Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜 作:春風駘蕩
Side:Raphtalia
ドキドキと心臓が鳴るのを感じます……これから始まる、ナオフミ様にとっては二度目の、私にとって三度目の波が起こる時間です。
一度目は、正直に言って勝てた、とは言えない結果でした。
傷ついた人も、亡くなった方も多く、あの戦いにおいてあまり役に立ったとは思えません。
ですが…今度はそうはいきません。
「ナオフミ…」
「ああ……時間だ」
セントさんが尋ね、ナオフミ様が頷いた直後、その時間はやってきました。
カッと強い光が辺りを照らし、私達を戦いの場へと誘います。
光が収まった時、以前と同じく周囲に景色は変わっていました。以前に一度、行商に訪れたことのある町です。
すると、私達の近くで先ほどと同じ光が灯り、力を貸してくれる兵士さん達が現れました。
「勇者様!」
「来たか! よし、まずは逃げ遅れた住民の避難誘導だ!」
「はい!」
人数はそれほど多くありません…ですが、見方がいてくれるというだけでこんなにも心強いのですね。
少し心に余裕ができ、いざ挑もうとしたその時でした。
「何だそいつらは!? 邪魔だ、どいてろ!」
「うおっ!?」
集まった私達を押しのけるようにして、他の勇者様達が飛び出し、空に浮かぶ亀裂に向かって走り去ってました。
これでは…! 前の波と同じではないですか!?
騎士団の姿もありません…私達のように、編隊の力を使っていないのですか!?
「…ってまたあいつら先に行きやがった!!」
「前回の反省ゼロかよ!」
他の勇者様達町に現れた魔物のことは無視し、亀裂から現れた…あれは、船? と、巨大なタコの魔物に立ち向かっていきます。
あの姿だけ見れば物語の一面のようですが、正直いら立ちを禁じ得ませんよ!
「チッ…あっちは放っておけ!」
「そーそー、ぶっちゃけ予想通りだしな」
ナオフミ様とセントさんは盛大な舌打ちをこぼし、魔物に向けて身構えます。
そうですね…あの方々に頼り甲斐を覚えたことはありません。
私も剣を抜き、亀裂から溢れ出し人々を狙ってやってくる魔物を見据えます。
「オレ達はオレ達の仕事を全うするだけだ……変身!」
【鋼のムーンサルト! ラビットタンク! イェイ!】
もはや見慣れた、大きな機械に挟まれたセントさんが、基本である赤と青の鎧を纏います。
大きな音とともに噴き出す蒸気を振り払い、サングラスを指で弾くいつもの仕草をして、目の前の敵を睨みつけました。
「さぁ…楽しい実験を始めようか!!」
いきましょう、ナオフミ様! みなさん!
Side:Ryuga
「おらあああ!!」
オレが構えた拳が、青い炎を噴きあげる。
最近ちょっとずつ戻ってきた魔力と、持ち前の気を練り上げる独学の戦闘術を使って、オレは向かってきたトカゲ野郎をぶん殴る。
でも一体ぶっ倒しても、次から次へと湧いて出てきやがる!
「しゃらくせぇ!龍炎連撃波!!」
さっきよりもっと強く炎を噴かせ、今度は空中を殴りつけるよう拳を振るい、連中を狙い撃つ。
あっという間に数体がぶっ飛び、青い炎に呑まれる。が、やっぱりどんどん増援が来やがる。うっとうしいなおい!!
「GUOOOOOOOO!!」
「次から次へと…!」
やっぱあの亀裂をどうにかしねぇと意味ねぇな……他の勇者が向かってったけど、大丈夫なのか?
さっさと終わらせりゃこっちもさっさと片がつくってのに!
イライラしながら拳を鳴らすオレ。その背後から、いきなり別のトカゲ野郎が飛び出してきて……。
「ほあちゃあ!!」
オレが振り向くより先に、なんか変なのにぶっ飛ばされた。
…ん? え? 何、何が起きたの?
「…!?」
「おお、これは聖人様のお共の龍のお嬢さん……先日はどうもお世話になりました」
「お、おお、おう!?」
混乱するオレに話しかけてきたのは……なんか、めっちゃ元気そうな婆さんだった。
…いや、誰だよあんた。
てか、え? あんたがさっきのトカゲ野郎ぶっ飛ばしたの? マジで?
…い、いや、よくよく見るとこの婆さん、見覚えがあるような?
「そ、そういえば行商の途中で病気のばあさんを助けたことがったっけ…?」
「おかげさまでこの通り! おあちゃあ!!」
そう言って、っていうか叫んで、婆さんは後ろから襲ってきたトカゲ野郎を蹴り飛ばす。
ぶっ飛ばされたトカゲ野郎は、一撃で仕留められて地面に落下する。
おいおいおいおい…あの色ボケバカ勇者より強そうだぞ。なんでこんなんが病気でぶっ倒れてたんだよ、つーか何者だよこの婆さん。
「すっかり元気も取り戻しましたとも! かっかっか!」
山積みになったトカゲ野郎共の死骸を踏みつけ、婆さんは元気そうに笑う……お、おう。
「…我が主よ、あんたこのばーさんに何飲ませたんだよ…」
盾の勇者…ヤベェな。
Side:Sento
【ボルテックブレイク!】
「ふんぬぁ!!」
あー、マジこの数は鬱陶しい!
切っても撃っても蹴っても殴ってもわらわらわらわら……殲滅してぇ!
一体一体はどうってことねぇけど、キリがねぇよ!
