Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜   作:春風駘蕩

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槍の勇者再び

Side:Ryuga

 

 謎の兵士の追跡から逃げて逃げて……オレとナオフミは街角に辿り着いた。

 あちこちに屋台が出てる…市場かな? そんな感じの場所だ。

 こっちはなんにもやってないってのに、今度は何の冤罪ふっかけてくる気だったんだか。

 

 ……正直に言うと、なんか途中からスゲー悲痛な声で追ってきてたから、若干罪悪感が芽生えた気もしてたんだが。

 まぁ……いいよな?

 

「ハァ……ハァ……ここまで来ればさすがに…」

「なんだったんだ、あの兵士は?」

「知るか。とにかく、ラフタリア達と合流しよう」

 

 ナオフミももう疲れてるっぽいし、ここからは身を隠しながらいくか。結構人もいるし、いい隠れ蓑になるだろ。

 そう思って、歩き出そうとした時だった。

 

「みっ、みみ…見つけたぞ尚文ぃ!!」

 

 っ…!

 この……セントを遥かに凌ぐウザさを含んだ響きを持つ声は!!

 気づいた瞬間、オレの身体は勝手に動き、ナオフミに向けて振り下ろされた槍を、両拳で挟んで受け止めていた。

 

「ふんがっ!!」

「元康…!? なんでお前がここに!?」

 

 あっぶね!

 こいつ……マジでナオフミを殺す気で攻撃してきやがったな!?

 

「何しやがる!」

「おのれこの奴隷使い勇者め! とうとうこんな小さな女の子を自分の盾にするようになりやがって…! 恥を知れ!!」

「恥晒してんのはお前だ!!」

「小さいって言うんじゃねぇ!!」

 

 昔は…! 昔はもっとすごかったんだ!!

 ホントならもっとリーチもあって、パワーもあってレベルもあって……乳も身長も何もかもがあったんだ!

 どいつもこいつもガキ扱いしやがって!

 ふざけんな死ね! バーカ! アホゥ!

 

「どいてくれ、君! 俺はこいつをぶっ飛ばさなきゃいけないんだ!」

「るっせぇ! オレが戦うことに、お前にとやかく言われる筋合いはねぇ! 引っ込んでろ!」

「そんな汚い言葉遣いまで…! なんて奴だ、尚文貴様!!」

「これは元からだ! 悪いか!」

 

 お前にだけは女扱いされたくない!

 気色悪いんじゃボケ!

 …って、考えてるだけで鳥肌立ってきたわ、クソが!!

 

 槍をぶん上げたら、あんにゃろう大してバランスも崩さずに着地しやがった。

 スカした顔しやがって、腹立つな~!!

 

「前々から言おうと思っていたが…! こんな可愛い子に戦わせるなんて間違ってる! ラフタリアちゃんに飽き足らず、あんな……」

 

 もうホント何なんだよこいつは!!

 言動こそフェミニストっぽいけど、根本的にあるのは女にいいとこ見せて、優越感に浸りたいっていうゲッスい欲望なのはまるわかりなんだよ!

 周りにいる女だけで満足しとけ、エロ猿!

 

 あーもう!

 なんかこいつといると罵倒ばっか出て来るな、おい!

 

「あんな可憐な子にまで戦いを強要するなんて…堕ちるところまで堕ちたな!」

「何を言って……ああ、メルのことか。あいつは奴隷じゃなくて」

「メルちゃんと言うのか! 可愛らしい名前だ!」

「いや、聞けよ」

 

 あ? メルに対しても反応すんの、こいつ? あいつ中身はともかく、見た目は大分幼いぞ? …オレも人の事言えないけど。

 うわ……もっと鳥肌立ってきた。

 

「あの深い海のような碧眼…サラサラの絹みたいな金髪…純白の翼…! まさに俺の理想の天使!!」

 

 …ん?

 おい、ちょっと待て。

 メルの髪は青色だし、羽なんて生えて……あ。

 

 ……あ~あ、こいつやらかしてやんの。

 

「あー……そいつはメルじゃなくて、フィー」

「俺の大好きな魔界大地のフレオンちゃんみたいな子まで奴隷にするなんて羨まっ……なんて卑劣なやつなんだ!!」

「おいコラァ!! 今完全に本音が出てたぞ!!」

 

 ナオフミがキレるが、槍の勇者は全く気にした様子が……っていうか、聞いてもいないな、あれ。

 若干妄想に入ってて、くそキモイ。

 ところで誰だ、魔界ウンタラフレなんちゃらちゃんってのは。

 とりあえず見た目は普通に想像できっけど……アイツといっしょだろ、どうせ。

 

「……なんでこんなのが王女に気に入られてんだよ」

「あれだ、バカな方が操りやすいからだろ」

「ああ、そういう……」

 

 この間見た時も、あのクソ女に良いように利用されてたしな……つーかナオフミに聞いた感じ、あの女が諸悪の根源らしいし。

 哀れとは思うが、同情はしないな。

 ていうかいい加減、ナオフミに槍向けるのやめろ!!

