Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜   作:春風駘蕩

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久々の王都

Side:Sento

 

「この度は本当にお世話になりました」

 

 王都に着き、馬車を下りたメルティは、そう言ってぺこりと貴族らしいお辞儀をする。

 う~ん、やっぱりオレの知ってる貴族じゃないわこの子。

 なんだかんだで楽しかったな、この事の道中も…。

 

「じゃあ、フィーロ。メルさんのこと、お願いね」

「うん! わかった!」

「しっかり礼金をもらってくるんだぞ」

「えー」

「ナオフミ様…」

 

 そういうとこだぞ、ナオフミ。

 けどメルもあんまり気にした様子を見せず、フィーロと仲良くおてて繋いで歩き去っていく。

 …なんか、ラフタリアちゃんが懐かしそうに二人を見てるけど、どうしたんだ?

 すぐにやめたけど、なんか気になるな。

 

「さて、じゃあどこ行く?」

「そうだな…まずはこれをどうにかするとしよう」

 

 そう言って、オレ達は行きつけの武器屋に……おやっさんのところに向かうのだった。

 

 

 

「ほい、つーわけで強化改修よろしく、おやっさん」

 

 鎧を脱いだナオフミが、ラフタリアちゃんの剣と一緒におやっさんに渡す。

 おやっさんは剣を確認すると、ちょっと苦笑を浮かべて肩を竦めた。

 

「またずいぶんこき使ってんな……まぁいいや、嬢ちゃんの剣の整備と、アンちゃんの分の強化オプション追加だな。任されたぜ」

「あの…それはいいんですけど」

 

 おやっさんが剣と鎧を持っていくと、遠慮がちにラフタリアちゃんがナオフミに声をかける。

 今の彼女は、真新しい鉄の装備を身に纏い、新たな剣を腰に提げた、全身強化された姿になっていた。

 う~ん、見るからに頼もしいじゃないの。

 

「私の装備……こんなに揃えてもらってよかったんでしょうか」

「セントは自前の鎧があるし、リュウガもそのうち手に入る。ラフタリアに一番必要だろう?」

「アンちゃん、奮発してくれるんならウチとしては助かるが、大丈夫か? このあと聖水も買いに行くんだろ?」

「やりくりくらいできるさ」

 

 前みたいに、ラフタリアちゃんに冷たい目で見られなきゃいいけどな。

 まぁ、金は天下の回り物って言うし、使える時に使っておくのがいいとはオレも思うけどな。

 …オレの鎧も、そのうちいい感じに強化できないか試してみるか。

 

「さて、ならさっそく聖水を買いに行くか…」

「何事もなきゃいいけどな」

「やめろ、フラグを立てるなバカウサギ」

 

 えー、だってさー。

 そう思わずにはいられないじゃない? 最近、妙なことばっか続けて起こって、ろくな目に遭ってないし。

 ……心の準備だけでもしておきたいじゃないの。

 

「縁起でもないことを言うな! さっさと行くぞ!」

 

 そう言って、速足で武器屋を出ていくナオフミ。

 この時はオレも、あんなことが起こるなんて夢にも思わなかったのであった。

 

 

 数十分後、メルロマルク国内にある教会の外にて。

 オレは、適当な所に腰を下ろして、中に入ったナオフミ達を待っていた。

 

「……思ったより手間取ってんな。聖水受け取ってくるだけだろうに…」

 

 ぶっちゃけオレ、ここ嫌いなんだよな。亜人に対する差別とか偏見が結構強めだし、正直こんな状況じゃなかったら来たくなかった。

 リュウガもそのうち、怒りながら出て来るんじゃないかねぇ。

 …つーか、ほんとに遅いな。なんかあったのか?

 

「しょうがない、今のうちに色々調べておくか…」

【ハチ!】【消防車!】

 

 暇を持て余したオレは、ベルトとフルボトルを取り出して、色々組み合わせて遊んでみる事にした。

 う~ん、ベストマッチが出ない。これはハズレか。

 

 ハチはこの間の腐竜の時にいた奴、消防車は廃村にあったポンプを吸収させて作った奴だ。

 けど、ベストマッチじゃなかったみたいだな次。

 

【パンダ!】【ガトリング!】

 

 前に、シルトヴェルトの山奥にいた魔物から作ったパンダフルボトルと、歯車とか金属片とかを吸収させたら出来たガトリングフルボトル。

 でもこれも違った。次。

 

【ハリネズミ!】【ロック!】

「…んー、なかなか出てこねぇな」

 

 自分で作っといてなんなんだけどさ、この組み合わせに法則性ってあんのかな?

