Be the one 〜盾と仮面のベストマッチ〜   作:春風駘蕩

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一波乱越えて

Side:Filo

 

 いっぱい走って、走ったから、フィーロのおなかがグーグーなってる。

 でも、フィーロはまだガマンする……がん、ばる…。

 

「はいよー、炊き出しの時間だー」

「ごはーん…」

「フィーロ、もう少し待ってて」

「お前の分も作ってあっから」

 

 ごしゅじんさまがごはんを作ってくれるけど、フィーロのばんはまだだって。

 波でたいへんだった人たちにもごはんをあげてるから……でもおなかすいたよ~。 

 

「今回もひでぇ被害だ…」

「全体の死者数はまだマシみたいだけどな」

「それでも、今後の生活が苦しくなるのに変わりはねぇよ」

 

 ごしゅじんさまとセントお姉ちゃんたちがむずかしそうな顔ではなしてる。

 おケガをした人や、おうちがなくなって困ってる人がたくさんいるんだって。

 フィーロもいっぱいお手伝いしたよ。でもまだたりないんだって。

 

「…うわ」

「ん? どうした?」

「いや〜な奴らがやってきた…」

 

 あれ? セントお姉ちゃんがきゅうにイヤそうな顔をしてる…どうしたの?

 そしたらね、ごしゅじんさまのお手伝いをしてた兵士さん達とおんなじカッコをしたおじさんたちがやってきたよ。

 

「おのれ盾! 我が国の兵士を勝手に連れて行きおって!」

「…この惨状を前にしての第一声がそれかよ」

 

 いきなりどなってきたおじさんに、ごしゅじんさまがものすごく呆れてる。

 なんであんなにぷりぷりしてるんだろ?

 

「き、騎士団長!誤解です、これは僕らが勝手に…」

「ああ。お前らがまともな仕事をしないから、素直でお人好しそうな連中をこっちで勝手に引き抜いた。誰かさんたちとは違って、大いに役に立ったぞ」

「貴様ら…!」

 

 兵士さんたち、がんばったのに変なおじさんになんか怒られてる。

 おじさんたち、今まで何してたのかな? みんな波でいっぱい困ってるのに、フィーロたち一回も見たことないよ?

 

「おじさんたち、何にもしてないのにえらそうだね」

「き、貴様っ…!」

「フィーロちゃん……ちょっと今は黙ってようか」

「いや、よく言ったぞフィーロ。こいつらはな、何もしてないくせに文句を垂れるようなどうしようもない大人なんだ」

 

 そっか~、そういう人もいるんだね!

 フィーロ、すっごく勉強になったよ!

 フィーロにごはんをくれてから、ごしゅじんさまは頭をなでなでしてくれて、それからまたおじさんたちをにらんだ。

 

「俺たちやこいつらを責める前に、お前たちにはやらなきゃならないことがあるんじゃないのか?」

「何を…!?」

「負傷した村人の手当てに復興の手伝い、ついでに今回全く役に立たなかった勇者どもの面倒! 吠えてないで働け」

 

 ごしゅじんさまのごはんおいしーなー。

 でも、おじさんたちがうるさいからフィーロ、すっごく気分がわるいなー。

 槍の人よりましだけど。

 

「ゆ、勇者様方を急いで治療院に! 急げ!」

「そいつらが先かよ……」

「我々の職務は勇者様の戦闘のサポート! それ以上に優先することなどないわ!」

 

 え? セントお姉ちゃん、もういいの? のこりはフィーロが食べていいの?

 なんかセントお姉ちゃん、すっごいきげん悪そうだけど、ほんとに食べなくていいの?

 そんな気がなくなっちゃったって?

 じゃあ、食べちゃうねー!

 

「そして盾! 貴様には今すぐに王城へ来てもらうぞ!」

「はぁ? 見てわからないか? 俺は今忙しいんだ。後にしろ」

「事後報告も勇者の務めだ! 真実とは思っておらんが、いかにかの波を盾ごときが切り抜けたのか、洗いざらい話してもらわねばならんからな!」

 

 フィーロが食べてるあいだに、なんかむずかしそうなお話をしてたごしゅじんさまがどっかに行っちゃった。

 あ、ラフタリアお姉ちゃん、フィーロたちももう行くの?

 わかった! じゃあ、のこりぜんぶ食べちゃうね!

 

 

Side:Sento

 

 ムカつくムカつくムカつく!!

 あの兵士も! 他の勇者も! クソ王もみんなみんなムカつく!!

 

 王命だから仕方なく、わざわざ王都に戻ってきたけど、こんなことになるならバックレればよかったぜ!

 

 んだよ、人が必死に戦ったってのにあの態度!

 何がどんな手を使っただ! 信じねーけどぜんぶ話せだ!

 ナオフミがテメーなんかとまともに話すかバーカバーカ!!

