普段は死ぬほどうざいがな。
「ついでだ、お前らのアジトの場所全部教えろ。溜め込んでるものまとめてもらっていく」
「はぁ!? ふざけるな!!」
「それで命が助かるんだから安いもんだろ。それが嫌なら……」
「んー? ごはん?」
もう一度俺がフィーロに目をやると、フィーロがよだれを垂らして首をかしげる。
それ以降黙り込んだ連中を見下ろし、俺は満足げに笑うのだった。
…おい、ラフタリアもリュウガもそんな目で見るな。
⌘
「いや〜、大漁大漁!」
「これではどちらが盗賊なのか…」
「それが生きるっていうことさ…!」
「カッコつけても全く感動しませんよ、セントさん」
盗賊のアジトから戦利品を押収し、俺たちは馬車に積み込んで行く。
ノリノリなセントにラフタリアとリュウガがツッコミを入れているが知らん。奴らの自業自得ってもんだ。
「まったく、お前のおかげで面倒な目にあっ…」
「素晴らしい!!」
この厄介ごとの原因であるアクセサリー商に文句を入れようとしたら、なぜか奴は感激した様子で俺に詰め寄ってくる。
な、なんだ。何にそんな衝撃を受けたんだ?
「殺さず生かし、絞れるだけ絞り財産を手に入れる手腕、感服しました!」
「お、おぉ!?」
「ただ奪うだけではない! 次にまた連中が溜め込むことを見越して、その機会を待つ! あなたのような商人をずっと待っていたんです!」
マジでどうしたんだこいつ!? 俺は一体どんな奴を乗せてしまったんだ!?
最近俺のような貪欲さを持つ奴が少ないとか…いや、知るか!!
「お詫びと言ってはなんですが、私の持つ商業ルートを斡旋いたしましょう! そして秘蔵にしていた細工と魔力付与もお教えさせていただきます!」
「お、おいそこまでしなくても…」
「いーえ! ぜひ教えさせていただきます!!」
むちゃくちゃグイグイきやがるこのアクセサリー商!
さっきの俺の行為の何がこいつの琴線に触れたんだ!? 全くわからん!!
「…なんかまた妙な奴に好かれちまったな」
「ええ、本当に…」
ラフタリア達が呆れながら、どこか満足げに笑いあっている。
ほっこりしてないで助けてくれ!!