「まだまだ削れねぇな……だったら!」
ドリルクラッシャーをしまい、オレは懐に手を入れる。
そして、白と水色のボトルを取り出してシャカシャカ振ってみせた。
「新しい組み合わせの実験! アンド火力の確認と行こうかね!」
【パンダ!】【ロケット!】【ベストマッチ!】
「いくぜいくぜいくぜ〜!」
ギュルンギュルンとハンドルと歯車が回り、オレの周りにパイプが走る。
そして、張り巡らされたボトルの中身が、オレの前後で鎧に変わる。
【Are you ready?】
「ビルドアップ!」
【ぶっ飛びモノトーン!ロケットパンダ!イェイ!】
鎧のパーツがオレを挟み、ブシューッと蒸気が噴き荒れる。
でっかいパンダの鉤爪に、左腕全体を追う水色の装甲ーーーロケットを模した腕の鎧。
サングラスも形が変わり、キラーンと強く輝いた。
「どりゃああ!!」
オレが拳を振り抜くと、肩部分の噴射口が火を噴き、オレを空中へ飛び上がらせる。そして、進行方向上にいる魔物をまとめて吹き飛ばしていく。
イヤッホゥ! このベストマッチ、気分爽快だぜ!
「勝利の法則は、決まった!」
【Ready GO!】
空中でハンドルを回し、エネルギーを解放する。
右腕の鉤爪を振りかざし、一気に加速しながら下に集まってきた魔物に向かって急降下、そして思いっきり切り刻みまくる!
【ボルテックフィニッシュ!】
オレが着地すると、バラバラになった魔物の残骸が降り注いでくる。
…自分でやっといてなんだけど、グロいなこれ。まぁいいや。
「空飛べんのはなかなか便利だな……ほい次!」
【ハリネズミ!】【消防車!】【ベストマッチ!】
ロケットパンダをまた別のボトルと入れ替え、ぐるぐるハンドルを回す。
今度は赤と白の鎧が生み出され、オレの体を挟み込んだ。
【レスキュー剣山! ファイヤーヘッジホッグ! イェイ!】
「攻撃! …のついでに消火!」
オレは右手を覆うトゲトゲの球体から棘を発射し、同時に左腕の装置から大量の水を発射する。
メラメラ燃やしやがって…この辺だんだん息苦しくなってくるんだよ!
そんで魔物にも水流を向けて、まとめてぶっ飛ばしてやる!
「決めるぜ! どりゃあああ!!」
【Ready GO! ボルテックフィニッシュ!】
オレがくるっと丸々と、全身がトゲトゲのボールに変わる。
ギュルギュルと助走をつけてから転がり出し、魔物を次々に吹っ飛ばしまくる。爽快だけど目ぇ回るな!
「……って!」
ここらの敵を一掃し始めた、と思ったが。
いつまでたっても増援が止まねぇ! いつになったら片付くんだこの戦いは!?
「遅いな、おい!!」
「何をちんたらやってるんだあいつらは…!」
「あんだけ偉そうにしてたくせに、どんだけ時間かけてんだ? 楽勝とか言ってたろうに…」
こっちの苦労も知らないで、あいつら…!
もうダメだ、待ってられん!
「ナオフミ! このままじゃこっちが疲弊するだけだぞ! オレ達も行こう!」
「それしかないな…ああ、くそ!」
ナオフミに言ってから、オレはビルドフォンを取り出し、ライオンフルボトルを差し込んで放り投げる。
一瞬で変形し、バイクモードにして跨ると、尚文もラフタリアちゃん達を呼び寄せた。
「ラフタリア! フィーロ!」
「はい!」
「はーい!」
「リュウガ! 乗れ!」
「おう!」
フィーロちゃんの上にナオフミとラフタリアちゃんが、オレは後ろにリュウガを乗せ、空に浮かぶでかい船に向かって疾走を開始した。
「オイ、樹!」
オレ達が船の真下にたどり着くと、弓の勇者が船に向かって攻撃しているところだった。
何やってんだ…? あれが今回の波のボスなのか?
「!? 尚文さん…何をしにきたんですか。あなたにできることなんて今更……」
「状況はどうなってる!? なんでここまで時間がかかっている!?」
「盾! 貴様、樹様が話している最中に…!」
なんかごっつい鎧を着たオッさんが吠えてるけど無視!
ナオフミの剣幕に押されたのか、弓の勇者は渋々と言った感じで答え出した。
「あの幽霊船を倒すと、最後のボスであるソウルイーターが出現するんですよ。だからこうやって攻撃しているんです」
ほほぅ……順序があるわけか。
ん? じゃあなんで槍と剣の勇者はここにいないんだ? 協力して墜とせばいいんじゃないのか?
「…なのに元康さんも錬さんも勝手に乗り込んでいってしまって」
「はぁ!?」
何だそれ……全然噛み合ってねぇじゃん。
ってか、連中が乗り込んでるのに普通に攻撃してたのかよ、こいつ!?
「くそっ……どいつもこいつも! フィーロ!」
「うん! まかせてごしゅじんさま!」
フィーロの背に乗ったまま、ナオフミが船の上を見据える。
すると弓の勇者のやつ、険しい顔でこっちを睨みつけてきやがった。
「まさか獲物を横取りする気ですか!? 許しませんよ!」
「そんなことを言ってる場合か!」
獲物とか横取りとか…仕事遅いくせに文句言うな!
お前らがちんたらやってるから、こうしてオレらが戦力低いのにくる羽目になってんだろうが!
「お前と問答してる暇はない! 行くぞ、お前ら!」
「はい!」
「セント!」
「おう! これがあってよかった!」
【ロケット!】
ロケットのハーフボディを装着し、リュウガと手を繋ぐ。
そしてオレは、フィーロちゃんと一緒に空に向かって一直線に飛び出した。
「いっくぜー!」
「うおおおお!!」