Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜 作:春風駘蕩
Side:Naofumi
メルというメンバーを加えての旅は、思った以上ににぎやかだった。
というのも、初めて歳の近い友達ができたフィーロがあまりにはしゃいで、それを宥めるのが大変だったからだが…。
しかし意外だったのは、見るからに裕福な家の出であるメルが、この旅に一言も文句を口にしてこなかったことだ。
現にさっきまで、俺が適当に作った串焼きをうまそうに食べてたぐらいだし。
「……思った以上に強かな子だな、この子」
セントも同じことを考えたのか、メルに感心した様子で呟いている。
そうだよな、もっとこう……こんな野蛮な食べ物食べられない!なんて騒ぐかと思っていたんだが。
その時は、絶対に食わせなかっただろうがな。
「普通さぁ、こういういいとこお嬢さんて、もっとワガママだったりしない? どっかのビッチ姫みたいにさぁ」
「よほどこいつが変わってんのか……あの女がイカレてんのかだな」
「…是非とも後者であってほしい」
…思い返してみると、あいつ、俺について来たときはよくあれだけ猫被っていられたな。
あれ以降は、元康の前でも本性丸出しに見えた気がしたが……あの女好きにはどう見えているんだ? 節穴なのか?
セントは俺の呟きに渋い顔をしながら、作業の手を止めていない。
…さっきからカチャカチャうるさいんだが、何だそれ?
「ところで何作ってんだ?」
「武器か? オレの武器か!?」
「違うね」
食い付いてきたリュウガに、セントはほいっと完成したらしいそれを見せる。
えっと…ドラゴンっぽい、おもちゃ? 四角い胴体に細い首と尻尾を持った、機械っぽい見た目のドラゴンだな。
……いや、ほんとに何だそれ。
「ほい、こいつにお前の魔力を込めろ。それで動く」
「? なんだそれ」
「いいから」
「…ふんっ!!」
訝しげに肩眉を上げるリュウガに、セントがドラゴンの玩具を押し付ける。
リュウガは首を傾げるも、言われた通りに自分の魔力を放出し、おもちゃにこめ始めた、すると。
ドラゴンの目がピカッと光り、自分から宙に浮き上がって鳴き声をあげた。
「―――!」
「うおっ! 鳴いた!」
「名付けてクローズドラゴン! お前の相棒になる…まぁ、使い魔みたいなもんさ」
「ほー…」
使い魔か……RPGでは結構定番のアイテムだな。いや、魔法か?
しかし、どうにもこいつの発明は、いちいち世界観を壊しててもやっとするな。
フルボトルとか戦車とか、さらには機械の使い魔とは……ほんとに何者なんだよ。
今さら疑うつもりはないけどよ。
「…んでこいつどうやって使うの?」
「そいつの背中に穴があんだろ? そこにドラゴンフルボトルを挿す、んで、ベルトに装着して変身できるようになってる」
ああ、機械っぽい見た目なのは、普通に道具として使うからなんだな。
そんで、普通のフルボトルより威力が高いドラゴンフルボトルを、これでまともに使えるようになる……そういうことか。
…ん? ちょっと待てよ?
「それ…お前がロック外さなきゃ意味ないんじゃないのか」
「もうリュウガの魔力は登録してるよ。だからあとは挿すだけでいい」
「あ?」
「クローズドラゴンにはもう、お前の魔力が入った。ベルトに装着された時点で、お前に対するロックが外れるようになってんだよ」
「…ん? ん!? えーっと、つまり…?」
「要するに、こいつを使えばお前も変身できんの!」
なるほど……このクローズドラゴンは、変身するための鍵みたいなものになったわけか。
もうこのドラゴンはリュウガ以外の魔力は受け付けず、変身できる人間もこいつら二人限定になっている、と。
するとリュウガの奴、急に目をキラキラさせて立ち上がった。
おい、まさかお前、もう試すつもりか?
「んじゃ、さっそく…」
「ああ、言っておくけど」
セントの警告も聞かず、リュウガはジャキン!とドラゴンフルボトルを差し込み、ベルトに装着しようとする。
……あ、いやな予感。
「どのみちお前にレベルじゃまだ変身できないから、使ったらまたシビれるぞ」
「あびゃびゃびゃびゃ!?」
「リュウガちゃん!?」
クローズドラゴンをベルトにセットしようとした瞬間、前にも見た電流がリュウガの全身に走った。
遊んでいるフィーロたちの方を見ていたラフタリアが慌てて駆け寄ってきたが……いや、ほぼ自業自得だから気にしなくていいぞ?
