Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜 作:春風駘蕩
Side:Sento
「だ〜…つっかれたぁ…」
借りた宿のベッドに倒れ込んで、オレは思い切り脱力する。
あ~…仕事した。
うん、もうこれは明日一日仕事しなくてもいいくらい働いたんじゃないか? うん。
「ザコがけっこう散らばってたからな。もうこれくらいで十分だろう」
「こんだけやっときゃぁな。しばらく村に連中も困んねぇだろ」
「そうですね」
ナオフミやラフタリアちゃん、リュウガを見る感じ、三人とも同じくらい疲れて見える。
すると、オレとリュウガの腹からけっこうな音が鳴り響いた。
「…ナオフミ〜、腹減った。今日の晩飯なに?」
「できればシチュー的なものを食いてぇ」
「もしくは何かこうがっつりしたもの!」
「この飢えを満たすごっついものを望む!」
「うるさい! 俺はお前らの母親か!?」
「あ、あはは…」
え~、リクエストしただけじゃんよ~。
ていうか、最近はお前の飯を食わねぇとやる気でないんだよ。
…あれ?
胃袋を掴むのってそれ普通嫁の役目では? 性別逆転してる?
まさか、ナオフミはオレ達の嫁だった…!?
「バカなこと言ってないで、大人しく待ってろ」
「「え~」」
「セントさんもリュウガちゃんも……」
「ったく…まぁいい。どうせあの腹ペコ鳥もそのうち戻ってくるし、今のうちに準備を……」
ちっとは雑談しようぜぇ、ご主人様よぉ~。
ベッドに腰かけたナオフミが、そう呆れた調子で言った、丁度その時。
「ごしゅじんさまー! ただいまー!」
「噂をすればだな」
バーン!って感じでフィーロちゃんがカムバックしてきた。
…うん、全然疲れたように見えないわ。
「あのねあのね、メルちゃんすごくいい子でね! それでね、フィーロメルちゃんと一緒にはじめておままごとしてね!」
「あー、はいはい…」
「子供は元気だねぇ…」
「まったくだ、どこにあんなエネルギーがあるんだか」
オレ達全員、割とぐったりしてるのに……。
するとナオフミの奴、さっきより呆れた様子でリュウガとラフタリアちゃんの方を見やった。
「…お前らも子供だろうが」
「あ、あはは……ってナオフミ様!? 今私の方も見ていませんでしたか!?」
「それでねそれでねー」
抗議の声を上げるラフタリアちゃん。
フィーロちゃんは一切気にせず、今日出会った謎の女の子・メルちゃんとのことを一生懸命に話していた。
「えっとね、メルちゃんはずっといろんなところを旅してたんだけど、一緒にいた人とはぐれちゃって困ってるんだって!」
「へー…って、は?」
適当に聞き流していたナオフミが、そこでやっと真面に反応する。
なに? 誰と誰がはぐれたって?
するとタイミングを見計らったように、扉が開いて例のメルちゃんがおずおずと顔を出した。
「夜分に失礼します…聖人様、少々お時間よろしいでしょうか?」
「おい、はぐれたって聞いたけど…それって護衛とか?」
「はい……父が手配してくれた者達なのですが、不幸な事故で離れ離れになってしまい」
ありゃま……そりゃまた質の良くない護衛だこと。
依頼主の娘をほったらかしかよ、物騒な。
「聞けば聖人様は、王都にご用があるとか。差し支えなければ、ご同行させてはいただけないでしょうか。もちろん、後でお礼はさせていただきます」
「うーん…」
メルちゃんのお願いに、ナオフミの奴かなり悩んでやがる。
そのうちオレ達に向かって手招きしてきたため、みんなで集まって円陣を組み、話し合いを始める。
…まぁ、言っちゃアレだが、厄介事だしなぁ。
「で、どうする?」
「…商人の娘とかそんなのを想像してたが、護衛っていうぐらいだ。もっと上の位の奴だな」
「この国の貴族とか要人ってことだよな。面倒なことになったりしねぇか?」
「前科があるからな」
具体的には、宝石商とか。
だけどなぁ……放っておく気にはならないよな。
相手もこんな小さな女の子だ。わざわざ一人になるリスクを冒してオレ達をだますメリットなんてないだろ?
