Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜   作:春風駘蕩

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「天っ才魔導科学者であるこのオレ、セントは盾の勇者ナオフミとともに、災厄の波との戦いに備えていた。新たな仲間フィーロとリュウガを加え、ビッチ姫のちょっかいや腐竜との戦いを乗り越えつつ、世界のために戦うのであ……」
「ねーねー、セントお姉ちゃん何やってんの?」
「あっ、ちょっとフィーロちゃん…今あらすじの途中で」
「さっきから何一人でブツブツやってんだよ。あらすじとかいいからオレの武器を早く作れよ!」
「い、いや、新章始まるから仕切り直しも含めてやっとかないと…」
「セントさん! リュウガちゃん! 村に魔物が近づいているとナオフミ様が…!」
「はーい!」
「ほらさっさと行くぞ! モタモタすんなバカウサギ!」
「筋肉バカに言われたくないんだよ! あーもう! どうなる第3章!?」


第三章 龍炎・ウェイクアップ
青い髪の少女


Side:Raphtalia

 

「今だ! いけ、リュウガ!」

「おらぁ!」

 

 青い炎を拳に纏わせたリュウガちゃんが、ハチ型の魔物を殴り飛ばします。

 以前よりキレもよく、そして何より力も倍増した様子の一撃を受けて、魔物はたまらずバラバラになってしまいました。

 私も負けじと頑張りましたが、まだ本調子とはいかないようです。

 

「ふぃ〜…これでこの辺の魔物はだいたい掃除できたかねぇ」

「ああ。後始末もこの辺で十分だろう」

「おなかへった〜」

「フィーロ、もう少し我慢してください」

 

 切なそうな顔で言っても仕方ありませんよ?

 すると不意に、ナオフミ様が私とリュウガちゃんに心配そうな目を向けだしました。

 

「…その、本当に大丈夫か?」

「あのなぁ……もう十分だっての。見たろ? オレの暴れっぷりをよ」

「私も問題ありません…お気になさらないでください」

「ああ…だが気分が悪くなったら必ず言うんだぞ。我慢なんてもってのほかだ」

 

 あ、案じて下さるのはうれしいんですが、その…。

 最近、ナオフミ様がとても過保護になってしまったようで、少し落ち着きません。

 厳しい、というかぶっきらぼうなことが多い方ですから。

 リュウガちゃんも違和感がすごいのか、何とも言えない表情をしています。

 

 数日前に立ち向かうこととなったドラゴンゾンビ……その際にナオフミ様が放った黒い炎を受けてしまい、わたしには呪いが掛かってしまいました。

 村の人達がまたナオフミ様に険しい視線を向けないよう、『腐竜の死肉を誤ってあびてしまった』と伝えておきましたが…。

 

 それ以来、こんなふうに気を遣われてばかりです。

 セントさんも、そんなナオフミ様にやや呆れた様子でため息をついています。

 

「しかしあれだな。盾の勇者って知った途端に顔色変えたけど、腐竜片付けたらまた手のひら返してやがったな、あの村の連中…」

「もともとそんな期待はしていない。どうでもいいさ」

 

 反対に、ナオフミ様の村の人達への評価はかなり低いです。

 ドラゴンゾンビが生まれたそもそもの理由は、以前に剣の勇者様に討伐された竜の死肉を放置してしまったため。

 私やリュウガちゃんがこうなった原因……とは言い過ぎかもしれませんが、少なくとも要因の一つではあります。

 ナオフミ様は、その辺りで村の人達に辛辣な印象を抱いているようです。

 

「……」

「どうしたリュウガ?」

「ん、ああ、いや…」

 

 ふと、ご自分の掌を見下ろして何か考え込んでいるリュウガちゃんの姿が、目に移りました。

 その手にあるのは、一本のボトル。

 

 腐竜との戦いにおける、彼女の唯一ともいえる戦利品です。

 

「振るだけで力が湧くなんて、相変わらず変わったアイテムだなー…ってよ」

「ああ…それな」

「そこがオレのすごいところ!」

 

 むふーっ、と胸を張るセントさん。

 ナオフミ様はそれを鬱陶しそうに見て、わたしも若干反応に困るところですが、素直にこれはスゴイと思います。

 私も一度試してみましたが、強すぎてうまく扱えませんでした。

 

「作ったのは記憶をなくす前のお前だろうが」

「それを言うなよぉ〜」

 

 鼻を膨らませていたセントさんが、ナオフミ様の指摘にがっくりと肩を落とします。

 えっと……ちゃんとそれを使いこなせているセントさんもすごいと思いますよ?

 

「つっても、まだそいつの真価は発揮できちゃいねぇ。…実際に使わせて見てわかったんだが、そのドラゴンフルボトルは他のフルボトルより強い力があるみたいなんだわ」

「ふぅん?」

 

 セントさんの説明に、リュウガちゃんはじろじろとドラゴンフルボトルを見つめて唸ります。

 そう、フルボトルはセントさんの作る謎のアイテムに挿すことで、本当の力を引き出せます。姿と共に能力の変わる鎧に、不思議な武器…本当に様々です。

 一体、以前のセントさんは何者だったんでしょうか…?

 

「そんだけ腐竜が強かったってことか?」

「さぁな…ま、楽しみに待ってりゃいいさ」

 

 肩を竦めるセントさんがそう言って、辺りを見渡します。

 結構な数の魔物が集まっていた布巾ですが、わたしたちで頑張ったおかげか、もうあまり気配も感じられなくなってきました。

 

「ではそろそろ次の場所へ移りましょうか。この辺りはもう十分のようですし」

「そうだな…」

 

 戦えない村人たちのために、危険な魔物を間引いておく。

 もしまた出てきたとしても、その時はまた以前のように冒険者の方々に依頼を出せば十分対処可能な状態になる、というのがナオフミ様のお考えです。

 …というか、あまりご自分の手を煩わされたくないという風にも思えて、複雑な気分です。

 

 …ところで、先ほどからセントさんは、何を手帳に書き込んでいるのでしょうか?