「そ…そういうことは先に言え…!」
「お前が聞かないからだろ…バーカ」
お前……反応が前回より間抜けだったぞ。
あびゃびゃって何だよその悲鳴、面白いじゃないか。
「…まだダメなのか?」
「まーだまだ。少なくともクラスアップ……レベル40くらいまでは使えないものと思っとけ」
セントがそう言って、リュウガからベルトを取り上げる。
…いい加減、聞いておいた方がよさそうだな。
「……そろそろ教えてほしいんだが、クラスアップというのは何なんだ?」
「あ、忘れてた」
以前に聞こうとして、邪魔が入って効けずにいた何か重要そうな単語について、セントに再度尋ねる。
「普通の奴の成長限界ってやつだよ。だいたいみんな40くらいで止まるの。星がついたらその証……あ、勇者はそのくくりからは外れるらしいけどな」
「…ってことはつまり、ラフタリアやお前はレベル40以上にはならないってことか!?」
「普通ならね」
くそっ! なんでそんな重大な事実を勇者である俺が知らされてないんだよ!?
経験値のことといい、この世界の連中は本気で俺に世界を救わせる気があるのか!?
他の連中だけで十分だってか、ふざけんな!
「でも、国から認められた奴は、教会でその成長限界を突破できる儀式をやってもらえるんだ。ま、相当信頼がないと無理だけどな」
得意げに説明してくれたリュウガだが……次第にその顔が険しくなる。
ああ…何を言いたいのか大体わかった。たぶん、俺もお前と似たような顔になってるんだろうな。
「…果たしてあのクズ王が俺に許可を出すのやら」
「あー…それかー…まぁ、ダメだったときのこと考えとかないとな」
もしもの話だが、おそらく現実になってしまうんだろうな。
結局のところ、俺達はこの国に居続けても今以上に強くはなれないってわけだ。その場合、どうしたものか……。
「……ってか、なんか静かだな」
「ん? ああ、そういえば…」
言われて気付いた。
さっきまでフィーロとメルがキャッキャウフフと騒いでいたと思うんだが…。
「なあ、ラフタリア。あいつらはどこだ?」
「さっきまで鬼ごっこをしていて、確かその辺りに…」
そう言ってたき火の向こう側を指差すラフタリア。
その瞬間、ラフタリアの……いや、俺達全員の表情が凍り付いた。
鼻提灯を膨らませて、いつの間にか眠りこけているフィーロ。
その周りに、放り出されたメルのものらしき衣服が……え?
は? え……え!?
「…おい、ウソだろ」
「冗談…だよな? 冗談だって誰でもいいから言ってくれよ!?」
「フィ…フィーロ!?」
まさか、いくらなんでも、とは思うが、俺達全員まともな思考なんてできなかった。
だって、あの食欲魔人だぞ? そして何より元魔物だぞ?
同族だってうまそうといって、止めなければ普通に食っていたであろうあいつだぞ?
やばい……冤罪が冤罪でなくなる可能性が出てきた、やばい。
「んー…なあにー?」
「おまっ…お前、いくら何でもそんなことするなんて!!」
「フィーロ…! あなた、なんて事を…!」
「は、吐け! 今すぐ食ったもん吐き出せお前!!」
「いやいや! お前らもうちょっと冷静に……大丈夫だよな、そんなことしてないよなフィーロちゃん!!」
ラフタリア! 俺が言うのも何だがその想像は捨てろ!
リュウガ! 吐き出させるな、もしそうだったら普通に証拠が出てくることになるぞ!?
セント! お前は信じてるのか疑ってるのかどっちだ!?
するとその時、俺達はフィーロの羽毛の一部がもこもこと動き始めた事に気がついた。
「フィーロちゃん…? うるさいよ〜…?」
眠たげな声を上げて、メルがすぽっと顔を出した……って、はぁ!?
「な…なんじゃそりゃあ!?」
ラフタリアもセントもリュウガも、もちろん俺も目を丸くして絶句する。
ちょっと待て、一応無事だとわかって安心はしたが、何だこの状況!?
メル、お前どこに入ってるんだ!? お前が入っているのはフィーロの体のどこだ!? 訳がわからん!!
「わっ、わっ、すごい! 手がどんどん入っていきます!」
「しかも…あったけぇ…」
「おぉふ……これは」
ラフタリアたちが確かめようと、それぞれフィーロの羽毛の中に手を突っ込んでいき、恍惚とした表情になっていく。
…おい、そのまま寝るつもりか。
「…服は暑くて脱いだってことか」
「はい! フィーロちゃんの中が心地よくて心地よくて…あふぅ」
俺が呆れた目を向けると、メルはまた眠気が勝ってきたのか羽毛の中に引っ込んでいく……そこはお前の巣かなにかか。
ラフタリアたち全員、羽毛の魔力に引き込まれたのか完全に寝ているし…。
…ほんとに、どんだけ図太いんだよ。
そしてお前ら、このカオスな状況に俺だけ置き去りにするな。
……なんか寂しいだろうが。