「ごしゅじんさまー、メルちゃんたすけてあげようよ」
「ナオフミ様、私からもお願いします」
メルちゃんの境遇に同情したのか、ラフタリアちゃんもフィーロも協力的だ。
しばらく険しい顔で唸っていたナオフミだけど、そのうち大きなため息をついて肩を落とした。
「…あとでお前の親に請求するからな」
「はい! 必ず!」
やれやれ……お前ならそう言うと思ってたよ。
…とりあえず、その前にメシ食わね?
Side:Ryuga
ガラガラと、フィーロが引く馬車が道を走る。
そしてその隣を、セントが操る……バイク?が走る。
その速度はまるで、風のように速く軽やかだった。
「わぁっ…! フィーロちゃん、力持ちなんだね!」
「えっへへ〜、フィーロつよいんだよ〜!」
新しくオレ達の旅に同行することとなったチビガキ―――メルとか言う奴がはしゃいでやがる。
何だ…くそ真面目な奴かと思ってたけど、普通の女っぽいな。
……つーか、オレ。
人の事見てるヒマなかった…!
「おい、フィーロ。少しはラフタリア達に遠慮してやれ」
「うっぷ…」
「うごごご…」
馬車の荷台に乗るラフタリア、そしてセントの後ろに乗ったオレは今、真っ青な顔で口を押さえている。
ヤベェ……これ、なんかスゲェ酔う。
「だらしのねぇ奴らだな、お前ら」
「そりゃあ自分で運転する分なら酔わねぇだろ…」
「ズリィぞセントォ!!」
自分でバイクを操縦しているセントはともかく、ナオフミ。
お前何でそんなガタガタ揺れてんのに平気なの? メルも同じく、何でそんなはしゃげんの?
バケモンかこいつら……。
「それって…フォーブレイの発明品か何かですか!?」
「うんにゃ? オレのオリジナル。オレは天才魔導科学者だからさ!」
「ふわぁ…すごいです」
メルの奴、セントのバイクにちょっと興味深げだな。…フィーロを最初に見た時ほどじゃないけど。
すると、それを見たフィーロがムッとし始めた。
「むー! フィーロの方がもっとはやく走れるもん!」
「えっ、あ、いや、そんなムキにならなくても…!」
なんか嫉妬しだして、セントを睨むフィーロに、荷台のラフタリアが慌て始めた。
オレもちょっと、嫌な予感がしてきた。
え? なんか、怪しい空気になってきた。おいセント、フィーロ、お前らなんでちょっとバチバチし始めてるんだ?
「お? いっぺん勝負する? 言っておくが、オレのマシンビルダーはそう簡単には追い越せねぇぞ!」
「あの!? 別に競い合う必要はないと思いますが…!」
にやにや笑うセントが、そう言って前方を睨む。そしてそれにラフタリアが待ったをかける。
オイオイオイオイ…! ただでさえこの揺れだぞ!?
待て、ホントに待て!
これ以上酷くなったらオレ、我慢できなくなる!!
発射しちゃうから!!
「ナオフミ! 合図よろ!」
「ごしゅじんさま〜! 早く早く!」
「ったく…」
「ナオフミ様! やめてくださいお願いします!」
「頼む! 後生だ! これ以上揺らすのは勘弁……」
唯一こいつらを止められそうなナオフミは、完全にレースに興味がなく、傍観するつもりなのは明らかだ。
そりゃあ、へんな意地のぶつかり合いがどうでも良いのはわかる! だが!
オレ達を巻き込むのだけは勘弁してくれ!!
が、そんなオレとラフタリアの懇願は、届かなかったようだ。
「レディ・ゴー」
「イェ―――――イ!!」
「どっぎゅ―――ん!!」
「きゃー!」
「「ぎゃああああ!!」」
無慈悲な合図と共に、フィーロとセントが急加速。
ついでにオレ達は二台と後ろで無茶苦茶に揺さぶられ、意識が紙くずのように吹っ飛ばされそうになる。
……ああ、主の選択、ミスったかなぁ。