 

「さっきから何やってんだ?」

「アイデアをメモしてんの。ビルドを強化する武器のヒントでもねーかなって思ってさ」

「武器か……ラフタリア達に持たせたりは?」

「できるよ」

 

 ガリガリと書き込まれている…何でしょう、剣?

 私には一片たりとも理解できそうにない難しい式や図形でいっぱいのそれを、セントさんは一心不乱に書いています。

 ナオフミ様がそれを興味深そうに見下ろしていますが…はぁ。

 

「ナオフミ様…私たちだけではなくご自分の装備も気遣ってください」

「そうだぞ。気を使いすぎんなって言ったばっかだろ」

「だがな…」

 

 盾の勇者であるために、ご自分で武器を持てないので仕方ないとは思いますが、ご自分の優先順位は相変わらず低すぎます。

 困ったものですが、それこそナオフミ様の優しさ。想われていると感じられ、私の胸はぽかぽかと温かくなります。

 

 もっとこの人の力になれたなら…と、私がやる気を漲らせているときでした。

 

「ねーねーごしゅじんさま、フィーロあれが食べたいかも」

「ん?」

 

 グーグーとお腹を鳴らしていたフィーロの声で、私はハッと我に返りました。

 わ、私ったら…! 今はそんな場合じゃないというのに…!

 

 熱くなった頬を覚ましながら、わたしたちはフィーロが見ている方向に振り向きます。

 そこには数匹の大きな鳥の魔物……かつてのフィーロと同じ、フィロリアルの姿がありました。…って、え? 今、美味しそうって…。

 

「野生のフィロリアルじゃないか…あれはお前の同類だぞ!」

「いまならしとめられるよ?」

「共食いはやめとけ、共食いは」

 

 ふんっ!と鼻を鳴らして意気込むフィーロに、みなさん呆れた目を向けます。

 フィーロ…いくらお腹が空いているからって自分と同じ種族の魔物を食べたがるなんて…。

 

「グエー!」

「グアッグアー!」

「あ、逃げた」

「あーん、フィーロのごはーん…」

「だからやめとけっての!」

 

 フィーロに気付いた野生のフィロリアルたちが、一声鳴いて一斉に逃げ出します。野生の勘で、危険を察知したのでしょうか…?

 

 私達が嘆くフィーロを宥め、若しくは呆れていた時でした。

 

「え…しゃべった…?」

 

 そんな声が、フィロリアルたちが去った後から聞こえてきました。

 私達は思わず、声がした方向に振り向き、そして大きく目を見開きました。

 

「お、女の子…?」

 

 そこにいたのは、青い髪を二つに分けた可愛らしい女の子でした。

 きれいなドレスに、血色のいい肌、整えられた髪…そして何より、育ちの良さを感じさせる佇まい。

 そんな幼い女の子が、目を輝かせて私達を。

 いいえ、フィーロを見つめていました。

 

「今、あなたが話していたの…?」

「うん、そうだよー?」

「あっ、バカ!」

「すごい…喋るフィロリアルさんなんて…」

 

 フィーロが応えると、女の子はますます目を輝かせて笑顔になります。

 小走りで近寄って来ると、驚くほどに明るい声でフィーロに話しかけました。

 

「私は……メルっていうの! ねえ、もっとお話しましょ! お名前はなんていうの?」

「フィーロのこと? フィーロはフィーロだよ! えっとー…メルちゃん?」

「ええ! フィーロちゃんはすごいのね!」

 

 背丈も見上げるほど違うのに、メルと名乗った女の子が臆する様子はありません。

 フィーロも彼女が好ましく見えたのか、進んで歩み寄っているように見えます。…すごいですね。

 

「物怖じしない子だな〜…」

「あの身なり、どっかいいとこの子供か?」

「みたいだな…」

 

 やっぱり、ナオフミ様達も同じことを思ったようですね。

 ですが……一体どこの方なのでしょうか?

 

 すると、何やらナオフミ様が考え始めたかと思うと、フィーロに声をかけました。

 

「ふむ…フィーロ、その子としばらく遊んで来い。あとは俺たちがやっておく」

「いいの!?」

「ああ、日が暮れるまで遊んでていい」

「わーい! 行こ! メルちゃん!」

「うん!」

 

 ナオフミ様に許可をもらったことで、フィーロは喜んで走り出します。

 二人の姿が小さくなったところで、ナオフミ様にセントさんがじとっとした目を向け始めました。

 

「どういう風の吹き回しだ?」

「何、あの見た目なら相当金持ちの子だろう…貴族に恩を売っておくのも悪くないと思っただけだ」

「そういうのは考えるだけで口にはしないほうがいいぞ…」

 

 …どうせそんなことだろうとは思いました。

 まぁ…いつもの事なので文句は言いません。目的がどうであれ、それでフィーロは楽しそうにしていますし。

 

「さ、俺たちはさっさと見回りを終わらせるぞ」

「あいよー」

「はいっ!」

 

 はしゃいでいるフィーロとメルさんを背に、みなさんで歩き出します。

 そうですね…まだまだ役目は終わっていません。

 ですが何でしょう……楽しそうに遊んでおるメルさんを見ていると。

 

 ……うらやましい、と、思えてしまいますね。




 
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