 

 でもその後の土下座しろは正直笑ったな~。

 なんでか知らんけど、ナオフミにはメガネをかけて言ってもらいたかった。

 

【海賊!】【電車!】【ベストマッチ!】

 

 オレは苛立ちを誤魔化そうとするように、ベルトに次々にフルボトルを差し込んでみる。

 何個かベストマッチが見つかったから、次はそれ用の武器を考えないとな。

 

「セント、遊んでないでメシの準備を手伝え」

「遊んでねーし、実験してるだけだし」

 

 ナオフミがクソ王に喧嘩を売ってから数時間。

 王都を離れ、シルトヴェルトに向かって馬車を進める途中、夕食の準備を始めたナオフミに言われて、オレも手伝いに回る事にする。

 は~…今日はほんとにいろいろあったな。

 

「…ところでこっちの荷物なに?」

「武器屋の親父がくれた。旅の幸運を祈るってよ」

「太っ腹だねぇ…」

 

 おやっさん、今日中に国を出るって言ったら色々用意してくれたんだよな。

 いつかまた会えたら、この恩は何倍にしても返さないとな。

 …そのためには、波で生き残らなきゃだけど。

 

「この剣はどう使うのでしょうか…?」

「フィーロこのグローブ使いたーい」

「なんだこれ、盾につけるアクセサリーだってさ」

 

 にしてもほんとに色々くれたな……でもせめて、使い方のメモはくれてもよかったんじゃないの?

 ラフタリアが持ってる剣なんて、刃がついてないんだけど。

 

「まぁ、細かい使い方は後で確認すればいい……ぶーっ!?」

「うお!?」

 

 メシが煮込まれるのを待つ間、飲み物を口に含んでいたナオフミがいきなり噴き出した。

 おい! おまっ……オレのふわふわ尻尾がちょっと茶色くなっちまっただろうが!! どうしてくれんだよ!?

 

「おい! 何やってんだよナオフミ!」

「ゲッホ! うぇっほ…誰だこのクソまずいコーヒー淹れたやつは!!」

「あ? 飲んどいて文句言うなよ」

「お前か、突撃ドラゴン!」

「誰が突撃ドラゴンだ!」

 

 ぶすっとした顔のリュウガがナオフミを睨む。

 …何も手伝ってなかったオレが言う資格ないだろうけど、できないなら無理にやらない方がよくね?

 

「まずいって……オレはお前が教えた通りに淹れただけでまっず!!」

 

 不満たらたらのリュウガが、自分の淹れたコーヒーを一口飲む。

 そんで、ナオフミと全く同じように噴き出した……マジか、マジかぁ。

 

「……これは」

「ひっでぇなこりゃ…」

「もはや一種の才能だな…」

 

 みんなで飲んでみるけど、これはマジでひどい。

 なにこれ、お前の手は一体何を生成するようになってんの? ダークマターでも作れんの?

 

 こりゃあ、ナオフミに淹れなおしてもらわないとスッキリできないなぁ…。

 と、そう考えていた時だった。

 

「見つけたわよ、盾の勇者!」

 

 道の向こう側から、物凄い勢いで馬車が走ってくるのが見えた。

 それに乗ってるのは……メルちゃん、もといメルティ王女。

 

「よし、片付けろ。今すぐズラかるぞ」

「いやいやいやいや…」

「逃がさないわよ!!」

 

 即座に荷物を片付け、逃げようとするナオフミに思わずツッコミを入れてしまう。

 それを阻むように、メルティ王女は馬車から飛び降りる勢いでこっちに向かってくる。前々から思ってたけど、アグレッシブな王女だなぁ…。

 

「今すぐ王宮に戻り、父に謝罪して和解してください! でないと……」

「断る」

「なっ…!」

 

 憤然とした様子で口を開くが、案の定ナオフミは耳を貸そうとはしない。

 …もうそろそろ、加減してやれよ。

 態度とか佇まいはともかく、相手は小さい女の子よ? 泣くよ? さすがに良心咎めないの?

 

「す、少しはこちらの話を…」

「向こうにこっちの話を聞く気がないのに、どうやって和解できるってんだ。時間の無駄だ」

 

 メルティ王女は諦めず、何度も何度も会話を試みるものの、ナオフミはその全てをばっさり切り捨てる。するとメルティ王女、俯いてぶるぶる震え始めた。

 これは……流石に泣くかなぁ? いやだなぁ、そういう子供の相手は苦手なんだよなぁ。

 …ん? なんか呟いた?

 

「…いかげんいに」

「あ?」

「いい加減にしてよ!」

 

 !?

 

「盾の勇者も! 父上も! 世界が波で大変なのに…何で言うことを聞いてくれないのよ!!」

「お? おお?」

「フィーロちゃんもそう思うでしょ!? ね!?」

 

 ちょっ……急に大声出すから、ちょっとビビった。

 え? いや…大人しい子だと思ってたから油断したけど、え?

 何、物凄い剣幕で怒り始めた。

 

「…もしかしてこの子、こっちが素だったり?」

「かもな…」

 

 ……猫被り、いや、感情を表に出さないように制御してたんだな。

 うん、王族がそうポンポン本音をぶちまけるわけにはいかないもんな。頑張ってたんだなぁ、メルティ王女様。

 

 ……何だ、この雰囲気。

 さっきから兵士達、黙ったままだし、じっとこっち見たまま動かないし、何だこの不気味さ。

 あの先頭の兵士が持ってるのは……確か映像記録用の水晶玉?

 

 …ヤバい。

 ある一つの未来を予想した俺は、咄嗟に動く事ができなかった。

 

「下がれ!」

「えっ―――」

 

 唯一動けたナオフミがそう叫び、メルティ王女を自分の元に引き寄せた直後。

 

 ガキンッ!と音をたて、メルティ王女の護衛の兵士が振り上げた剣と、ナオフミの構えた盾が、激しくぶつかり合った。

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