 

「君も彼女達も、俺が救ってみせる!」

「余計なお世話だくそったれ!!」

 

 やんのか? あ? オレがお前ごときに突破されると本気で思ってんのか!?

 上等だコラァ!

 

「どいてくれリュウガちゃん! そいつを処分できない!」

「うるせぇ!! リュウガちゃんとか呼ぶんじゃねぇ気持ち悪い!!」

 

 ナオフミには直接戦う力がないって何べんいったらわかんだよ、こいつの脳みそは女の事しか入ってないのか!?

 あーもー……マジでこいつ、力の限りぶっ飛ばしたい。

 でも本気でやったら多分、この辺の奴ら巻き込んじまうしなぁ……つーか、そのへん勇者なら気にしろよ!!

 

「お前らも止めろよ! ここをどこだと思ってるんだ!!」

「そうだそうだ!」

「喧嘩ならよそでやってくれ!!」

 

 案の定、周りで屋台を出してた連中も騒ぎ出してる。

 そりゃそうだ、せっかく平和なところで物売りに来てんのに、何が悲しくて乱闘に巻き込まレにゃならんのだ。

 なのに…!

 槍の勇者の隣から、あのクソ王女が悠々と顔を出しやがった…!

 

「いいえ…これは国が認めた正当な決闘ですわ。邪魔をするなんてもってのほか、さっさとそこの薄汚いトカゲは失せてくださらない?」

「あンのクソアマ…!」

「断るっつの! 前回同様、俺に利がゼロじゃないか!」

 

 あいつ…! いけしゃあしゃあと!!

 クッソ……あー、あいつの顔見てたらまた暴走しそうになる!!

 耐えろー…耐えろー。

 あの顔面ぶん殴ってボコボコにしたいけど、それやったら国外追放どころか処刑もの、その上ナオフミにまで迷惑がかかる。

 でも……マジでブッ殺してぇ。

 

「おやめください!」

 

 オレが殺意を押さえるのに必死になっていた時、そいつは現れた。

 お前は……さっき追って来た兵士?

 え? どういうことだ?

 

「お前……さっきの」

「こ、ここは民の往来です。勇者同士の私闘に使っていい場所ではありません…!」

 

 兵士が……よく見たら結構若い奴だな。

 新入りっぽい雰囲気のそいつが、ちょっとおどおどしながらクソ王女相手に啖呵を切ってやがる。

 …おい、大丈夫なのか、これ?

 ていうか、何が起こってんだ?

 

「聞こえなかったのかしら? 私が、国が認めた正当な決闘だと言ったはずよ。それを邪魔するなんて何様のつもりかしら?」

「ぼ、僕は兵士です! 国の平和を守るのが僕の仕事です! それなのにこんなことを見過ごすなんて、できません!」

 

 ……オイオイ。

 このクソったれな国にも、こんな筋の通った奴がいたのかよ、ちょっと泣きそうだわ。

 

「無礼者! 国の意向に逆らおうとは、反逆者として処刑してやってもいいのよ!」

 

 だが、やっぱりあのクソ王女の胸には響かない……っていうか端から見下してるから意味ねぇな。

 庇ってくれんのはありがたいけど、このままだと此奴もえらい目に遭いそうだ。どうすっかな……!

 

 槍の勇者も若干戸惑ってるみたいだ。おろおろしながら、クソ王女とナオフミを交互に見てる。

 …でもそれぐらいの常識があるなら、お前の女止めろよな。

 

 うかつに動けば即ケガ人が出そうな、一触即発の雰囲気が漂い始めた、その時だった。

 

「貴女にその権限はありませんよ、()()

 

 ……!?

 え、あの声……え?

 

「おい、あれは…」

「…どう言うことだ」

 

 突然響いてきたその声の主に、オレとナオフミは同時に振り向き、そして驚愕に目を大きく見開く。

 ど、どういうことだよ。

 だってあれは……え、どうして。まさか…いや、ウソだろ!?

 

「お前は……!」

「お久しぶりです。相変わらずのようで、逆に安心いたしましたわ」

 

 影が現れた時以来の、たじろぐ姿を見せるクソ王女。

 その目の前で仁王立ちし、腰に手を当てて書状を見せつけているのは―――オレ達が今朝別れたばかりの、いいとこの生まれっぽいお嬢。

 

 メルだったのだから。

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