 戦車とウサギって明らかに相性わるいだろ。踏み潰す側と踏み潰される側にしか見えないし。

 今わかってんのは……えーと。

 犬とマイク、ゴリラとダイヤモンド、ライオンと掃除機……あと何だっけ。

 

【パンダ!】【ロケット!】【ベストマッチ!】

「お、ベストマッチみっけ」

 

 いろいろ試しているうちに、ベストマッチを見つけ出した。

 相変わらず法則無茶苦茶だけど。

 いや~、まさか爆竹からロケットフルボトルができるとは思わなかったな。

 

「パンダとロケットか……んー、いい感じの武器が思いつかないな〜。まぁ後回しでいっか、次」

 

 ゴリラモンドとかライオンクリーナー、ドッグマイクは片腕がもろ武器になってる感じだからなぁ……武器作っても活用しきれないんだよな。

 その点、ラビットタンクは両手フリーだし、一番汎用性が利く感じだな。

 

【ハチ!】【電車!】

「おーい、今戻ったぞ……って、何やってんだ?」

「おう、聖水買えたみたいだな。よかったよかった」

【ハリネズミ!】【消防車!】【ベストマッチ!】

「お、また見っけ」

 

 意外と白熱していると、聖水を買って戻ってきたナオフミ達がオレのところに寄ってくる。

 

「いやな、暇だったから武器開発のアイデアを探すついでに、新しいベストマッチがないか調べてたんだ。能力使うのに一番効率いいし」

「どんだけヒマだったんだよ……」

 

 そう言うなよぉ、今後の先頭で役に立つかもしれないだろぉ?

 その時お前らは、オレに泣いて感謝することになるんだからな? わかってんのか?

 ……ていうかさ、何でお前らみんなそんなに顔険しくなってんの?

 

「オレの事より、そっちで何かあったのか?」

「ああ…! 癪に触ることがな!」

 

 オレが尋ねると、ナオフミは眉間に深いしわを刻みながら説明してくれた。

 

 聖水を買おうとしたら、シスターがそれを質の低いもので偽って渡そうとしたとか。

 それに文句をつけたら、教皇だとかいう爺さんがそれを咎めてやり直してくれたけど、『神の御慈悲に感謝してくださいね』とか恩着せがましいことを言ってきたんだとか。

 

 ……いや、御慈悲云々以前に、普通に犯罪じゃね?

 そのシスター普通に詐欺働こうとしてたわけでしょ?

 

「……腐ってんな〜、この国も教会も」

「妙に上から目線で言ってきやがって、俺が悪役なのが前提みたいじゃないか」

「ウンザリするぐらいロクでもねぇな、ぺっ!」

「み、みなさん…」

 

 ナオフミが今にも唾を吐きそうな態度で、リュウガはほんとに唾を吐いて怒りをあらわにし、ラフタリアちゃんがそれを宥めようとする。

 …現場に居なくてよかった。

 いたらオレ、間違いなく後先考えずに暴れてたわ。

 

「あー、さっさと憂さ晴らしに暴れてぇ!」

「だな! 新フォームの確認もしときたいし」

「お前ら…」

 

 喧嘩っ早いリュウガと同調するのは微妙な気分だけど、マジでオレもこの鬱憤晴らしたい!

 ん? 何だ、ナオフミの奴急に難しい顔になっちまって。

 

「……」

「どうした? 浮かない顔して」

「前回の波では、明らかに民間人の負傷者が多すぎた。もっと騎士団の連中が動いていれば、減らせたかもしれないのに……」

 

 ……あの時は、あいつらさっさとボス退治に行っちまって、村の連中の事はほったらかしだったもんな。

 いや、優先順位ってもんがあるだろって思ったよ。

 ……そういえば、勇者の能力の中に確か役に立ちそうなものが。

 

「例の編隊機能のことか?」

「そうだ。あいつらこの世界について詳しいのかと思ったら、てんで役に立たない! これから波も強くなって行くんだと思うとな…」

「…そうですね。ですが私たちだけでは、どうにも…」

 

 今ここにいないフィーロを合わせても、五人。

 他の勇者は当てにならねぇし、被害になる村とか町を守るには、実質人手が足りなさすぎる。

 う~ん、なんか手詰まりって感じだよなー……。

 そんなことを考えていた時だった。

 

「あーっ! そこの…盾の勇者―――」

「!?」

 

 急に背後からかけられた呼び声に、オレ達は思わずビクッと身体を振るわせて振り向く。

 そこにいたのは……メルロマルクの兵士!?

 何だ、何の罪状で今度は冤罪を吹っかけてくる気だあのおっさんは!?

 いや、今はそんなこと考えてる場合じゃない!

 

「やべぇ、ずらかれ!」

「一時解散! あとでどっかで落ち合おう!」

「了解!」

「逃亡犯か何かですか!?」

 

 ラフタリアちゃんがなんか叫んでるけど無視!

 痴漢にまちがえられた時はなぁ、駅員さんに捕まったらもう間違いなく犯人に仕立て上げられちまうんだよ!!

 ……あれ、例えを間違えたかな?

 ていうか、逃げるのは逆効果になるんだっけ?

 ええい、もうどっちでもいいや!

 

「ま、待って…! 話を!」

「しつっこいな…! 今度は誰だ? 誰のクソッタレな命令だ!?」

「わからん! わからんが振り切るまで走れ!」

 

 ラフタリアちゃんと一緒に走る俺の耳が、ナオフミとリュウガの声をどうにか拾う。

 そっちはそっちで何とかやってくれよ!?

 

「ったく…! こっちは何もしてないってのに、なんで追われなきゃならねぇんだよ!?」

「…いつだってそうだ…!」

「「オレ達は何もしてないってのに!!」」

 

 そんな悲痛なあいつらの声が遠くなっていくのを感じながら、オレとラフタリアちゃんは町中を必死に駆け抜けていった。

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